29話 キプロス学院の劣等生 代理戦争2
─── キプロス学院にて ───
side エミリーン
「昨日の爆発事故すごかったよなぁ。」
「てか半径200キロってヤバくね?」
そんな広範囲の爆発にも関わらずアビスに被害は無かったようだ。
「魔力の渦が消えなくて撮影も出来ないらしいよ。」
「だから望遠カメラの映像しか無いのか。」
「遠くからでも地獄なのは分かる。」
「でも、あれだけの爆発でこの辺に揺れとか無いってどういう事?」
「だよな、ここから相当離れてるけど、それにしたってなぁ。」
「学院には結界張ってあるから。地震とか爆風なんて余裕よ。」
結界ねえ・・・。
「その結界張ったのルミちゃん先生らしいよ。」
「マジで超一流の魔術師だったのな。」
「ルミママしゅきぃー。」
「キメぇ!氏ね!」
ルミナスか。彼女とも一度話してみたいんだがあんまり学院にいないのよね。見かけても取巻き?の学生が凄くて近付けない。しかも転移で常に移動してるから後付けて家に行く事も出来ない。何か位置情報を追える魔法ないかしら。
「ねえ、聞いた?今朝また1年の不良が揉めたんだって。」
「2組の半グレ?どうしようもないな。」
「そうそう、でもやられたのはアイツらの方ね。」
「マジか!?ダセェw」
「で、誰と揉めたのよ?ガイウスさんに締められたん?」
「あれ?ガイウスさん、今日休みだよ。」
「昨日の配信途中で切れたじゃん。結局どうなったの?」
「失敗だって。お前エミーに聞いてみろよ。」
今呼び捨てにした奴誰だ。
「嫌よ。あの子常に不機嫌なんだもん。」
・・・イライラ。
「え、じゃあ半グレボコったのって誰よ?」
「何か1年に転入して来た生徒だって。何て言ったかな・・・えーっと、」
「ダリル君でしょ?私見たよー。」
ガタッ
ダリル・・・だと!?
「何か可愛いかったー。」
「えー、カッコいい系だよー。」
「カッコ可愛いのに強いの?最強じゃん。」
「いや、私現場見てないから強いかどうかは分かんない。」
使えねえ。
「あいつら空き教室に酒持ち込んだりしてたからバチでも当たったんじゃね?w」
「停学、下手したら退学か?いいね、いいね。」
「でもケンカしてるとこは誰も見てないみたい。」
「じゃあ何でそのダリルがやったって事になってるの?」
「何かチンピラとダリル君が空き教室入ってってね、ダリル君はすぐ出て来たらしいんだよ。で、中見たら・・・。」
「チンピラたちは、転んだって言い張ってるみたいだけど、どれだけ転べばあんな顔になるんだよwww」
「転び過ぎワロタwざまぁw」
ダリルが半グレを?冗談でしょ。
「つっても奴らだって弱くは無いぞ。それを1人で一方的に秒殺だろ。」
「ヤバぁ。」
「だから派閥の幹部たちが勧誘しようと動いてるらしいよ。」
「派閥争いとか気にしてるの一部の連中だけだけどな。」
「それな、マジでどうでもいい。」
ダリル・・・。休学していたはずだが、来ているのか。
1限目終了。
ダリルの奴、念話が繋がらない!私の下僕って事忘れてないわよね。
あいつ確か4組だったはず。
教室の前には人集りが出来ている。みんな今朝の話を聞いた野次馬か?
姿を見る事も出来ないじゃないか。ダリルの癖に生粋な。
キャーキャー声が聞こえる。
「ダリル君てカッコいいよねー。」
『そう?』
念話!?あいつ念話なんて使えたの!?しかも全方位ってAAクラスだぞ。何があった?
キャーキャー。
・・・。イラッ
「何で休学してたの?」
『入院してて。』
「そっかー、無理しないでね。でも念話とかすごっ。普通に話したり出来ないの?」
「あー。んあー。『よくわかんない。』」
「あっ、全然そのままで大丈夫だよ!」
「でも朝凄かったよね。」
『朝?』
「ほら、不良と喧嘩して。」
『ああ、加減したけど、死んでないよね?』
「う、うん、大怪我はしてない、と思う。あれやっぱりダリル君がやったの?」
『うん。』
シーン・・・・・・。
ざわざわ・・・。
「どけ!邪魔だ!前開けろ!」
何だ?人をかき分けダリルに向かって行く生徒。まさか、報復?
「おい、ダリル君は病み上がりなんだ。ちょっかいだすのは・・・」
なんだあの委員長みたいな奴は。
「ああん?」
「ヒィィ!し、失礼、僕は授業の予習があるのでこれで失礼する。」
弱っ!
ダリルの周囲にいた生徒が離れ顔が見えた。
・・・ん?
「お前がダリルか?」
『うん。』
「!?頭に、・・・今朝はウチの者が世話になったな。」
『ん?』
「カシラがお前と話がしたいそうだ。悪ぃが放課後、第3音楽室まで来てくれや。」
『それどこにあるの?』
「・・・迎えを出すから教室で待ってろ。」
『うん。』
それだけ言うと戻っていった。
「ダリル君行く事ないからね!」
「絶対リンチや拷問するつもりだよ。」
「防音室ってのが怪しいよね。」
「エッチな事とか・・・」
キャーキャー
あいつホントにダリルか?
魔力は微弱だしオーラも無いが、何か違和感が。
その後も休み時間になる度に行ってみたが奴の周りには常に人がいて話す事は出来なかった。てか教室にすら入れない・・・。
派閥の勧誘などもあるらしく上級生等も会いに来ているようだ。
チッ、また次の休み時間に・・・って、何で私がダリルの為にこんな動かないと行けないんだ?凄いムカつく!
そう言えばチャムさんは?
教室に姿は無い。今日は学校に来ていないのか?
─── 放課後 ───
あっという間に放課後になり、またダリルの教室へ。
「ダリル君、家どこ?」
「私の車乗せてあげる。一緒に帰ろ。」
「私とパフェ食べに行く約束してますから!」
「あたし、逆にダリル君のお家行きたいかも。」
「ビッチが・・・。」
「ああん!?」
ダリルは席から立とうとしない。
ヴィーン
「ダリルさん。お待たせしました。」
半グレのお迎えが来る。何か朝とは随分態度が違うな。
『ん。』
席を立ち後に付いていく。大丈夫なのか?
