表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
折々な日常の中で  作者: 仲村遊一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/43

結婚式


なんだか複雑な気持ちになった。




先日、久々に友人の結婚式に参列した。

最後に参列した結婚式が5年前だった為、事前にカッターシャツなどを新調し、できるだけの格好を整えて式場に向かった。

式場は格式の高そうな綺麗なホテルで、少し場違い感の残る格好で来てしまったことに後悔を覚えたが、地元の友人を祝うためと思い格好をつけてきたので楽しみに挙式の時間を待った。

時間が経つと他の共通の友人も揃い、程なくして挙式が始まった。


席に案内され式場の中に入る。

綺麗な挙式会場で少し緊張を覚える。

そうこうしているうちに後方の扉が開き、友人である新郎が緊張しながら入場してきた。

ご両親に最後のエスコートを受け、ガチガチになった歩き方で祭壇の方へと向かう。

緊張していることを他の友人と軽く談笑していると次に新婦さんが入場してきた。

お父様に手を引かれ、純白のウエディングドレスに身を包んだ新婦を見て神々しさを感じた。

なんと美しいのだろう。

冗談でもなくキラキラしたオーラのようなものを纏い、眩い視線を一身に浴びながらも堂々とした立ち振る舞いに、この人なら新郎と手を取り合いながら幸せを築いていけるのだろうと思った。

そして自分の結婚式の時のことを少し思い出した。


何年も前にはなるが昨日のことのように思い出す。

前日は緊張で全く寝られず、それでも脳が覚醒している為か全く疲れを感じないまま当日を迎えた。

妻とは式場に入るまでは一緒でその後はドレスに着替えるために別行動となり、メイクなどの準備に入る。

新郎側はタキシードに着替えて、少し髪をセットするぐらいのことなのですぐに終わるが、新婦側はそういうわけにはいかない。

ヤキモキする時間を過ごしていると、プランナーの方に呼ばれ祭壇の方に先に入った。

祭壇の方を向き待っていると、後方の扉が開く音が聞こえ、歩いてくる音が聞こえる。

どんどん近くなってくる音。

音が止まったと思ったら右肩を叩かれ振り返ると、そこにはこれが妻なのかと思えるぐらいに綺麗な女性が立っていた。

少し不安と緊張を覚えた顔をして微笑む妻。

その顔を見た瞬間に感情の関が一気に崩壊した。

涙が止まらなかった。

この日に至るまでに様々なことがあり、辛いこと、楽しいことなどがグルグルと頭をよぎった。

あぁ、よかった。

心の底から出た感情は素直で、逆に言うとその一言しか出なかった。

顔をくしゃくしゃにして泣いている自分を妻が心配そうに声をかけ、その一部始終がエンドロールに映されたのは言うまでもない。

ただ、それでも妻は美しかった。

この瞬間だけは世界で1番美しい人だと思えた。

そして何があってもこの人を守らないといけないと感じた。

その誓いは残念ながら完遂することなく現在に至ったが、もし次に大事にしないといけない人が出た場合、同じように思うのだろう。

少なくとも今はそう思う。


友人の結婚式自体はその後お酒も入ったこともあり、結婚式というには少し賑やかしすぎるほどにはなったが、友人も喜んでくれてはいた。

自分自身を心を洗われ、ポカポカする気持ちになりながら帰路についた。

ただ、苦く儚い記憶を呼び戻したのも確かだ。

この記憶が儚いままで終わるのか、美しい記憶で終わるのかはこれからの自分にかかっている。

何とは断言出来ないが頑張ろうと思えた瞬間だった。


もう一度あの美しい瞬間に今度は自分が主役で立ち会いたい。

欲深いのかもしれないがそれでも思う。

本当の幸せを求めてこれから頑張ろう。

そう思うに十分な結婚式だった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