13話 悪役令嬢は最凶ボディガードと絶望ルートを回避します!
絶望の果て28話頃のお話です。
─── ディスペアダンジョン148層 sideアスモデウス ───
メスガキ(アルル)を載せ(モード・ビースト)で飛行中。
「アスー。陽も落ちて来たしこの辺で野営しよっか。」
「ハッ!それでしたらこの先の山脈を超えた所に王国があるので城で休まれるのが良いかと。」
ふぅ、久しぶりにゆっくり出来そうだ。
「お城に泊まれるの?」
「ハッ!中にいる魔族の者たちは私が速やかに排除いたしますのでごゆるりとゴハァッ!」
後頭部に凄まじい衝撃。意識が飛びそうになった。
「私は侵略者じゃないっつーの。襲ってくるモンスター以外は倒したりしないから。」
このガキ!
「も、申し訳ありません・・・・・・で、では、なぜ私の城を吹き飛ばし配下を殺したのですか?」
テメェ言ってる事とやってる事が真逆じゃねえか。
「あん?お前は中ボスなんだからシバかないと駄目だろ?」
ち、中ボスだと!?八柱の私を・・・クソが。
「まったく、いつまでも昔の事根に持って、あんたってホント器の小さい男ね。女の子にモテないわよ。」
「・・・・・・。」
器が小さいのはお前だろ、カス。
「あれ?ふてくされちゃった?」
「い、いえ・・・。女には不自由した事が無いので。」
王国で娼婦・・・いや、貴族の女でも抱いて憂さ晴らしするか。
「・・・あのさぁ、皆あんたの力とか八柱?みたいなくっだらない肩書きに擦り寄って来てただけなの。分かるよね?」
「それも含めて私の魅力ですので。」
文句あるか?
「テメェに魅力なんてあるわけねえだろ!雑魚悪魔あ!」(威圧)
「ヒェッ!」
並の悪魔ならショック死するレベルの殺気で脅して来た。
「最近優しくしてあげてたらすぐこれだよ。ねえ、する?久しぶりにステゴロ(素手の殴り合い)しよっか?逝かせてやるよ。ニヤァ」
!駄目だああああ!あれだけは!
「か、勘弁してください!アルル様!」
「気合い入れ直してやっから、下でヤろうや。」
「ご、ご慈悲を!アルル様!な、何卒!何卒ご慈悲を!」
涙目で懇願する。痛覚無効を容易く貫いて魂に刻まれる敗北の痛み。あれだけは駄目だ。復活する気も無くなる程の深い絶望。
「ほら、早く降りて殺試合を・・・ん?何あれ?」
眼下の渓谷で女が魔物に襲われているようだ。
「んー。どうしよっかな。アスー、どうしたらいい?」
知らねえよクソガキ・・・精神が酷く疲弊したわ。
「虫けら共など放っておきましょう。」
もうベッドで横になりたい。
「アス・・・あなた自分以外どうでもいいのね。女の子が襲われてるんだよ?それをスルーとか、マジ引くわー。」
面倒くせえ・・・。
「・・・・・・では如何致しましょうか?」
「それを聞いたのに、はぁー、このポンコツ悪魔ホント使えないわね。」
はぁはぁ、落ち着け、殺気を気取られたら終わりだ。
「・・・アルル様の御心のままに。」
「見ない振りなんて出来るわけないじゃない。助けてあげよう。アス、姿消して待機してな。」
「御意!」
はぁーうっぜえ。
side ???
「どうしてこんなことに!くっ!寄るな!」
切り立った崖の端まで2匹のワーウルフ(二足歩行する狼の魔物)とホブゴブリン(2メートルを越えるゴブリン)3体に追い詰められる。
こいつら知能は低い癖に連携なんて小癪な真似を!
パァァン!・・・パァァン!
魔法バリアを張ってもすぐ破られる。攻撃魔法は効かない。魔力がどんどん削られる。
私は後衛なんだ。接近戦なんて無理だ。
あいつら!ふざけやがって!こんな谷に置き去りなんて。
ホブゴブリンが邪悪な笑みを浮かべる。!?おぞましいモノが反り返っていく。コイツら私が死ぬまで犯すつもなんだ。吐き気がする。
「私は公爵家の令嬢シャーロット・グレイス・マーチよ!誰か助けなさい!こんな所で死ぬなんて絶対に嫌よ!」
大声で叫んで見たけどこの辺りには誰もいないだろう。
ビュオオオ
谷から強い風が吹く。捕まるくらいなら飛び降りてみる?いや下は竜種の生息域だ。助かるわけがない。
「お姉さん、貴族なの?」
「きゃあああ!!?」
目の前に少女が現れる。どこから現れた?
「あ、ごめん。驚かせちゃった?アタシはアルル。冒険者だよ。」
冒険者と名乗る少女を見る。こんな子が冒険者?それにこの服・・・防御力低そうね。
「ぼ、冒険者?ホントに?」
!!
ワーウルフがアルルと名乗る冒険者に突進。右手を振り上げる。危ない!
