28話 キプロス学院の劣等生 代理戦争
─── 9500階層 静かなる海 フィタゴリオン海底神殿 ───
side アバドン
「はい、どーもー、皆様コンコンこんばんはー!ダンジョン攻略系WeTuber、あなたのハートを撃ち抜くエミリーンちゃんねるのお時間でーす。イェイ、イェーイ!さて!本日は皆様お待ちかね!フロアボス戦をLIVE配信して行きまーす!」
エミリーンがガイウス先輩の構えるカメラに向かって話している。
その行為に意味があるのを知ったのは最近の事だ。あれは金になるらしい。
仕組みは分からんが。
「今私たちがどこにいるかと言うと海の底にある神殿の入口に来ています。今日はあの最凶モンスター、海獣レヴィアタンに一発入れると言う無謀な企画でございます!一説には全フロアボスの中でも最強クラス!と呼び声の高いレヴィアタンですが、もちろん討伐するチャンスがあればガンガン行く予定なので期待してて下さいね!」
レヴィアタン・・・先代魔王の時代から名を轟かせていたが、最近は表には姿を見せていない。
八柱を決める際も沈黙を貫いていたが奴が出ていたら結果は変わっていただろう。
「さて、この辺りは魔物は居ないようですね。結界が張られているから余裕かましてるんだよきっと。舐めてるとどう言う事になるか思い知らせてあげましょうwそれでは早速始めて行きたいんですが、その前にコメント見てみましょうか。えーと、キャンピングおやじさん、スパチャありがとう!何で海の底でも話せるの?って事なんですが、あー、これ良く聞かれるんですけどスキル自然耐性持ってるからでーす。良い子は普通に溺れるからマネしないでね!次は、ホモサピ鉛筆さん、スパチャありがとー!今回もアバドンさん無双するのかな?しますよー!期待してて下さいね!」
カメラがこちらに向きを変える。
エミリーンが鬼の形相で手を触れと念話してくる。
やれやれ。仕方なく手を振ってやる。
「アバドンさん、今日もヤル気満々でーす!」
ふう、面倒だが、撮影に協力する代わりにフロアボスとヤリ会えるなら安いものだ。大抵のボスは結界を張って拠点を隠蔽しているからな。エミリーンがどうやって拠点の位置をを割り出しているのは知らんが付いて行けばいいだけだ。
入学式の後、ガイウス先輩がフロアボスの拠点攻略を定期的に行っているのを聞いた俺は魔術科代表として参加したい旨を彼に伝えた。
学院で魔術の探求をするのも面白いがやはり実践で試してこそ理解も深まると言うもの。
「そうか、エミリーンに伝えておこう。」
なぜかは知らんがリーダーはガイウス先輩では無くエミリーンと言う性格のキツイ女だった。
彼女の撮影に協力すると言う条件付きで参加が許可される。
「いい?アバドン、私がこのチームのリーダーなんだから私の言う事には従ってもらうわよ。」
「ああ。」
この女、特に突出した力は無いようだが・・・何か"凄味"を感じる。
「ドロップアイテムは基本換金して均等に分けるけど欲しい物は話し合いの後あげるから言ってちょうだい。OK?」
「ああ。」
「Good.」
どうやらこの娘、金には興味が無いらしい。
何が目的でこんな事をしているのか一度聞い事がある。
「承認欲求を満たすためかな。」
「そうか?お前には欲が無い。・・・ボス戦の前と後に奴らと何か話しているだろ?それが関係しているんじゃないか?」
念話なので内容までは知らんが。
「・・・ふぅん、鋭いね。・・・私ね、探し物をしているの。」
「探し物?レアアイテムや武器か?」
「まぁそんなとこ。」
「その為にボスから情報を集めていると?」
「そうね。ネットで調べられる情報なんてたかが知れてるからね。」
「そうか。」
悲しそうな顔を見てそれ以上追求するのは止めた。
「よし、移動中に切り替えた。中に入ろう。」
「OK、アバドン、とりあえず撮影再開したら暴れてくれて構わないから。ボス部屋前でまた休憩ね。」
「ああ、了解した。」
「ガイウス、今回も戦わなくていいからアバドン追って、私が実況するから。」
「分かった。だが状況しだいでは加勢したいのだが構わないか?」
「ええ、でもその前に休憩モードにしてね。」
「分かってる。」
「ふぅ、OK・・・それじゃあ、行こうか。」
─── キプロス学院 3階空き教室 華宮 修羅一家の拠点 ───
side へスター
ウィーン
自動扉が開き中へ入る。
空き教室にはソファーやテーブルが置かれラウンジの様になっている。
えっ?あれってバーカウンター?前に来た時には無かったはずだ。
