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折々な日常の中で  作者: 仲村遊一


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ヤエー


誰かの安全を願う気持ちそのものが美しいと感じる。




残暑も少しずつではあるが収まりつつあり、過ごしやすい陽気になってきた。

仕事をしていても汗のかき方、仕事終わりの疲れ方が違う。

体力勝負の仕事をしている為、少し涼しくなるだけでも体は大分楽になる。

季節によって仕事のやりやすさが左右されるのは長い社会人経験で慣れたが、年齢を重ねる毎にリカバリーの時間は必要となっている。

体感ではあるが20代とは違うのだなと感じる。


季節が移り変わり秋に近づくにつれてバイクの季節となる。

一気に冬にならないことを祈りつつ、休みになればバイクを走らす。

先日は12ヶ月点検にバイクショップに出向いた。


まだ日差しは強く、ヘルメットの隙間から汗が滴る。

だが走らせている間はそんなことを忘れさせる快感を得る。

風が心地いい。

私の住んでいる県ではツーリングを楽しむ人が多いため、よくバイクとすれ違う。

そこで人にもよるが「ヤエー」という挨拶を交わすことがある。

点検に出かけたその日も挨拶の機会に何度か恵まれた。


「ヤエー」はバイカー同士が道中の安全を願って行う行為だ。

もちろん、ほとんどのバイカーの人は誰かわからない赤の他人だ。

車に乗っている人ならよくわからない感情なのだろうが、バイクはある意味命懸けで乗っている。

私自身、春先に事故を起こした際は、周囲の人から本当に命があって良かったと心配された。

命をかけてでもバイクに乗るというのはそれ以上に快感やバイクに乗ることでしか得られないものがあるからだ。

その一つがバイカー同士の一体感、すなわち「ヤエー」という行為に凝縮されていると思う。

ただの挨拶だが誰かの安全と幸せを願って、というのはすごく気持ちのいいものだ。

お辞儀をする人、手を挙げる人、手を振る人。

ドライバーがしてくることもあれば、タンデムで後ろに乗っている人が一生懸命に手を振るなんてこともある。

どちらにしてもすごく気持ちのいい行為だ。


実際の社会でこれほどに気持ちのいいことが果たしてあるのだろうか。

ろくに挨拶もしない人、ゴミのポイ捨て、暴言に始まるハラスメントなど、気分の悪くなることは山ほどある。

残念に思うと同時に、一般社会でも「ヤエー」の気持ちで過ごせたら、と思う。

どこに住んでいるのかもわからない、誰かもわからない人の安全を願うことは、これらの問題を全て解決してくれるのではないか。

大きい表現だが、そんな気がしている。


今日もコーヒーを飲みにバイクを走らす。

いつものルートでいつも通り走り慣れた道を走る。

すれ違う車やバイクはもちろんいつもとは違う。

だが、バイク同士すれ違うと満面の笑みで「ヤエー」を繰り出してくれる。

こちらも自然と笑顔になる。そして「ヤエー」を返す。

台風が過ぎ去った後の雲ひとつない空のように気持ちの良い時間が一瞬起こる。

そしてまたバイクを走らす。

また自然と「ヤエー」が起こる。

どれだけ幸せで気分の良いものか読者の皆さんにも感じてほしい。

そして実社会で活かしてほしい。

心からそう願う。

そうすれば荒んだ心も落ち着くと思っている。


魔法の行動「ヤエー」

皆さんも機会があればぜひ。





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