02話 アルルの知らない世界 呪われたピアノ2 ☆挿絵あり
「ノエル様、屋敷の者に聞き取り調査をした所、ここ数日ピアノが鳴ったのを聞いた者は6名。時間帯は午前9時から午後4時とバラついているようです。」
タバサから報告をうける。
他者との関係が苦手な私の代わりに動いてもらっているのだ。彼女にはズバ抜けた戦闘センスがあった為、表だけでなく裏の掃除も任せている。
しかし、ONRYOって夜中に出るものなんじゃないの?
「・・・ん。」
「続いてピアノに関する情報ですが・・・」
あのピアノは異界の書物を元にドワーフたちが作りあげ寄贈された物らしい。魔力も何も込められておらず、もちろん自動で曲が流れる事も無い。製作者のドワーフはその後も普通に生活している。酒場で酔っ払っているのを何度も目撃しているから間違いない。
よって製作者サイドには何の曰くも無い。との事だ。
では、第三者により呪いが掛けられた?アル様に恨みを持つ者?
いやそもそも呪いってなんだ?ローズが勝手に言ってるだけじゃないか。考え過ぎない方がいいのかな・・・。
しかし、それからも不可解な現象が続く。
風呂場の鏡に映る黒い影。夜な夜な響き渡る唸り声。貯蔵庫の食料が消える。傍には空になった酒瓶・・・。
侵入者がいる。間違いない。
とにかく現場を押さえない事には始まらない。
あのピアノの置いてある広間が一番報告が多い。屋敷の清掃をしつつディメンションでピアノの置いてある部屋を常時監視。さらに念の為、タバサをピアノの傍に待機させておく。
「・・・ノエル様。」
タバサから念話。
「何か動きがあった?」
「いえ、特に異常はないのですが・・・」
ないのかよ。
「いつまで、こうしていればいいのでしょうか?そろそろ業務に戻りたいのですが・・・」
「仕事は私がやるから。あなたはピアノが鳴るまで待機よ。」
タバサは感覚が異常に鋭い。私では気付かない変化も見逃す事は無いだろう。
「あの、鳴らない場合は・・・」
「鳴るまで見張るんだよ?」
「数分でいいので休憩が頂きたいのですが・・・。」
「休憩ね。もちろんいいわよ。後で食事も運ばせるわ。」
「あ、あの・・・」
「ソファに横になってもいいよ。」
「あっ、・・・トイレに・・・。」
「ああ、トイレね。いいよ、そこでして。物置にバケツあるから。」
「・・・へ?ばっ、バケツ!?」
「している間もピアノから目線切ったらお仕置だからね?」
「・・・は、はぃ。」
─── 2時間後 ───
「ノエル様!」
念話。
ディメンションは悲痛な表情のタバサを捉える。これは!
「鳴ったか!?」
「いえ、鳴ってはいないのてすが・・・」
涙目でモジモジしている。あっ、
「バケツ・・・まだ空ね。」
「・・・お願いします!トイレに行かせて下さい!2分いえ、1分で戻ります!」
チッ
「全く、この程度の任務もこなせないの?」
「も、申し訳ありません!すぐ戻ります!」
「誰が部屋を出ていいと?」
「!?ですが!漏らしてしまいます・・・お願いします!」
涙目で訴えてくる。
イラッ
「いいよ。遠慮はいらないわ。存分に漏らしなさい。」
「ふぁ!?・・・そ、それだけは!はうぅ、あっ、ああ、もう無理!漏れちゃうううううう!」
タバサが絶叫した次の瞬間
ポロロロロン♪
!!?
「あっ!?ノエル様!今ピアノが!」
転移!
タタタタタタタ タラランタッタ タラランタッタ タタタタタタタタター♪
この軽快なメロディは・・・剣の舞!
ピアノを見ると
鍵盤が動いている!が
ディメンショに反応はない!?
ピアノの鍵盤表面に手を滑らせる。不可視の魔法でも実態があれば触れられるはず!なのに何も無い・・・。
鍵盤とペダルはすごい勢いで動いてる。
「何なの・・・」
「この曲ダメええ!ノエル様ピアノ鳴ってる!トイレいいよね!?」
タメ口かよ。
「ええ、許可しま・・・」
バァン!!
