表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
折々な日常の中で  作者: 仲村遊一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/43

優しさ


先日、今年の仕事納めだった。




最後の最後まで仕事がびっちり詰まっていたため

最終日という少し緩んだ空気の中でもいつも通り

緊張感を保って仕事に臨めた。


いつもより少し早めに全体業務が終わり

「良いお年を!」という社会人ではありきたりな

挨拶を皆と交わしながら会社を後にする。


その後仲の良い数名と一旦帰宅してから

再度電車で集合しプチ忘年会を開催する。






この忘年会が余計だった。


予め集合時間を決めていなかったため

このくらいだろうと鷹を括り、ゆっくり目に

集合場所に向かう途中にLINEが入る。


後輩からだ。

「今どこにいらっしゃるんですか?」


焦った。

まだ電車に乗ったばかりだったからだ。


「もう少し掛かる。ごめん。」

と返事を打つ。


実際はここからどう見積もっても30分ぐらいは掛かる。

こういう時にどこでもドアがあればと思う。


心の中で「ドラえもーん」

と、のび太が泣き叫んでいるのが浮かんだ。


そんな現実逃避をしながら最寄駅に到着し

走って指定された集合場所に向かうと誰もいない。


後輩に連絡を返すと

「先にお店に入っています。」

との連絡が。


お店の場所を聞き、スマホのマップを開く。

すぐ近くだったので急いで行き、すでにお酒の入っている

メンバーに

「遅れてすみません。」

と謝る。


大丈夫だよ、寒かったね。

と優しい言葉をかけて頂く。


だが1人の先輩はいつもの柔和な顔を厳しい顔に変え

「遅い!なんで遅れてるの?」

と叱責を受けた。


これに対しては何も反論する余地はない。

ひたすらに謝りながら場の空気に溶け込んでいった。


お酒も少しずつ入っていき、先ほど叱責を受けた先輩が

遅刻して来たことに余程怒っているのか

皆がトイレなどで立ち上がった瞬間に話をぶり返して来た。


こちらが悪いのはわかる。

だがこれ以上どうしろと言うのか。


遅刻したのは謝った。

もう失敗を取り戻すことは出来ない。

一度言われたら次はしないでおこうと言うのが

人の心理ではないのか。


悪いことをしたのはこちらだが

何故かモヤモヤした気持ちになった。


それからは楽しい時間ではなく

またいつ怒られるかもしれないという強迫観念に

近い状態で場をやり過ごさなければならなかった。






何日か経って今思う。

許すのが優しさなのか、叱るのか優しさなのか。


怒るや悲しむと言った一般的に負の感情が

自分は苦手なので、どうしてもあと一歩が踏み出せない。


間違えっていることをキツく言えない。

辛いことを辛いと言えない。


大抵のことは笑って誤魔化してしまう。


この経験から優しさの意味を履き違えないように

と言うことが来年への課題だなと感じた。


年の瀬も迫って来た今だから思う。

最後に膿が出てよかったと。






様々な経験を経て本当の意味での優しさを身につけよう。

必要な叱責も寛容な態度も取れるように。

それが大人になると言うことではないのか。


ハードルの高い宿題を課せられたが

今年の経験を活かすチャンスだと思い

来年からの日々を過ごしたい。






「優しさ」って難しい。

今年は特にそう思った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