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18話 悪役令嬢は~ 6


side ポーリン


ローレンス様はサクスと共に王宮へと戻られた。

ここにはいるのはメス犬と私だけ。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

暗雲立ち込める空の下メス犬と対峙する。


「ポーリン、あなたも家に帰った方がいいわよ。あの雲の中から良くない気を感じる。何が起こるか分からないわ。私たちも早く・・・」


「黙れメス犬!」

「メス犬!?」


「お前を潰す機会をみすみす逃すと思う?ここでどちらがローレンスに相応しいか決着をつけようじゃないか。」

初めてだ。自分の感情をイルガ以外の者にぶつけたのは。


悪くない。


「やっぱり私の事恨んでるよね。ごめんなさい。あなたを傷付けた事謝罪するわ。」

頭を下げるメス犬。


「今更そんな事して何の意味があるの?・・・アクアボール。」

ボッ!

右手から水球を打ち出す。

地面を抉りながら進んだ水球はメス犬の頭にクリーンヒット!

ドゴッ!

勢いよく後方に吹き飛んだ。ノーガードかよ。罰でも受けてるつもり?

・・・いいわ、それなら。


ズアッ

数十発のアクアボールを周囲に浮かべる。

お前の罪悪感が無くなるのが先か死ぬのが先か、見物ね。

精々私を楽しませてね。あはははははははは!





─── フォルメキア王国から約200キロ南方 コーナン山脈上空 ───


side アスモデウス


「ここは、どこだ?」

直前の記憶が飛んでいる。この感じは以前何度も経験している。

またあのガキに殺されたのか俺は・・・。


『アスー。復活したばっかでごめんなんだけど、ちょっと来て貰っていいかな?』

ガキからの念話だ。

やれやれ・・・はっ!!?

おいおい!お前どこにいる?


『アルル様もしや今、天空城におられるのですか?』

『そだよー。何か中ボスとヤり合う流れになっちゃってさあ。』

なんてこった。

この階層に来た時、「空に浮いてる変な島あるけど雑魚しかいないし・・・スルーでいっかぁ。」とか言ってただろ。

俺が死んでる間に何があった?


『そ、その彼女は・・・中ボスはまだ無事なのですか?』

『無事だけど、えっ、知り合いなの?』

『一応私の配下と言う位置付けではあります・・・』

『そーなんだ。あはっ、ちょーどいいや。ちょっとした賭け事するから立会人になってよ。』

賭け事。嫌な予感しかしない。

『申し訳ありませんアルル様。その者とは少し因縁がありまして、出来れば会うのは避けたいのですが・・・』

『昔付き合ってたとか?気にすんな、あんたはアタシの下僕なんだから胸を張ってりゃいい。』

下僕が誇れるわけ無えだろカス!


『い、いえ、付き合っていたと言うか付きまとわれていたと言うか・・・』

『えっ、自慢?』

『ち、違います!そういうわけでは・・・』

『面倒だなあ。・・・来なよ。早く。』

『い、いや、しかし・・・』

『アタシが、来いって言ってるんだけど?』


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


『また、死にたいのかな?』ボソッ


『す、直ぐに行きますぅ!!』

クソが!クソが!クソが!


ガキのいる空間へ転移。


「よっ、久しぶり。」

ガキが挨拶してくる。

「遅くなって・・・」

返そうとすると、


「アスモデウス様ああああ!」

!?女が物凄い勢いで飛びついてくる。

ヒルダ・・・変わっていないな。


「私、私ずっとアスモデウス様の事を探して探して・・・見つけられなくて・・・今までどこにいらっしゃったのですか!?私がどれ程、あなた様の事を思っていたか・・・でも、私の為に駆けつけて来てくれたのですね!あぁ、私の王子様!」

腕を首に回し体を擦り寄せくる。

・・・・・・。

いい匂い。こいつ性格以外は最高なんだがな・・・。


「アスゥ、お楽しみのところ悪いんだけどさぁ、その女と殺し合わなきゃだからちょっと下がっててもらえるかなぁ。」

ビリビリッ

アルルの奴、怒気が漏れてるんだが。ん?殺し合う?