後ろの棚にはワインやウィスキーなどの酒瓶が所狭しと並んでいる。
ガールズバーかよ。やりたい放題だな。
問題にならないのは学院の関係者に"伝手"でもあるのだろう。
修羅は取り込み中のようだ。カウンターに座り女にワインを頼む。
女は私を無視しグラスに酒を注ぎ修羅の元へ持っていく。
自分で注げって事か。
ソファにもたれる修羅はグラスを受け取ると一息に飲み干した。周りには仲間が2人と女の子が3人、それにシャオ。片手で男の胸ぐらを掴み持ち上げている。
「もうしましぇん、ゴホッ!か、勘弁してくじゃしゃい!ガハッ!」
シャオが修羅を見る。
修羅が顎で合図をすると手を離した。
ドテッ。
「ガハッ!ガハッ!ハァハァ、ヒューヒュー・・・。」
「もう、二度とするんじゃねえぞバカタレが。」
「しゅ、しゅみましぇんでした・・・。」
「次は無いからな?」
「ヒィィ!わわ分かりましゅた!」
顔をまん丸に晴らした男がヨロヨロと教室を出ていく。
「あははは!わかりましゅた、だってwウケるーw」
「シャオ君容赦ないよねえwでもそう言うとこ好きーw」
取り巻きのビッチ共が囃し立てる。ウザ。
今出ていったのは学院でドラッグを捌いてた3年の生徒だ。闇サイトで仕入れた薬を知人の生徒相手に売っていたらしい。何で知ってるかって私が調べたから。
「この色、粗悪品もいいとこだな。こんなもんに高い金払うバカがいるってのが信じらんねえよ。」
「この学院の生徒は金持ちが多いからな。甘い誘惑には直ぐ飛びつくのさ。」
ボッ。
シャオの魔法で葉や粉が一瞬で燃え散る。
「ボス、このCkエイドってサイト、実店舗を持たないネット専門のショップみたいですね。一応住所は載っていて実在してますがテナントが入ってる形跡はありません。」
倉庫からダイレクトで商品を届けるわけね。どうせ仕切ってるのは末端の半グレだ。倉庫だってマンションの部屋でも借りてんでしょ。
「はぁ、クソみてえなシノギだがウチのシマ、俺のいる学院でやられるのは気に入らねえな。一応ウチの組、ドラッグ禁止だしな。」
こいつそういう所はクリーンなのよね。
私にも手を出さないし(私に魅力が無いからじゃないわよね?)。
「クスリの他にもカードやらアカウントやらありとあらゆるモンを売ってるみたいだ。ははっ、宝石や時計なんかもあるぜ。」
盗品か。
「ヘス、待たせたな。仕事だ。こいつのヤサを突き止めろ。報酬はいつもの5倍出す。」
PCを私に向けて画面を叩く。
ワインを呷る。
「ふぅ、答えはNOよ。10倍は貰わないと。こいつら相当溜め込んでる。20倍でもいいくらいだわ。」
女たちが私を睨む。怖。
お前らはガールズバーの店員なんだから尻と愛想振りまいて酒でも注いでろよ。
「ボリ過ぎだろ、へスター。ボスが優しくしてるからって調子乗ってっと、」
「おい、黙れ。」
「す、すんません、ボス!」
頭を下げる男。
「・・・いいだろう。これまでの仕事振りを鑑みてもお前は使えるからな。3日以内だ。」
「リョーカイ。」
「ヘス、修羅の扱いが上手くなってきたじゃねえか。くくっ。」
「私は正当な報酬を要求しただけ、いつもが安すぎるのよ。」
「ははっ!だってよ修羅。」
「安く使って悪かったな。ケッ。」
すねた顔かわいい。
え?私今なにを・・・。
違う、だって元はと言えばこいつがあの時。
─── 回想 キプロス学院 入学式後のキプロスアリーナ ───
「ヘスター、私飲み物買ってくるから先に席行ってて。」
「ありがとう。」
友達と別れアリーナの席へ向かう途中。
「やあやあ、始めまして。君、へスターさんだよね?」
笑みを浮かべた男が近付いて来た。後ろで周囲を警戒しているのは仲間か?
「えっ?私ナスターシャだけど?誰かと間違えてますよ?それじゃあ。」
ゆっくりと歩き出す。悟られないように慎重に・・・。
こんな怪しい男、スペンサー絡みに違いない。早く逃げなきゃ!
「待てよ。」
!?
「何ですか?」
「身体、震えてるよ?」
くっ!
人混みに向かって走り出す。
流石にここで捕まえようとは思わないはず!
「ん!?」
待って、何これ、体が重い。体全体に重りを付けているような。体がふらつく。
ヨタヨタしていると、男が肩を掴み、
「君大丈夫?具合悪そうだけど?あっちに救護室あったから送るよ。」
「ん・・・。」
声が出ない!?喉が痺れてる。これも魔法なの!?
為す術なく男に手を引かれていく。
救護室を過ぎトイレへ・・・。
「離せ!・・・えっ?」
体は重いが声は出せるようになった!
