06話 はじめてのお使い4
「ダメだよ朧さん、ボスは最上階に居なきゃ!シボーユーギの法則知らないの?」
ブルウ・スリーだよ。
「なんだそれ。聞いた事ないぞ?だが俺より強い奴は上にいるから安心しな。」
みたいね。ヤバイ気配ビンビンでシッポが逆立ってるよ。今は消してるけど。
「それはそれとして、さっきシーファとやったよ。力はあるけどまだまだだね。稽古でも付けてやったら?」
「俺は人に教えるのが苦手だ。」
だよね。ごめん。
「それより用があって来たんだろ?」
そうそう。
「うちの子(連合の隊員)が華宮のシマ荒らしたってホント?」
「いや、デッチ上げだ。実際はキプロスの制服を来たギルドの冒険者だ。」
はぇー、そうなんだ。さすが朧さん、探偵でも雇っているのかな?てかギルド?はて?何ゆえ。
「その冒険者って」
パチン
朧さんが指を鳴らすと奥の部屋から華宮の組員に手を後ろに縛られた男が出て来る。
「既に捕らえて全て吐かせた。」
仕事早えー。さすがです、朧さん。
「モゴモゴ!モゴ!」
口をテープで塞がれてる。
やれやれ剥がしてやるか。
ベリベリ・・・ベリベリ・・・ベリベリ・・・
「いって!いてて!ひと思いにイケや!」
うるさいなあ。ワザとだよ。ふふっ。
「おい、さっきみたいに最初から分かるように説明しろ。余計な事を言えば殺す。」
朧氏からヤバイ殺気。僕まで緊張してきちゃったよ。
「ひゃい!誓って真実を話しましゅ!」
ぷぷっ。くっ、笑っちゃだめだ。耐えろ耐えろw
「あっしはギルド『Dispair Front Line』(以下DFL)の斥候を務めているヤモリと言うケチな男でごぜえます。」
キャラ変わってない?まぁいいや。
「このギルドは一人の男が中心となって出来たチームでして、彼の意思がそのままチームに反映された、所謂ワンマンチームっちゅうやつですわ。」
ふむふむ
「DFの主目的はディスペアの攻略で、ギルマス(ギルドマスター)の強さも相まって9千層クラスの魔物にも引けを取らないバトルを繰り広げておりやした。」
すごいじゃん。ふあぁ。ヤバ、あくび出た。
お腹が満たされ軽く運動したせいかな。めっちゃ眠い。
「そんな時ギルドに新たな加入者が現れやして、この男が人心掌握に長けた者でして、いや、今考えると魔法での精神攻撃だったのかも・・・。とにかく、そいつがギルマスを唆しこの様な事態を・・・」
ふうん・・・そーなんだ、むにゃむにゃ・・・すやぁー。
!!?
「ひゃああ!」
姉ちゃんやめ・・・て・・・。あっ朧さんか・・・。
強い気を当てられ目が覚める。こっちを無言で見つめる朧さん。はぁービックリした。さーせん!
「ご、ごめん。続けて。」
「は、はあ。それで後で知ったんですがね、どうやらその男キプロスに恨みを持っていたみたいなんでさ。」
関係者かな?
「そいつの名前は?」
「ストラス。キプロス学院の生徒だった男ですぜ。」
ストラス?誰?知らないなあ。
「だってさ、キースくん知ってる?(念話)」
上の階に居る先輩に振る。知ってるかな?