「テメェ!アスモデウス様に舐めた口きいてんじゃねえぞ!何様だゴルァ!」

俺にしなだれ掛かったまま啖呵を切るヒルダ。

何か知らんが戦いの前からバチバチだな。


「アタシ?その犬の飼い主だけど?」

おい、ストレートな表現やめろ。


「!!ああああああああ!!?ざけんなテメェ!アスモデウス様をい、い、キエエエエ!くぁwせdrftgyふじこlp!」

金切り声で何やら叫んでいる。耳元でうるせぇ・・・。



『アルル様、このヒルダと言う者少々精神を病んでおりまして、揶揄うのは程々にして頂きたく・・・』

『あぁ、ヤンデレとか言うやつか。また面倒な奴に惚れられちゃったね。あはは。』

お前より面倒で醜悪な奴はいないがな!


『わかったよ。じゃあそれも含めてこの勝負で決着つけたげる!』

どう言う事だ?殺しても意味ないぞ。既に実証済だ・・・。


この耳元でギャーギャー喚き立てる女、

ヒルダと最初に会ったのは・・・



─── 回想 ───


八柱を決めるトーナメントで戦ったのがこいつだ。試合は俺の圧勝だったのだがその時気まぐれで倒れたヒルダに手を差し伸べたのが悪夢の始まりだったのだろう。優しくされたと思ったヒルダはすぐに俺に入れ上がり、遊び程度に考えていた俺は一夜を共にしてしまったのだ。

それからヒルダは変わった。俺の取り巻き、主に女に対して高圧的な態度をとり始めた。距離が近い、気安く話しかけるな等文句をつけ始め最後には正妻は自分だ!などと妄想を口にするようになった。

当然周りは気に入らないヒルダを排除しようと動く。だが、奴は固有スキル【エナジードレイン】を使い強者のステータスを吸収。取り巻きは敗れヒルダはどんどん強くなって行った。それでも側近として使えるならまだ良かったのだが、奴の俺に対する感情は常軌を逸していた。あまりに強い独占欲。俺は一切の外出を禁じられ城に幽閉状態。気晴らしに街に遊びに行くと次の日には街が消えていた。ヒルダが消し飛ばしたのだ。

自分の支配するエリアを手に掛けられ俺は激昂した。

ヒルダと言い合いになり弾みで手を出してしまったのだが、その時の・・・あの恍惚の表情。

以来ヒルダは俺に構って欲しいというだけで街や人を消すようになった。

仕方なく決闘で決着を着けたのだが、復活した後もしつこく付き纏われた。何度か殺した後『修行の旅に出る。後は追うな。』という手紙を残し・・・

俺は逃げた。


奴が絶対に来ないだろうと思われる2層辺境の地に城を構え結界で外界と遮断(アルルにはバレたが。)以来数百年?楽しくやっていたのだが、まさかこんな状況で再び会う事になろうとは。



しかし全く変わっていないなこいつ。

ヒルダを見て過去を少し思い出してしまった。




「お、おい、ヒルダ様と一緒にいる人間は何者だ?」ヒソヒソ

「ああ、お前新入りだから知らないのか。あの方は八柱が一人、暴虐のアスモデウス様だ。」ヒソヒソ

「あの冴えない虫みたいなのが?冗談だろw」

「声がデカいぞ、お前!ヒルダ様に聞かれたら・・・」

バシュン!

竜2匹の頭が消滅し血が噴き出す。ヒルダが魔法を放ったようだ。


「うるさい。」

こいつマジで変わってないな。感情に任せてやりたい放題だ。

誰かとそっくりじゃねえか・・・。


「あーあ、可哀想。逆上して制裁とか・・・上に立つ者の器じゃないわね。」

お前がそれ言う!?

「ね、アスー。あんたもそう思うよね?」

俺に振るんじゃねえ!