「スペンサーの居所吐いてもらうぜ。断言するがあいつを庇っても良い事は1つも無いぞ。」
「知らないよ!そんなの!」
「シラを切るつもりか。まぁいい。体に聞くから話したくなったら話せ。」
体にって・・・、や、やだ。
「いや!離して!私ホントに何も知らないから!ちょっと、痛い!」
鏡越しに男と目が合う。
「あっ?人払いの結界を張ったのに何で生徒がいるんだ?」
「お願い!助けて!」
せめて警察を呼んで来てくれれば。
ゴーーーッ
私に構うことなく手を乾かす男。
「ちょっと!あなた!何スルーしてるの!?私襲われてるのよ!?助けて!お願い!」
叫んでもこっちをまるで気にしていない。嘘でしょ!?
「いやあああ!」
やだ!こんなとこで知らない男とするなんて、いやあ!
「ねえ!お願い!助けて!助けてよう!」
お願い!お願い!
「兄ちゃん、この事言ったらどうなるか分かるよなぁ?」
ナイフを男の首に当てている。
もうダメだ。
ブシュッ!シャアアアア。
えっ?何、ナイフを突きつけていた男の首から血が床や壁に・・・。
ウッ・・・。
「てめぇ、どこの組の者だ!」
体が軽くなる。が力が入らない。
「1年2組だバカヤロー。」
ドガァン!
「ヒッ!」
トイレのドアを突き破って男が壁に、めり込んでる・・・。
「おい!何やってんだ!」
外で見張っていた男が入ってき
ボガァン!
!?
「・・・。」
男の上半身が天井に刺さり足がブラブラ揺れている。
何これ。コイツ何したの?
理解出来ない。一瞬で3人を・・・。理解出来ないがヤバいってのは間違いない。身構えていると・・・。
ガラッ ドッ
天井に刺さっていた男が落ちた。
男と目が合う。
「きゃああああああああ!」
男は口笛を拭きながら出ていってしまった。
警察が来る前にトイレを離れた私は冷静を装いレクリエーションを鑑賞。
その後友達と別れてからダリルを探す。
本当はチャムさんに相談したい。あの力とあのスピーチには素直に感動した。彼女ならば私を助けてくれるはず、いや取り巻きに加えて貰うだけでもいい。何せ一躍有名人となった彼女の知り合いにはあのグローバルカンパニーDHの社長がいる。それに加え常にチャムさんをガードしているSP。つまりチャムさんと近しい友人になればセキュリティレベルが上がり安全に学院生活を送れるわけだ。
まずはチャムさんの知り合いのダリルに接触してそこからチャムさんにコンタクトを取る。これしかない。
しかし、すぐに半グレ連中に見つかりダリルが暴行を受けてしまう。
ゴッ!ズザザー!
蹴り飛ばされるダリル。
「やだ!もうやめてよ!その子死んじゃう!」
「お前が吐けば止めてやるよ。はははっ。」
ドガッ!
頭を蹴飛ばした。
「やだ!もう止めて!うぇ、ヒック。」
涙が溢れて止まらない。ダリルがこうなったのは私のせいだ。転がる彼の体を包むように被さる。守らなきゃ。このままじゃ本当に。
「だから話せば止めてやるって言ってンだろ?」
髪を掴まれて引き離される。
「どこの誰かは知らねえけど悪ぃな。恨むならあの女を恨みな。」
男が足を振り上げダリルの頭目がけて、
「いやあああ!!」
ドンッ!
目を開けると顔が廊下にめり込んだ男とモヒカンに首を絞められ泡を吹いてる男の姿が。
「うわ、汚ねえ。ヨダレが手に。」
男を放り投げるモヒカン。
「お前大丈夫か?」
「・・・ダリ、ル。ダリル!」
傍に駆け寄り声を掛けるが反応はない。
「ダリル、ねえ・・・起きなさいよ!ねえってば!」
揺らしても反応はない。
「いや、そいつもう死んでるぞ?」
私の意識はここで途切れた。
それからシャオと名乗る男に助けてもらい流れで事情を話してしまう。
何でも通路に人避けの結界が張ってあるのを不審に思いフラリと入ったそうだ。
「俺入ったら行けないとこには絶対入るたちだからw」
今回はその性質に助けられたわけだ。
私が半グレに狙われた理由を話すと
「マヌケだなあ。それにしてもダリルって奴はトバッチリで死んだのか。かわいそ。」
うっ、その通りだ。何も反論出来ない。
私と出合わなければ彼は今頃楽しい学院生活を謳歌していた事だろう。罪悪感に押し潰されそうになる。
だけど本当に死んだかどうかは分からない。あの事件以降彼は忽然と姿を消した。
「お前を狙ったのはエシェロンつうマフィアの下っ端だ。エシェロンは修羅が潰したはずなんだがまだ細々と続けてたんだな。」
マフィアを潰した?いやこいつなら普通にやるか。
彼は仲間と事業を行っているようで私がスキルを使い協力するなら私の厄介事を解決してくれると言う。
私のスキル、ハッキング・・・何の取り柄もない私が唯一誇れるものだ。
これまでも教育機関のネットワークに幾度も侵入しテスト情報を盗んできた。