「ああん?ストラスねえ。アルルが番長やってた頃うろちょろしてた奴がそんな名前だったかな。口に傷があれば当たりだ。」
「そいつ、口に傷ある?」
「さすがキプロスの王!良くご存知で!ええ、ええ、ありますとも深い傷が。」
「当たりみたい、どんな奴だったの?」
再び聞いてみる。
「変わらねえよ。前も連合の幹部に取り入って悪巧みしてたわ。ヨハンにも取り入ってたくらいだからな、それなりに腕は立つ。」
ヨハンくんか。連合の2代目総長で生徒たちに好かれていたっけ。
総長になるまでにはウヨキョクセツあったみたいだけど。
「アルルに正体を見抜かれた後居場所を失って学院を辞めたらしいが、そん時の逆恨みだろ。」
そうなんだ。恨みって中々晴れないものなのね。
「そいつは今どこに居るんだ?」
ヤモリに聞く。もう逃げちゃったかな?
「アビスの街にいるのは確かですがね、拠点はいくつもあるもんで、あっしが捕まったのはとうに気付いているはずですから・・・もう別の拠点に移っているじゃねえですかね。」
だろうね。
「そいつの持ち物でもあれば場所分かるんだけどなあ。」
「!それなら、あっしのバッグにストラスから貰ったナイフが入ってるんですが・・・」
朧さんが組員に調べるよう指示する。
バッグから出てきたナイフには布が巻かれている。ナイス。
くんかくんか。
コイツの次に強い匂いを嗅ぎ分け
【ディメンション】
を展開。匂いの情報を乗せる。えっ、ここって・・・
「旦那、あっしの知ってる事は全部話しましたぜ。これで許しちゃもらえませんか?頼んます!」
頭を下げるヤモリ。
「どうする?お前に任せるが?」
うーん洗脳されてたみたいだし。
「解放していいんじゃない?」
パアッと表情が明るくなる。
「マジか!ありがてえ!ニケの旦那!この恩は一生忘れませんぜ!」
秒で忘れていいよ。
感謝の言葉を言いながらヤモリが組員に連れていかれ・・・
バキンッ!
突如ヤモリが腕を拘束していた手錠の鎖を破壊する。目が真っ赤に光ってるぞ!何らかの暗示が発動したのか!?走り出すヤモリ。僕の持っていたナイフを奪うと朧さんに向かって突進していく。あっ!ヤバ!
けど朧さんなら殺しはしないよね?
朧さんの動きも早い。後ろにあったカタナを掴み抜刀!どうする!?くそ!ヤモリを追うが間に合わない!
ガキイィィィン!
すごい衝撃。ヤモリ死んだか!?
へ!?
朧さんのカタナとヤモリのナイフが宙で止まっている!?どゆことー!?
「姿を現したらどうだ?」
朧さんが言う。誰かいる?
いや僕の鼻には侵入者の気配は・・・
あっ。
「全く、ダメダメね。」
「姉ちゃん!」
現れたのはミコ姉だ!ヤモリの手首を掴み(手首は折れナイフは床に転がっている)朧さんのカタナを防いでいるのは・・・おでんの串、だと!?
朧さんがカタナを引くと同時にヤモリの鳩尾に拳を叩き込むミコ姉。ヤモリが血を吐き床に沈む。殺してないよな?
「もう!気を抜き過ぎよ!さっき洗脳の話ししてたでしょ。これくらい簡単に予想出来るわ。現にこの方(朧氏)は直ぐに動ける姿勢を取っていましたからね!」
だって眠かったんだもん!なんて言えない。
「ちょっ!姉ちゃんいつから居たんだよ!」
「最初からだけど?」
えー!嘘でしょ?
「おでん屋台も?」
「もちろんそばに居ましたよ。お使いの途中なのにのんびり餅巾食べてる場合じゃないでしょ。」
「その串!姉ちゃんだって食べてたんだろ!」
「・・・それが何か?」
くそう!
「相変わらずはんぺん嫌いなのね。美味しいのに。」
はっ!?
「大将との会話も?」
「いぇーいぇー言ってて馬鹿みたいでしたよ?」
ああああああああぁぁぁ!もう何だよ!居るなら居るって言えよ!くそう!くそう!