曲に合わせて?もの凄い勢いで出ていった。
仕様もない子ね。
どうしたものか。
魔力の糸を部屋中に張り巡らせたがは生物はいない。やはりディメンションに反応が無い時点で詰みか。タバサなら何か掴めるかもと思ったが・・・ここにはいない。
数分後ピアノが鳴り止んだ後タバサがやってくる。
「ふぃー、危なかったあ・・・。あっ!あのぅ・・・演奏終わっちゃいました?」
「・・・今夜、拷問部屋で待ってるからね。」
小さな悲鳴を背に部屋を出る。
手詰まりだ。
・・・・・・。
こんな時アル様がいてくれれば・・・。
「ディメンションだけどさ、極めるとさらに上の次元にアクセス出来るようになるんだよー。」
いつか言っていた言葉を思い出す。はぁ。
ダメだ。今アル様はいない。私が何とかしなければ。
ONRYOが・・・おるんよ。いやいや、ないから。
ローズマリーに報告するも
「気のせいじゃない?ネコか何かでしょ。」
たまに屋敷をうろついている黒猫なら見かけるが、猫が姿を消してピアノを引くの?
「私忙しいからあなたに任せるわ。」
そう言って図書館へと出かけて行く。使えない上司?だ。あんたの召喚術で警備を強化してくれればいいのに。・・・言ったところで怒りを買うだけか。
それにこの屋敷には強者しかいない。普通の魔物や魔族などでは相手にならない。それだけに不気味だ。
─── その日の夜 ───
「それじゃあ、お散歩行こうか。」
裸吊りから解放したタバサに首輪を渡す。
「さ、散歩?」
首輪を付けて下着を取るタバサ。
「おいコラ、何ナチュラルに服着ようとしてるの?」
ローズみたいな言い方しちゃった。
「お散歩するのでは・・・?」
「するわよ?裸でね。」
首輪にリードを付ける。
「バレたく無ければ気配を消しなさい。トイレは・・・さっき散々出した、いえ吹いたから大丈夫かな。」
「うぅ・・・。」
タバサの気配が消え存在が希薄になる。このレベルだとディメンション使いでもない限り気付かれないだろう。
四つん這いのタバサを引き屋敷の見回りをする。
「ノエル様そろそろ戻りませんか?ここ大浴場の近くですし人が来ないとも限りません。」
「それは楽しみね。」
ニヤァ
「はぅ・・・」
「はああああ!いい湯だったなあ!戦闘の後の銭湯は最高だぜ!」
出てきたのは虎と
「全くだ!本当にここの湯はたまらんなあ!」
狼か。
仲良いなこいつら。
ちなみに脱衣所の扉を抜けるとディスペア・ダンジョン始まりの湯へ飛ぶ仕組みになっている。
「よう!ノエル。お前も今から風呂か?」
「いえ、屋敷の見回りよ。」
「そうかい。汗の匂いがしたからよ。早く入った方がいいぞ。」
へえ、鋭いんだ。
「ティガー!レディに対して失礼だぞ!済まないノエル見回りを続けてくれ。」
「・・・りょ。」
「おい、ノエル!お前発情期か?すげぇ匂いだぞ!俺が男でも紹介・・・グアッ!」
狼・・・ガイウスに殴られた。
「お前にはデリカシーと言う言葉は無いのか・・・」
狼に引きづられて行った。
「あーあ、あんたのせいで恥かいちゃったじゃない。どうしてくれるの、よ!」
リードを強く引く。
「いやあああ!はぁはぁ・・・イイ、もっと」
顔を紅潮させてヨダレを垂らして喜んでいる。
「犬のくせに話してんじゃないわよ。」
スパァン!
お尻を叩く。
「きゃいいいん!」
「喜ぶな。」
スパァン!
「きゃふううん!・・・!!?ノエル様!」
「話すなって言ったよね?」
スパァン!
「きゃん!ち、違います!に、匂いが!」
匂い?
?私臭い?
スパァン!