今回も余裕で首席入学するはずだったのに・・・満点は気が引けて3問程わざと外した。それをあの子は、チャムさんは満点をとってみせた。
格が違う。人は見かけによらない、傑物とはああいう人の事を言うのだ。私とは生きてきたバックボーンが違うのだろう。
私の家は貧しく母は病弱で父は私が物心着く前に亡くなっている。酒に酔って酒場で喧嘩、素性も分からない男たちに殴られ続けたのちに絶命したと聞いた。
底辺が底辺を生む悪循環・・・。泥水をすすり続けてきた人生だった。このスキルが発現するまでは。
ある日突然魔力回路にアクセス出来るようになった。いや違うな、そもそも能力は昔からあったのだ。使う場が無かっただけで。
この街の急激な発展が私にとって追い風になったのだ。
この能力は金になる。
すぐにダークウェブ(軍需企業フロックスが開発した匿名性、情報通信の秘匿性の高い闇サイト)にアクセスし、サイバー攻撃用のソフトウェアをクラウドで提供する闇ビジネスを始める。ソフトをハッカーたちが買い企業を攻撃、身代金を受け取ると言う流れだ。だが顧客がヘマをして捕まり芋づる式に私も逮捕、拘留されてしまう。まぁ、証拠は残さないようにしてたからすぐ保釈されたけど。
でも、そこから警察にマークされ始めた為ダークウェブに潜るのは一旦休止(学校に通う為の資金は確保済)し学生らしくバイトを始めた。そこで会ったバイト仲間がカレンだ。ただの馬鹿なギャルかと思ってたけどスペンサーみたいな半グレ連中とヤバい事してるなんてね。騙された私がマヌケだったのか。
そうして今はこいつらの仲間、いや、一味に加わってしまっている。
でも、またいつ私を襲った連中が現れるかわからないし、ボディガード代わりに使ってやろうじゃないか。
チャムさんにコンタクトを取るのも難しくなってしまったからね。
まぁいいか。お金も稼げるし。
彼らの依頼をこなしつつスペンサーとカレンの居場所も突き止めなければ。私を利用した事後悔させてやる。
ダリル・・・
ダリルとはあの場で別れてしまってからは連絡は取れていない。
亡くなったと言う話もなく、先生に聞きに行くと
「ああ、ダリルくんは車の事故にあってね、今は実家で療養中との事だ。始業式の帰りの事故で皆とは顔合わせする前だったからあえて言わなかったんだが。君知り合いだったのかい?」
事故!?
「あ、いえ。少し気になっただけで。」
「そうか。でも順調に回復してるそうだからそのうち復学するよ、きっと。」
「は、はぁ。」
車の事故?生徒同士の争いだとマズいから隠蔽したのか。どこまで信じていいか分からない。あの瀕死の状態で本当に生きてるのか?
調べて見たがどの病院にもダリルの名前はみつからなかった。
今はあの教師の言葉を信じるしかない。
ダリル、あんた今どこにいるの。
────────────────────
2ヶ月前
side ???
「本当にいいんですね。」
「くどいぞ。私が許可したんだ。親である私がな。」
「・・・分かりました。おい、準備しろ。術式を開始する。」
「出来の悪い息子で散々苦労を掛けてきたんだ。最後に親孝行してくれよ・・・さぁ、"ダリル"生まれ変わろう。」
───────────────────
「同調率16パーセント。これ以上やると言語野、視覚野に影響が、」
「構わん。もともとコイツには備わっていなかったモノだ。テレパスと魔力感知があれば事足りよう。同調率を上げろ。」
「しかし、このままでは彼の人格が・・・いくら何でもこれは、あまりにも非人道的で」
「そうか、分かった。君はクビだ。他の者に引き継がせよう。」
「へ?・・・!?も、もも申し訳ありません!寝不足で頭が回っていませんでした!前言は完全撤回致します!同調率上限まで、いや限界を超えても上げさせていただきまぁ↑す!」
「よろしい。その調子で続けてくれたまえ。」
「Sir!YES、Sir!!」
───────────────────
ピーピーピー
「魔核も大分安定してきたな。」
「先輩この魔核の持ち主フロアボスって聞きましたけどマジっすか?」
「ああ、お前は入ったばかりで知らないのか。コイツはベヒーモスって魔獣の核だ。」
「え、ベヒモスって9千階層で暴れ回ってたアレですか?」
「よく知ってんじゃん。」
「ネットニュースになってましたよ。結界の呪縛が無くなって縄張りを広げようと下層に向かってたとかなんとか。でも何か途中で倒されたって聞きましたけど。」
「一応公には、他のフロアボスにやられたって話しだけどよ。ここだけの話、本当はここの親会社のタスクフォース義体化部隊が出て退治したらいんだよ。で、解体して今ここに収まってるわけだ。」
「義体化部隊って、ネットでバズった全身サイボーグの特殊部隊の事ですか?」
「動画のやつか?あんなフェイクとは別物だ。敵を殲滅する為だけに作られた兵器って話だ。」
