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第四二話 二人きりの生活 五日目④

登場人物紹介

 真田さなだ健一けんいち:主人公。陰キャ男子。玲香とは義理の兄妹。

 神楽坂かぐらざか玲香れいか:誕生日一日違いの義妹。実際は真田玲香。黒姫様と密かに呼ばれている。突然クラスメイトに話しかけられるようになり、戸惑っている。

 高橋たかはし里美さとみ:クラスメイト。『黒姫様を愛でる会』の会員。健一との約束というのもあるが玲香と話すことが出来て純粋に喜んでいる。

 放課後になると、健一は、弾かれるように立ち上がると、すぐに帰ってしまった。

 ――おかしい……

 健一が授業が終わればすぐに帰ることは変ではない。

 だが、こんなにも急いで帰る必要があるのだろうか。

 なんだか、なにか(・・・)に逃げているかのように見えた。

 そして、そのなにか(・・・)は、玲香のことだろう、と思っている。

 健一は、玲香を避けている――

 昼間では、まだ疑念だったが、今は確信していた。

 だが、その理由が玲香にはわからなかった。

 昨日(・・)の件に関係があるのだろうか。

 ――ないはずはないわよね……

 わからないことだらけだった。

 そして、玲香はというと、今は高橋里美達と教室で話していた。

「ねえねえ、神楽坂さんって、放課後とかいつもどうしていたの? どこかに遊び行ってたりとかしてた?」

「そういうのはあまりないわね。大抵、そのまま家に帰って家事をしているわ」

「え? そうなの?」

 玲香がそう言うと、驚かれてしまった。

「神楽坂さんって、家事をやっているの?」

「? 変かしら?」

「いえ。神楽坂さんって、お嬢様と聞いていたので、そういうのはやらないのかな、と」

 鈴木沙樹の言葉に、玲香は目を丸くする。

「私のことそんな風に思っていたの?」

「違うの?」

「それはそうよ。どうしてそう思われていたかの方が不思議だわ」

「なんだか、神楽坂さんって、見た目高貴な感じがしたし」

「……鈴木さん……」

 あまりに偏見だと思った。

「で、でも、そう思っているのはあたしだけじゃなく、結構いるのよ。ね、優花?」

「え? まあ、そういうところはあるかな。たぶん、ウチのクラスのほとんどの人はそう思っていると思う」

「本当?」

「うーん、そうだね。私も、そう思っていた(・・)ところはあったかな」

 高橋里美にも問うて見たが、否定の言葉は出なかった。

 ――そんなことあるの?

 別にお嬢様らしさなんて見せたことはないつもりだった。

 むしろ、自分としては庶民派だと思っているのに。

 ショックだった。

 ――ん?

 高橋里美の発言で気になることがあった。

「高橋さん」

「なあに、神楽坂さん」

「高橋さん、さっき『そう思っていた』と言わなかった? つまり今はそう思っていないのよね。どんなきっかけ(・・・・)があってそう思ったのかしら?」

「あ」

 高橋里美はあからさまにしまった、という顔をした。

 深い意味で言ったわけではなかったが、彼女にとってクリティカルな質問だったのだろうか。

「…………高橋さん……どういうことかしら?」

「あの……その……」

 高橋里美はしどろもどろになっていた。

 ――なにかあるわね……

 これは追求した方が良さそうだ。

 玲香は、高橋里美に接近すると、耳元でささやく。

「この後、人のいない場所でいいかしら?」

「…………わかった……」

 高橋里美は観念したような表情で答えた。

 鈴木沙樹と佐藤優花は状況が理解できずに顔を見合わせていた。


 屋上近くの階段の踊り場。

 玲香と高橋里美は、そこで内緒話をすることにした。

「なにが訊きたいの? 神楽坂さん」

 こちらの顔色を伺いながら、高橋里美は恐る恐るといった感じで、言った。

 その態度を見て、なにかを隠していることはわかった。

 これはこちらの手の内を晒すより、相手に語らせた方がいいだろう。

「それは、高橋さんがわかっているのではなくて?」

「え、もしかして、昨日のこと、知っているの? 神楽坂さん」

「……なるほど……昨日(・・)、なにかあったわけね」

「…………え……あっ」

 鎌を掛けられたことに気づく、高橋里美。

「話を聞かせてもらえるかしら?」

 鋭くを眼を光らせて、玲香は言った。

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