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折々な日常の中で  作者: 仲村遊一


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稼ぐ


どういう方法でも構わないと思っている。




先日、幼馴染と電話をする機会があった。

本当は日程を合わせ食事をする予定だったのだが、相手方の体調が思わしくなく、それでもストレスの捌け口にと電話をする運びになった。

この友人は幼稚園からの幼馴染で、かれこれ30年近く友人として付き合っている。

勿論、親御さんも知っているし、こちらの両親とも友人は仲がいい。

成人してからも関係性は全く変わりなく、1年に1回は必ず何処かに旅行に行く。

趣味や嗜好は近からず遠からずなのだが、何故か馬が合い、現在に至るというわけだ。


体調を崩した理由だが、「仕事」の一言に尽きる。


友人は飲食店で働いているのだが、「修業」という名のしごきに耐えている。

話を聞いていて本当か?と疑うほどに罵詈雑言が飛び交う職場で歯を食いしばって働くのを聞くと、そこまでして修業は必要なのか?と思う。


そんな環境でのせいか、最近体調が思わしくないと連絡が来ていた。

心配はしていたのだが、休みが取りづらい環境と、たまにの休みも病院ではなく、ストレスの吐口にと飲み歩いていたと聞く。

それも自分のキャパシティを超えて飲み歩いていたらしい。


いち友人として、時には厳しい言葉を掛けながらも、やりたいのなら、と鼓舞している自分もいた。

今、考えればこの選択が間違いだったと思う。


世の中に体調を崩してまでする仕事があるのだろうか。


どんなに名声や地位のある人でも、体調を崩してまで仕事はしない。

上手く息抜きをしながら仕事と向き合うはずだ。


友人の向き合い方が下手と言っている訳ではない。

だが、そんな職場にいて何かを得られるとは到底思えない。


友人は時々会うたびに、こういうスキルが身に付いた、この人よりは自分は仕事が出来ると、日々の激務の中で得たことを話してくれる。

だが、それと同じぐらいかけがえのない時間と心身の健康を損なっているのに気づいていない。


会話するのは楽しい。だが何処かに虚しさを感じながら、自分ならどうするだろう、と想像する。


自分ならたぶんすぐに逃げだすだろう。

何も楽しさもやりがいも見つけることができず、志半ばで逃げるように辞めると思う。

実際に、とある職場ではそうした経験がある。


お金を稼ぐことは生きていく上で必要不可欠だ。

だが、それほどまでにしてやることでもないような気がする。

今の世の中なら、株やSNS活動、上手い人ならギャンブルなどで働かずして大金を得ている。

そういう生き方でも、後ろ指を刺されない世の中になりつつあるように思う。


友人にも同じようなことを言ったが、料理の世界で生きると返答があった。

職人気質の世界で、時代に逆行しながらも日々抗い続けている友人を見ると、本当に生きづらそうに思う。

だがそういう不器用な生き方も個人的には好きだ。


友人がこれ以上ストレスを抱えないようにケアしながら、上手く折り合いをつけて日々楽しく生きてほしい。

心からそう思う。


楽しく働ける環境で、伸び伸び自分の腕を振る舞う姿の方が、想像していて楽しい。

どれだけ先になるかわからないが友人と、

「あんな時もあったな」

と笑い合える日々を心待ちにしている。





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