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歯医者


それは突然起こった。


年の瀬の迫ったある昼下がりの休日。

趣味の競馬に勤しんでいた私は、近くのコンビニで

競馬のお供替わりと買って来たアーモンドチョコレートを

頬張りながら、スマホに映る馬柱を見ていた。


予想を一通り終え、もう1つのお供であるコーヒーを飲みながら、一粒、二粒と口に入れる。


リアルタイムで視聴できるアプリで結果を確認する。


得てしてお菓子などを頬張りながら競馬予想をしている時は、大体残念な結果になる。


今日は今の所惨敗だな、と収支画面を見る。

決してプラスとは映らない画面。


そろそろ本腰入れて頑張ろうとまた一粒頬張ったその時だった。

口の中で鈍い音と共に、左の奥歯から嫌な感覚があった。


口の中が気持ち悪くなり、吐き出してみる。

予想通り欠けた歯がチョコレートでコーティングされて

吐き出された。


最悪だ。

競馬の予想は外れるのに、歯が欠けた予想は当たるなんて。

嫌でも出費が嵩む年末年始なのに、この期に及んでまだ出費を重ねさせるつもりか。


だが、とも思う。

しっかり毎日朝晩と歯磨きもしているし、なんなら

歯科衛生士の方から言われて歯間ブラシも使っている。


歯が欠ける要素が全く思い当たらなかった。

だがそんな事を言ってても埒が開かないので

急いでかかりつけの歯医者に連絡し、予約を取る。


幸いにもその日は営業されていて比較的空いていたので

すぐに診てもらうことができた。


開口一番子供の頃からお世話になっている歯科医師から

「ひどい虫歯ですね〜 神経とりましょっか」

とまるで近くのコンビニでアーモンドチョコレートを

買いに行くような軽い感じで告げられた。


え、マジか。

また出費が嵩む。

治療される痛みよりもお金が出て行く痛みの方を

咄嗟に考えていた。


だがこちらにNOの返事はない。

二つ返事て了解し、年末と言うこともあって簡単な処置で

その日は終わった。


年明けから本格的に神経をとり仮歯を作成するという

本格的な処置が始まる。


翌る日になんか悪いことでもしたかな〜と考える。

こういう時に人は原因を探す生き物なんだろうなと

ぼんやり考える。


考えても仕方ないことにいつまでも取り憑かれている。

気持ちを切り替えるためバイクに乗る。

1時間ばかりツーリングをしよう。


ツーリングに出かけある事に気づく。

昼間だからと言っていつものバイク用の防寒着ではなく

普段着用の上着を着ていている。


今日は少し暖かいから大丈夫だろうと思っていたが

その予想も簡単に外れた。


寒い。寒すぎる。

前後を走る車の人と今すぐ変わって欲しいぐらい寒い。


信号で止まるたびに手袋をはめている両手を

エンジンに当てて暖を取る。


1時間のツーリングを早めに切り上げ家に帰る。

凍えた全身を石油ストーブで温める。


そのとき思った。

あれ?さっきまで何悩んでいたっけ?


悩みなんてちっぽけなことが多い。

実際想像する悩みのほとんどは起こらないらしい。

こんなことなら早く薄着でバイクに乗るべきだった。


これからはそうしよう。

そう思った薄日の差すある日の年末だった。




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