両手で真っ赤になった顔を覆う。
「くくく、仲の良い姉弟だな。」
朧さんいっそひと思いにコロして下さい。
「あっ!朧様、この度は弟が大変ご迷惑をお掛けしまして・・・申し訳ありません。」
頭を下げる。僕何もしてないんだけどね。
「謝る事は何も無い。全てそいつらが仕組んだことだ。」
そうだよ!もっと言って!
「ですが、ビルをめちゃくちゃに・・・」
それは・・・ホントごめんなさい。
「他にも拠点はある。気にするな。」
かっけー。さすおぼ。
「はあー。そうなのですね。お心遣い感謝いたします。」
ん?顔が赤い。それにこの匂い
「ちょ!姉ちゃんwなに発情して・・・」
バグォン!
ぐはあ!強烈な腹パン。僕じゃなきゃ死んでるぞ!
「何すんだよ!」
ギンッ
ひゃああ!はぁはぁ、
ぐぬぬ。凄い殺気だ。これ以上はやめとこう。
てかさっき殺気放ったの朧さんじゃなくてミコ姉だろ!くそう!
「おー!マジでミコじゃねえか!元気だったかよ!」
キースくんが上の階から降りてくる。
片膝を付き頭を下げるミコ姉。
「お久しぶりですキース様。」
「ははっ、相変わらず固ぇな。俺はもう八柱でも何でも無いっつったろ?ただのインフェルノのヘッドだかんよ。」
それって立派な?肩書きじゃね?
キースくんはキプロスを卒業?退学?した後インフェルノに就職。あっという間に頂点まで登り詰めてしまったのだ。
「いえ、そう言うわけには・・・」
「なら命令してやるよ。立って話せ。」
「は、はあ。分かりました。」
「生徒会長さんが、こんなとこで何してんだ?」
「あっ、実はオフィーリア様からお使いを頼まれまして、その途中でニケが連れてかれたから心配で・・・」
くっ。言ってる事は間違いないんだろうが、何かムカつく。
「こいつ危なっかしいもんなあ。分かるぜ。」
えー。
「それで、今からシャンテルのコロシアムまで行くんです。」
「でもニケはストラス狩りに行くんだろ?」
言い方!姉ちゃんの前でやめて!
「うん、その件なんだけどどうやらストラスのやつもシャンテルにいるみたいなんだ。」
匂いはアビスとシャンテルを繋ぐゲートで途絶えている。
「・・・嫌な予感がするわね。」
姉ちゃんに同意。
「おいおい!何か面白そうじゃねえか!俺も行くぜ。朧!お前も来るよな?」
遊びに行くんじゃないからね!
「俺は忙しいんだ。」
元八柱の誘いをあっさり断った!さすおぼ!
「キース様!一緒に来ていただければとても助かるのですが、これは私とニケに与えられた任務・・・いえ試練!ですので、今回は御遠慮させていただきます。」
おお、姉ちゃんも断った。キースくんの事苦手っぽいな。
「んだよ、ツレねえなあ。まぁいいや。どうなったか後で教えてくれよ。」
「はい、必ずニケに報告させますので、お待ち下さい。」
僕が報告するんだ・・・。
「それでは私たちはこれで失礼いたします。行くよニケ。」
会釈をして部屋を出るミコ姉。
「ああ、気ぃ付けてな。」
机に座り手を振るキースくん。
「うん、またね。」
ミコ姉に続いて部屋を出る。
1階へ行くと、あっ
大将が椅子に座って酒を飲んでいる。僕がぶちのめした組員たちも元気そうだ。
「可哀想だったから治しといたわよ。先に出てるからね。(念話)」
「うん、ありがと。」
「ニケ、もう帰るのか。」
大将が声を掛けてくる。
「ああ、用はすんだからね。」
「お前の姉さんから話は聞いたぜ。色々とすまなかったな。」
いつの間に!?まったく、出来過ぎる姉ってのもどうなのよ?