「マジかよ、勇気あるな。」
「あんた一緒に行ってあげなよ。絶対ボコるつもりだよアレ。」
あの態度からはそんな雰囲気は微塵も感じられないが。
「行かねえよ。アイツらヤクザの仲間だろ。何するか分かんねえし。」
「先生に言った方がいいのかなあ。」
「防犯カメラ付いてるし大丈夫じゃね?」
「てかさ、朝の件てホントにダリル君がやったのかな?」
シーン・・・。
教室を後にして第3音楽室へ向かう。
前の通路、手前と奥に強面の生徒が腕を組んで立っている。野次馬は遠巻きに一瞥して去って行く。
私は気配を断ち隠蔽魔法を掛け奴らの横を堂々と通り過ぎる。
音楽室には一丁前に結界が張られていた。
転移する事は可能だが気付かれてしまうだろう。
集音魔法で音声だけ拾うか。
「まあ、そういう訳ですまなかったな。おい、お前ら。」
「す、すんませんした!」
「二度としません!さーせんした!」
男たちがダリルに謝罪している。朝揉めた相手か?
『いいよ。じゃあ僕は行くね。』
「あー、時間あるなら少し話をしたいんだが、ダメか?」
『友達とパフェ?を食べる約束してるんだ。』
「パ、・・・クククッ。そうか、悪いな呼び出しちまって。おい、客人を送って差し上げろ。」
『話あるって言ってたけどいいの?』
「ああ、構わない。また学校でな。」
『うん。』
呆気なく解放された。
ヴィーン
扉が開きチンピラとダリルが出てくる。
1階校舎前。
「では俺はこれで。ダリルさん、お気を付けて。」
頭を下げる男。
『うん。』
1人歩き出すダリル。
丁度いいこのまま付いて行って、
『僕に何か用?』
!!?
私を見ている。隠蔽魔法が看破されてる!?
『今日ずっと付けてたね。ストーカーってやつ?』
スト・・・。
『・・・あなた誰なの?ダリルじゃないよね。』
『・・・。』
『僕はダリルだよ。あなたは・・・、エミリーンさん、いやエミタソか。』
私を知っている!?
『入学式の後何があったの?』
『事故で入院してた。』
って言う設定か。
『私との約束、覚えてる?』
『約束?・・・チャム、か。ふぅん、面白いのがいるんだなぁ。』
ゾクゾクッ
鳥肌が立つ。何だその顔は。
『その子を紹介するのは難しいかな。それより君、人を探してるの?』
!!?
『何で、・・・そうよ。うちのギルドマスターをずっと探してる。お願い!あなたが誰かとか詮索はしない!知っている事があれば何でもいいから教えて!』
『ティガー、か・・・。あの女が連れていた獣人が確かそんな名だったかな。』
!!私はまたリーダーの名前を言っていない。こいつ、マジで知ってる!?
「女!?それって誰の事!詳しく教えて!」
ざわざわ・・・
あっ、しまった魔法が解けた。普通に大声で詰め寄ってしまった。
『パフェ好き?』
は?
─── 修羅一家 拠点(空き教室)───
side ヘスター
今日は普通に帰りたかったな。
クラス中、修羅たちの噂で持ち切りだった。
ここに出入りしてるから私も仲間だと思われてるんだよね、きっと。
こっち見てヒソヒソと話してたし。
実際仲間だけどさ。
でも、ダリルが無事で良かった・・・って納得出来るか!
あれ本物か?遠目でチラ見しか出来なかったけど雰囲気がまるで違った。一体何が何やら。
ヴィーン
中へ入る。
「お前らよくあんなバケモンに喧嘩売ったな。」
バケモンてダリルの事?
「いや、通路で肩がぶつかって謝らねえからぶん殴るふりして脅かそうとしたら逆に・・・さーせん。」
自業自得じゃん。それにしたってダリルが暴力を振るう姿なんて想像出来ない。
「パブロがやられた後に場所変えて2人抜きか。」
「お前らもまだまだだなあ。弱い奴ばっか相手してってから相手の力量が分からないんだぞ。」
「さーせん。」
「あのダリルって奴そんな強いんすか?」
こいつらスペンサーより強いよね?それを倒すダリル・・・。いやダリルはスペンサーより弱かったはず。混乱してきた。
「強え奴にも色々いるからなあ。あれは偽装して一般人装ってるけど、俺の勘だとキース総長クラスかもな。」
「そ、それ程ですか。自分にはただの学生にしか・・・。」
「まあ、魔力だけ見たらそこらの雑魚と変わらないわな。場数こなせばお前らにも分かるようになるよ。なぁシャオ。」
「ああ、情けねえがまだ震えが止まらねえよ。」
「はははっ!俺もだ!」
そんなに強いの?嘘でしょ。
あっ、そうだ、忘れるところだった。
「修羅、頼まれてた件これに入ってるから。」
メモリの入った封筒を渡す。
「おう、サンキュー。相変わらず仕事早ぇな。色付けといてやるよ。」
何だか上機嫌ね。
「ジン、これ頼む。乗り込む日取りは後で決めるわ。そんじゃ、用あるから先帰るぞ。じゃあな。」
修羅帰るのか。どうせ女の子の家行くんでしょ。イラッ。
私は・・・飲みたい気分。
お酒飲んでから帰るか。取り巻きの女もいないし。
カウンターで酒を物色する。
「ヘス、エール頼む。」
カウンターに男が座り注文する。
は?私は店員じゃないっての!
エールサーバーなんていつの間に付けたんだ。しかもこれ業務用じゃん。
呆れるわ。ちゃんと掃除してるのかな・・・。
「ほら。」
ダンッ!
ジョッキに注ぎ男の前へ置く。
「ツマミ無かったっけ?」
知らないから!
自分用にエールを注ぐ。
「俺もエール頼む。」
だから私は店員じゃ
「俺もエールでいいや。」
たちまち満席のカウンター。私の心は折れ店員と化す。
私も飲みながらエールを注いで行く。
「ねえ、ヘスって男とかいんの?」
「はぁ?それ普通にセクハラだから。」
酔っ払いが!氏ね!
「お前なぁ、こんな良い女にいない訳ねえだろ。なあ?」
「いないし・・・。」
「マジで!?じゃあ、俺と付き合って!」
はあ?