「いやぁ!ちょ!ノエル様!話し聞いて!!」
タバサが立ち上がる。ん?チンチン?
「ピアノの時うっすら感じた匂いの残滓の様な物があったんです。あの時は気が動転していて失念していました!その匂いが今微かにしたんです!」
匂いだと!?そんな重要な事を・・・後でキツいお仕置ね。今はそれより
「虎か狼が犯人って事?」
「いえ、全く違います。匂いは大浴場へ続いています!」
「よし!匂いを辿るのよ!」
スパァン!
「はっ!はぃん!」
クンクン クンクン
タバサが四つん這いになり匂いを探る。まさに雌犬ね。
女湯の脱衣所に入った。気配が一つ。
「あら、ノエル、あなたも湯浴み?」
話しかけて来たのはハーフエルフのレティシアだ。レティが犯人?
チラリとタバサを見る。
ブンブンと顔を振っている。違うのか。
「・・・ん。そう。」
ここは一緒に湯に入った方が自然か。犯人とレティを一緒にするのには抵抗がある。
数少ない友人だからね。
「やった!じゃあ一緒に入りましょ!」
喜んでる。かわいい。
「ん?その紐は何?」
あっ、リードは見えるのか。
「・・・ゴミ。拾った。」
ナイフで首輪から切り離し(レティには視認し得ない速度)ゴミ箱に捨てる。
「ノエル様、はぁはぁ、匂いは癒しの湯へと続いている様です。はぁはぁ。」
タバサから念話。
「あなたこの状況で興奮するなんて、とんだ変態ね。」
「はぅ!」
チッ悦ばせてしまったか。
ガラガラ
木の引き戸を開くと別世界が広がる。
洞窟内にあった癒しの湯は別の場所に転移されている。
アル様曰く
「別の座標に空間を固定して繋げたんだよー。」
という事だ。私には分けが分からないが。
流石ですアル様。
「おっ、今日は雪景色ねー。」
毎日ランダムに別の空間に転移しているらしい。一度魔族の集落に転移した時は凄い騒ぎだったなあ。
「・・・ん。」
レティにバスタオルを投げて渡す。
「ん?付けろって?なぁに恥ずかしいの?ほれほれ。」
胸を押し付けてくる。くっ、ONRYOがいるかもしれないと言うのに。丸見えだぞ!
「・・・ん!!」
強く促す。
「分かったわよ。へんな子ね。」
ちゃぽん
「はぁーいいお湯。」
「ノエルと入るの久しぶりね。最近どうなの?あの部下の子・・・タバサちゃんだっけ?
上手くやってるの?」
念話に切り替えてくれた。
「ええ、とても良く働いてくれてるよ。」
今はこっちにお尻向けて必死に匂いを嗅いでるよ。あっ、ここだとその格好でも違和感ないんだ。クスリと笑う。
「・・・ノエルが楽しそうで良かったよ。モロクの下で働いてる時は顔が死んでたものね。」
そう・・・だったかな。
「心配してたんだから、あんたみたいな子供が暗殺なんて・・・」
遠い目。
「それが日常だったからね。」
すてーん
「きゃん!」
ドテッ
タバサが石鹸につまづいて滑った。M字開脚。真面目な話してるレティに何てもの見せてんのよ!ワザとなの?ねえ!ワザとなんでしょ!雌犬が!
「アル様と出会ってから変わったよね。」
「・・・う、うん。」
「まあ、人使いは荒いけどwどうなの?進展具合は。ニヤニヤ」
「別に。変わらないよ。」
パンツを貰った事は言わないでおこう。
「狙ってる奴多いからのんびりしてると・・・」
「レティは!・・・レティはどうなの。アル様の事どう思ってるの?」
「私!?私は・・・何だろう。上司と部下?いやいや、無いわー。んー、生意気な妹って感じかな。」
妹。か。
「ノエルは可愛い妹って感じだよ。」
「・・・ん、ありがと・・・。」
声に出して言ってみた。
フフフと笑っている。
「ノエル様!タゲの位置を補足!つい立ての奥に一人!奥の湯船に一人!計二人です!魔力でマーキングします!」
二人!?
