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31話 キプロス学院の劣等生 代理戦争4



─── アビス郊外 山岳地帯グラウンド・ゼロより南西40キロ地点 ───



side レトリール(エシェロン掃除人)


森の奥、別荘地に逃げ込んだ男と女を4人の男が囲んでいる。

2人は拘束されへたり込んでいる。

素人この人数は過剰だな。



「か、勘弁してくれ!盗むつもりなんてなかったんだ!た、ただ、返すタイミングが見つからなくて、」


バキッ


「ぐはっ!」

部下が男の頬を殴り吹き飛ばす。


「言い訳なんてしなくていいんだよ。もう〇ぬんだからさ。」


「た、頼む!い、いや、お願いひます!どうか命だけは、命だけは!」

スペンサーが命乞いをする。


「私からもお願い!助けてくれたら何でもするから!」

カレンも必死だ。


こいつらはうちの商品を盗み高飛びする直前に売人に見つかり捕まった哀れな豚共だ。



「・・・。何でも?」


「!!う、うん!あんたの言う事何でも聞くよ!だからお願い。」

上目遣いで懇願してくる。


カチャ


カレンの腕を繋いでいた手錠を外す。


「えっ!?あ、ありがとう!」


「じゃあ、そいつ〇して。」

「えっ?」

女を睨む。


「いや、だって、そんな・・・。」


ザッ


拳銃を目の前に投げつける。


「引き金を引くだけだ。」


「・・・。」


「か、カレン止めろ。止めてくれ!俺をやったら後悔するぞ。なぁ、」


「・・・まれ、よ。」


「へ?」


「黙れよ!クソ野郎!今こうなってるのはてめぇのせいじゃねえか!私を巻き込むんじゃねえよ!」


「ま、待て!そもそも最初に話を持ち掛けたのは・・・」


「っるせえ!〇ねええええ!」


パンッパンッパンッパンッパンッ・・・

カチッカチッカチッ


「はぁ、はぁ、はぁ、」

へたり込む女。


「はぁ、はぁ、こ、これで、助けてくれるのよね?」


カチリ


「えっ、」


「ああ、この地獄から解放してやるよ。」


パンッパンッ


ドサッ


「はははは!またこの展開か!賭けにならねえよ。」

「追い詰められた時に本性が分かるな。」

部下たちが笑っている。いつもの事だ。


イヤホンから声が流れる。

「お疲れ様。今のは悲劇?それとも喜劇?」


「ただの茶番かと。」


「クククッ、すまないな。そんなモノに付き合わせてしまって。」


「いえ、これも仕事ですので。」


「そうか、それじゃあ、フィナーレまできっちり頼むよ。それと、すまないがもう1つ頼みたい案件があるんだが。」


「承知しました。戻り次第顔を出します、ボス。」

「悪いな。」

通話が切れる。また厄介事か。今回のような楽な仕事ならいいんだが。

いや、それはそれで腕がなまるか。


「ブツを回収しろ。」


部下が車の中からブリーフケースに入った商品を回収する。よし。後は2人を灰にしたら業務完了だ。


カチッ


!!?


その場から瞬時に離れる。

気配を消し木の影に隠れ様子を伺う。部下たちも同じ様に姿を消している。


女?

まるで気配に気づかなかった。


死んだカレンの側に立ち拳銃を眺める女。


「おもちゃ?」


部下たちは銃を構えている。

見られていた?どうする?ヤるか?だがバックに組織がいた場合・・・


「はい、アビスを中心に結界が張られています。いえ、私では・・・申し訳ございません。」

女が何やら独り言を言っている。


ドンッ


!!?


男が現れる。


いや、それより・・・

何だあの魔力は・・・


『れ、レトさん!あいつは!?』

『まだ動くな、様子を見る。』


「我らの地に聖結界か。天使が悪魔を守る?何の冗談だ。」

「システィーナ様はこの事を?」

「把握しているだろうが動かんよ。むしろ楽しんでいそうだ。」

集音魔法を使い、声を拾う。セイ結界?よく分からないが、どうやら俺たちには興味が無い様だ。

ふぅ。


今、俺は安堵したのか?


ははっ、こんな事いつ以来だ。


『あの化け物は恐らく他階層のフロアボスだ。気配を絶ちつつ、離脱する。』

『り、了解!』

部下たちも一目で理解しただろう。あの異様な魔力に。


「これから如何致しますか?」

女が男に指示を仰ぐ。

「そうだな。」

右手を前にかざし・・・


パアアアアアアアアン!!


何だ!?今一瞬壁の様なモノが現れ砕け散ったような・・・。


「この世界も随分様子が変わった様だ。見物がてら術者に挨拶しに行く。付き従えマルグリッド。」

「御意。」

歩き出す2人。


ボスに連絡しなくては、一刻も早くアビスから離れて、



バシュッ



鮮血と共に部下たちの頭が宙へ舞い上がる。


俺の視界は空から地面へ変わり、赤く染ま・・・



BLACK OUT






─── パークサイドタワー 12F ───


ラングストンVSシャオ



side サロメ


ガガガガガガガガガガガガッ


シャオと魔人、ラッシュは互角・・・魔装で目を強化してやっと追えるレベルの打ち合いが続く。


「すげぇ、ノーガードの打ち合いかよ。」

シロッコが感嘆の声を上げる。お互い魔装の密度が高いからかそこまでダメージは入っていないように見える。


ズガァン!


シャオが吹き飛ばされ壁(結界障壁)に叩き付けられた。

「ぐはっ!」


「シャオ!」


一瞬で魔人化したラングストンには炎がまとわりつき鋭い覇気が部屋中に流れて、ぐっ、ヤバッ。




何だアレは・・・フロアボスみたいな圧力。さっきまでとはまるで別物の魔力。


「シロッコ!結界を、」

ドサッ

シロッコが口から泡を噴いて倒れた。チッ。

「ライオンハート。」

気付け魔法を掛けるがシロッコは気絶したままだ。


「てめぇ!よくもシャオを!」

ダガーを召喚。魔力を通し構える。

「ぶっ〇す!」


「ほぉ、澱みの無い良い魔力だ。この姿を前に怯むどころか吠えるとはな。気に入ったぜ。どうだ俺の女にならねえか?」

魔人が・・・戯言をほざきやがって。


「何?私とファッ〇したいの?いいよ。その汚ねぇちん〇切って、てめぇのケツにに突っ込んでやるよ!」

ダガーを構える。私じゃ勝てるはずがない、けど、黙ってやられるくらいなら・・・


「はははははっ!笑わすなよサロメ。」

シャオ!