エールの入ったジョッキを煽る。
「ぷはぁ!付き合う?底辺でブスの私ならイけると思った?」
間髪入れず空いたジョッキにエールを注ぎ一気に煽る。ぷはぁ。
「えっ?いや、違。」
「性格もブスな私に惚れる奴なんているわけねえだろ!」
「おい、お前ら止めとけって。ヘス、お前酒弱ぇだろ。」
シャオに毒消しの魔法を掛けられアルコールが抜ける。
あ、ちょっといい気分だったのに。
「どうせ私なんて。」ブツブツ。
「あんま卑下すんなよ。少なくとも俺らはヘスの事認めてるからよぉ。」
え、ちょっと、・・・照れるじゃん。
「そうだよ、普通にかわいいしなあ。」
普通?まあ、褒めてるんだよね?
「そうそう、でも酒飲むと面倒くせえけどなw」
笑いが起きる。えっ、私面倒なの?
「お前らもう止めとけ。それよりジン、学院の勢力図どうなってる。」
ジンと呼ばれた男がスクリーンにPCの画面を映す。
「はい、これが今の学院の勢力図となっています。」
うわ、小さなグループがたくさん。こんなにあるの?よく調べたな。
「最大派閥は学術科3年、ミルトン・カテラルが率いるグループ【Crusaders】で規模は約3000名。一流企業の関係者が多数在籍していて就職に有利なグループとなっています。」
ミルトンの父はDespair Holdings傘下の会社を経営してるんだっけ?そりゃ顔が効くよね。
「次に続くのは剣術科3年、ティナ・フェアバンクスがリーダーの【Squad】です。ここはフロックス関連の企業を目指す生徒が多く、規模は約2200名。」
「3番手は魔術科3年ジャマール・エドワーズの【Bellwether】。約2000名が在籍。こちらも就職を念頭に置いたグループですね。」
やはり大企業に連なる関連会社がそのままグループに反映されてるようだ。
「グループの特色としては、基本は親の務める会社の規模で大まかな序列が決まり、クルセイダーズは模試の順位、スクワッドとヴェルウェザーは武術、魔術などの個々の才能で序列が変動するようです。」
私はグループなんかには入りたくないな。息苦しそう。
「まあ、その3つは昔からあるみたいだからな。で、その次は?」
「はい、3大派閥に続くのは、こちらです。」
ごくり。
「学術科1年、チャムさんがリーダーの【Noir】です。」
チャムさん!?
「学術科1年を中心に2年、3年の無派閥をも取り込み現在1800人に膨れ上がっています。」
「マジか。」
「チャムってあの子犬だよな?」
「白い毛並みなのにノアール(黒)ってw」
「たった2ヶ月で学院4位の派閥作ったんかよ?」
「いや、むしろ少ないくらいだ。入学式でキース総長とヤリあった武力、首席合格する知能、DHDっつう後ろ盾。天下を取る為に生まれたみたいな奴じゃねえか。」
「シャオさんの言う通りです。彼女には学院を1つにするだけの力がある。だけど、それを彼女は望んでいない。グループだって周りが勝手に作って勝手に集まっただけだ。チャムさんは学院で学ぶことを主目的にしている。誰にでも優しく接し明るく朗らかで、まるで女神のような・・・」
「おいジン、お前大丈夫か?」
「し、失礼。グループの事を調べる過程で彼女に接触したのですが、人が集まるだけの魅力が彼女にはあります。自分が修羅一家に入ったのは修羅さんの器の大きさに惹かれた為ですが似た様な雰囲気を感じました。」
周りが持ち上げたく魅力か。わかる気がする。
「なるほど・・・それは、手強いな。」
「シャオさん、修羅さんは学院を獲りに行くんですよね?」
「さあてな、あいつは自分と周りだけが楽しくやってりゃいいってタイプだからな。」
「それも悪くはないんですが、俺はテッペン獲りたいっす。」
「だよな。俺もだ。クククッ、俺らで上手くレール敷いてやらねえとな。」
盛り上がる一同。
テッペンって、この学院を一つにまとめるつもり?こいつらには不可能でしょ。
「で、うちら修羅一家は今何番手に付けてんだ?」
「えーっと、ランク外っすw」
「てめえ、何が面白いんだコノヤロー!」
シャオがジンをヘッドロックする。
爆笑する一同。
こいつら仲がいいな。
しかしダリルが気に掛かる。
こいつらの仲間になった?せいかどうかは分からないがスペンサー絡みの厄介事は無くなった。チャムさんを紹介して貰う意味ももう無いな。
でも一度会って私が原因で危険な目に合わせてしまった事を謝罪したい。
それにしてもチャムさんが派閥の長か。よし、私も入れて貰おう。
でも派閥ってどうやって入るんだ?紹介とかかな。
「修羅一家は少数精鋭でいいだろ。デカけりゃいいってワケじゃないしな。」
「そう言う事だ。なぁヘス。」
はぁ?
「知らないわよ。」ゴクゴク
「お前もウチらの仲間だからな!」
「へ?」
マジで?やだ、ちょと嬉しい。
「こいつ照れてるぞw」
くっ!?
「照れてねえし!」ゴクゴク
「耳まで真っ赤だw」
!?
「怒りで赤くなってんの!てめぇのクソみてえな煽りでなあ!」
ダンッ!空になったジョッキをカウンターに置く。
「おら!注げやカス!」
「ヘスがキレたw」
「またかよ・・・。」
─── キプロス学院 西棟 空き教室 ───
side ???