ディメンションで確認する。タバサの付けたマークの一つが出口に向かい動いている。
逃がすと思う?扉を魔力の糸で固定。
ドガッ ドッ
「ん?今扉の所から音しなかった?」
「・・・ん、気のせい。」
バチッ
もう一つの標的は外に逃げようとして結界に阻まれたようだ。露天風呂のようだが外界とは隔絶されている為外へ出る事はアル様以外不可能だ。
二人を魔力の糸で捕縛しようとするが上手くいかない。実態が無いからだ。
「タバサ、二人に大人しくする様念話を送って。」
魔力のマーキングが出来たタバサなら通じるはず。
いや、そもそもONRYOと会話って出来るの?
「送りました!危害を加えるつもりは無いと言っています!」
通じたよ。念話って凄いね!
久しぶりにレティと背中の流し合いっこをしたかったけどこの状況じゃ無理ね。
私タバサみたいな露出狂じゃないから。
「急用が入ったから私行くね。」
「そうなの。なんだよ、ノエルの背中洗ってあげたかったのにぃ!」
ふふ。
「またね、レティお姉ちゃん!」
声に出して言ってみた。
「えっ、今、お姉ちゃんて・・・!?」
ふふ。
四人で脱衣所へ。私が着替えている間はタバサが見張っている。
「ノエル様、私も、はぁはぁ、服を着たいのですが・・・はぁはぁ。」
「・・・いいわよ。バスローブがあったはず。あっ、これね。ほら。」
「えっ、い、良いのですか?」
否定すると思った?
「着たければどうぞ。好きにしていいわよ。」
「あ、ありがとうございます・・・で、ですが!・・・失態をした私に対する処分なので今夜は、はぁはぁ、このままで構いません!はぁはぁ。」
露出して気持ち良くなりたいだけじゃん。息荒くしながら何反省アピールしてんのよ。バレバレなんだけど?
ピアノのある広間へ移動。
「さあ、姿を表して貰おうかしら・・・伝えて。」
タバサが念話で伝えると。
巨体の男と優男が、現れた。
二人は手を後ろで拘束され正座をしている。
「・・・あっ。」
見たことある。元同僚の・・・誰だっけ?
「ハゲ頭のおっさんがディック・ロス。茶髪のチャラ男がダニエル・グレゴリーです。以前はモロク氏の部下だったようです。」
ああ、居たわね。そんなやつら。にしても酷い紹介ね。
「これは違うのだ!拙者はただピアノが引きたかっただけなのに、ダニエル殿が!」
「おっさん!何被害者ぶってんだ!あんただってノリノリだっただろうがよお!」
「ち、違う!拙者は恋の矢を射る為修練していただけでござる!」
何言ってるんだ。色々ウザイ。
「要領を得ないわね。初めから説明させて。あと、ござる禁止ね。」
念話。
「・・・最初は出来心だったのでござ、です。意中の娘を落とすためにあれこれ模索した結果ピアノを引ける男は格好良いと言う結論に達しまして。デュフフ。」
キモ。
「最初は中古のピアノで練習していたのですがアルル様の屋敷に伝説のピアノ【すたんうえい】があると聞いて拙者いてもたってもいられず能力を使って侵入してしまいました!すみませんでしたあ!」
頭を床に付けている。ピカッ。綺麗なアタマ・・・。
あのピアノはそんな凄い物だったのか。艶のある綺麗な外観をしている。
「街でばったりあったこの同僚と酒場に入ったのが最大の失敗でござった。」
ござったもアウトだけどまあいいや。
「酒に飲まれついピアノ目当てに屋敷に通っている事を口にしてしまったのでご・・・じゃる。」
・・・・・・。
ダニーを睨み付けている。
「あなたの能力は洗脳だったっけ?私が補足出来ないなんて凄いわね。」
ディメンションで探知出来なかったワケではない。出来ていたが誰もいない事にされてしまっていたようだ。
ピアノを確認した時も私はディックに触れていたはずだが脳が触れていないと意識を改変させられてしまったのだ。
「・・・そう言えば何であの時ピアノを鳴らしたの?私の部下が見張っていたわよね?なぜ目立つようなマネを。」
「あ、あの時ですか・・・。その・・・拙者がピアノを引かないと、見張っていた女性が厠に行けないと言う特殊な状況だった為可哀想になり・・・つい。」
「ディックさん・・・優しい・・・」
タバサが呟く。
まるで私が悪者みたいじゃない。
はぁ。
「で、あなたは?」
「俺か?俺は屋敷を追い出されて野宿生活だったんだがよ。ディッキーと話してたら屋敷の事思い出してフラッとな。」
「ノエル様この者はメイドのブリタニーとディアナにストーカー行為、それと酔ってローズマリー様の胸を揉んだ罪で追放されています。」
ローズの胸を揉んで良く生き残ったな!
