05話 はじめてのお使い3
門を出て歩いていると
「総長、今招集かけて30人程度ですが集まりそうです。」
トッコー隊長のレニーが念話してくる。
「あっ?要らねえよ。今日は休みだぞ?招集なんてかけんじゃねえよ。」
みんなの楽しい休日が台無しだよ。
「し、しかし、華宮との戦争となれば兵隊は多い方が・・・」
僕一人でも大丈夫じゃないかな。
「戦争?・・・ならねーよ多分。朧さんとは何度か会った事あるけど、そう簡単に動くとは思えねえ。仁義に厚い人だからよ。」
「・・・ほ、他の組織が絵図を書いているのかも知れません。」
「あー、それはあるかもな。でもまぁ、朧さんと話してからだな。考えるのは。てか戦争なんてしてる場合じゃねえし、さっさと片付けねえと殺されるわ。」
「へっ?殺されるって誰に?」
姉ちゃんに。
「いいから、俺に任せとけ。お前早く帰れよ。店の手伝いあんだろ?」
ここのロブスター美味しいんだよね。
「店よりこっちの方が大事にキまってんじゃないっすか!」
知らないよ。
「そうかよ、分かったから帰れよ。」
「何でそんな冷たいんすか!」
・・・・・・。
「なんかあったら呼ぶから早やく行けよ。」
「絶対すよ!・・・あっ!そうだ!俺野良犬に変身して一緒にブベラッ!」
血飛沫を残し消えていった。
「あえっ、お前の隣に居た奴何処へ行った!?まさか応援呼びに行ったんじゃ!?」見えなかった?転移したと思われてる。
「実家のお店手伝いに行ったよ。」
気絶してないといいけど。
「ははっ、この状況でそんなハッタリ言えるなんて根性あるじゃねえか。だが仲間は呼ばせねえぜ!広範囲に認識阻害の防壁が張ってあるからな、アジトを見つけるのは不可能だ。」
ふうん。そうなんだ。すごいね。
「分かったからさっさと転移してくんね?こっちは尻尾いや尻に火がついてんだからよ。」
「ああん?てめえ、話聞いて無かったのか?認識阻害の防壁あるから転移なんて出来ねえっつったろ。」
えっ?お前らも?嘘だよね?
「この先にある地下道を通っていく。そこにいる術者を介して結界の中に入るからな。お前にはここから目隠しをして貰う。」
アジトへのルートがバレないようにってか。
「はぁー。お前ら下っ端だろ。何も知らないんだな。面倒だから先に行ってるぞ。」
アホ面を横目に転移。
あの程度で防壁とかどうなの?ベルちゃんに笑われるぞ。
華宮のアジト(廃ビル)の近くに移動。ここに来るのはソーチョーになってから何回目だろ?行きつけ?の屋台に入る。
急がば回れ。屋台のおやっさんから情報を仕入れおこう。決しておでんが食べたいわけではないのだ!
ガラガラ
「うぇーい!大将、俺様参上。今日のはんぺん調子どお?Yeah!!」
「おお、ニコじゃねえか。んだよ、相変わらずキまってんなあ。はんぺん?良く染みてんぞ。今日もカシラんとこ遊びに来たのか?」
このおじさんもコーセーインらしい。
僕は朧さんの甥っ子と言う設定。
変装(帽子を横ちょに被り。ダボっとした服を着る。)もバッチリだ。Yeah!
「んー?華宮潰しにちょっとね。」
おでん屋で行われる高度な情報戦。
「は?すげえじゃん。て、馬鹿。冗談はここだけにしとけよ。」
冗談ですめばいいけど。
実は連合のソーチョーやってます、なんて言ったら驚くかな。
「オーケー、じゃあマスター、もち巾と、大根、たまご、ちくわを二つづつだ。」
「今日もはんぺん頼まねえのかよw」
ふふっ、はんぺんはあんまし好きじゃないからマジ勘弁!あーい!
「おまち!ウィンナーはサービスだ。」
ナイスだマスター!俺はwinner!yeah!
めっちゃウマそう!いただきます
「もぐもぐ。大将、何だか皆んなバタバタしてっけど何かあったの?もぐもぐ」
しらばっくれて聞いてみる。
「ああ、なんでもよう、キプロス仕切ってる総長が乗り込んで来るって話しだぜ。」
それ、ぼくだよ!うぇい。
「もぐもぐ、何で?テイ戦キョーテーじゃなかったの?」
「うちらの者と院生が揉めてこっちサイドに怪我人が出ちまったからなあ。」
毛ガニ食べたい。ケガ人出たの?