「別に気にしてないよ。じゃあ、先を急いでるから。」
ドアノブに手をかける。
「また、来いよ。」
!
「・・・ああ。」
「最高に美味い、はんぺん食わせてやっからよw」
ぐすっ。目から熱いモノが・・・いや違う!これはカラシが染みただけなんだ!
「ああ、大将のツラみたいな四角いはんぺん楽しみにしてっからよお。」
湯気の中に笑顔を咲かせる最高のやつを頼むよ。
「はっはっはっ!上等だコノヤロー!」
ふっ。
外に出ると茜色の夕日が差していた。ん?ミコ姉が組員たちに囲まれてる。
「ダチがあんたに助けて貰ったって言っててよ、ありがとな!」
「これ半分女神様だろ。」
「あんたみたいな凄腕のヒーラー見た事ねえわ!ウチのチームに入ってくれよ!」
「良い匂い・・・ねえ!使ってるトリートメントのメーカー教えて!」
「はぁはぁ、いいよね?いいよね!」
「姉ちゃん、おまたせ。」
「遅い!!」
ヒェッ 怖っ
顔が赤い。照れてんのか?
腕を強く捕まれ強制転移。
─── アビスの街 泉の広場 シャンテルへ繋がるゲート前 ───
「書類届けるだけなのに夜になっちゃったじゃない!どうしてくれるのよ!」
「先に行っててって言ったじゃん。」
「あんた一人だと何しでかすか分からないじゃない!」
信用されてない。でもステルス使って見張るってどうなの?怖いんですけど。
「オフィーリア様が心配してるかも知れないわ。まだ途中だけど報告しなくちゃ・・・」
「あー、さっき言っといたよ。」
「話したの?オフィーリア様と?」
「うん、帰って来るのが遅いから連絡したって言ってたよー。」
頭を抱えてうずくまる姉ちゃん。
「失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した・・・」
ブツブツ言ってる。怖い。
「大丈夫だって。事情は説明しといたからさ。明日でも良いってさ。」
「NOOOOOOOOOOOOO!!こんな事なら学院に来た華宮の奴ら全員ブッコロしてあんた連れてコロシアム行けば良かったわ!」
僕より姉ちゃんの方がヤバくね?
取り乱した姉ほど恐ろしいモノはない。
「落ち着いてお姉ちゃん。もう今日は遅いから明日ベルちゃん探そう?家に帰ってるかもだし。」
「・・・そうね。」
こんなテンション下がった姉はいつ以来だ?
「とりあえずこの辺で宿でも」
ピンポンパンポーン♪
ん?
「迷子のお知らせです。泉の広場でキプロス学院の制服を着た女の子のミコちゃんと男の子のニケくんが迷子になっています。」
えっ?何これ。僕たちの事?
「見かけた方はシャンテル、コロシアム受付まで案内をお願いします。繰り返します・・・」
ざわ…ざわ…
広場にいる人たちからの視線とヒソヒソ声。
「姉ちゃん今の」
「行くよ!」
グイッ
腕を強く捕まれる。またかよ!てか、なんつう馬鹿力!腕折れちゃう!折れちゃうからあ!
ゲートを潜りシャンテルへ
─── シャンテル中央広場 ゲート前 ───
「舐めやがって!!クソ野郎があああ!アタシを舐めたらどうなるか思い知らせてやる!楽に死ねると思うなよ!」
暴言と殺意を撒き散らすミコ姉。目が完全にイッちやってるよ。怖っ!これ半分いや完全に魔王だろ。
「姉ちゃん!落ちつけって!ヤバイから!」
そばを歩いていた人たちが殺気を受けバタバタ倒れる。ちょっ!
Dimension Isolation!