「は、はぁ・・・。」


「黙れ人間。今から我らの王、アスモデウス様がお前の相手をして下さるそうだ。精々苦しんで死ね!」

ふぁっ!?ちょっ、おま、何言って・・・


「えっ、そうなの?アスがそいつの代わりにヤるの?ふぅん、アタシは別にいいけど。」

ふぁあああああああああああああ!!?

クソ!冗談じゃねえ!


『アルル様!違うのです!今のはこの女が勝手に!』

『生き返って秒で女はべらすとか良い身分ね。何かイライラしてきたわ。早く殺試合ころしあいしようや。』

はあ!?全部テメェのせいじゃねえか!マズイマズイ、いくら復活出来ると言ってもアルル相手だと魂がゴリゴリ削られいつか消滅してしまう。奴と戦うのは絶対に避けなければ!


ブンッ!ドゴオ!

ヒルダを竜共に向かってぶん投げた。


「あ、アスモデウス様!?」

「ヒルダ、テメェ何言ってんだ?アルル様は次期魔王筆頭で俺の主だぞ。喧嘩売るってんなら俺が買ってやるよ。」


「ま、魔王!?そいつが?」

動揺している。

「ちょっと、アタシ魔王になんて・・・」

『アルル様!後はこのアスモデウスにお任せを!』

『・・・。』


「アスモデウス様!騙されてはいけません!そのガキは我らの同胞を殺したのです!天界からの使徒かもしれません!」

いやお前も今殺しただろ。


「あのなぁ、こんな邪悪なオーラを放つ天使いるわけねえだろ!」

『アタシ邪悪なんだ・・・。』

『さーせんっ!』


「し、しかし!」

「俺を信じて、アルル様へ忠誠を誓え。お前たちの種が破壊神から生き残る方法はそれしかない。」

『おいコラ、誰が破壊神だって?』

『させんっ!』

ヒルダが眉間にシワを寄せて凄い形相でアルルを睨んでいる。


「アルル様!吸血鬼にとって吸血という行為は食事の他に杯、絆を交わすという意味もあります。ヒルダがアルル様に絶対の忠誠を誓う証として血を吸わせていただいてもよろしいでしょうか?」

これだ。このクソみてえな状況を覆す会心の一手。アルルの血を吸えばヒルダなら魔王級の力を手にする事が出来るのでは?上手く使えば俺がこの世界を統べる事も・・・何よりメスガキを潰す最大のチャンス。

上手く誘導しなくては。

「えー、やだよ。ばっちぃし気持ち悪い。」

クソガキが!

ほらヒルダが怒りで肩を震わせてる。


「アスモデウス様、やはり私にはそのメスガキが私より強いとは思えません!忠誠を誓う前に実力が知りたいのですが・・・」

正気か?昔より魔力が上がってはいるが・・・普通に瞬殺されんぞ。


『アタシ、メスガキって呼ばれるの死ぬほど嫌いなんだけど・・・。アスー、下僕の躾がなってないわねえ。』

『っせんしたっ!』

躾なんて出来るワケ無えだろ!テメェと同様に頭のネジ外れまくってるからなあ!


「アタシは別にいいよ。もともとそのつもりだったし。」

アルルの恐怖を植え付ける意味でもヒルダには一度死んでもらおうか。


「アルル様に勝てなかった場合、忠誠を誓うと言う事でいいんだな?」

「はい、簡単にヤられるつもりはございませんが・・・。ニヤァ。」


ブルッ・・・。ヒルダのおぞましい笑み。アルルにそっくりだ。


ブゥゥゥン

周囲に対魔対物の多重結界?アルルの奴随分慎重だな。

「アスー。結界の外に出てて。そこにいたらまた死ぬよ。」

は?


バリバリッ

!!?ヒルダから魔力が噴き出す!嘘だろ!?なんつぅ密度だ!


「アハッ、アスより強いじゃんwホントに配下なの?」

マジ?

離れていた期間に何があった?