「で?シメられて詫び入れて戻って来たと?」
「は、はい・・・。」
バキッ
「グェ!?」
「舐めてんのかテメェ!タマの一つや二つ獲って来いや!」
バキッ
「し、しゅいましぇん!」
「ミルコさん、これウチのアジトバレるんじゃないですかね?」
「僻地の都市のサーバー経由してるからな100パーバレねえよ。それより華宮のガキに舐められんのは我慢ならねえ。潰してぇけど学院内で揉め事はご法度だし、何とか外に呼び出せねえものか。」
「つってもギールさんヤる程の相手ですよ。下手に手を出さない方が・・・。」
ギールさんか、アイツらエシェロンは虫の息だと思ってんだろうが、俺らは水面下で力溜めてたんだよ。その力の一旦がセウレツァだ。
「・・・何の為の業務提携だ?セウレツァとぶつけんだよ。連中、インフェルノにアヤ付けられてブチ切れてんだろ?丁度いいじゃねえか。」
「しかし、セウレツァのシマは南の果てで流石に出張ってもらうのは難しいのでは?」
「ああ、お前らは知らないのか。ククッ、居るんだよここに、ヤツらの息が掛かったのが。」
「マジっすか!?」
「他言無用だぞ。あいつらここで商売したいからって視察がてら若手のイケイケ送り込んでんだ。武術科1年5組見て見ろ。ガラの悪いのが数人いるからよ。」
「そう言えば武術科のダチが5組にやべぇのが居るって言ってました!」
「ハハッ。ウチの組で把握してんのは俺と薬局の連中だけだからよ。でも、まぁお前ら揉めそうだからな、一応言っといた方がいいだろ。それに今はウチの幹部が世話してやっててエシェロン預かりだ。」
「いいんすか?ウチの組の名前で喧嘩になったら幹部連中が何て言うか。」
「問題ねえよ、ギールさん以外は長くいるだけのゴミだろ。むしろ華宮潰せば組の名前が上がってアイツらうれしょん止まらねえぞw」
「それじゃあ、奴ら相当強いんすか?」
「弱くはねえがアバドンとのタイマンで負けたらしいからな。何とも言えねえなぁ。」
「あ、あのアバドンにタイマンすか。そりゃ気合い入ってんなあ。修羅程度ならイケそうっすねw」
「馬鹿テメェ。奴にギールさん、ヤられてんだぞ。舐めてると首掻っ切られっぞ。」
「す、すんません!」
「だからよ、幾重にも罠を張るんだろうが、蜘蛛みたいにな。」
「そういう訳だ。それじゃあ、悪巧みをしようじゃねえか。」ニヤリ
─── ABYSS SQUARE GARDEN ───
side エミリーン
「ここの1FにあるThierry Coffeeで出してるパフェがとっても美味しいんですの!」
ここって最近出来た商業ビルか。
上層階はオフィスなどが入っているはずだ。店の前に置いてあるメニューの載った立て看板を見る。
高い。
ガキの癖に金持ってるなぁ。
「ダリル君、行きましょう。」
さりげなく腕を絡ませるエヴァ。色仕掛けかよ。
まあ、大抵の男はあれやられたら秒で落ちるだろうな。性格はともかく、顔は可愛いし。
『エミタソ甘いの大丈夫?』
!?びっくりした。
『ちょっ、ダリル、くん、私の事はエミーと呼んでくれないかな。』
何だよエミタソって。私のファンにそう呼ぶ豚共がいるのは知っているが実際呼ばれると変な感じだ。
『そう。エミーは甘いの大丈夫?』
「ええ、嫌いじゃないわ。」
ダリルの背後から無表情な女の冷たい視線が突き刺さる。てめぇ、誰だよ、誘ってもいないのに付いて来やがって!
と、言いたいんだろ?知ってるよ、悪かったな。
今私は学院から数キロ離れた商業施設に来ている。
ダリルのクラスメイト2人も一緒だ。リムジンに乗り合わせてここまでやって来た。
車内の会話だと今私を睨んでいる金髪がエヴァで親は建築設計の会社を経営しているらしい。隣でモジモジしているのがジェシカ。トイレにでも行きたいのかな?
2人は幼なじみでジェシカの両親は医者をしているようだ。
学院によく居る金持ちってわけね。
何でこんな状況になっているかと言うと、ダリルに色々聞きたいと言ったら友達とお茶しに行くから一緒に来ない?と誘われたのだ。もちろん断ったが
『ティガーの事少し思い出して来たかも。』
ぐぬぬ。
この一言で付いて行く事にした。何としても聞き出さねば。
モジモジしていたジェシカが寄って来て耳打ちする。
「あ、あの、私、エミリーンさんと御一緒出来てとっても嬉しいです。」
あら、可愛い。
「WeTuberやってますよね?後でサイン頂いても宜しいでしょうか。」
何だ私のファンか。3対1だ。どうやらここはアウェイでは無かったらしい。
エヴァちゃんごめんね。クスッ。
「いいよ。見てくれてありがとう。良かったらチャンネル登録してね。」
「あ、もうしてます!グッズとかも持ってます!」
バッグを見るとウズラのデフォルメされた顔のキーホルダーがぶら下がっている。
好きー!この子好きー!
でも私じゃないんだ・・・。
「エミーさんはこっちに付けてます。」
反対側に私いたー!
好きー!この子超好きー!
「ジェシー、行くわよ。」
「うん。エミーさんも行きましょう。」
手を取って歩き出すジェシー、マジ好きー!
「ストロベリーパフェがおすすめとなっておりますー。」
綺麗な店員さんがメニューを見て丁寧に説明してくれている。
「みなさん、キプロス学院の方ですか?」
「ええ、美味しかったらクラスの方にも宣伝しておきますわ。」
エヴァ一言多い。そう言うとこだぞ。
「はい、是非お願いします。女子会楽しんで下さいね。」
店員はにこやかに去って行った。
女子・・・会?
『僕、女の子に見えるのかな?』
「プッ、ゴホッゴホッ、失礼。」
吹き出すのをこらえる。
ダリルって入学式の時より女の子み増してない?
「ダリル君がかわいいから間違えたてしまったのかしら。」
『ふうん。』
この落ち着き様。前のオドオドしてたあいつはどこいった?二重人格?それとも別人が変身魔法でダリルに化けてるのか?
エヴァの毒にも薬にもならない自慢話を聞いているとパフェが運ばれてくる。苺を贅沢に使ってボリューム満点だ。でも、ちょっと量が多いな。ダイエット中だから遠慮したいけど、この状況じゃ食べないわけにはいかないよね!まったく、仕方ない。パクッ。美味しい!パクパクッ。
『これがパフェ。』パクッ
ダリルの瞳がキラリと光る。
パクパクパクパク
一心不乱に食べてる。気持ちは分かるけど。
「気に入ってくれた様で良かったですわ。それで、今日誘ったのは・・・、ダリル君にお願いがあってえ。」
メス猫が・・・この苺の上に乗っかってるアイスより甘ったるい声出しやがって。パクッ。
「ダリル君てとっても強いんですよね?今朝男の子たちと喧嘩して勝ったって聞きましたわぁ。」
パクパク、モグモグ
『彼らが弱かっただけ。』
食べながら念話してる。
「あ、あの気分を害したらごめんなさい。ダリル君て普通に話す事は出来ないんですの?」
パクパク、モグモグ
『事故で。』
「あっ、ごめんなさい。でも念話が使えるなんて凄いですわ!」
『そう?』
まぁ、Aランククラスじゃないと使えないしね。
『もっと頼んでいい?』
「えっ?ええ、構いませんわ。」
店員を呼び注文をする。
モグモグ、パクパク
『これと、これと、』
店員のお姉さんも困惑してる。食べながら念話で注文する客なんて初めてだろうな。
にしても随分頼むな。
『んー、面倒。これ全部ね。』
メニュー表をヒラヒラ振っている。
マジ?