姉の周囲を空間事隔離する。
このDimensionてやつマジで便利。最近必要に迫られて使ってるけど癖になりそう。全能感ヤバイね。
アル姉が好んで使ってたのも分かるわ。
ベンチに座らせる。しずまれーしずまれー。
「あっ、ニケ、ごめん。今頭の中真っ赤になってた。」
怖いよ・・・。
「さっきの放送ストラスの仕業かなあ。」
「さあね。私はベルだと思うけど。」
苦々しい顔してる。怒りは収まってはいないらしい。
街灯に照らされた道を歩く。
なぜ転移しないかと言うとシャンテルには全域に結界が張り巡らさていて不用意に転移や魔力を使うと街を守る兵士(ローズマリーの召喚兵)がやってくるのだ。
さっきも人が倒れた事で兵士が集まって来たが気配を絶つ事でスルー出来た。
「ベルはコロシアムにいるのよねえ?」
「うん、匂いに変化はないよ。」
ビュオ
風に飛ばされた紙が体に当たる。ん?
コロシアムの宣伝のビラか?
なになに
「最凶キプロス亜流々連合 vs SランクパーティDFL 夢の対決・・・」
なんじゃこりゃ。でかでかと僕の写真が載ってますけど?聞いてないよー!
「全く。ベルの奴やってくれるわね。お使いがなければ帰ってたのに。」
「本人に一言の連絡も無く勝手に戦う事になってるのおかしくない?」
「ふふふ、別にそれくらい良いじゃない。連合売り込むチャンスって考えればさ。」
誰に売り込むの?裏社会の人たち?
「でも、DFLって9千層の魔物と戦ってたんでしょ?僕に勝てるかな・・・」
「あら、怖気付いちゃったの?私が代わりに戦おうか?」
ニヤついている。
「意地悪だなあ。やってやんよ!」
さっき召喚兵見たけどそんなに圧力感じなかったんだよな。Dimension発動させてたからか?何かイケそうな気がする。
コロシアムが近付くにつれ人が多くなって来た。中に入れない人も大勢いるな。
そりゃそうだ通常6000~50000ギル(くらいだっけ?)する観戦料が無料だからね。中は凄い事になってそう。
当然賭けもやっていて外にある掲示板にオッズが表示されている。
DFL 1.2
亜流々連合 82
82!?
「ぷぷぷ。あははは。」
姉に笑われる。くそう!
「お姉ちゃん僕に賭けて!絶対勝つから!」
大金稼がせてやんよ。
「いやよ。私ギャンブルって嫌いなの。」
何だよブー。
それにしてもこれチーム戦なの?連合のみんな誰も知らないと思うんだけど。
コロシアムの受付へ向かう。むちゃくちゃ混んでるぞ。スタッフに名前を言うと困ったような顔をして奥へ引っ込んだ。帽子かぶってるから分からなかったのかな?
少ししてスタッフが戻ってくる。
「大変お待たせいたしました!ニケ様でございますね?控え室へご案内いたしますので此方へ!」
急に丁寧な対応に変わったぞ。
職員用通路を通り控え室へ。中へ入るとスーツを来た小太りのおじさんが一人椅子に腰掛けている。
「やあ、初めまして。私はこのコロシアムの支配人でローレンスと言う者だ。君がニケ君だね。そちらのお嬢さんは?」
「姉のミコと申します。」
握手をする。
「君が亜流々連合の総長さん?ホントに?」
「ああ、そうだよ。」
見えない?このほと走るオーラが!ドャァ
・・・・・・見えないか。
「それではこの書類に目を通して頂きサインを。」
何だか難しい字が並んでる。
「姉ちゃんこれ何?(念話)」
「誓約書よ。あんたが死んでもこのオッサンには何の責任もないよって言う事が書いてあるのよ。下にサインする所あるでしょ?」
ああ、名前書くのね。
ニケ・ディライトと。
「あんたそれ止めな。魔王様の名前でしょ?絶対に使っちゃダメよ。」
「えー、カッコイイじゃん!」
「あ?」
ヒェッ
秒で塗りつぶす。
「では、改めまして本日は参加して頂き誠にありがとうございます。試合のルールなのですが3対3の団体戦となっております。」
3人!?こっちは1人なんだけど・・・
「人が集まらなければ1対3でもかまいません。」
それなら大丈夫か?