結界の外に出て竜共の所へ。


「ピエミド、久しぶりだな。」

側近のピエミドとはよく飲んでヒルダの愚痴を言いあっていた仲だ。

「アス様!今までどこ行ってたのですか!あなたが失踪するから大変だったのですぞ!」

失踪か。


「悪かったな。俺は八柱として数百階層のエリアを監督する義務があるからな。忙しいのよ。」

「嘘ですよね?ヒルダ様から逃げたんですよね!?」

そうだよ。

「ば、バカヤロウ!勘違いしてんじゃねえよ!いや、今はそんな事はどうでもいい。それよりあいつだ!俺がいない間に何があった?」

「・・・ヒルダ様のスキル、エナジードレイン。アス様も知ってますよね?」

「ああ、相手の魔力や生命力を奪うんだろ。」

「そうです。そのスキルを強者相手に使い続けた結果あのような事に。今や八柱様に匹敵するのではと噂されております。」

強者・・・俺を探す過程でボス級をドレインしまくった?のか。

しかしそこらのボスを狩ったくらいであの力は


ドドドドドドドドドドドドドドドド


「アスモデウス様をたぶらかして何をするつもり?」

「えっ、別に。身の回りの雑用やらせてるだけだけど?」

髪のスタイリングくらいテメェでやれや!

「殺す・・・。奴隷にして死ぬまで痛ぶってやる。」

「サイコパスじゃん。怖っ・・・。」

テメェもだろ!カス!

マジでコイツら似てるな。


ズァッ  ズバァアン

ヒルダの拳がアルルの顔面を撃ち抜いた。いや右手で捕まえられている。

「うわっ、すっごい怪力。」

元来吸血鬼は身体能力が高い。それに加えヒルダはドラゴンとのハーフ、その力で殴れば大地は容易く消し飛ぶ。


「アタシも力には自信あるんだよ、ね!」

バシュン

ヒルダの拳がアルルに握り潰される。魔力でガチガチに固めた拳を潰すとかどんだけだよ・・・。

「チッ。」

瞬時に再生される。


スキル瞬間再生。

上位魔物なら使える自己修復。それを極めるとアレが出来るようになる。メスガキが数日間に渡りヨルム殿(魔王側近ヨルムンガンド。ディスペアrank3)と戦えたのもあのスキルが使えたからだ。まさかヒルダも使えるようになっていたとは・・・この戦い長引くな。


ガガガガガカガガッ!!

殴り合いが始まった。結界内は秒で赤く染まる。なんて魔力のぶつかり合いだ。ヨルム殿との戦いを彷彿させるな。

ヒルダは中距離タイプだったはずだが・・・接近戦にも対応している。見たことの無い体術を使っているぞ。

アルルの方が押しているようだが瞬間再生のスキルがある為ヒルダにダメージは無い。


ドンッ!ドガァァァ!

ヒルダの体当たり?で城の床が裂けアルルが凄まじい勢いで吹っ飛び結界に叩きつけられた!マジか!?

「あはっ、ヒルダちゃんて八極拳の使い手だったのね。」

はっきょくけん?

「はっきょく?何だそれは。これは私が旅の中で編み出した体術だ。」

アルルはあの動きを知っているのか?


「ああ、別の世界だと八極拳て名前が付いてるんだよ。あとでmanga貸したげる。拳二面白いから。」

「わけの分からない事を言うなあ!」

体の中心を狙った鋭い連撃。だがカウンターで迎撃されてしまう。右腕が吹っ飛んだ、と思った瞬間に再生されている。


「はぇー、キズとかすぐ治っちゃうんだね。面倒だなあ。」

「絶対負けねえ!アスモデウス様は私の物だ!」

ブルッ・・・悪寒が走る。


「やれやれ、もう時間無いから技を使わせてもらうね。」

おっ、殺すのか?細胞レベルで破壊すれば倒す事は出来るぞ。先日の俺の様に・・・。


「シューティングスター。」


ディスペア流剣術を手刀で再現している。俺の目でも追えない程の速度。手数も半端ねえ。

ヒルダから血の華が咲き乱れる。手刀と言っても魔力で覆う事で切れ味は神話級の剣の域に達しているからな。瞬間再生と神速の斬撃か、どちらが勝つ?