「お前の女、躾がなってないな。」

私がシャオの女!?////


「そんな凶暴な彼女俺にはいねえよ。」

凶暴?イラッ。

シャオの口からは血が流れているが深刻なダメージでは無さそうだ。


「そうか、それじゃあお前を倒して俺のものにしよう。」

「てめぇにあのじゃじゃ馬乗りこなせんのか?」

「夜の乗馬は得意なんだ。」

「ハハっ、俺もだ。」

笑い合う二人。いや、何も面白くねえよ?クソっタレ!


「シャオ!早くそいつ倒して!」

「ああ、悪ぃ、そうだな。」



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


ビルが激しく振動している。

向こう(修羅たち)の影響か?結界の影響で外部の魔力が遮断されている為様子は分からない。


ラングストンが拳を握ると紅蓮の炎が吹き上がる。

武器エモノがあるなら使うといい。」


「いいのか?〇し合いになるけど。」

「ハナからそのつもりだ。」

「・・・備前国貞。」

シャオが刀を召喚する。あいつ、刀を使うの?見た事ないけど。

!?刀を持った途端雰囲気が変わる。ヤバッ、初めて見る顔だ。


「その刀、相当な業物の様だが俺には通用せんよ。」

ゴウッ

ラングストンの体から魔力が湧き上がる。

ヤバい、あの魔装の魔力密度は尋常じゃない。刀や銃が通用するとは思えないが・・・。


「無幻流」


正面に構えた刀から魔力を感じる。シャオの奴とは何度か戦った事あるけど、

うちらとやった時は全然本気じゃなかったのか・・・。

あの刀から漂う魔力、半端ない。


静と動。


ラングストンの荒れ狂う魔力とシャオの澄み切った静かな魔力。ヤバ過ぎて私にはどちらが上かなんて分からない。


ガガガガガガガガガガッ


接近戦!つーか速過ぎて目で追う事すら出来ない。ラングストンは手で捌いてる、のか?


ブシュウウウ!


血飛沫が舞い上がる。

やった!シャオの刀の方が・・・えっ、


「効かねえっつったろ。」

血はシャオの足から流れている。


「速えな。にしてもよ、効かねえっつってる割には丁寧に捌いてたよなあ。」

「・・・。」


「シャオ!」

ポーションを投げる。

が、投げ返される。


「いらね。」

「ちょっ!?カッコつけてる場合かよ!」

「悪ぃか?」ニヤッ

あー、そうだ、アイツはそう言う奴だった。


「勝てよ。負けたらカッコ悪いぞ。」

「ふっ。」


「ハナから回復させるつもりはないがね。」

ラングストンの手に魔力の収束。


「エクスプロード。」


ドドドドドドドドドドドドドドドド

魔力弾の乱れ撃ち!?ヤバッ!魔力障壁!


ドオオオオオオオン


フロアが爆発に包まれ建物が振動する。強力な結界が張ってあるが完全には抑え込めていない。シャオは!?


ガガガガガガガガガガガガガッ


爆音の中、剣と拳が交差する音がする。この爆発ので中やり合ってる!?


ドドドドドドドドドドドドドドドドドド




side ラングストン



面白い!ここまでヤれる奴がいるとはなあ。インフェルノの魔人に匹敵、いや凌駕している。


ガガガガガガガガガガガガガガガガッッ


しかも、コイツ相当場馴れしてやがる。少しずつ俺の攻撃にも対応して来ているし、なにより、


ズパァ


あの刀の切れ味。

右腕を斬られたが浅い傷はすぐ塞がる。


刀に魔力を通してあるな。この魔装甲を容易く抜いて来るとは想定外だ。


ガガガガガガガガガガガガガッ

まだ早くなるのか!?


動きを止めねえと!


「オラァ!」

突きを放つが躱され、


ズァ!


腹を切られた、が、奴の腕を掴む。逃がさねえぞ!口を開けありったけの魔力を集める。

至近距離からの全魔力解放。

消えろ!


スパンッ


は?何だ?


コイツ自分の腕を切り落とし、


「無幻流・・・落花流水。」


ズアアアアアアアアアアア


しまっ、首を!?

マズい!魔力が暴走す・・・


ズドオオオオオオオオオオオン!!


・・・・・・・・・

・・・・・・



視界に床が映る。倒されたのか。

チャッ


刀の先が目の前に・・・

「俺の勝ちだな。」

上から声がする。


「・・・魔人の再生力舐めてねえか?」

身体がバラバラだろうが一瞬で・・・

「ハハッ、これなーんだ?」

奴が摘んでいるのは、赤く光る宝石のような、


「俺の魔核か・・・。」

いつの間に。


「そういう事、もう一度聞く。俺の勝ちだな?」


「・・・ああ、お前の勝ちだ。殺せ。」

命を握られてるんじゃどうしようもない。


コトッ

魔核を目の前に置いた。

・・・。


瞬時に体が再生、治癒される。


「情けを掛けるとは甘い奴だ。今なら俺の方に分があるぜ。」

全快した俺とボロボロ血だらけで左腕の無い男。


「情け?手前ぇの命令で動きたくねえだけだ。それに、」

チャキ

刀を肩に置く。


「何度やっても俺が勝つ。」ニヤッ

・・・こいつ。

何てやつだ。マジで言ってやがる。

・・・。


「そうか・・・、俺の負けだ。」


「あっさり認めんだな。さて、それじゃあ、勝った者に従うってハナシだったよな?」

「ああ。」

下には付けねえ。ボスを裏切るくらいならいっそ、

「ころ・・・」

「この件が片付くまでここで大人しくしとけ。じゃあな。」

は?

「お、おい、それだけか?」

「ああ。」

こいつマジか・・・。


「シャオ!!その怪我じゃ無理だ!治療を!」

「血ぃ止めたし何とかなるだろ?」

「なるかバカ!」

女が慌てて腕を拾いに行く。


「なあ、何であの時てめぇの腕を切った?」

「あん?腕?ああ、あの技はあの体勢じゃ打てなかったからな。あんたの隙を突かせてもらった。」

俺が魔力を収束させたあの一瞬、あの刹那に迷いなく自分の腕を切ったのか。

・・・・・・。

「俺の腕を切れば良かったろ。」

「装甲で固めた腕を切り飛ばせるかは微妙だったからなぁ。なら確実な方選ぶだろ。」


サラッと言うが、そりゃ再生可能な魔神の戦い方だぞ。判断が早過ぎねえか?頭のネジが吹っ飛んでやがる。いや勝利以外見えてないだけか。


「シャオ!じっとしてな!」

女が腕を治癒している。

「歩きながらで頼む。」

「出来るか!ボケ!」


クククッ

「おい、サービスだ。」

ボゥ

最上級治癒魔法を掛け腕を繋げてやる。

「おっ、手が動く!サンキュー!」


「なあ、シャオ。終わったら俺と盃交わさねえか?」

俺は何言ってんだ?


