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第四一話 二人きりの生活 五日目③

登場人物紹介

 真田さなだ健一けんいち:主人公。陰キャ男子。玲香とは義理の兄妹。

 神楽坂かぐらざか玲香れいか:誕生日一日違いの義妹。実際は真田玲香。黒姫様と密かに呼ばれている。突然クラスメイトに話しかけられるようになり、戸惑っている。

 高橋たかはし里美さとみ:クラスメイト。『黒姫様を愛でる会』の会員。健一との約束というのもあるが玲香と話すことが出来て純粋に喜んでいる。

 昼休み。

 玲香は本当に戸惑っていた。

 状況が理解できないからだ。

 玲香は、今、教室内で複数の机をくっつけて、高橋里美とその親友の鈴木沙樹と佐藤優花の四人で昼食をとっていた。

 クラスメイトと一緒に昼食だなんて初めてのことだった。

「ねえねえ、神楽坂さんのお弁当って、自分で作ったの?」

「いいえ。私ではないわ。――家族・・に作ってもらったのよ」

 高橋里美の質問に答える。

「家族? ああ、お母さんに作ってもらったのね。美味しそう」

 実際は義兄の健一に作ってもらったのだが訂正する必要はないだろう。

「そうかしら。今日のおかずは全部冷凍食品なのだけれど」

「え? そうなんだ。――そうは見えないね」

「……そうね。今の冷凍食品は結構出来がよいから」

「へぇ、あたし、弁当とか自分で作らないから知らなかったー」

 そして玲香はいかに今の冷凍食品のクオリティが高いかを説明する。

 他愛もない会話。

 これまで挨拶程度しかして来なかったクラスメイトとのランチタイム。

 正直、楽しかった。

 だが、戸惑いも同じくらいあった。

 どうして、今日・・なのか、と。

 南城高校に入学して一年と少し、挨拶以外で人に声をかけられる事なんて無かったというのに。

 不思議だった。

「高橋さん」

「なに、神楽坂さん」

「どうして、私を誘ってくれたの?」

「え」

「別に、誘われて嫌だったわけではないの。ただ、どうしてなのか、と」

 玲香の問いに、高橋里美の顔が一瞬顔がこわばったように見えた。

 だが、すぐに笑顔を見せ、

「実は、ずっと神楽坂さんとこうしたかったんだけど、勇気が出なくて……」

「そうなの?」

 と玲香が言うと、一緒にいた鈴木沙樹と佐藤優花も続けた。

「そうそう」

「あたしもずっと話したかったのよねー」

「そう……ありがとう」

 三人の顔を見れば、嘘を言っているようには見えなかったので、素直に感謝をした。

 だが――

 何故、今日・・なのかは、まだ、わからない。


 そして、気になることがもうひとつあった。

 健一のことだ。

 朝、教室で健一の方を見たとき、眼を逸らされた気がした。

 なんだか、関わりを拒否されたように感じた。

 昼休みもそうだ。

 昼休みになると、そそくさと弁当を持って教室を出て行ってしまった。

 元々、健一とは直接的な接点があったわけではない。

 だが、今日は関わりを拒否されているように感じてしまった。

 この一週間、健一と同居したことでかなり仲が良くなったと思っていた。

 だが、健一からすれば違うのだろうか――


 気づけば玲香は健一のことばかり考えていて、以降は、生返事しかできていなかった。


       *


 屋上近くの階段の踊り場。

 健一は、そこで弁当を食べていた。

 昼休みが終わるなり、すぐにここまで来ていた。

 せっかく玲香に友達が増えたのだから、健一はあまり近づかない方がいいだろう、と思ったからだ。

 せっかく、九条会長が健一と玲香の関係を広めずにいてくれたのだから、それを無駄にはしたくない。

 

 ある意味慣れ親しんだ場所で、弁当を食す。

 今日も自分で作った冷凍食品メインの弁当。

 ――うん、美味しい。

 満足だった。

 だが、それそろ次のステップに言ってもいいのかも知れない。

 ――簡単な料理ぐらい作ってみたくなったかも。

 明日は卵焼きぐらい作ってみようかな。

 健一は玲香の気持ちなど全く気づかず、のんきにそんなことを考えていた。

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