「ククソソガキキキががああああ!」

顔面にも容赦なく手刀を叩き込むアルル。ヒルダも反撃しようとしているが全て潰されている。

よく戦意喪失しねえな。俺なら秒で降伏するレベル。ちょっと尊敬するわ。


しばらくしてアルルの攻撃が止む。

ヒルダの体にはキズ一つない。マジかよ。やるじゃねえか!服は消し飛んで裸だが、それもまたヨシ!

「こんなもんかな。」

何が?

「このガキ!殺す殺す殺す殺す!!あああああああ!!」

殺意が限界突破して発狂してんじゃねえか。


ビリビリッ

ヒルダの体から強力な魔力反応。結界超えて魔力の波動がここまで届くってどんだけだ。


「死ねえええ!ブレイクスパイラル!!」

速い!刹那でアルルへ接近、拳が叩き付けられ、る前に紙一重で躱すアルル。

「まだまだああああ!!」

回転しながら裏拳、肘打ち、手刀を放っている。全て止められているが回転する度に威力が増大しているぞ!渦を巻く魔力(闘気?)は竜巻と化し結界内を地獄に変える。ここまで強くなれるものなのか!?

これならイケるか!?何なら俺も参戦して止めの一撃を・・・と思った瞬間、魔力の渦が霧散する。


「き、貴様、何を、した・・・。」

ヒルダがうつ伏せに倒れている!?

何があった!?外傷は無いが・・・あっ。


「何も。怒り過ぎて気がつかなかった?ヒルダちゃん。ニコッ」

結界が解かれる。

この戦い、アルルの勝ちだ。

「テメェ!わ、私はまだ、ま、負けて・・・」

顔だけをアルルに向けて吠えるが、話すのも辛そうだ。俺はヒルダ近づき芋虫の様にもがく女を見る。


「お前の負けだよヒルダ。魔力切れだ。」

そう、魔力を使い過ぎた結果動けなくなったのだ。

SSシューティングスター終わった時点で魔力は空だったはずだけど、最後よくあれだけ絞りだせたね。やるじゃん。」

アルルが褒める。こいつが褒めるなんて珍しいな。


「くっ、あ、憐れみなどいらん・・・殺せ。」

放っておいても死にそうだな。


「はあ?何言ってんの。くっころさんはアタシの下僕確定なんだけど?」

くっころさん?

「おーい、そこのあんたその椅子持って来て。」

ヒルダの配下の竜を呼ぶ。

「わ、私?ですか?」

「お前だよ。早く持ってきて。3秒位内に持って来なかったらコロス。3、2、いち」


ドカッ

「も、持ってきまし・・・ブベラァ!」

殴られて彼方に飛んでった。

「遅ーい。さて、」

悪魔かよ・・・。

玉座に座り足を組むアルル。

「アスー、靴とニーソ脱がしてー。」

チッ、何で俺が。クソクソ!

側仕えする俺を見て竜たちがザワつく。

クソクソ!屈辱だ。

素足になったアルルは、


「ヒルダ、アタシに服従を誓いなさい。」

「い、いやだ。て、メェはこ、ろす・・・。」


「ふうん、ならあんたの配下全員コロスけど、良いの?」

相変わらず無茶苦茶だな。

竜たちが動揺している。


「か、まわな、い。」

良いのかよ。

竜たちが何やら叫んでいるが・・・。


「あら、そう。困ったわね。うん。じゃあアスをコロそっかな。」

何で!?

