愛煙家
愛煙家である。
最近は、分煙、禁煙の場所が増えた。
そのこと自体は全然構わないのだが、少なくともここでは煙草が吸えてもいいのでは、と思う場所がある。
「喫茶店」である。
喫茶店と謳っている以上、喫煙とコーヒーはセット、と捉えてもおかしくない筈なのだが、最近の喫茶店はどこもかしこも「禁煙」のマークが付いている。
愛煙家にとってこれはかなりの死活問題である。
コーヒーとタバコはセットではないのか、というのが喫煙者の叫びではないだろうか。
何でもかんでも排除、排除、排除では好きなもの好きなだけ楽しむ、という本来人間が持っている自由という点から外れている気がしている。
だが、逆の立場で物事を考えてみる。
吸わない人からすれば喫煙など迷惑この上ないことだというのは承知している。
実はというと、かと言う私自身も2年前までは吸わない立場だったからだ。
吸い始めたキッカケは単純で、かっこいいと思ったからだった。
たまたま見たアニメで、美味しそうにタバコを吹かしている主人公を見て、タバコを吸ってみようと思い立った。
いい大人にもなっていたし、法律的に悪いことをしているわけではないのだが、当時はやけに緊張しながらコンビニの店員さんに向かって、初心者向けのタバコを棚から取ってもらった記憶がある。
最初にタバコを吸った時の感想は最悪だった。
何が美味しいのか全くわからず、それでもがむしゃらに吸い方がわからないまま吸っていると、今度は「ヤニクラ」が襲ってきた。
吸わない人に説明すると、「ヤニクラ」とは、タバコに含まれるニコチンやタールが肺から毛細血管を通り全身に行き渡ると、立っているのにも関わらず、立ちくらみのように目眩や吐き気がくる、喫煙者が通る最初の関門だ。
吸い方がわからなかったおかげで、めちゃくちゃに吸い続けた結果、この「ヤニクラ」が酷かった。
急に目の前が歪んで見え、あれ?と思っていると次に吐き気が来た。
すぐに車に乗り、深呼吸をして息を整える。
それでも気分が悪いのが全く治らず、本気で救急車を呼ぼうか悩んだぐらいだった。
10分ほどすると落ち着いたので、その時は帰ることが出来たが、残りの19本を捨てるかしばらく悩んだのを、未だに鮮明に覚えている。
とりあえず「ヤニクラ」の対処方法をネットで調べ、水を飲む、酸素が足りていないから深呼吸をする、など情報を入れ、何度か喫煙にトライしていると段々と吸い方と味の違いを覚えるようになっていった。
今ではすっかり愛煙家の仲間入りだ。
特にご飯を食べた後の一服が堪らない。
一種、タバコを美味しく吸うためにご飯を食べていると言っても過言ではない時もある。
「百害あって一利なし」なのは重々承知している。
だが、体を壊そうが、周りに迷惑を掛けなければ喫煙も個人の自由だと思っている。
最近だと紙タバコだけではなく、iQOSなどの電子タバコもあるので、時と場合を考えて使い分けるようにしている。
何事も配慮が大事だと言うことだ。
私が勤めている会社も、今年の7月から構内全面禁煙に踏み切る。
今は段階的に、吸える日が減っていっている状態だ。
がんじがらめに規制するのではなく、うまく折り合いをつけて、双方にとって一番いい方法を取るのがいいと思うのは、私だけではないはずだ。
どうか、愛煙家にも生きる道を作ってください。
マジョリティによってマイノリティが潰されないように。
これを書いている場所も家の近くの喫茶店だが、やはりタバコは吸えない。
純粋にコーヒーとおしゃべりを楽しむ場所になっている。
やはり時代には逆らえないのか、と思いつつ、マイノリティの一員として、このエッセイを使って魂の叫びをする。
みんな!喫煙者を見るときに冷めた目で見ないでね〜
ただでさえ隅っこに追いやられているんだから、これ以上いじめないでね〜
これが本音だ。
ここまで書いて、飲んでいるコーヒーが少なくなってきた。
飲み終えて、一服でもしますか。
コーヒーショップに出てすぐにタバコに火をつけている人を見つけても、嫌な顔せず
「美味しそうにタバコ吸ってるな〜」
と思って貰えると幸いです。
以上、愛煙家からの個人エッセイを使っての叫びでした。