頼みすぎい!どんな注文の仕方よそれ!雑過ぎない!?大食いWeTuberだってもう少し言葉選ぶわ!
「あっ、あの、お客様。メニューに載っている物全て、でございますか?」
『そう。』
「こ、これだけの数となると、その、残された場合罰金を頂く事になるのですが、宜しいでしょうか?」
そりゃそうだ。
モグモグ、パクパク
『いいよ。』
マジ?
「か、かしこまりました!用意出来次第順番にお持ちいたします!」
お姉さんも大変だな・・・。
ほらエヴァちゃんも口開けてポカンとしちゃってるよ。会計はエヴァちゃんが払うのよね?楽しみだわwプークスクスw
『あっ、お金はエミーが出してくれるから。』
何で!?支払いはエヴァだろ!何で私が、冗談じゃ・・・
ジェシカから尊敬の眼差し、くっ。
「もちろん皆の分も年長者の私が奢らせてもらうわ!遠慮せず注文してね!」
くそう!
サンドイッチ、タルト、ケーキ、等が続々と運ばれてくる。
モグモグ、パクパク
『で、何だっけ?』
この状況で話続けるのかよ。
「あっ、そうでした。では食べながらでいいので聞いて下さい。実はダリル君に私の所属するグループに入って頂きたくて・・・。」
派閥への勧誘か。どうせそんな事だと思ったわ。
パクパク、モグモグ
『下に付け、と?』
ゾクッ。何今の。
「ち、違います!確かに領袖もいますし、学年等での上下関係はあるかもしれませんが、そこは家柄や才能で何とでもなりますわ!」
それなりのポストを用意するって事か。
パクパク、モグモグ
『下克上、それも一興・・・か。』
「入って下さいますの!?」
『エミーも入るなら。』
私!?ちょっ!私関係無いし!
「ダリル君、私は映像制作で多忙なの。だからそう言うのはちょっと、ね。」
派閥に入るなんて嫌に決まってるでしょ。
『ティガー、今頃・・・』
!!?こいつ!
「ふぅ。分かりました。良いでしょう。交友関係を広げておいて損はありませんからね。」
ぐぬぬ。
「えっと、私はダリル君さえ入って貰えればいいのだけれど・・・」
!?くうううう!めっちゃ恥ずいし腹立つ!私だって入りたく無いし!
パクパク、モグモグ
『エミーは僕の彼女だから一緒じゃないとダメだよ。』
へ?何言って・・・
「あー、私の聞き間違いかしら。もう一度言ってくださる?」
『彼女。』
はあああああああ!?
カランッ。スプーンをテーブルに落とすエヴァ。固まってる。
「キャー!エミタソいつから付き合ってたの!?どこまで進んでるの!?デートしたりホテル行ったりホテル行ったりしてるの!?」
ジェシー暴走してんじゃん。
『それはまだ。』
黙れ。
その後キャーキャー騒ぎまくるジェシーと放心状態のエヴァを尻目にダリルは全メニューを完食。
カフェのスタッフ一同と写真を取り今車で送って貰っている。
「お腹すっごく膨らんでるけど大丈夫なの?」
妊婦さんかな?
『うん。』さすさす
お腹をさすってる。妊婦さんかな?
「エミーさん、ごちそうさまでした。」
ジェシーが笑顔でお礼を言ってくる。すき。
「わ、私が誘ったのに奢ってもらって悪かったわね。」
エヴァもジェシーに促され礼を言う。
「どういたしまして。」
結局私が奢る事になってしまった。WeTubeで稼いでいるからお金はあるけどさあ。
彼女設定ならダリルが払うんじゃないの?
いや今は多様性の時代。性別は関係ないのか・・・。
「ダリル君、後日私たちの派閥【クルセイダーズ】から招待メールが届くはずですわ。歓迎会はその後私の家でやりましょう。」
クルセイダーズって学術科、いやキプロスの最大派閥じゃなかったっけ?
『エミーも一緒。』
!?・・・
「え、ええ、一緒で構いませんわ!」
エヴァ、顔が引きつってるぞ。
「あっ、私たちの事は学院のみんなには内緒でお願いね。」
変な噂を流されても困る。
「言われなくても、分かってますわ。」
プイッと窓に顔を向ける。
「エミーさんて学校では女王様キャラなのに彼氏の前だと都合のいい女って感じで素敵ですー!」
どこが!?素敵要素0じゃん。ジェシーの評価、改める必要がありそうね。
車がダリルのマンションに着く。
「それではダリル君また学校で。ごきげんよう。」
『ん、またね。』
「私もここで失礼するわ。」
「えっ、ホテルじゃなくてダリル君の家でするんですか!?」
ジェシー!
「何言ってるの?私、転移魔法使えるから直接家に帰るって事よ。」
「あっ!そっかあ!えっ!?じゃあ、じゃあ、アレ見られるんですね!」
アレ?・・・あぁ。チッ、仕方ないファンサしてやるか。
「もう、普段はやらないけど特別だよ?それじゃあ行くよ!アイドル魔法使いエミー!自宅へー、LET'S GO!!」
ポーズをキメる。
「プッ!」
!!エヴァが吹き出す。
景色が変わる。私の部屋だ。
わああああああああああああああああああ!
腹立つ!腹立つ!
デカイ狐のぬいぐるみをバスバス叩く。
『何してる?』
「恥ずかしさに悶えてるのよ!・・・ん?」
ダリルが部屋に浮いている。ふよふよ。
「ぎゃあああああああああああ!」
『レヴィみたいな声。』
「えっ!?あんた何でここにいるのよ。」
『話しするんでしょ?』
はっ!?そうだ。
こいつ普通に転移使って現れやがった。しかも私の張った結界を超えて・・・。
「ふぅ、とりあえず座って。」
『・・・・・・。』
「じゃあ。聞かせてもらおうか。」
『・・・・・・。』
キョロキョロしている。部屋を見られるのは嫌だな。
「何よ。そんな部屋を見ないで。」
『ケーキ食べたい。あと紅茶。』
「はあああ!?」
さっきスイーツ大食い大会したばっかじゃん!