「あなたの能力は手品だったかしら?」
任意の物を取り寄せたり消えたりする手品みたいな能力だったはず。
「ちげーよ。俺の本当の能力は・・・クレイジー・クラウン!」
ダニエルが消える瞬間床の模様と一体化した様な、いや、同化している!?魔力のマーキングが無ければ見逃していただろう。
この能力でローズから逃げたのか。
「前にやらかして屋敷を逃げてる時お前の部屋にも寄ったんだがよ。笑ったわ。」
今何て?
「あの壁の写真は剥がした方がいいぞ。完全にストーカーじゃんwドン引きしたわ、なぁディッキー。」
「バカ!拙者に振るんじゃない!今それを言ったら・・・」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「二人とも私の部屋見たんだ。」
「ち、ちが!ダニーがヤバい部屋があるからって無理矢理!あっ。」
ヤバいんだ、私の部屋。
「あれ半分呪いの部屋だろwww」
人を○○したいって感情はふっと、やってくるものなんだな。
グサッ
「!!?あああああ!痛ってええ!何しやがる!」
足にナイフを刺したんだよ。グリグリ
「ぎゃああああああああ。」
「ディック。あなたの演奏聞きたいんだけど一曲いいかしら?」
「い、今ですか!?」
「ええ。」
「はっ、はひっ!拙者の引ける曲ならば!」
「そうね、ショパンの革命のエチュードなんてどうかしら?」
「そ、それなら引けます!!」
Good。拘束を解く。
椅子に座り演奏が始まる。
革命のエチュード・・・自国の独立が失敗した悲しみと怒りが込められた名曲だ。
切ない曲調の中に激しい怒りを感じる。今の私にピッタリな曲・・・。
グサッ
「ぎゃあああああああ!」
叫び声が曲と混ざり合い美しいハーモニーを奏でる。実に心地良い。
サー
いつの間にか降り出した雨も雰囲気を盛り上げてくれる。
「や、やめて、謝るから、もう・・・ぎゃああああああああああ!」
鮮血が飛び散る。何て良い音色・・・やだ、濡れてきちゃった。
「これが地獄・・・」
タバサが呟く。
その演奏会は夜遅くまで続いたのでした。
─── 後日談 ───
ディックはピアノの腕を買われ食堂や広間で演奏をしている。他の楽器もドワーフが作っていた為将来はオーケストラでも出来るんじゃないかな。
ダニーはローズにバレるとコロされそうだったから私の下で雑務をこなしてる。私の顔色ばかり覗って来るのはお仕置が効き過ぎたせい?少しウザイ。
あの夜の事はちょっとした話題になった。
ピアノと悲痛な叫び声を聞いた者が尾ひれを付けて周りに言いふらしているらしい。惨劇の夜、血飛沫を受けたピアノ。殺された者の怨念が宿り絶叫を奏でるとか・・・
KAIDANとはこうして出来るんだなあ。
でも全てが解決した訳ではない。あの侵入者とは関係ない不可思議な事象も屋敷では多々あるのだ。そういう謎を解いて行くのも面白いかもしれない。
タンタタン♪
ピアノが鳴っている。
もうそんな時間か。
曲に合わせ軽やかな足取りで食堂へ向かう。
ONRYOは脇に置いといて夕食の準備を始めないとね。
ふんふふん♪