「復活する度に塵にしてあげる。肉体は再生しても魂は戻らないかもね。あっはははははは!」

やめ、止めろ!それだけは!そんな事されたら


確実に消滅する。


ドクドクドク

動悸が・・・クソがあ!アルルはヤルと言ったらヤル女だ。

ヒルダが顔だけをアルルに向け目を見開いて凝視している。


「・・・こ、の外道がぁ・・・。」

「ふふ、ありがとう。で、どうする?アタシの下僕になるなら血を与えるけど。」

組んだ素足をゆらゆらさせている。

しばしの逡巡のあと、


「わ、かった。お、まえ、の、はぁはぁ、・・・くに、なる。」

「えっ?何て?」

「・・・アルルさま、の、げ、ぼくに、なり、ます!・・・はぁはぁ。」

「はい、良く言えました!ほら、ご褒美だよ。」

足をぶらぶらさせる。

ヒルダが芋虫の様に這ってアルルに近づく。何て絵だ。

死にそうになりながらも辿りつくと足に顔を近づけて口を開ける。

・・・いくら嫌いな奴だからってこれは、見てられねえな。

竜たちも顔を下に向けて震えている。


「あっ、・・・痛くしないでね?優しくね?」

このガキ!お前痛覚耐性あるだろ。いちいちイラつくわ。

ヒルダが凄い形相で睨みつけている。

足の指食いちぎってやれ!

ってそんな力も無いか。


カプッ チュー

「ひゃん。くすぐったい。」

イライラ

右足親指の付け根にかぶりつき血を吸い始めるヒルダ。

すぐに魔力は回復し外傷も一切無くなる・・・ん?


様子がおかしい。

チュー チュー


両手で足を掴み一心不乱に吸っている。

「ちょ、がっつき過ぎじゃない?めっちゃ吸うじゃん。」

チュー チュー チュー チュー


おい、もう魔力全快してるんじゃないか?

チュー チュー


「もう、いつまで吸ってんのよ。離しなさい。」

アルルの機嫌が・・・

チュー チュー


「おいコラ、離せって言ったんだけど?」

チュー チュー


ズァッ

!!?アルルの威圧。

「ハッ!?ご、ごめんなさい!こんな、これ程の純度の魔力・・・吸うのは初めてで・・・グスッ・・・あれ・・・何で涙が・・・。」

なぜ、泣く。


おっ!?ヒルダの魔力の質が変わった。シス様を彷彿させる威圧感。おいおい、ここまで変わんのかよ!これならアルル殺れんじゃね?

「そんなに美味しかった?まあ、そうでしょうね。アタシの血を吸えた事光栄に思いなさい。フフンッ」

無い胸を張りドヤ顔のアルル。


「ほ、本当に、凄いです・・・。魔力が体の中から湧き上がって・・・それにこの温かさ。凍りついた心が溶けていくような・・・」

あのバーサーカー・・・あんな表情も出来るんだな・・・


トクンッ


いやいや!無えよ!


バサッ

アルルが服を投げつける。

「これは・・・」

「服着た方がいいよ。さっきから変質者がガン見してるから。」

俺にジト目を向けるアルル。

誰が変質者だ。


「・・・・・・。」

ギンッ!

ヒルダに睨まれる。

えっ・・・何その汚物を見るような目は

お前は俺のストーカーだろ、何だよその反応は!


ザッ

アルルに向かい片膝を突き頭を下げるヒルダ。

「数々の無礼失礼いたしました!あなた様の魔力を頂き確信いたしました!あなた様こそが、アルル様こそがこの世界を統べる王なのだと!」

またこのパターンかよ!勘弁しろよ。

しかし付き纏われるのもウザイがこれはこれで・・・良い気分ではないな・・・。


「いや統一と言うより解放?しに来たみたいな?」

破壊だろクソヤロー。


「!!解放者アルル様に絶対なる忠誠を!」

ヒルダが叫ぶと同時に竜たちも平伏する。

圧倒的な暴力の前には何者も勝てず・・・か。

「何でもお申し付けくださいアルル陛下!」

陛下!?