「・・・、いいぜ。また後でな。」ニヤッ



二人は行ってしまった。

シュボッ。

葉巻をゆっくりと回しながら火を付ける。

フーッ。


何で俺はあんな事を・・・。


アレはまだまだ強くなるな。

華宮だったか。インフェルノの傘下の組だと聞いたが、盲点だった。

エシェロンは虎の尾を踏んだようだ。


しかし、ユノ、シャオ、チャム・・・ダリル。

この学院はどうなってやがる。魔人を超える者がこれ程いるとはな。

これを見越してボスは俺らを派遣したのか?

・・・まさかな。


「うぅ。サロメ・・・。」

奴らの仲間がうめいている。

完全に忘れてんじゃねえか!

仲間置いてくなよ。


・・・兄弟盃やめようかな。





─── パークサイドタワー 20F エシェロン 薬局部門 闇サイト統括運営事務所 ───



side ミルコ



ライスからの連絡を受けてセウレツァの魔人を連れて来た。すでに魔人共は侵入者の対処に向かっている・・・さて。

フロアに入ると従業員たちが困惑、疲れきった顔で椅子に座っている。


「みんな聞いてくれ!ランサム攻撃を受けたと言っていたが、どこから侵入された?」

端末の持ち出しは禁止していたはずだ。


「VPN(専用ネットワーク)の脆弱性を突かれたのではないでしょうか?」

いや、ファームウェアのアップデートに抜かりはない。


「おい、感染について心当たりのある奴は言ってくれ。どうせ、直ぐに分かるんだ、怒らないから言ってくれ。」


シーン・・・


「・・・言い辛いのは分かるが故意では無いはずだ。責めたりはしない!チームの一員としてどうか名乗り出てくれ!頼む。」

辛辣な顔を浮かべてみる。


「あ、あの、すみません!」

プログラマーの男が立ち上がる。


「じ、実は先日ノートPCを自宅に持ち帰り仕事をしてしまい・・・ですが!そうでもしないと終わらなくて・・・すみませんでした!」


「そうか、よく名乗り出てくれた。ありがとな。」

肩に手を置くと、男が安堵の表情を浮かべる。


ガッ!

「ぶべらっ!」

容赦なくぶん殴る。


「ここで作業しろっつっただろバカヤロー!てめえの無能を言い訳にすんじゃねえ!」

ドガッドガッ

クソがっ!使えねえ!オラオラ!〇ねや!


「がふっ!」

口から血の泡を吹き倒れる男。


「ミルコさん、落ち着いてくれ!それ以上やったら〇ぬぞ!」


顔を蹴飛ばそうとした足を止める。

確かに今〇すのは得策では無いな。然るべき時然るべき場所で〇んでもらおう。


「それで、データは復旧出来るのか?」


「感染したデータは暗号化されています。暗号化されたデータを完全に復旧させるのは難しいかと・・・」

ウィルスの特定と駆除に成功し、データの復旧を試みたとしても感染前の状態に復元するのは厳しいか。

「それに、攻撃者がマルウェアを仕込んでいないか、データが改変されていないか、詳細に分析し調査しないといけないんですが、困難な作業の為、時間を要します。」


「要するにお手上げって事か?」

「は、はい・・・。」


バキッ!

伸びている男をもう一度殴る。


データには企業秘密やら薬局の顧客情報が入ってる。あれが流出したら・・・。嫌な汗が背中を伝う。

「やってくれたなぁ。どこのどいつか知らないがこの代償は高くつくぜ。」


ドドドドドドドドドドドドドドドド


ビルが激しく揺れている。多重結界を超えて魔力の波動を感じる。やはり魔人の力は本物だ。あいつらから連絡が入り次第離脱しなくては。


「どうします?ボスに報告しますか?」

「アホ、もう報告済だ。」

既に念話でのやり取りを続けている。


『ボス、申し訳ありませんでした。この失態の穴埋めは必ず・・・』

形だけでも謝罪しておくか。


『そう気にするな、ミルコ。お前には期待しているからな。』

だよな。

『ハッ!ご期待に答えられるよう精進いたします!』

稼ぎ頭の俺を切れるわけ無いわな。


『事業は一時凍結だ。・・・ミルコ。犯人を探しだして始末しろ。』

『・・・承知しました。』

念話が切れる。


「ボスの命令だ!撤収!直ちにマニュアル通りに行動しろ!」

ライスに指揮を頼むと奥の部屋へ向かう。金庫部屋に張った結界を解き中へ入る。

バカでかい金庫の前に立ち指紋、網膜認証を受けコードを入力する。


「ピー。ミルコ・ナーダムの入室を許可。」

音声が流れ扉が開く。


パァァ

黄金の光が溢れ・・・


やはり金は良い。この輝きが俺のテンションを、モチベを上げてくれる。何度でもやり直せるってな。


ゴゴゴ・・・


長く続いていたビルの揺れが収まった?

侵入者を始末したようだな。こちらも急ごう。


インフィニティバッグに書類やデータ、財宝を入れていく。次の拠点に移るまでしばしのお別れだ。宝石にキスをして大事にしまう。

よし、セーフハウスに向かおう。





─── パークサイドタワー 18F ───



side サロメ


ポーン


EVが18Fに着く。修羅たちは無事なのか?


「20Fだろ?奴らの拠点は。」

「バカ!修羅たちと合流しねえと!」

「何だ?心配なのか?」

「はぁ!?あ、当たり前だろ!仲間が心配じゃないのか!」

「相手による、かな。」


EVを出て気配のする部屋へ向かう。

「相手は魔人だぞ!それに気配は3つあった!」

いくら修羅でも


ヴィーン


「修羅!」


「ん?なんだサロメか。」

!!?


床に倒れているのは3人の魔人。

白目を剥いているが、一応生きてる?のか。


「あ、え、」

言葉が出ない。


「わかるわ。その気持ち。私たちと一緒よ。」

カペルが肩をすくめる。


「だから言ったろ。心配ねえって。」


グッパンパンッグッ


シャオとハンドシェイクする修羅。


「よぉ、楽しめたかよ大将。」

「んー、イマイチ。」

「ははっ、獲物(刀)使ってねえもんな。」

「ハンディ付けたんだがな。アタリ引いたのはお前の方だったな。」

「ああ、結構ヤバかったわ。腕持ってかれたしな。」

てめえで切ったんだろ!