「流石に盛り過ぎっしょwそれ都市伝説超えてますよw怖っ。」
「事実は小説より奇なりってな。どこまでホントかは分からんけど、この子にSSランクの魔格が埋められたのは事実だ。」
「お前もついてないなぁ。これなら氏んでた方がずっとマシだ。」
「ほら、お喋りは終わりだ。仕事仕事。」
「うぃーす。」
──────────────────
「未だ意識は戻らずか。」
「同調率は62パーセントで安定。傷は自己修復されており脳波も異常ありません。」
「確かに見た目は健康そのものだ。ふむ、君少し下がっていなさい。汚れてしまうぞ。」
スッ カチャ
「な、何を・・・」
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
「わあっ!?」
「おお、素晴らしい、血が吹き出す前に治っているのか。一瞬だな。しかし弾丸はどうなったんだ?」
「え、あ、す、推測ですが外部に転送されているようです。」
「そうか。しかし銃弾を打ち込まれても脳波に乱れ無しとは、コイツは起こすのに時間が掛かりそうだ。」
──────────────────
「ああ、今日も可愛いねぇ。僕のキスで目覚めさせて上げるからね!チュッチュ!ハァハァ、起きないねぇ。仕方ない今日もいいよね・・・体キレイキレイしないといけないからね。ご開帳~。」
ジー ゴソゴソ ポロリ
「出たー!ハァハァ、凄っ~。ゴクリ。これは医療行為だから、起きない君が悪いんだからね!ハァハァ、いただきまーす!」
ヴィーン
タタタッ
「えっ、な、何だ君たちは!ここは職員以外立ち入り禁止だぞ!」
「黙れ変態。お前は今日付でクビだ。」
カチッ「警備員!侵入者だ!・・・侵入者がここにいる!おい!早く・・・」
「無駄よ。みんな寝てるわ。」
「そ、そんな・・・。くっ!ふ、ふざけるな!僕はこの研究の第一人者だぞ!突然クビだなんて、そんな横暴許されるわけないだろ!」
「あー、そういうのはいいから、てかその汚いのしまいなよ。」
「あははははっ!ち○こ丸出しで、この研究の第一人者だ、キリッ!だってマジうける!あははっ!」
ゴソゴソ
「だ、黙れ。お前らタダで済むとおもうなよ。裁判で白黒付けてやる!」
「おじさんさぁ、悪いんだけどウチらそんな暇じゃないんだよね。」
カチャ
「は?嘘だろ・・・や、やめろ!」
「ウチがサクッと裁いたげる。判決、主文、被告人は死刑。」
「や、やあー!ママー!」
パスッ ドッ
「処理完了。クリーニングは⋯了。おい、撤収だ。」
「少佐ぁ、これ、このままでいいのかなぁ。ポロリしちゃってるけど。
」
「でっか・・・」
「掃除屋に任せておけ。行く・・・ぞ。」
「どした?」
「こいつ今一瞬反応が・・・」
「少佐がエロすぎてち〇ぴくしちゃったのかなあ?」
ゴッ
「痛ったあーい!」
「あくび、嚥下などの脳幹反射では?」
「それだ、少佐の洞察力は異常だからね。」
「違う・・・魔力が・・・いや、コイツは任務には関係無い・・・。行くぞ。」
「はーい。じゃあね、ダリルきゅん。」
ヴィーン
───────────────────
「心拍、血圧共に異常無しっと。」
「この子ここに来てどれくらい経ったっけ?」
「2ヶ月ちょっとじゃない?」
「もうそんなになるか、こりゃ実験は失敗かな。それにしても瀕死の我が子を実験体に使うって・・・この子の父親も中々ですね。成功したら金になるのは分かりますけど。」
「それ話すの俺の前だけにしとけよ?マジで。」
「分かってますよ。」
「そもそも実験に使うつもりなんて無かったんだよ。他の実験体が適合せずに亡くなってたまたま自分の子が死にかけの状態でうちの関連病院に運ばれて、どうせ死ぬならって移植したらたまたま適合しちゃって・・・。」
「いやいや、いくらヤバい状況だからって普通息子にそんな事しませんてw」
「まあ、異常だわなw」
────────────────────
「ダリルお前いつになったら目を覚ますんだ?」
「何やっても起きないっすね。頭を爆破した時は死んだんじゃねって思ったけど無傷w」
「ベヒモスは回復に特化した魔獣だからな。それにしたってあの修復速度はヤバいけど。」
「今日は魔物の巣に放り込むんだと。」
「容赦ねえっすね。まぁ何が切っ掛けで覚醒するか分かりませんからねぇ。あっ、先輩ちょっと休憩してきていいっすか。」
「ん?別にいいけど。」
「今からエミーちゃんねるでフロアボスLIVE」始まるみたいなんでw」
「マジ?俺もあれ好きなんだ。あー、よし、移送までまだ2時間以上あるしここで見ようぜ。」
「うはっ、いいっすねー!じゃあコーヒー持って来ます!」
「ああ、悪いな頼む。さて今回はエミーちゃんどこに凸すんのかな?・・・なになに、海の神殿に転移してみた、レヴィアタンに一発入れるまでかえれまてん、ってまた凄いとこ行くなぁ。レヴィアタンてSSクラスじゃなかったか?」