「いいじゃん。下僕合格だ。それじゃあ・・・」

ん、あれは念話か。またロクでもねえ事考えてるんだろうな・・・。


「てな感じで頼むね。上手くやれたら褒美に血をあげる。」

「ッッ!!?あ、有り難き幸せ!陛下のご期待に添える様尽力いたします!おい、お前ら。下手打ったら・・・分かるよなあ?」

ヒルダが配下の竜たちを睨む。凄えプレッシャーだな。竜たちは怯え震えている。

「分かったんなら返事しろやあ!!」

「お、オオオオオオオオオ!!」

咆哮が響き渡るが力はない。大丈夫かあいつら。




side ポーリン


「はぁはぁ、お、お前何なんだ一体。その力は・・・」

私の渾身の魔力弾数百発をくらって・・・


「ごめんね。今はちょっとズルしてるんだ。こうでもしないと話す事もムリそうだから。どお?少しは気が晴れた?」

何でノーダメなんだよ!

服にすらダメージが無い。こいつ今まで猫かぶってたのか?いや、こいつと言うよりあの侍女のせいか。


「あのアルルとか言う女は何者なんだ?お前吸血鬼だったよな。飲んだんだろ?奴の血を。」

そうとしか考えられない。


「・・・ええ、そうよ。私は弱い自分を変えたくて彼女の手を借りた。・・・ごめんなさい。」


くっ!

ドオオオオオン!

魔力弾を投げつける。残りの魔力を練り上げた渾身の一発を。

だが、

メス犬に傷一つ付ける事は出来ない。


「はは、あはははは。何なんだよ、あと一手でクリア出来たのに!何邪魔してくれてんだ!お前は!・・・お前はただの悪役令嬢だろ・・・脇役、モブなんだよ!・・・私がヒロインなんだ!私が・・・あああああああ」

膝から崩れ落ちる。


「・・・ごめんなさい。」


「誤ってんじゃねえ!謝るんじゃねえよ!お前はそんなキャラじゃねえだろ!庶民を見下して、高笑いすんのがアンタの役目、だろ・・・。」

私はお前を殺そうとしたんだぞ。あれだけ暴言を言った私に

何で


そんな顔出来るんだ。

これじゃあ私が・・・


刹那、雷雲から魔力反応。その光を見た瞬間私は死を覚悟する。

悪夢でも見てるのかな。夢から覚めたら、また転生出来るといいな。

その時は、次こそ私が・・・


ドオオオオオン!


へ?

私生きてる?


目の前にメス犬。

右腕が焼けこげている。あれを弾いたのか!?


「私今まで自分の事しか見えてなかった。でもアルルと出会って気付いたんだ。本当にローレンス様と一緒になりたいなら、」

メス犬が振り向き巨大な雷雲と対峙する。


「王室の末席に加わるのなら!」

メス犬から魔力が吹き上がる。闇を照らす紅く輝く魔力を見て不覚にもキレイだと思ってしまった。


「全ての民を慈しみ、王国を守る事が私の役目だ!」

ドドドドドドドドドドドドドドドド

放たれた光が周囲一帯、いや!これは・・・

王国全土を覆っていく!?

す、凄い、あれは障壁?国中の宮廷魔術師集めたってあんなの不可能だわ!


「ポーリン様っ!!」

イルガ!?無事だったのね。少しホッとした。


「大丈夫か!?」

メス犬に銃を向け威嚇。

「大丈夫よ。魔力が切れただけ。」


「そうか、ここはヤバい。逃げるぞ。」

渡されたエーテルを飲み干すと魔力が多少回復した。

「うん。」

メス犬を見る。


「敵が来る!早く行って!」

こちらを一瞥する事なく言う。

その姿に様々な感情が湧き上がるが、


「くそッ!私に命令すんじゃねえ!・・・さっきは・・・あの・・・チッ、イルガ行くよ!」

メス犬の背中に罵声を浴びせイルガと離脱する。


彼女が笑ったような気がした。


ドゴォォン

ドオオオオオン


イルガと王城を目指し疾走する。

後ろからは轟音と閃光が迫っていたが振り返る事はない。

私たちに出来るのは逃げる事だけだ。

まさか、あのメス犬が真のヒロインに覚醒するなんて。


「あーあ、バッドエンドかぁ。」

「何を言ってる?まだ死んでないぞ。」

死んでない・・・か。

「・・・そうね。」

スピードを上げる。


死ぬなよメスい・・・・・・


シャーロット。


まだエンディングには早すぎる。




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