「マジかー。いいじゃん。」

何が?


てか何談笑してんだよ。

「うぅ。」

ダルトワが涙目で震えている。それが普通のリアクションだよ。


「そんじゃあ、ラスボス狩りに行くかぁ。」

「もう転移して逃げてんじゃないの?」

私もカペルと同意見だわ。


「問題無い。手は打ってある。」ニヤッ





─── パークサイドタワー 向かいの高層マンション屋上 ───



side テレシア



ビュオオオオオオ


『障壁は問題なく機能してる。3時間は何人たりとも転移不可能よ。』

外からの転移は可能だけどね。ホント面倒な注文、そんなに魔人と戦いたかったのかしら。


『サンキュー、いつも悪いね、バイトなんて頼んで。』

『報酬1億なら喜んで引き受けるわ。』

『金はいつもの口座に振り込んでおけばいいんだろ?』

『ええ、それにしても最近の学生はお金持ちなのね。親のお金?』

『はあ?金なんて持ってねえよ。』

ん?

『え、今回の報酬は?』

『ああ、それは今から回収するからよ。』

今から?

『えっ、待って、1億よ。大丈夫なの?』

『大丈夫じゃね?よゆーよゆー。』

何で疑問系?えっ、えっ、


『終わったら連絡すっからまた家まで送ってね。じゃあまた。』

『えっ、ちょっと、ま、』

プツッ


えっ、マジ?


あのガキ、バックレたら組に乗り込んで・・・


!!?

何この気配


かなりの距離だが肌にビンビン感じる邪悪な気配。


パアアアアアアアアン!!



「!?」

今のって・・・

街の光に照らされた空を見る。

・・・・・・


『奴が現れた。そう・・・もちろん、あの女は気づいてるわ、術者だし当然ね。はぁ?どう動くかなんて私に分かるわけないでしょ。ええ、何事もなければいいけど・・・有り得ないわね。・・・上に報告するから。また連絡する。』


このタイミングで動くとは予想外だったけど・・・始まるのね。

はぁ、結構楽しかったんだけどな。ここでの生活。

・・・・・・。

タクシーは別の子に頼んでね坊ちゃん。Wink


転移。





─── パークサイドタワー 20F ───



side ミルコ



「ミルコさん!転移出来ない!一体どうなってるんです!?」


部屋に入ったとたんライスと従業員が口々に問いかけてくる。

窓から外を見る。ベルコアの夜景が宝石の様に広がっている。

目に魔力を込めると、ビルを覆う結界が赤く揺らめいている。


「クソッ!転移阻害の結界だ!いつの間に・・・ビルから出てあの結界を超えないと転移は出来ないぞ。」


結界の兆候なんてまるで感じなかった。

この術者はビル一棟覆う規模の結界を一瞬で構築したと言うのか。

修羅一家の仲間が・・・まさかインフェルノ・・・

「そ、それじゃあ早く外へ行こう!」

組員たちが一斉にEVへ向かって早足で動き出す。

「ま、待て!魔人からの連絡がまだ、」

ライスが声を掛けるが止まる気配はない。


丁度その時


ポーン


EVの扉が開く。


ガガガガガガガガガガガガガガガガッ

中から銃の乱射だと!?

あいつらやられたのか!?


「ぎゃあああああああ!」

「俺の足ぃぃ!」

「やめ、ああああああああ!」

逃げ惑う組員が容赦なく撃ち〇される。


「ミルコさん!」

咄嗟に壁際に隠れたライスが叫ぶ。


どうするここで戦うか?

いや魔人5人がやられたんだ、俺1人じゃ勝ち目は無いだろう。くっ。


ピンッ


スッ


グレネードの安全ピンを抜きEVに向かって投げる。


カッ!

ドオオオオオオオン!


『ライス!非常扉へ向かって走れ!脱出する!』

『り、りょうか、ぐああ!』

『ライス!?』

後ろからライスの絶叫が、迷ってる暇は無い!

スタングレネードの魔光と爆音を受けて普通動けるか!?・・・クソ!


非常扉を開け手摺を飛び越える。

ビュオオオオオオ

地面までがやたら長く感じる。

ズダアアンッ!!

着地と同時に全力疾走。

正面に現れる転移阻害の結界。

あの結界を超えれば転移が出来る!


ザザンッ


ずざあああ!

転んだ、いや、くっ、両足を切られた!?


「せっかく会いに来てやったんだ。逃げるこたねえだろ。」

シャオ・リーウェイか。


チャッ

喉に刀を当てられる。


「み、見逃してくれ。金ならいくらでも出す。そこの結界の外に蹴飛ばしてくれればいい。頼む!」


「だそうだが、どうする?」

ザッ


「逃すわけねえだろ。てめえのガラは華宮に渡す。金は全ていただく。OK?」

修羅!!!

クソが!こんな奴に俺の夢を潰されてたまるか!

「俺に手を出したらエシェロンが、いやセウレツァだって黙っちゃいねえぞ!インフェルノとの戦争にでもなってみろ、火種のてめえらが生き残れるはずがねえ!今ならまだ引き返せる!考え直せ!」


「ごちゃごちゃうるせえよ。そうなったら、そうなったで・・・面白そうじゃねえか。」ニヤッ


コイツ、狂ってやがる・・・


これだけは使いたく無かったが仕方ねえ、首飾りに仕込んだドーピング麻薬を掴み口に、

スパッ


「うっ!?」

右腕を切られた。

「怪しい動きするんじゃねえよ。」

シャオ・リーウェイイイィ!

「クソがああああ!お前ら絶ってえ〇す!」

「そうかよ。シャオ。」


左手でバッグを握りしめる。

「これは渡さねえぞ!俺の金だ!」

「はあ?てめぇが人から奪った金だろ?」

スパンッ


左腕も落とされた・・・。


「ころせ・・・。」

「嫌だね。」

バッグを取られる。


ああ、終わった。


遠くで修羅が仲間を呼ぶ声がする。回復させて組織に連れていくつもりか。いずれにせよ待っているのは、死。


因果応報。


他人をカモにして来たツケを払う時が来たのかもしれない。

薄れ行く意識の中で少し後悔した。






1週間後



─── キプロス学院 修羅一家拠点 (空き教室)



side ヘスター


修羅がエシェロンのアジトに乗り込んでから1週間が経った。


ヴィーン


ガヤガヤ


修羅一家の拠点は人で溢れ返っている。

今日は酒がタダで飲めると聞いてホイホイ来てしまったが失敗だったか?