あっ、お腹凹んでる。消化良すぎてってレベルじゃないよ!
「そんなの無いよ。」
『そう・・・。』
シーン・・・
『じゃあ帰る。』
「待って!思い出した!今持ってくるから!」
なんて面倒な奴だ!冷蔵庫の奥からシフォンケーキを取り出して切り分けカップに紅茶を注ぎ持っていく。
「ほら!」
『うん。』
「待って!食べる前に、ティガーさんの事おしえて。」
『いいけど、早くしてね。紅茶冷めちゃうから。』
「・・・彼は無事なの?」
『2ヶ月前は生きてたよ。今は知らない。』
生きてる。あぁ。良かった。
涙が溢れて来る。
『質問は終わり?』
「ひっく、うぇ・・・。ま、まだよ・・・。彼はどこにいるの?」
『2ヶ月前は9500階層にいたけど今は知らない。』
9500階層・・・って、
「レヴィアタン・・・。」
ゾワッ
ダリルから禍々しい魔力が濁流の様に流れてくる。
『君、レヴィの事、知ってるんだ。』
レヴィ・・・。
私の意識は途絶えた。
同刻
─── アビス 中央区 タワーマンション ペントハウス ───
side 少佐
『少佐ぁ。タゲから魔力渦発生。乗り込みます?』
オフィスチェアに寄りかりモニターを監視していたディアーナから報告を受ける。
『待て、何度も言わせるな。私たちの任務は観測だ。接触する必要はないと言ったはずだぞ。』
『えー、でもまたあれやられたらこの街ヤバくないっすかぁ?ヤラれる前にヤルのがウチら流じゃないっすか。クヒヒッ』
笑ってる。ヤク中が・・・。
ちなみに私たちの部隊内での会話は全て念話で行う。秘匿性が高く雑音等で聞き逃す事が無い為だ。
『あーしも、ディアーナに賛成。この任務タルイから早く終わらせたーい。』
『お前たち、本気でアレに勝てると思っているのか?』
『ムリ。』
と、即答したのはイルガ・・・部隊で唯一の男性隊員だが今や誰も気にしちゃいない。
『はあ?イルガちゃん、それマジで言ってん?』
『格が違う。』
その通りだ。
『ベヒモスだろ。んな事は分かってるっつーの。誰も正面からヤリあおうなんて言ってねえし。だよね?ユーノ。』
『そうそう、まぁ、あーしならガチってもイケるけどねぇ。』
愛刀を撫でるユーノ。
戦闘狂が・・・。あんなナリでも抜刀術で奴の右に出る者はいない。拾った時は誰彼構わず襲いかかる狂犬だったが剣術を覚えたせいか昔に比べれば少しはマシになったか。
『おいおい、ウチだって負けるなんて思ってねえし。少佐が心配してっから敢えて搦手使うっつっただけだし。』
ディアーナがムッとした表情でユーノを見る。
『まだ新しい脚、馴染んでないんでしょ?大丈夫なのぉ?』
『脚?関係無えし。これさえ有れば無敵だっての。』
右胸をさする。
頭以外はほぼ義体化しているディアーナ。その胸にはめ込まれた魔核・・・あれもタゲと同じくフロアボス産だがタゲの場合は心臓の代替品、生命の根幹として設置されたのに対しディアーナの核は魔力を引き出す為だけに埋め込まれている。
『ディアーナ、モニターにドローンの映像を。』
『うぃー。』
モニターに監視ドローンからの映像が送られてくる。
建物内にいるようだが、透視魔術のフィルターを通す事で部屋の様子もクリアに見える。
女、獣人の女が寝ている。
その横でタゲがスイーツ?を食べている。
『女の子の部屋で何してんだこいつ?』
『ケーキ食べた後に女食べるのかねw可愛い顔してヤルじゃん。クヒヒッ。』
『黙れディアーナ、もう一度この部屋の情報をくれ。』
『うぃー。』カタカタ
部屋主はエミリーン・ロイド(19)学生。キプロスの生徒。
『あるえー?この子どっかで・・・。』
『あー、こいつエミリーンじゃん!エミリーンちゃんねるの!』
エミリーンちゃんねる?
『ああ、そうだ。WeTuberのエミリーンだ。なんで、タゲが同じ部屋に?』
ヴィーン
『少佐、ただ今戻りました。』
部屋に入るなり敬礼する小柄な女性。コレーだ。
『ご苦労だったな。』
『ハッ、それより先程の・・・。』
『魔力の揺らぎか、奴に何かあったようだ。だが、一瞬だ。気にするな。今は安定している。それより帰って来て早々すまないんだが、報告を。』
『ハッ、魔力渦がまだ終息していない為クレーターより10km地点からの観測になります。』
『ああ、続けてくれ。』
『爆心地はやはりグラマン・テクノロジーズが保有している研究施設でした。』
グラマンか。フロックス傘下の次世代兵器開発局だ。となると
『職員、患者等の関係者は1名を除いて全て行方不明。これによりダリル・アベカシスが関与しているのは間違いありません。ダリルは軍需企業ABダイナミクスの嫡男でキプロスの生徒です。グラマンは下請けのABと業務提携しており爆発した施設で化学兵器の開発を行っていたようですが、ニュースで取り沙汰されている化学反応が云々と言うのはフロックス主導のフェイクです。』
人体実験は表向きは禁止されてるからな。
『でもさぁ、グラテクの所長とか職員がインタビュー受けてる動画ニュースとかたくさんあるけど?あれは何。』
『AIだ。』
『マジで?気付かんかった。』
今は何でも生成AIで作れる。精度は年々上がって行く、見極めるのは難しくなるだろう。
『爆発に関して関係者に裏取りした所、事実を把握しているのはフロックスの幹部のみとの事です。』
『事実?何か分かったの?』
コレーが携帯端末を操作する。
『ディアーナ、開いて。』
PCに送られたデータを開封する。
・・・。
『ヒュー、これはこれは。』
『フロックスのモグラ(情報提供者)から爆心地の魔力残滓を鑑定したデータを入手しました。3体の魔力を確認されています。1つ目はダリル・アベカシス、2つ目はベヒモス、共に一致率は99%オーバー。そして3つ目が・・・レヴィアタン、となっています。』
レヴィアタンだと!?ベヒモスと対をなす超大物だ。一説によるとベヒモスとレヴィアタンは先代魔王の直属の配下でメフィスト、ヨルムンガンドを加え四天王と言われていた事もあったとか。
嫌な予感しかしない。
『ざっとですが現状で報告出来る事は以上となります。』