ピクッ
─── フィタゴリオン海底神殿 ボス部屋前 ───
side エミリーン
目の前にそびえる巨大な扉。10メートル以上あるだろうか。魔力の紋章が淡く光を放っている。
「はい、と言うわけでレヴィアタンのいるボス部屋前までやってまいりました。途中敵に囲まれた時はどうなる事かと思いましたけどアバドンさんか無双してくれたおかげて余裕でクリア出来ましたー!」
カメラをアバドンに向けるガイウス。
『笑顔でポーズ!』
『クッ・・・、』
引きつった笑顔で拳を突き上げるアバドン。
「はい!ではこれからレヴィアタン攻略して行くんですがその前に、コメント読みでーす!アホ毛のアンさん、スパチャありがとです!えーっと、ガイウスさんの大ファンなんですが今日は戦わないんですか?もちろん戦いますよ!ここから先は今までとは別次元ですからね。総力戦で臨みたいと思います!」
ここまで雑魚しかいなかったのが不気味だ。ボス部屋に戦力を集中させてるパターンか?警戒しなければ。
「次は、ポテチ食べたいさん、スパチャありがとでーす!ウズラちゃん早く!と言う事ですので早速呼んでみましょうwサモン!ウズラ!」
両手を上げる。
ぽわん。
「お、お呼びですか?マスター。」
ケモ耳使い魔のウズラが現れる。
「ウズラー!」抱きついて頬ずりする。
別にこんなスキンシップ必要ないのだがこれをやるとリスナーの豚共が喜ぶのだ。
「ひゃあ、マスター、やぁ。」
「ぶひいいいい!ウズラたんktkr!」
「最高に尊くてエモい。」
「これを見に来た。」
「二人とモフり合いっこしたい。」
「困惑するウズラすこ。」
「レズレズじゃのう。」
ほらね。
一通りウズラをいじった後カメラを渡しガイウスは装備を整える。
その間にスパチャ読みを続けていく。
「次は、黒にゃんこさん、スパチャありがとう!キルゾーンに踏み込んでいるわよ。・・・んー、ヤバいって事かな?まぁ、何とかなるでしょう!もちろん、今回も無理だと判断したら即時撤退するからね!」
これまでフロアボス戦は公式で14戦。そのうち撃破3回で撤退が11回となっている。
が、実際は22戦18勝4敗だ。DFLなら余裕で全勝出来ていただろうけど・・・。
なぜ勝率を誤魔化しているのかと言うとそっちの方が再生数が稼げるからだ。失敗を笑うなんてロクなモノじゃないがウケるんだから仕方ない。
それに敗走を装う事でカメラを止められる。フロアボスを詰問する様子なんて配信出来ないからね。
アバドンと言う協力者が現れた事で難易度の高いフロアに挑戦出来るけど今回は流石に厳しいかな。
難度はSS。今までのボス戦とは比べ物にならない。が、それだけ得られる報酬(情報)には期待が持てる。
二人にバフを重ね掛けしていく。
ポジションは前衛にアバドン、遊撃ガイウス、後衛に私が付く。
「準備OK?」
アバドンとガイウスが頷く。ウズラは震えているが最新のカメラや機材は手ぶれ補正が優秀だから綺麗に撮れているだろう。
「さあ!それじゃあレヴィアタン討伐スタート!」
手を扉にかざし魔力を注ぎ込む。
この辺のギミックはみんな一緒なのよね。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
地響きを建て巨大な扉がゆっくりと開いていく。
中は真っ暗だ。
アバドン、ガイウス、私、ウズラの順に中へ進んでいく。光魔法で周囲10メートル程照らすが広すぎて壁すら見えない。
「あ!ま、マスター、魔力通信が乱れて配信が止まっています!」
結界の影響?
小石を拾い扉の外へ投げると結界が張られているせいか弾き返されてしまう。もう一つ小石を拾い転移させようとするが反応しない。
転移阻害の結界だ。マズいわね。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
扉が閉まっていく。
「サモン、天狐。」
あいつ苦手なんだが仕方ない。
ぽわん。
妖狐が現れる。
「エミー、最近呼んでくれないから寂しかったぞ。」
今度は逆に抱きつかれる。
「ちょっ、。ごめんて、でも今は時間無いんだ。この結界の解析お願い!」
天狐は魔力干渉が得意でどんな術式も解除する力を持つ。
「いいけどちゃんと報酬は貰うわよ。」
このエロ狐またいやらしい事を要求するつもりか。
「ムフフ、って何これ?マジー?あー、ムリムリ。これ私の守備範囲外だわ。」
へ?
「いやいや、お前これまでもボス部屋の術式破って来ただろ!何とかしろよ!」
「怒鳴られたってムリものはムリ。これ古代の超ハイレベル術式だから。100パー無理だと思うけどボス倒すしかないね。それじゃ。」
ぽわん。
逃げやがった!