カウンターに座る。サロメとセス(マフィアの魔人だっけ?)が何やら話している。

「今度私のバイトしてる店来なよ。安くしとくからさ。」

「いいのか?」チラッ

離れた所で飲んでいるシロッコ(サロメの彼氏)を見る。


「あー、大丈夫、別れたから。」

そうなの?

「そうなんだ。じゃぁ、行ってみようかな。」

「ほんと!?やった!」

ふーん。


修羅たちがタワーに乗り込んだあの日、

エシェロンは壊滅した。


本丸には同時進行で華宮の組員が乗り込み制圧したそうだ。エシェロンと提携していたこの魔人たちは修羅と個人的な盃を交わし(兄弟盃?)修羅一家に加入。

もともとはエシェロンを潰して乗っ取る計画だったらしいが今回の件で計画は破棄。

今後セウレツァは華宮と業務提携する流れになるとか何とか。かなり大きな組織らしいからインフェルノ内での華宮の存在感が増すとかシャオが言っていた。

が、そんなの私にはどうでもいい話だ。


エシェロンを潰した際に得た報酬を使いアジトはグレードアップ。どこのバーラウンジだこれ。


「おいおい、サロメちゃん、俺は誘ってくれないのかい?」

こいつレングストンだっけ?カウンターに入り給仕をしている。こいつ魔人共のボスだったわよね⋯。


「来たいなら勝手に来なよ。奢らないけど。」

「お、おい、サロメ。ラングストンさんに向かってその口の聞き方は、」

ラングストンか。

「あー、いいから、ここでは俺はただの学生だから。ほらグラスが空だぞ。」

ただの学生が昼から酒なんて飲むか?テスト期間中なのに余裕だなこいつら。って、私も人の事は言えないけど。

トクトクッ


「す、すみません。頂きます。」

「おう。今日は宴だ。どんどん飲めや。」

宴?あっ、そう言えば盃を交わした祝いをやるとか言ってたっけ。


「すまん、遅くなった。」

ラングストンが私の前に注文を取りに来る。普通の店員みたいになってんじゃん。あんた魔人だよね?いいのか?


「そ、それじゃあエールをお願いします。」

「エール一丁!」

「エールあざーっす!」

どこの居酒屋だよ。

ダルトワがエールを運んでくる。

「ヘスの姉御!来てくれたんすね!兄貴ィ!」

ちょっ!大きな声で、


「おー!来たか!」

修羅が手招きしている。あの一角はまさにリア充の巣くつ。近づきたくないわー。

無視しよ。


「いいのか?呼んでるぞ?」

「いいのよ。」

「ヘス!ヘイ!ヘス!」

うるせえ。

「行ってやんなよヘス。あんた今回の闇の功労者?なんだからさあ。」

陰な。

サロメはそう言うが私はアジトを特定してウィルスを仕込んだだけだ。もちろん報酬はがっつり貰ったけど。

「別に、何もしてないし。」

「カチャカチャやってたじゃん。」

何よカチャカチャって。

「マジ?この子にエシェロン潰されたの?やるねえ。これサービスの旨辛チキンね。」

「あ、ありがとう。」

だからどこの居酒屋だよ。パクっ、美味しっ。


「よお、飲んでる?」

修羅がエールを持ってやってくる。ちっ。

「ええ、今日はタダで飲めるんでしょ?」

「ああ、ミルコの野郎めちゃくちゃ貯めてたみたいでさあ。」

ミルコはエシェロンの金庫番的ポジションにいたようで組織や個人資産を合わせると数百億を超える資産を運用、所持していたようだ。それに取引記録や裏帳簿などかなりヤバい品々も押収したようで・・・あー、聞かなきゃ良かった。

「そんなヤバいお金使って大丈夫なの?」

「いや、押収したのは組に入れてっから。この金は・・・何つったっけ?」

「報奨金ね。」

カペルも来た。

「って言うか私たちも報酬貰って良かったの?何もしてないんだけど。」

「あー、いいって、ファミリーだからな。」

「そお、何か悪いわね。」

マフィアから貰った金ってのも大概だけど使えるなら、まぁいいか。


「今回セウレツァの方々の加入で修羅一家のランクもかなり上がったんじゃないっすか?」

ダルトワがエールを注ぎながら話す。

「いや、俺らは・・・。」

「ランクかぁ、ジン!」

「はい!私の出番ですね。説明しましょう!」


「ジンさんキター!」

「ジンのデータだけはガチ」

「忖度しない男」

「いや忖度しろや!w」

謎の盛り上がり。

メガネを掛けた男子がスクリーンに映像を映す。


「はい、では毎月恒例のキプロス派閥ランキング行って見ましょう。」

毎月やってんのこれ?

おおおお、と歓声が上がる。


「まずは不動の第1位!2400名が在籍している学術科最大派閥Crusadersです!」

えっ、いきなり1位から?ランキングって下からじゃないの?

「はいはい、知ってましたよ。」

「人減ってない?てかクルセイダーズって今揉めてなかったっけ?」

「ああ、序列がコロコロ変わってるとか・・・。」

「はい、そうなんです。私の情報によると序列3位のサブラ・ハインツが問題を起こして除名されています。」

「マジで?除名って何があったん?」

「クルセイダーズ内でも箝口令が敷かれていて詳細は分からないんですが、クルセイダーズの裏サイトでは序列争い絡みで傷害事件を起こしその責任を取ってサブラが抜けたと言われています。」

「デカい組織は色々大変だねえ。」

「サブラなんて前から黒い噂しかなかったじゃん。」

「残当。」

「人数減ってるのはサブラ派が抜けたせいか。」


「それもあるんですが、最大の理由はこれです。第2位!在籍数2000名を突破したチャムさん率いるNoir!」

「マジか!?」

「増えてるとは感じたけど2位かよ。」

「やっぱ後ろ盾が大きいもん。」

「DHDだもんなぁ。」

「しかも毎日スタークルーザーで登校ってありえなくない?」


スタークルーザー・・・フロックス社が開発した飛空艇。ただの金持ちでは買うことも扱う事も出来ない。そんな物で毎日登校してるとか流石チャムさん、スケールが大き過ぎて草も生えない。


