閑話 コーヒー
気がつくと私は大きなカップの中にいた。
満たされたコーヒーの上をぷかぷかと浮いている。
「どうしようかな」
どうにかして脱出したい。温かいからすぐに低体温症にはならなそうだが、何かの拍子で溺れでもしたら…
想像しただけで体が震える。
とにかく今もがいて解決するよりも、ぷかぷか浮いて消費エネルギーを少なくしよう。待てばどうにかなるかもしれない。
しばらく経つとカップが動き出し、コーヒーが大きく波打つ。
「やばい。いや、こういう時こそ冷静に…」
そう言って落ち着かせるが、波が覆い被さったりしてパニックで溺れる可能性を考えると居ても立っても居られない。
次第にカップの外から巨大な顔が中を覗き込む。
アイリスだ。
「おいしそー!」
「そうだね」
え、私までいる。どういう事だ。てか待て飲むな飲むな。
巨大なアイリスはカップに口をつけてコーヒーを啜る。
「うおー!やめろアイ!」
このままだとアイリスに食われてしまう。そうなると一巻の終わりだ。
必死に泳ぐが口はもうすぐそこだ。
「おいしー!ソフィーも飲んでみてよ!」
「ほう、どれどれ…」
え、ちょっと待て。この流れは…と悪い予感がしたが、すぐに当たった。私が私に飲み込まれる。
「おい待て私!飲むな!」
しかし声は届かず、無念にも飲み込まれてしまった。
もうダメだ!
目に涙を浮かべた瞬間、夢から目が覚めた。目の前にはスヤスヤと眠るソフィアの姿が居た。
「おいしー…」
お前が変な夢見るからこんな事に…
起きて早々私はコーヒーを入れて飲もうとした。しかし夢の件もあり、怖くてすぐには飲めなかった。
アイリス「おいしーかも…」
ソフィア「それは違う人だろ」