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靴下


靴下を履くのが嫌いだ。


子供の時からそうだった。

よく両親から靴下を履くのを嫌がる子供だったと

大人になった今でも聞かされる。

未だに帰宅するとまず靴下を脱ぐ。

炬燵に入る際は必ず裸足で入る。

真冬の寒空の中でもガチガチの防寒着を着込んでいる

にも関わらず足元はサンダルなんていうのは普通だ。


これでは末梢神経から冷えていく人間の体の仕組みに

真っ向から反発している。

このお陰なのかよく風邪を引く。

元々がそんなに体が強い方では無いため

風邪を引くと中々治らない。

バカな事をしているのは重々承知しているのだが

それでも靴下を履くのが嫌だ。


寝る時ももちろん裸足で寝ていた。

これまでは全く何の問題もなく寝落ちしていた。


だが歳を重ねたことでなのか、環境が変わったことで

なのかこの冬は寝つきが悪い日々が続いた。


布団に入っても足元が寒く寝れないのだ。


電気あんかを使う方法もあったが元来汗かきな自分は

恐らく朝起きると汗びっしょりで起きて

もっと体調が悪くなる気がしたのでやめた。


ある日、会社でどうしたものかと考えていたところ

職場の先輩から買い物に行こうと誘いがあった。


どうせ帰ってもすぐには寝れないしなと

晩御飯を食べに行くついでに近くのアウトレットに

出かける。

平日に行ったこともあり、見たかったお店には

スムーズに入店でき、ゆっくり買い物を楽しむ事が出来た。

2人ともウインドウショッピングでウロウロしていると

ある下着メーカーの店舗が目に入った。


パンツが欲しかったんだよな〜と先輩。

ならと時間もあるし入店する。


そこで運命の出会いをする。

入店してすぐ左側に靴下コーナーがあった。

そしてそこにはデカデカと「睡眠靴下」の文字が。


一瞬でその文字に惹かれた。

あんなに嫌いな靴下なのにすぐに手に取り

生地感、使用方法などをイメージし

気づいたら何も買っていない先輩をよそに購入していた。


これだ、これを待っていたんだ。

確信にも近い感情が頭の中を支配する。

早くこれを履いて布団の中に入るのを待ちきれない。

まるで正月を待ち侘びる小学生みたいな気分だった。


程なくして帰宅し、早速購入した靴下を履く。

やっぱり予想通りだ、最高の履き心地だった。


この靴下はレッグウォーマーも兼務し

もし布団の中で暑くなるようならと親切に

足先だけ出せるようになっている。

普段は靴下としても活躍できるし

暑いと思えば足先だけ折り返して使う事もできる。

これなら汗かきの自分にもピッタリだった。


これ以上ないアイテムを手に入れて

悦に浸りながら寝るの楽しみに布団に入る。


いつもは寝付くまでに30分ぐらいは掛かっていたのに

今回は寝不足が続いていたのもありすぐに睡魔が

襲って来た。


やっと寝る事にストレスを感じずに寝れる。

嬉しくなりながら眠りについた。


起きていつもよりよく寝れた事に気づく。

起きてからの体の疲れ方が全然違う。

寝起きがあまり苦痛では無かった。


1000円で買える温もりはありがたいと思ったと同時に

足元の違和感に気づいた。


あれ…靴下履いてない…


結局寝てる間に気持ち悪くなったのか

布団を片付けると足元で小さくなった靴下が出て来た。


寝てる間ですら細胞レベルで靴下が嫌いなのかと

自分の無意識に感心すると同時に気の持ちようで

寝れるのかもなと思ったりもした。


1000円で買える温もりとは何だったのか。

だが改めて学習した。


やっぱり靴下は嫌いだ。





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