『ご苦労だったな。あとはこちらでやる。部屋で休むといい。』
『ありがとうございます。では、』
「あーっ!」
何だ、ディアーナの叫びが部屋に響く。
『えっ、ちょい待って!?ユーノさぁ、こないだのフロアボス配信て確か、』
『あ!マジかー、レヴィアタンだ。』
『フロアボス配信?』
『この白目で寝てる女、エミリーンて言うんですけどね、』
ディアーナから説明を受ける。
なるほどベヒモスとの繋がりは、そこか。
『ボス部屋へ入った所で配信が切れて、直後に爆発か。』
繋がったな。
『エミリーンの柄さらっちゃう?』
『えー、あーし、エミーの配信見れなくなるのヤダなー。』
『勝手に話を進めるな。先を決めるのは上の仕事だ。』
『うぃー。』
『かいっすー。』
『ディアーナ、コレーの情報をまとめて上に報告してくれ。』
『うぃー。』
『イルガ、タゲの監視を続けてくれ。何かあれば私に。』
『了。』
イルガなら気づいているだろう。
『ユーノは私とゴミ掃除だ。』
『えー、あーし、ダリルきゅんの監視が良いんですけどー。この後エッチな展開あるかもだしー、お願いイルガちゃん変わってー。』
『・・・。』
『ダメだ。行くぞ。』
『はぁい。でも、少佐と2人きりって久しぶりかもー。これはこれで。』ニヤニヤ
『ユーノ、お前少佐襲ったりすんなよ?』
『さぁて、どうしようかなぁ。』ニヤニヤ
『チッ。』
ディアーナとユーノのいつものやり取りに呆れながらモニターに映るダリルを見る。
いつの間にか食事を終えてテレビを見ている。
お前は何を考えているんだ?
『行くぞ。』
ユーノと部屋を出る。
『少佐ぁ、仕事終わったらご飯行きましょうよぉ。』
『考えておこう。』
『マジで!?やったー!ラッキー!』
イルガ以外気づいて無い様だが、向こうは私たちの監視に気付いている。
こちらに興味は無いようだがな。
・・・今のところは。
1週間後
─── キプロス学院 武術科 1年5組 ───
side イルガ
「えー、本日より皆さんと一緒に勉強する編入生を紹介します。おーい、入って来なさい。」
おじいちゃん先生に呼ばれて教室へ入る。
ヴィーン
「お邪魔しまーす。」
「・・・。」
おおおおおおおおおおおお
何故か盛り上がる教室内。
「それじゃあ、自己紹介して。」
「ユノでーす!よろしくー!」
刀を帯刀したユーノが挨拶する。偽名を使えと言われてたがそれでいいのか?
うおおおおおおおおおおお
盛り上がる教室内。主に男。
「ユノちゃんかわいい!」
「マジ付き合いたい!」
「俺も突き合いたい!」
「オタクに優しいギャル来たあああ!」
「キモオタに優しいギャルなんていねえから。」
「ユノちゃん!エッッッッ!!」
「エロ過ぎんだろ。イライラして来た、ちょっとトイレ行ってくる!」
「俺も腹痛いからトイレ行ってくる!」
大騒ぎだな。
次に挨拶するよう教師に促される。
偽名か。何にしよう。うーん。めんどくさい。
「イルガ。よろしく。」
『あんた本名名乗ってんじゃないわよ。』
『お前が言うな。』
キャーキャー
盛り上がる教室内。主に女。
「イルガ君良くね?控えめに言って彼ピにしたい。」
「何かエロいよねえ。」
「色気凄。ドキドキしてきちゃった。」
「彼女いるのかなぁ。付き合いたーい。」
「俺もイルガちゃんと突き合いたい!」
「僕も!」「ワイも!」
このクラス怖いんだが。
『イルガちゃん大人気じゃん。』
『お前もな。』
こいつら誰でもワーキャー言いそ。
チラリと室内を観察。
空席が目立つ。
少佐の言葉を思い出す。
『キプロスは異常な人気で常に定員オーバーなんだ。お前らをねじ込むのは骨が折れるかと思ったんだが、あるクラスで数人の中退者が出ていてな。すんなり登録する事が出来たよ。』
数人と言っていたが空いている席は10を超えている。
「あ、あのイルガ君教室内で飴を舐めるのは・・・」
ん?ダメなのか。
「病気で低血糖。舐めないと氏ぬ。」
「へ?そ、そうですか。病気なら仕方ないですね。」
『病気wウケるw』
・・・。
「えー、二人はたまたま同じ時期に編入が決まっただけで知り合いではありまん。学院の事もよく分からず不安でしょうから皆さん色々教えて上げてください。」
はーい!
「では、あの空いてる席へ。」
「ユノちゃん!ユノちゃん!分からない事あったら何でも聞いてね。僕が友達作りから子作りまで何でも教えてあげ、」
ガタッ ドサッ
机に突っ伏す様に倒れる生徒。
恐ろしく早い手刀。
顎先を掠めただけで優しく気絶させた。
誰も気付いてない。手馴れすぎ。
『イルガ君、君ぃ何処の組のモン?』
!?
「組?1年5組だよね?ここ。」
「ふぅん、まぁ、いいか。仲良くしようや。」
早速隣の男に目をつけられだぞ。
ユーノのパフォーマンスのせい、いや最初から怪しまれていた感じだな。
はぁ、全く面倒だ。どうしてこうなった。
回想 3日前
『上からの指示が来た。ターゲットに近づき情報収集。可能ならラボへ招待せよ。との事だ。』
『えー、近づくってこれ以上接近出来なくない?友達にでもなれっての?』
『あははは、それウケるーwディアーナならなれるって同じバケモノ同士通じ合えるよw』
『ん?ごめんユーノ、今私の事ディスった?』
ディアーナがユーノの胸ぐらを掴み睨みつける。
『久しぶりにやるか?』
『いいよ、またぶちのめしてあげる。フフッ』
『お前ら止めろ。いつまでもガキみたいに喚くな。』
『コレーちゃんのがお子ちゃまじゃん。』
あっ、禁句。コレーは外見弄りされるとキレる。
『あん?』
ほら、覇気でユーノを威圧し始めた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
『ちょっ、コレーちゃん!やめて、分かった、謝るよ。ごめんて!ちょっと!もういいでしょ!』
『謝るなら最初から言うな・・・。失礼しました、少佐、続きをお願いします。』
『ディアーナの言った事はあながち間違いじゃない。』
ん?それって
『ユーノ、イルガ、キプロス学院の生徒となりターゲットに接触!情報を集めよ!』
は?何て?