「あのエロ狐!使えねえ!」
「あ、あのマスター、撮影続けますか?」
撮影して後で公開するってのもアリだけど、今回は・・・。
「いや、やめとく。帰っていいよ。」
頭を撫でる。
「わ、分かりました。マスター!お気をつけて!」
ぽわん。
バイバイ、ウズラ。生きてたらまた会おうね。
ボワアアと壁が光を帯びていく。扉と同じように光り部屋全体を浮かび上がらせる。
かなりの広さだ。キプロスアリーナより広いんじゃ・・・。
ボッ ボッ ボッ
壁にかけられたトーチに炎が灯されて行く。
パァァァ
床に魔法陣が浮かび上がり・・・。
モンスターがせり上がって来る。
あれがレヴィアタン?
甲冑を付けた女がこちらを睨んでいる。
鑑定スキルでステータスを見る。
名前 マルグリッド
種族 魔神
レヴィアタンの側近
側近・・・だと!?
何て圧力だ。
あいつを倒さないとレヴィアタンは現れないって事か?
「クククッ、露払いでこれか。こいつぁ、面白い!」
アバドンが攻撃形態に変化していく。これが奴の本来の姿。リスナーには刺激が強いので普段は封印しているが今は配信も出来ない状況だ、問題ないだろう。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
アバドンが魔力を高めている間マルグリッドは微動だにしない。
余裕なのか、制約なのか。
「先輩悪いが、手出し無用で頼む。」
「ああ、構わない。この状況をお前が渇望していたのを知っているからな。」
「痛み入る。」
アバドンがマルグリッドに近付いて行き、消えた。
ドドドドドドドドドドッ
障壁越しに伝わる衝撃波。
ドンッッッ!!
壁に叩きつけられたのはマルグリットだ。アバドンのラッシュを受けて身動きが取れないでいる。
一呼吸の間も無く叩き込まれる連打。しかも一発に込められる重みがハンパじゃない。魔力を両腕に集め魔装を極限まで高めているようだ。マルグリッドの圧力が一瞬弱まる。
「メギドフレイム・レジサイド」
ドドドドドドドドドドドドドドドド
隙を見逃す事なく容赦なく魔法を放つ。あの技は模擬戦でガイウスに使った技だ。
しかも覚醒フルパワー状態での一発。
「やったの?」
近くにいるガイウスに聞く。
「まだだ。」
見ると鎧は所々砕けているが中身にそこまでのダメージは無さそうだ。
あの攻撃を受けて無傷・・・。
形勢は逆転しマグリッドの剣戟に防戦一方のアバドン。
ズバババババッ!
魔装の硬度が落ちているせいか剣が通りやすくなっている。斬撃で体中傷だらけだ。
『ガイウス、このままだと!』
『アバドンのやつ何か狙っているな。』
ズシャッ
マルグリッドの剣がガイウスの腹を貫く。
「アバドン!」
剣を引き抜こうとするが抜けない。腹に力を込めているんたまろう。
マルグリッドの首を掴み強引に引き寄せ鎧の砕けた右胸に手刀を突き刺す。
ザシュ!
「メギド・バースト・ストリーム!」
ドドドドドドドドドドドドドド
超魔法の連発で大爆発が起きる。
二人が爆炎に包まれる中聞こえて来たのは
「どうだあ!直は効くだろ?ハハハハハッ!」
アバドンの高笑い。
内側からの爆裂魔法。凄過ぎる。
マルグリッドの半身が無くなっている。胸の奥には宝石のようモノが紅く輝いている。
ギュオン
一瞬で再生される肉体。
「むぅ、核には届かなかったか・・・。すまん、先輩、後は頼む。」
ガクッと崩れるアバドン。
その瞬間マルグリッドが腹に刺さった剣を掴みアバドンを蹴り飛ばす。
壁に叩きつけられ床に落ちる。もう意識は無い。
瞬時に距離を詰め剣を振り上げるマルグリッド。剣の表面を流れる凄まじい魔力の渦。これで決めるつもりだ!
クソ!頭では無理だと分かっているが体が勝手に動きアバドンに物理障壁を張る。
キィィィィン!
打ち下ろされた剣はガイウスの刀によって阻止された。
はぁー、危なかった。
「やらせるわけにはいかんな。後を頼まれてしまったからな。」
ガイウスとマルグリッドの戦いが始まる。今のうちに回復を。
「サモン!天狐!」
ぽわん。
「ちょっとー、何よ、解除はムリって、」
「黙ってそいつにヒール掛けて!」
「はぁ?エミーがやればいいでしょ?私忙しいんだけど?」
イラッ 忙しいわけねえだろ。
「私はガイウスの援護するから、頼むわね。」
「えっ?てか、死にかけてんじゃん。ム」
「ムリっつったらコロす。こいつが氏んだらコロす。」
睨みつける。
「・・・分かったわよ。もう何なのよ。」
ブツブツ言いながらヒールを掛け始める天狐。
助かる確率は低いだろうが出来る事はしておきたい。
ガイウスにバフを掛けていく。マルグリッドにはデバフを掛けるが耐性があるせいか効きが悪い。
アバドンとの戦いで魔力をかなり消費しているはずだが、それを全く感じさせない動きでガイウスを圧倒している。
ズガンッ!