「フロックスともガッツリ関わってるって事だろ?やばいよね。」

「でもさぁ、評判いいよ。友達も入ったみたいだけど居心地良いってさ。」

「ウチに誘えよ。」

「誘ったけどマフィアには入りたくないって・・・。」

草。

「えっ修羅一家ってマフィアだったの!?」

「ちげえよ、マフィアになる前の漢を磨く場所だろ。」

大草原。

「クククッ。だそうだが、実際どうなんだ?」

シャオが修羅に聞く。

「あのなあ、お前ら何か勘違いしてるけどここは俺が学院を楽しむ為に作ったファミリーだぜ?要はそれぞれ好きにやりゃいいのよ。」

「じゃあ、こないだエシェロン潰したのは・・・」

「ウチのシマでイキっててムカついたから。」

「それで潰しに行くって普通にマフィアじゃん。」

草草の草。

「そうなの?遠足みたいで楽しかっただろ?」

遠足感覚だったの?ヤバいなコイツ。


「さぁ、それでは第3位行ってみましょう!在籍数1800名Bellwether!」 

「えっ?squadじゃないの?」 

順位が逆転したようだ。

「squadは4位で在籍数は1500名に落ちてます。こちらもクルセイダーズ同様、Noirに多数移籍したと聞いてます。」

「スクアッドの奴らフロックス信者だからな。」

「スタークルーザー効果かな?」

「やっぱあの子犬ただ者じゃなかったか。」

「1年生で学院2位の派閥を作るなんて、勢いあるなぁ。」

「これミラージュの結果次第では1位入れ替わるかもね。」

ミラージュ攻略か。自由参加みたいだし、正直どうでもいいわ。


「そして、第5位・・・。」

えっ、まさか。

場が静まり返る。


「・・・第5位は・・・・・・・・・Lavinium!」

ズコーッ

何人かが床に転がって笑いが起きる。・・・。

それより、ラウィニウム?


「ラウィ・・・何だって?」

「ラウィニウムです。在籍数は80名。リーダーは剣術科1年5組のユノさんです。」

「おい、1年5組ってお前らの組だろ?」

シロッコがリンドウを睨む。

「ああ、俺ら5人はラウィニウムに入ってるよ。」

ざわざわ・・・

不穏な雰囲気。


「修羅と盃交わしたんじゃねえのかよ。」

「交わしたよ。」

「なら何で、」

「あー、シロッコ。言ってなかった俺が悪いんだが、こいつらとは盃は交わしたけどファミリーには誘ってねえんだ。」

「え、どおして?」

「俺が説明しよう。」

ラングストンがエールを煽った後話し出す。「ラウィニウムはもともと俺とこいつら5人のチームだったんだがな、リンドウの奴がユノに勝負を挑んで秒で負けてな・・・」

「ちょっ!?ラングさん!そこはもう少しオブラートに包んで、」

「ん?ああ、悪い、惨敗だったな。」

クスクスと笑い声が聞こえる。


ユノさん・・・何度か見かけた事がある。いつも周りにはギャルやチャラ男や様子の悪い奴らをはべらせてるイメージ。

あ、あのマフィアみたいなのこいつらだ。


「そしたらリンドウが頭は強いやつじゃねえとダメだとか抜かすからよ。仕方ねえから俺も勝負してみたんだが、」

エールを煽る。

「負けた。」

ハハハハハハッ!

魔人たちが爆笑している。鉄板ネタらしい。


「それで、今は彼女が頭やってるわけだ。」


「ふうん、俺とどっちが強い?」

シーン・・・

修羅の質問に場が静まり返る。


「そうだな。俺はシャオとしかやってないから、どっちかと言われても難しいが・・・ユノだな。」

ガタッガタッ

何人かが立ち上がりラングストンを睨む。


「お前らなぁ、一々殺気立つなよ。まあ、俺もチラッと見た事はあっけどアレはヤバい。ガイウスパイセンやアバドン君と同列かそれ以上かもな。」

シャオが冷静に言う。

「けどよ、うちの大将の本気知ってるのも俺だけだ。負けねえよ?」

おおおおお!


「シャオ、焚き付けんじゃねえよ。場面だよ、場面。それにその上にはチャムやダリルがいるからなあ。」

ダリルってやっぱり強いんだ。


「それよりウチらは何位なの?」

「あっ9位っす。」

微妙。


「トップ10入ったあああ!」

「うおおおおぉ!」

嬉しいか?

「俺はこのチーム雰囲気良くて好きだぜ。先に向こう入ってなかったらこっち来てたわ。」

セスが言うと

「移籍すればいいじゃん!こっち来なよ。」


挿絵(By みてみん)


サロメが腕を絡ませ体を寄せる。あざといなぁ。

あっ、シロッコが顔を伏せた。

このビッチ、鬼かよ。


「いや、リンドウがなあ。」

「おい!1年5組はユノちゃんを全力サポートするって約束しただろ!」

「サポート?」

「コイツ、ユノちゃんにゾッコンでさぁ。今度のダンジョン攻略で良いとこ見せてまた告白するんだと。」

ラングストンが呆れた顔で言う。


「あれ?ユノと勝負して勝ったら付き合うって話じゃなかったのか?条件変わってんじゃん。」

ウィスキーのグラスを回しながら聞いたのはアーロン?だっけ。

「あんな化け物に勝てるワケねえだろ!大事なのはさぁ、好きって気持ちだと思うんだ。勝ち負けなんて関係無えよ。」

好きな子を化け物って言うのはOKなの?


「いや、それセス君関係ないじゃん。あんた1人でやんなよ。」

サロメは納得出来ないようだ。


「黙れビッチ。」ボソッ

ガタッ

シロッコが立ち上がりリンドウに向かっていく。えっ、大丈夫なの?不穏な雰囲気。

「今何つった?」

シロッコがキレた!?

「あん?てめえは関係ないだろ?」

「人の女侮辱されて黙ってられっかよ!」

やだ、カッコイイ・・・。

「いや、別れてるから。シロッコさぁ、マジで黙っててくんない?」

ちょっ!サロメさん辛辣過ぎない!?シロッコはあなたを庇って・・・

「ウッ、あ、ああ、すまん。」

席に戻り座って小さくなるシロッコ。

不憫!


「とにかく俺ら1年5組は一丸となってダンジョンに挑むからな。」

ダンジョン攻略は1チーム5名が基本だがチーム同士で協力するのは問題ない、つまり大きい派閥程有利になる。それもどうなのよ?