「学生にやられるとか、もぐもぐ、マジヤバくない?」
「ダセエわなぁ。けどよお、この商売舐められたら仕舞いだからよお。」
おでん屋が?ちがうか。
「きっちりケジメ付けねえとな・・・」
大将が神妙な顔で呟く。
「大変だね。大将もおでん煮てる場合じゃないんじゃない?」
煮えてるのはハラワタかな?それは食べたくないな。
「バカヤロー、俺ぁ戦闘はからきしだかんよぉ。こうして出来る事をしてんのさ。よく言うだろ?腹が減っては」
「「戦は出来ない!」」
いえええええええ!!ハイタッチ。
「お前もこれ食べたら家帰った方がいいぞ。」
「うん、そうする。もぐもぐ、大将も外出ない方がいいよ。」
嘘ついてごめん。でも嘘みたいにウマーだねこのおでん。いぇー!
いつもよりチップを多めに。迷惑掛けたらごめんなさい。
「ごっそさん!大将、また来るぜ。そん時まで煮込んでてくれYO!はんぺん!」
「一回も頼んだ事ねえじゃねえか!wまたな。」
大した事聞けなかったな。おでん食べに来ただけだし、まいっか。
屋台をでてアジトの廃ビルへ。
タチの悪そうなヤカラがわらわらと・・・。
ぽわん。
変装を解く。
近くに居た奴が直ぐに気付く。
「お、おい。こいつ、ニケじゃねえのか?」
「間違いねえ!この髪と眼の色。白銀のニケだ!」
「出たぞ!囲め!」
「一人でどうやって来たんだ?キプロスへ行った奴らは?」
「知るか!とにかくコイツをヤれば幹部の地位は確定だ!ぜってー逃すなよ!」
逃す?誰が逃げるの?
ギィン 威圧
バタバタ
半分くらい倒れただけか。さすがに本部当番の奴らはやるね。
「くっ、てめえ!お前ら気を抜くなよ。全力でやれ!」
襲いかかってくる。が
ドゴォォ
バキッ
ドォォン
秒で沈める
「お前ら弱すぎホントに華宮?俺のちっこい火球一発で散るか普通?Yeah!」
「・・・お前、ニコか?」
大将か。外出るなって言っただろ。
「ニコ?誰だよ?俺はキプロス亜流々連合四代目総長ニケ・ディライトだぜ。」
─── 華宮アジト 廃ビル5階 ───
「なあ、マジでキプロスのガキ共ウチのシマ狙ってるのか?」
「なわけねえだろ。バックのインフェルノが焚き付けてるに決まってる。」
「協定破ってまでか?」
「その協定だってよう何年前の話しだ?人も状況も変わってるってのに仲良くなんて出来るかよ。」
「シスの宣言でどいつもこいつも浮き足だってやがる。」
「BOSSの考えてる事は深くて分かんないわね。」
バァン!
扉を勢いよく開ける。
「よお、邪魔するぜ。幹部様が仲良くお喋りとは余裕あるじゃねえか。」
「き、キースさん。」
朧はいないか。
「八柱の一人。焔帝キースだ。」
「何でここに居るんだ?」
「お前知らないのかよあいつは・・・」
ヒソヒソ話している。
「八柱とかもう無いからよ。シスが言ってたろ?」
「ちっとどいてくんね。」
幹部の一人を退かし椅子に座る。足を机に投げ出し書類に目を通す。
机の上に置いてある書類を見る。ニケの情報が載っている。
ははは、暴れてるみてえだな。
「オフィーリアんとこの小狼が良く成長したもんだ。」
「キースさん、あんたキプロスの三代目だろ?今は朧のカシラと盃交わしたみてえだがよ、今回の件どう落とし前付けるつもりだ?」
「知るかよ。俺はもう卒業したんだ。あとは現役に任せるわ。」
「じゃあ、何しに来たんだよ!部外者は引っ込んでてくれねえか?」
「後輩の成長を見に来ただけだよ。」
「ここまで来れると?」
その時
ドオオオオオン
魔力でガチガチに補強された建物が振動する。
「俺が(連合を)託した男だぜ?余裕だろ。」
─── 廃ビル1階 ───
「さっき言ってた事マジだったのかよ。華宮を潰すって・・・」
大将に睨まれるのは嫌な感じだ。
「何言ってんだ?あんたと会うのは初めてなんだが?」
「ふっ、そう言うことかよ。それなら遠慮なくヤれるな。」
大将の体を魔力が澱みなく流れる。
戦闘員じゃねえとか言ってたけど、どこがだよ。大将から仲間に呪文が飛ぶ。
付与術士か。
仲間のステータスを上げたり敵の妨害する戦場の司令塔だ。らしいクラス選びするじゃん。客の欲しいネタを熟知してらぁ。
バフやデバフがバンバン飛びかう。
効かないけどさ。
プールの水をコップですくうみたいなものだ。意味が無い。
「いい腕だ。そのまま励むと良いよ。」
「くそったれ!底が見えねえ!」
ドンッ
「ガハッ」
優しく意識を刈り取って
「痛ってえええ!」
ありゃ意外と頑丈(TOUGH)なのね。
ドンッ
「ぐふぅ。」
バタリ
「眠れ、歴戦の戦士よ・・・はんぺんと共に。」
RIP。
その他のザコも優しく?倒し
2階への階段を上がる。
そういえばアル姉が言ってたっけ。
上の階に行けば行くほど強い敵が出て来るのは異世界の常識なんだよ!って。
シボーユーギの法則だっけ?