今のは雷撃系の魔法!?あいつ魔法も使うのか!
斬り合いの合間に降り注ぐ雷の雨。
本来ならもう転移で逃げている段階だ。
「凄まじいな。オリハルコンの刃がボロボロだ。これは、自力での勝ちは難しいか。」
チラリと私を見る。
「アル様、すみませんがお力をお借りします。」
今、何て・・・。
ガイウスがインフィニティバッグから剣を取り出す。何だあの剣は?初めてみる。
!?ガイウスの気配が変わる。
全ステータスが一気に上がった!?
「シューティングスター」
!!
ズガガガガガガガッ!
剣筋が全く見えない!
マルグリッドは反撃どころか防戦一方だ。
ズバンッ!
横なぎ一閃。
核を破壊されたマルグリッドは淡い光となって消える。
圧倒的過ぎる。何で今まで隠してた?あの剣は一体・・・。
聞きたいことは色々あるがその時間は無さそうだ。
魔法陣から巨大な竜種が現れる。あれがレヴィアタン・・・。
想像を軽く超えて来る。恐怖の象徴。本能が逃げろと警鐘を鳴らす。転移が使えたらとっくに逃げてるよ。
ガイウスが剣を構え重心を下げる。
「ギャアアアアアアアアアアアアアア!!」
レヴィアタンの咆哮。
ビリビリッ
な、何だよアレ。気を失いそうになる。意識を保つので精一杯だ。精神防壁だって張ってるのにこれか。ヤバ過ぎる。
「う、嘘でしょ!?」
次々と出現する魔法陣。20はある。その全てからマルグリッドが現れる。
「暇つぶし・・・か。」
アバドンが苦しそうに声を出す。
そうか、私たちなんてハナから眼中に無かったんだ。
「シューティングスター」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
─── アビス郊外 フロックス社所有施設 地下研究所 ───
side ダリル
『あなた、いつまでそうしてるの?』
「いつまで?ずっとだよ。ここは居心地いいからね。外は怖いし。」
『怖い?何が?』
「半グレとか、親とか世間体とかいろいろだよ。てかお前誰だよ。うるさいから話しかけんな。」
『ふぅん、なら私が貰っていいよね?』
「貰う?何を?」
『体。』
「あ?何言ってんだ。」
レヴィアタンに一発入れるまでかえれまてん、ってまた凄いとこ行くなぁ。レヴィアタンてSSクラスじゃなかったか?
『レヴィアタン。』
「おい、さっきから何言って」
『ふふふっ。またヤレるんだぁ。ああ、素晴らしい。』
ダンッ
─────────────────
─── 同刻 フィタゴリオ海底神殿 ボス部屋 ───
side エミリーン
12体のマルグリッドを倒した所でガイウスの攻撃が止まる。背中には2本の剣が刺さっている。
1体倒しても直ぐに補充される。20体1が永遠と続く。勝てるはずが無い。
ガイウスの周りを囲んだマルグリッドたちが一斉に剣を振り上げる。
終わりだ。ガイウスが倒された後私たちも殺される。ここまでか。
でも、私、結構頑張りましたよね?
・・・・・・。
もう、一度会いたかったなあ。
・・・・・・・・・。
?
マルグリッドたちは剣を振り上げたまま動かない。
「ギャアアアアアアアアアアアアアア!!」
!?
レヴィアタンの咆哮!
フッとマルグリッドやレヴィアタンの姿が消える。
!?何、何で!?消えた・・・?
部屋のトーチも魔力紋も消え部屋は暗闇に包まれる。
「天狐!ガイウスに付いて!」
「今度はあいつかよ。使い魔使いが荒いったら」
「早く!」
「はいはい。」
倒れているガイウスにヒールを掛ける天狐。
私は光魔法で室内を明るくする。
「あれは何処に消えたのだ?」
アバドンの質問に私は答えを持っていない。
「分からない。けど、助かったみたい。」
入ってきた扉を見ると魔力の紋章が現れていた。恐らく魔力を流せば開くだろう。
討伐は失敗だが、引き返す事は出来るらしい。
「ガイウスが回復次第撤退よ。」
「・・・。」
なぜ、レヴィアタンが戦いを止めたのかは分からないが命は助かった。
まだ諦めなくていいんだ・・・。
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同刻、アビス郊外の山岳地帯が半径200キロに渡って焼失した。
警察の発表では貯蔵施設に保管されていた危険化学物質が何らかの原因で化学反応を起こし爆発した、そうなのだが、施設やその他周辺まで跡形もなく消えている為、原因の詳細を特定する事は困難だとしている。ネットでは、あの辺一体の土地をフロックス傘下の企業が所有していたなどという情報が多数寄せられており兵器開発中の事故なのでは?と言う話で盛り上がっている。真偽は不明だが。
レヴィアタンが消えた直後に起きた事故・・・。
関係あるのか無いのか、私には知る由もない。
そして、翌日。
学院はアビス郊外の爆発事故ととあるニュースで持ち切りとなっていた。