「ああ、俺もダンジョン攻略なんて初めてだからよ。お互い楽しもうぜ。」

グータッチする。


ダンジョン攻略か。私には関係ないな。バイトがんばろ。お金はあるけど辞めないのは仕事がすきだからだ。私って意外と接客向いてるのかも。



5日後


授業前に株価をチェックする。順調に上がってる、よしよし。DHD関連も軒並み上げてるけど高すぎて手を出し難いんだよね。ここまで上がるならもう少し仕込んでおけば良かったな。

なんて、考えていると。

「はい、今日はみなさんに新しいお友達を紹介します。おーい、入って来なさい。」

新入生?随分急ね。そんな話誰もしてなかったのに。

ヴィーン


ざわざわ・・・


挿絵(By みてみん)


男子と女子。2人も、?

背の高いイケメンとスタイルの良い美女に生徒たちが色めき立つ。

女子が一歩前に出る。


挿絵(By みてみん)


「こちらにおられる御方はレヴィア・・・レヴィ様です。くれぐれも粗相の無い様に。問題があった場合私が対処いたしますので、お忘れ無き様。」

そう言うとまた男子の後方へ下がった。

ざわざわ・・・


「あー、レビー君、自己紹介を。」

先生が促すが無言。

「え、えー、こちらが転入生のレビー君で彼女は侍女のマルグリッドさんです。」

先生が説明する。

侍女?この学院付き人禁止だったよね?いいの?


「彼は喋れないんですかー?」

「レヴィ君てアイドルのニコライ君に似てるよね?」

「いやこっちの方が色気あるよ。」

「侍女?どう言う関係なんだろ?」

「侍女って規則違反ですよね?どういう事か説明してくださーい。」

「マルグリッドちゃんエッッッ」

「主人と奴隷の関係なんてエロい場面しか想像出来ないんだが?ハァハァ。」

「きめえ。〇ねよ豚。」

一部が嘲笑の声を上げる。

バタッバタッ

えっ!?


「キャッ!?先生!」

生徒が数人白目を向いて口から泡吹いて倒れた!

これって覇気とか言うやつ!?気絶したのは声を出して笑っていた3人だ。あの転入生がやったのだろうか。

「誰か保健室に連れて行って。君たちは後ろの席に座りなさい。」

先生冷静過ぎない!?まるで予期していたようじゃないか。

ん?てか後ろって、私の隣の席じゃん!?


レヴィ君が席に座り、後ろに侍女のマルグリッドさんが立つ。

うわぁ。どうしよ。挨拶した方がいいのかな。


「ヘスターさん、宜しくお願いいたします。」

マルグリッドさんから挨拶された!?

「こ、こちらこそ!よろしゅくお願いします!」

噛んだ!

あっ、今マルグリッドさんが笑ったような。


そして授業が始まったのだが・・・。

レヴィ君、タッチペン持って固まってる。使い方分からないのかな、教えた方がいいかな、などと考えていると。

腕を組んで目を閉じて・・・寝た。

えぇ・・・。

どうしよう。起こすべきか。

チラッとマルグリッドさんを見る。口に人差し指を当てて【静かに】のジェスチャー。

えぇ・・・。


キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴り授業が終わると同時に起きるレヴィ君。

立ち上がり外へ。マルグリッドさんも後に続く。

トイレかな?

何人かが後に続く。私も気になり追いかける。教室へ入っていく。

あっ、ここってダリルのいる教室だ。


立ったまま見つめ合っている、と言うより対峙?する二人がいた。

生徒たちは皆遠巻きに見ている。

2人に魔力はほとんど感じない、が何か近寄り難い雰囲気がある。


・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

いや本当に何も話さないな・・・

もしかして念話?してるのか?


!?

にっこりと笑うダリル。

するとレヴィ君が近づいて行き、


ズキュウウウン


きゃああああああああああああ

おおおおおおおおおおおおおお


生徒たちの悲鳴と歓声が響き渡る。


えええええ!?何でキスしてんの!?


知り合い、いや恋人だったの!?

ダリルって男だよね?いや別にいいけどさ。

いいけど、今するのは違くない?


で、長いし!


えっ、待って・・・入ってる?


クチャ・・・クチャ


これ大人のキスだ!


えっ、付き合ってるの!?

いや付き合ってても1限目の休み時間にキスしに行くとか無いわ!無いよね?


そんで長いな!まだするの!?

生徒たちガン見してんじゃん!私もだけど!どうなの?教育的にどうなの!?


「何でキスしてるの!?」

「これ停学コースだろ。」

「あのイケメン誰?転校生!?」

「ダリル君と付き合ってて追いかけてきたって事?」

「ちょっと先生呼んで来なよ。」

「もう呼びにいってるよ。それにしても凄いな。ゴクリ。」

「てか二人とも男だよね?」

「ノンケは出ていってくれないか?」

「ダリル君は男の娘ですから!」

「うわぁ、ヨダレあんなに垂らして。」

「いやらしい。周りに人がこんないるのに・・・。」

「さてと、授業始まる前にトイレ行っておくか。」ダッ

「お、俺もさっき行ったけどまたしたくなって来た!」ダッ

「ちょっとうん〇してくる!」ダッ

「つーかいつまでやってんだ?」

「先生まだかよ。このままだとファッ〇し始めるぞ。」

「監視カメラで録画されてるのに、無敵かよ・・・。」


くちゃ・・・ズッ・・・ちゅこ、ちゅこ・・・


何を見せられてるの!?


ドンッ!


え!?ダリルがレヴィ君を突き飛ばした!?


『な、何だよ!?お前!何で、えっ、ここ・・・どこ?』

念話!?ダリルの様子がおかしい。


ダッ

駆け出すダリル。私の横を通り過ぎる。


「ちょっと!ダリル!」

とっさに手を伸ばし服の袖を掴む。

次の瞬間。


ビュオオオオオオオオ

「きゃあああああああああ!」

真っ赤な空!?どこ!?分からないけど落下してる!?転移!?ダリルは!?


「ぎゃああああああああああああああ!」

何であんたが叫んでんのよ!

「ダリル!ダリル!」

ビュオオオオオオオオ

名前を呼ぶが風音でかき消される。


「ぎゃああああああ・・・。」ガクッ

白目剥いて気絶した!

「ダリル!起きて!何とかして!」

地面が近づいて来る!私には浮遊魔法なんて使えない。終わりだ。

「ママー!パパー!ごめんなさあああ」


パッ


バスッ


「あああい?へっ?あれ?」

下にはベッド!?助かったあああ。

力が抜ける。また転移したのか。


『もう大丈夫。怖い思いさせてごめんなさいね。』

ダリルがベッドの脇に立っている。

ここは?

