忘年会
先日、会社の忘年会があった。
会社の規模が規模なので、忘年会とは言えども
参加者は10人ちょっとだった。
去年は無かったのにな、と思いながら参加と返事をし
仕事終わりの金曜日に県内の焼肉屋に集まる。
ここはホルモン鍋が有名らしい。
らしい、というのは来たことが無かったことと
チラシにホルモン食べ放題!
とデカデカ広告を打っていたからだ。
みんながそれぞれの方法で現地に到着し
上司のありがたい言葉を聞いて乾杯する。
それからはどんちゃん騒ぎだった。
収拾がつかない、とはこのことかと思うほど
仕事では普段クールな人でもはっちゃけていた。
お酒の力を借りながら皆が思い思いに箸を伸ばし
机に置かれていくコース料理を平らげていく。
飲めない人はついて来れてるかな?と心配になったが
見た感じそれなりに馴染んで楽しんでいるようだった。
かと言う自分はと言うと、お酒を飲んでなくても
皆に合わせられる性格のせいか、同じテンションで
場を盛り上げる役をしていた。
会も終盤になり、最初に着いた席には違う人が居座り
ある人は説教をし、ある人は真剣な話をしていた。
こういう時にシラフは楽だなと感じる。
変な絡みをするわけでもなく
真面目な話をするわけでもなく
フラットな状態で見渡すことが出来る。
ここで本音を書くと、こういう場が苦手だ。
少人数で卓を囲んだり、一対一で酒を酌み交わすのは
好きなのだが、どうも大人数になると気疲れするとともに
妙に冷めている自分がいる。
今回でも場の空気を壊さないように
テンションや話を合わせたり
気を遣って追加の注文をしたりしていた。
ある意味損な性格だなと思う。
もっと人の顔色を伺わずに言いたいことを言えたり
明らかに絡まれるのを嫌がっている人を見つけたら
それはダメだと本当は言いたい。
だが言えない、止めれない。
参加しないという方法もあるのだが
会社という一種の共同体の中にいると
否応無しに参加しなければと思ってしまう。
楽しそうに見せることや誰かに合わせる能力だけが
長い社会人経験で磨かれていってる気がしてならない。
そうやって今回も皆のテンションに合わせていると
ある人が不意に小声で「大丈夫?」と聞いてきた。
一瞬ドキりとした。
頭の中を覗かれた気がした。
「大丈夫ですよ〜」といつもの愛想笑いで返す。
場の空気を壊さないようにしながら。
その人は安心した顔をして少し頷き
他の人の会話に参加していった。
また嘘をついたなぁと思うと同時に
その気遣いがすごくありがたかった。
本質を見抜く力があるのだなと感じた。
こういう人を大事にしていかなければとも思った。
少しでも同じような気持ちの人に寄り添えるように。
何事に置いても「しんどい」と感じている人の力に。
縁もたけなわとなり、最初に挨拶をした上司が
最後の挨拶も担当し、お開きとなった。
「あぁ〜 やっと帰れる〜」と思っているのも束の間
一番どんちゃん騒ぎをしていた上司から
「二次会行くぞ!」の声。
帰りたい、ものすごく帰りたい。
心の中で「帰宅」の文字を叫んでいた。
だが場の空気は二次会に流れ
その空気を切り裂けない自分は参加するしか無かった。
なんだかんだで皆の終電まで付き合い
自家用車で来ていたため、帰りの車内で1人になった瞬間
急に疲れが押し寄せて来た。
ここから家までは40分ほどある。
眠たい目を擦りながらエンジンを掛け、ハンドルを握り
ほとんど働いていない脳でぼんやり考える。
「時には断る勇気も必要だな」
人に嫌われてもいいから自分を守ろう。
それが些細な気遣いに繋がるのであれば。
今の自分には場の空気を盛り上げるより大事だ。
新たな自分のような「被害者」を作らない為に。