「させていただいた」
先日、人生で初めて「街コン」に参加した。
以前のエッセイを読んでいただいている方からは
切り替えの早いやつめ!と思われるかもしれないが
これには歴とした訳がある。
会社の後輩に20代も中頃にもなって
女性とお付き合いをしたことがない男の子がいる。
容姿などにはとやかく言うつもりは無いが
側から見ていても普通で、少し性格が内気なだけで
全くモテないとは思えない子だ。
だがその内気な性格が会社でのコミュニケーションを
取るのに苦労する場面もあるため、半ば強引に
会社の先輩から一緒に街コンに行ってやって欲しいと
頼まれた。
本当は先輩が行きたかったらしいのだが、年齢制限の為
代わりに白羽の矢が立ったと言う訳だ。
今まで妻がいたためそういう機会も無かったし
面白半分で参加の返事をする。
実際にはウキウキしていた自分もいるのだが
表情や言葉には出さず、当日を迎えた。
それなりに綺麗な身なりにして、会場まで向かう。
8000円という何とも言えない参加費を払い
街コンはスタートした。
基本的には2人1組になって女性と対峙する。
制限時間があり、時間を迎えると隣の席に移動と行った形で会が進行していく。
後輩はやはり緊張していて、女性と対峙しても
何を喋っていいのかわからず、女性側から質問されても
こちらに目配せをしてきて助けを求めて来た。
ここはある意味経験を積んで欲しいという思いで
見て見ぬふりで彼に相手を任せた。
そうやって時間が過ぎていき、基本的には
思い思いにマッチングが成立し、連絡先を交換して
解散という運びになった。
何名かと連絡を取り合い、1人の子をご飯に誘うと
何名か連れて来たいと返信があった為
年齢制限で引っかかった上司や街コンに参加した後輩を
呼んで、5対5の一種合コンみたいな形でのご飯会を
セッティングした。
中には既婚者の方や、親ほどに年齢が離れた方も
参加されていてそれはそれで楽しい時間となった。
上司は女性慣れしているのもあり、場を盛り上げていたが
後輩はやはり緊張して喋れず終いだった。
幹事としては場の空気がうまく回っているように感じたので、ホッと一息ついていると参加されている中で
1番年上の女性から話しかけられた。
今回参加された中でも個人的には1番話しやすく
2人で話が盛り上がった。
話している中で幹事をしてくれてありがとうという言葉と
若い子じゃなくてごめんねという言葉をもらった。
こちらとしては年齢は気にしていないので
謝る必要は無いですよと答え、雑談に入る。
少し話していると突然、こちらの分析を始めた。
「場の空気が悪くならないように必要以上に喋ってるね」
「ものすごい気遣い屋さんだね」
「もっと自分のことを考えて楽しんでね」
あってままない人からこんなに心の中を読まれたのは
初めてで、びっくりした。
そんなに頑張っているつもりでなくても
わかる人にはわかるのだなと感じた。
この人なら頑張らなくても、素の状態で話す事が出来るかもしれないと、自然と深い話になっていった。
その中でこの会をセットさせていただいたと言葉にした。
本心だった。だが、こちらをじっと見つめて言われた。
「「させていただいた」は違うよね。
そんなに気を遣わなくてもいいんだよ。
素直に楽しい会にしたいから集めたんでしょ?
もっと自分本位でいいんだよ。」
あぁ、ダメだ。
何を取り繕ってもすぐにバレる。
単純にみんなに楽しかったという思い出を作って欲しい
だけだったというのは建前で、自分が楽しみたいから
連絡をとり、みんなを巻き込んだに過ぎない。
だが、もっと自分のことを考えても
結果的にみんなが楽しめたらそれでいいのではないのか?
とも考えれるようになった。
ありがたかった。
欲しい言葉をかけて頂いて、この会を開いて良かったと
本心から思えた。
そうこうしているうちに閉店の時間となり
簡単に締めの会話をして、お礼を言い、終電で帰る。
次もまた会を開けたらいいなと思いながら
ほろ酔い気分で電車に揺られる。
これからはもう少し自分本位で生きれたらいいな。
妻の事も考えずに自分の人生を。
自分の人生を見つめ直す良い言葉と巡り会えた。
街コンに参加するのも悪くないと思えた。