『私の部屋よ。』

ダリルのようでダリルじゃない声が頭に響く。

涙と鼻水をティッシュで拭いた後、櫛を持って私の髪を梳かし始めるダリル。

『あの子驚いて目を覚ましちゃったみたい。それでその場から離れたい一心で数千階層跨いでジャンプなんて・・・笑っちゃうわね。ふふっ。』

えっ、どこが?死にかけたんですけど?

いや、それよりダリルだ。やはり以前とは雰囲気が別物・・・。


「あ、あのあなたは?」

恐る恐る聞いてみる。

『んー、あなたとは縁がある様だから言ってもいいかな。私はね・・・ダリルでは無いんだけどこの子に命を救われてね。今は意識と体を共有しているの。』

命を救われた?意識と体の共有?2重人格とは違うの?わけが分からない。


「あ、あの!」


knock knock


「お飲み物をお持ちしました。」

『入っていいわよ。』

「失礼いたします。」

スーツを着た男性が入ってくる。

『彼は同居人のステファン。ダリルの従者よ。』

「ステファンと申します。」

「あっ、ヘスターです。どうも・・・」

イケメン相手だと緊張するなぁ。

「ヘスター様ですね。今後ともダリル様を宜しくお願いいたします。」ニコッ

カッコイイ・・・

「は、はい、こちらこそ、よろしゅくお願いします!」

また噛んだ!

紅茶を用意すると出ていってしまった。


『彼にはやんわり認識阻害の魔法を掛けてあるの。じゃないと混乱しちゃうから。ふふっ。』

認識阻害!?詳しく聞きたいです!


「冷めないうちにどうぞ。」

「あ、ありがとうございます。」

紅茶を飲む。美味しい。ふぅ。一息つけた。


『さっき何か言いかけてたわよね?』


挿絵(By みてみん)


そうだ!

「わ、私ダリルに謝りたくて、ダリルが死にかけた原因・・・私だから。」

私があの時呼び止めなければこんな事にはならなかったはずだ。

『あらあら、あなた、あの時の。』

「分かるんですか!?」

『ええ、記憶も共有してるから。気にする事ないわよ。もとはこの子がいけないんでしょう。あなたの制服を奪ったわけだし。』

「いえ、でも、それでも・・・。」

ダリルが襲われたのには私のせいだ。ん?いや、でも襲ったのは私じゃないし、関係ない、のか?

関係ないな。なーんだ。


『どう?スッキリした?』

「はい、何か靄が晴れたような。清々しい気分です!」

こんな晴れ晴れとした気分ひさしぶりだわ!

その後小一時間程雑談をし、

『それじゃあ、そろそろ戻りましょうか。』

「はい!」

ああ、本当に気分がいい。また来たいなあ。


パッ


授業中の教室に転移したのか。

突然現れたはずだけど不思議と私に注目する生徒はいない。

1人を覗いて


『精神干渉されていますね。』

マルグリッドさんに話しかけられる。

『精神干渉?』

何のこと?

『あれ今頭から声が、えっ、これって念話?』

混乱する私。


『魔法を解除しますか?』

『良く分かりませんが、このままで大丈夫です。』

だって凄く気分がいいから。


『そうですか。承知いたし、』


キィィィィン

えっ、何、ウッ、気持ち、悪いい。


ふと、隣を見ると

ヒィッ!?

レヴィ君が私を見ている。冷たい目で。


フンッとまた正面を向く。

頭の中がグチャグチャだ。ダリルとの会話を思い出す。さっき何で私はあんなにあっさり納得した?まさか精神を操られたのか?


『なんで、ダリルはこんな事・・・』

まだ念話が使えるらしい。


『刺激して欲しくないんだろう。宿主が起きてしまうからな。』

この声、レヴィ君?隣を見る。

腕を組んで目を閉じている。


『あ、あのレヴィ君は・・・』

『レヴィ【様】、です。』

マルグリットさんが怖い顔をしてこっちを見ている。

『よい、好きに呼ばせろ。』

『し、失礼いたしました。』


『あ、あのレヴィ、く、君はダリル君と、その、こ、ここ恋人関係なんですか?』


『阿呆。犬猿の仲よ。あんな無様な姿になりおって、さっきのは挑発だ。愉快な姿を見ることが出来ただろう?』

愉快?こっちは死にかけたんだが。ん?何かこのやり取り既視感が。


『あなたは何故この学院に?』

『・・・なあに、偶然かどうかは知らんが会いたい者が揃ってここにいたと言うだけよ。祭りがあるのは知らなんだが、あれを聞いてしまっては出ないわけには行くまい。』

祭り?

アビスでお祭りなんて・・・


あっ、ダンジョン攻略。


『いやいや、だってアレはただの学院のイベントでダンジョン攻略なんて・・・。』

目的はネットを使った宣伝でしょ?


『攻略?ふむ、シスに会いに行くという事はそういう事になるのか。』

『シス?』

って、魔王システィーナの事?

『ロクサーヌも出るのであれば・・・ワルプルギスか・・・天使を釣るのに使えそうだ。どう思うマルグリッド?』

ロクサーヌ?ワルプルギス?天使?全く理解出来ない。


『ディスペア4大君主が揃うのであれば、この機を無視するとは思えません。妙案かと。』

マルグリッドさんが答える。4大君主?


『あのふざけた破壊神が戻る前に彼奴にこの世界の本質を見せてやろう。フッ、ただの暇つぶしであったが存外楽しめそうだ。』

『それでは、遂に始まるのですね。』


『ああ、ハルマゲドンだ。』

ハルマゲ!?天使と悪魔の最終決戦の事言ってる?


いやいや、この人たち授業中に何不穏な話ししてるの?重度の厨二病かな?


で済ませられたらどんなにいいか・・・。ヤバ過ぎる。どこぞのマフィアの話聞いてる方がまだマシだ。うん、聞かなかった事にしよう。


『ヘスターよ。我と同行することを許可しよう。特等席で阿鼻叫喚の地獄絵図を見せてやる。』

は!?えっ待って、ダンジョン攻略に誘われてる?私が?何で!?

地獄絵図とか見たくないんだけど!?


『お、お断り・・・』

ヒィッ!?

マルグリッドさんが鬼の形相で睨んでいる。


『ひゃい!喜んで!』

あ、マルグリッドさん笑顔になった。

いやあああ!


陰キャのわたしがイベント参加・・・。

まさか、あの魑魅魍魎の跋扈する最凶最悪の禁足地に足を踏み入れる日が来るなんて・・・最悪だ!

うぅ、胃が。




ダンジョン攻略まであと2ヶ月。




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