カッ!
ドゴオオオオオオン!!
トラップか。フロア全体が爆発の衝撃で振動する。爆風と熱波でガラスは瞬時に溶解し消える。この程度じゃ僕のガード、魔装?だっけ?は貫けないよ。
逆にこのビルごと吹き飛ばしてやろうかな。でもそれこそキョーテー違反じゃない?地道に登って・・・
ドゴオオオオオオン
うぜぇ。あれで見てみるか。
ディメンション。
あらー、フロア一面トラップとかどんだけー。あの奥の隠し部屋になってるな。そこやに3人。はーん、魔力を遮断の障壁かよいやらしい。
ドォン!
壁をコブシでブチ抜く。
「ひいいいい!」
「きゃあああああ!」
「お願い!乱暴しないで!まだ私男性とお付き合いした事が・・・あら、君可愛い顔してるのね。」
女性が3人。
「俺は上に行きたいだけだから。邪魔すんなよ?」
「乱暴しないの?」
「するわけねえだろ。」
「しなさいよ!私たちに魅力が無いっていうの!?」
トラップ同様うぜぇ。
「ちょっとケイティあんたに魅力無いのはわかるけど私たちを巻きこまないでくれる?」
「はあ!?てめぇ今何つった?」
「BBAがイキってんじゃねえっつったんだよ!男と付き合った事が無い?ビッ〇のヤリ〇〇が!てめぇ虚言癖まであんのかよ!」
髪を掴んで罵りあっている。
「ちょっとやめてよ!敵の前で何してんの!」
ホントだよ。今のうちに上に行こう。
「あんた何スルーしてるの!?あんたが原因なんだから止めてよ。」
はいよ。威圧。強め
バタバタバタッ ブクブク
階段を上がり3階へ。
22人。メンツを揃えて来たな。外からも入って来てる。マジでビル事イクかあ?
「お前ら下がれ!一人の漢相手にフクロとかだせぇぞ!」
スーツを着たガタイのいい男が近づいてくる。
「シーファだ。」
「ああ、知ってるよ。朧さんの側近だろ?噂は聞いてるぜ。」
一人で敵対組織潰したとか、100を超える刺客を返り討ちにしたとか。朧さんより強いとか・・・。
「噂は噂だ。真実はその目で見極めな。」
構える。雰囲気あるじゃん。よきかな、
「ああ、そうしよう。」
こっちが、構えると同時に突っ込んでくる。
ドガガガガガガガガガガガ!
速い!重い!一撃一撃が命を刈り取りに来てる。シーファってオーガの血が入ってるんだっけ?すげえ突きだな。正面から受けるとマズイか。受け流す受け流す受け流す。
流した衝撃波がギャラリーを襲うが心配は無い。
「既に張っていたか。やるな。別に当たっても死にはしないだろ。」
いや死ぬね。少し本気を見せてやる。
ビュオッ
顔の真横を丸太の様な腕が凄まじい魔力をまとい横切る。それに合わせシーファの顔面に拳を打ち込む。
ズガンッ
クロスカウンター。ヒットした瞬間空間が歪む程の衝撃でフロアが激しく振動。食らったシーファは吹き飛び障壁を破り仲間に突っ込む。死んでは・・・いないな。
流れ弾?を食らい倒れた奴の脇を通り抜ける。
立っている者も数人居るが襲っては来ない。恐れをなして震えてる。
4階。通路を抜け扉を開ける。
ここでかよ。
掛け軸や刀が飾られた部屋の奥に立つ着物姿の男。
「待っていた。少し話をしようか。」
朧さん・・・。