バニーガール
見たこともない光景がそこには広がっていた。
先日、仕事終わりに飲みに行こうとなった。
場所は会社から2〜3駅のところにある駅前の居酒屋になった。
行くメンバーは比較的会社の近くに住んでおり、皆が最寄りが一緒なのだが、私は一度帰ってからになると集合場所からも遠くなるし、駅で言えば4〜5駅ほど離れてしまうので、午後から用事で半休を取った日に合わせてもらった。
定時で仕事が終わり、19時集合で居酒屋がある駅の改札で待ち合わせる。
おそらく乗ってくる電車が一緒なはずなので、一緒にくるかな?と思っていたが、各々バラバラに集まって来た。
何はともあれ皆が集合し、目的の居酒屋に行く。
とりあえずお腹が空いていたので揚げ物類とお酒を頂く。
私はビールが飲めないので、一人だけレモンサワーで乾杯する。
疲れ切った体にアルコールが染み渡る。
半日しか働いていないが、やはり仕事終わりのお酒は格別だ。
アルコールが入ってくると皆饒舌になり、そして食の方も進んで行った。
ある程度時間が過ぎ、一人の上司がチラチラと時計を見ている。
その時計に目をやると、20時近くになっていた。
ソワソワされているので訳を聞くと、近くに行きたいお店があるらしい。
その場では詳しくは聞かなかったが、ご飯もお酒もそっちのけで次に行こうと誘われた。
こうなれば行くしかないのでとりあえず着いていく。
歩いて5分ほどのところに外からは中の状況が見えないお店にたどり着いた。
上司が慣れた手つきでドアを開ける。
少し怖気付きながらもついていくと、そこにはバニーガールが二人いた。
ビックリした。
こんな世界があるのかと、一瞬思考回路がショートした。
目を丸くしていると黒服の女性がカウンターの席に案内してくれた。
おしぼりをもらい、システムを聞く。
飲み放題の時間制で、1時間3000円らしい。
そして、コンセプトがバニーガールだった。
一応、ガールズバーという名目で営業しているらしいが、こっちはそれどころではない。
皆が中学生にでも戻ったのかと疑うほどに鼻の下を伸ばし、今か今かと待っていると、一人のバニーガールが目の前にやって来た。
可愛い。
ただそれ以上に格好に目が行く。
スケベ心がチラチラと顔を覗かせながらも平然を装い対峙する。
なんせ目の前にはバニーガールがいるのだ。
全男性が歓喜するコスプレが。
そしてこのお店の憎いところが、バニーガールの背面と側面の壁側に大きな鏡があることだ。
これ以上は書くことに躊躇いが出るので遠慮するが、ただただ圧倒される空間だった。
まさに夢見心地とはこう言うことを言うのかと思った。
お酒が入っていたのもあるが、その絵面のインパクトの大きさが勝ってしまい、そこでの会話の内容は全く覚えていない。
ただ、家に帰り財布の中を見ると、ちゃっかり名刺を貰っていた。
しっかり営業されたのだなと感じながらも捨てれず、未だ財布の中に鎮座している名刺。
これはまた行くのだなと確信する。
結局、その日は2時間居座り、代わりがわりやってくるバニーガールと喋っていたのだけぼんやり覚えている。
これを書いている今でも、頭はポーッとしている。
居酒屋が居座る中にある圧倒的異空間感。
人は第一印象が大事と言うが、これほどの第一印象はないだろう。
男って幾つになっても馬鹿なんだなと感じた。
一回り以上年齢の離れている上司も次の日、興奮気味に昨日の出来事について話していた。
現状、お金が出ていくのは痛いが、こういう遊びもたまには大事なのだなと感じた。
ある意味、頭の中をリセットするにはもってこいの空間だった。
お金が出来たらまた行こう。
あの圧倒的異空間へ。