「降参か戦闘不能になるまで戦っていただきます。武器やアイテムの使用は問題ありません。」
「相手を殺しちゃったら?」
「戦闘不能扱いとなります。」
有りなんだ。せーやく書に書いてあるのかな。読んでないから知らないけど。
「この申請書に連合の参加者3名の名前を書いて提出してください。試合開始30分前までにお願いします。」
後20分で決めないといけないのか。っていっても僕しかいないけど。うーん。
チラッ
「何よ?」
「実は少し前から連合の子たちからの連絡が凄くてさあ。出たい出たいって。」
シャンテルにいる生徒からあっという間に情報が広まったっぽい。
「出してあげればいいじゃない。」
「弱い子だしたら逆に足でまといになって、負けちゃうよ!僕以外ザコしかいないんだから!」
マジで使えないんだから!気のいいヤツらだけど戦闘はマジで使えないんだから!!
「あんたいつからそんな傲慢になったの?」
「だって・・・」
「格上のチームと対戦なんて経験値上げる良い機会じゃない。負けてもいいんだから、あんたが目を掛けてる子でも出してあげたら?」
「いないよ、そんな子・・・」
1人でヤルかぁ。何とかなるっしょ。
「そうそう、ベルゼビュート様からの手紙を預かっていました。どうぞ。」
ローレンスさんから手紙を渡される。姉ちゃんの眉間にシワが。
手紙にはただ一言。
「試合に勝てたら会ってあげる♥だってさ。」
ドオオン
ビクッ
姉ちゃんの拳が壁にめり込んでる。
「失礼。虫がいたもので。」
ベルちゃんにおちょくられてイラついてるなあ。
「ニケ、今連合に副総長はいないのよね?」
「う、うん、特に活動してるわけじゃないから必要無いかなって。」
「今から私が副総長よ。」
「ふぁっ!?」
ちょ!何言ってんの!?
「姉ちゃん落ちついて、って・・・」
念話してる?
「よし!私の友達も一人連合に入れるわ。ルナって子よ。」
はあ!?何勝手に!・・・てか、友達いたんだ。
「ち。ちょっと待ってよ!勝手に決めないでよ!」
「感謝しなさい。これで勝ちは確定したわ。念の為状況次第では銀狼に戻る事も許可します。思いっきり殺りなさい!」
この人さっきまで負けても良いとか言ってなかった!?
「そんなに強い子が学院に居たんだ。早く紹介してくれれば良かったのに。」
「生徒じゃないから。ローズマリー様の屋敷にいる竜人よ。たまに戦闘訓練してるけど腕は保証するわ。」
生徒じゃないじゃん!
「姉ちゃんキプロス学院の生徒じゃなきゃダメだって!」
「馬鹿ね。連合に入れてしまえば問題ないわ。」
あるよ!チラリと支配人を見る。
「構いませんよ。連合に所属する方ならどなたでも。」
いいのかよ!くっ。このおっさんは試合が盛り上がれば何でもいいんだろうね。何だかなあ。
ミコ姉とルナさんの名前を書く。
「相手のチームは誰が出るのですか?」
「申し訳ありませんが教える事は・・・」
「誰が・・・出るのですか?」
ゴゴゴゴゴ
威圧してる。もうやりたい放題だな。
「ほ、本来は規則で教える事は出来ないのですが、こ、今回は相手チームが公表しているので良いでしょう。こちらの方々です。」
折れちゃったよ。ごめんなさい。
出場選手の名前と顔が載っている用紙を姉に渡す。
「えっ!?嘘でしょ!?あいつ、マジで腹立つわ!」
バァンと机に叩きつける。
姉ちゃんが動揺してる。
載っている名前は・・・