『えっ、あーし、キプロスの生徒になれんの?』
『悪いがこれも任務だ。』
『マジー!1回やってみたかったんだー!超楽しみー!』
嘘・・・だろ。ノリノリだぞコイツ。
『俺は、辞退させてもらう。』
『ダメだ。組織にいる以上命令には従ってもらう。しかし無茶な事は言っているのは重々承知だ。そこでだ特別手当を付けてやろう。』
そう言う問題じゃない!
『わぁい!学生になってボーナスまで貰えるとか最っ高なんだけど!』
頭が痛くなって来た。
『ちょっと少佐なんでこの2人なんすか!ウチも学院生やりたいし!』
『知らん。上が2人を選んだんだ。諦めろ。』
『くっ、納得出来ないし!』
ディアーナ、お前が羨ましいよ。しかしどうやって断ろうか。
『これはイルガ、お前だけに向けた秘匿念話だ。今回の人選は私が決めた。』
少佐、まぁそんな事だとは思った。
『ディアーナを外したのは全身義体だからだ。目立つからな。それにアイツは後方支援向きなのさ。』
『向き不向きならコレーが最適だと思いますが?』
あの外見。学生以外の何者だと言うんだ。
『そうだな、コレーでも良かったんだがお前同様、いやそれ以上に嫌がるだろうし、現状私の留守を預けられるのは彼女だけだ。分かるだろ?』
理解は出来る、が。
『すまないが俺はムリだ。』
『お前のその内省的な性格を変えるのに丁度良いと思ったんだがなぁ。他者とのコミュニケーションはどの職場でも必須だぞ?』
そうかも知れないが
『俺には必要ない。』
『・・・。そうかい。分かった』
ふう。
『コレー、地下のトレーニングルームに結界を張ってくれ。一番強力なヤツを頼む。』
『ハッ!了解であります!次元断層型の多重結界を張らせて頂きます!10分程お待ちを!』
転移で消えるコレー。
『さぁ。それじゃあ久しぶりにヤリ会おうかイルガ。』
少佐が魔力を練り始める。
なぜ!?
『待ってくれ、少佐と立ち合う意味が分からない。』
『私に勝てたら今回の任務は受けなくていい。だが負けたら文句を言わず任務を遂行しろ、いいな。』
はあ!?何だよそれ!少佐のそう言うとこ嫌いだ!最終的に暴力で従わせるってスタイル止めろよ!
『あはははは、やっちまったな、イルガ!こりゃ地獄だぞ!』
ディアーナの煽りが遠くに聞こえる。
ヤバい!ヤバい!
『す、すまない少佐。未熟な俺の為に気を使ってもらって感謝する。少佐の気持ちに応える為にもこの任務全力で臨ませてもらう。』
秒で手の平を返す俺。この人を敵に回しては絶対にダメだ!
『ん?そうか。そう言ってもらえると此方も助かるよ。』
良かった。危ない、危ない。危うく地獄を見るところだった。
・・・いや、全然良くないな。
『それじゃあ、休み明けから学院に潜入してもらおうか。』
任務についての説明を聞く。
基本は学生生活を送り周囲から探りを入れタゲに近づいて行く。懐に潜り込めるかどうかがこの作戦のキモだ。
俺はまぁ、無理だと思うがユーノなら可能だろう。コイツの人なつっこさなら・・・
『彼氏とか出来るかなあ。』
『ユーノ理想高いから無理じゃね?』
『えー、そんな事ないし。』
『じゃあどんなのがタイプか言ってみ。』
『好きなタイプかぁ。カッコ良くて、あーしより強くてお金持ちで体の相性がよくて、あっちも強くてえ。』
ビッチが。
『クソビッチじゃねえか。いるわけねえだろそんな奴。』
『そうかなあ?』
なんだよ。
『タゲに接触するのが目的だ、利用出来そうなら何でも利用しろ。あの学院は派閥がある様だからそれを使ってみるのもいいだろう。』
派閥?よく分からないが気になる事は事前にディアーナに調べさせよう。
ディアーナは魔力干渉能力に長けていて諜報任務はお手の物だ。
『少佐!お待たせいたしました!準備万端であります!』
『お、もう出来たのか。流石だな。礼を言う。』
『ハッ!勿体なきお言葉!』
コレーには悪い事をしたな。あのレベルの結界は酷く魔力を消費するからな。
あとでジュースでもおごって、
『それじゃあ、イルガ、行こうか。』
行く?
『どこへ?』
『トレーニングルームだが?』
『えっ、俺任務了承しましたけど?』
『ああ、こんな機会滅多にないからな。久しぶりに揉んでやろう。』
何言ってんのこの人!?
『・・・もうこんな時間か。すみません、飼い猫に餌を与えなければならないので、俺はこれで・・・』
逃げようとするが首を捕まれる。
『猫なんて飼ってないよな?』
ヒィ!
「あははははwざまぁwww」
ディアーナの笑い声。
『イルガの後はディアーナ、お前だからな。逃げるなよ。』
「やだあああああ!やああああああ!」
ディアーナの悲鳴。
ユーノは口に手を当て冷や汗を流してる。
『義体の調整をしたかったんだ。今夜はとことん付き合ってもらうぞ。ふふっ。』
終わったな。
回想おわり
あの時の事を思い出すと手に汗が滲んで来る。
そんなわけでオレとユーノはここキプロス学院の生徒になったのである。
学生か。懐かしいな。遠い昔に何処かの学園に通っていた事があった。もう名前は忘れたが・・・。
あの時は学生ではなく従者として通っていたんだったか。
ポーリン・・・、たまに思い出す懐かしい名前。顔はもう覚えていない。彼女が亡くなってどれくらい経つ?もう年を数えるのもとうの昔に止めてしまった。
俺は旅の途中偶然出会った知り合いの吸血鬼に眷属にしてもらいこうして情けなくも生き延びているわけだ。
シャロ様、今何処で何をしているのやら。それに・・・・・・
アスモデウス様・・・。