「ハウス!」
ザァァ
鳥たちが空へと一斉に羽ばたいて行く。
「キャイン!」
う・・・そ・・・。ワーウルフが攻撃を止めて走り去った。ホブゴブリンは泡を吹いて気絶している。何が起きたの?混乱、精神系系魔法?
「あなた今何をしたの!?」
「えっ?家に帰れって言ったんだよ。犬とか飼った事ない?」
いやいやいや嘘でしょ!
「獣に命令出来るわけないわ!ふざけないで!」
てかゴブリン気絶してるし。
「そうなの?でも帰ったよ?」
・・・確かに。もうわけが分からないわ。
はぁ、力が抜ける。
「と、とにかく助けてくれて感謝します。私はレスターク領マーチ公爵家三女シャーロット・グレイス・マーチよ。」
「公爵?貴族の娘さんがこんなとこで何してるの?」
「魔法学園の試験で薬草の採取に来たのだけど仲間とはぐれて、いや違うわ。裏切られたのよ。アイツらモンスターの巣に私を置いて転移の魔法石を使って逃げたの。絶対に許さない!」
「ふうん。魔法学園なんてあるんだ。王国行ったら見てみようか。じゃあ私行くから。」
「えっ!ちょちょ、ちょっと!待って!待ちなさい!私を置いて行くつもり?」
「ああ、大丈夫。この辺一帯のモンスターは皆逃げちゃったから。王国までは普通に歩いて帰れるよ。じゃあね。」
逃げた?意味が分からない。
「待って!」
アルルと名乗った冒険者の服の袖を掴む。この子は使える!手放してはいけない!と本能が叫んでいる。
「何?」
「そ、その・・・そう、そうよ!命を救って貰って何もせず帰すなんて公爵家としての沽券に関わります!謝礼をするので是非我が屋敷へ!」
逃がさないから!
「いいよ、礼なんて。困っている人がいたら助けるのが冒険者だし。」
え、天使なの?
私の知っている冒険者はふてぶてしい輩しかいないのだがこの子は・・・やはり使える。ふふっ。
「で、では冒険者アルル。私の依頼を受けて頂けませんか?」
「あはっ、クエストの依頼とは考えたね。うーん、ホントはギルド通さなきゃなんだけど・・・いいよ。それでどんな依頼?」
よし!
「薬草採取の護衛です。先程言った通り私は薬草の採取にここまで来ました。」
難易度B級の高難度クエストだ。薬草の採取は場所により難易度が変わる。ここはドラゴンに遭遇する危険がある為この難易度となっている。ちなみにドラゴン討伐は難度SSだ。
「この谷の底に咲いているのですが途中にフォレストドラゴンの巣がある為洞窟を通り迂回しなければならないのです。なので一緒に・・・」
「この下にあるんだね。取ってくるから待ってて。」
ふぇ?
「ま、まって!話聞いてた!?ドラゴンが!」
アルルが消えた。まさか本当に谷を降りたの!?無謀にも程がある!
急いで谷底を覗いて見る。漆黒の闇と静寂が広がっている。ここを飛び降りるのは自殺志願者だけだ。
見込み違いだったか?ドラゴン相手に生きて帰れるわけがない。どうする?洞窟を抜けて降りるか?ダメだ、洞窟内も強力なモンスターが徘徊している。王国に戻るしか・・・
「ただいま。」
わっ!
「アルル!?あなた何を」
「この花だよね。てか、これしか咲いて無かったし。」
鞄から白く輝く花を取り出すアルル。
「ホワイトスナップ!?し、信じられない。本当に下まで行って来たの!?この花で間違いないわ。でもドラゴンと遭遇しなかったの?」
「寝てたよ。」
寝!?・・・何なのこの子。ドラゴンの知覚能力なら寝てても気がつくわよ。それに下まで行って数分で戻って来るとか異常よ。言いたいことが多過ぎて考えがまとまらない。
「あ、ありがとう。本当に助かりました。では王国に戻りましょう。」
帰りがてら色々聞いてみよう。私はとんでもない拾い物をしたのかも。この子を利用して・・・。うふふっ、見てなさい絶対に、
「オッケー、アスおいで。」
?
目の前に巨大な竜が現れる。
「アタシのペットのアス。よろしくね。」
私は気絶した。
─── フィルメキア王国 とある貴族の屋敷 ───
鎧を来た大柄な男と黒いフードを被った男がソファに座っている。
それにしても臭い。血と汗の匂い?どうして冒険者というやつはどいつもこいつも汚らしい格好をしているのだ。
この2人は父の子飼いの冒険者チーム【ケルベロス】のメンバーだ。俺も度々依頼をしている。主に汚れ仕事だが。
「どうだ、上手く行ったか?」
「はい、モンスターの巣穴に置きざりにして参りました。今頃ゴブリン共の苗床になっておりましょう。くくく。」
鎧の男が答える。
「でもよおゴブリン共には勿体ない女だぜ。転移する前にヤッておけば良かったんじゃねえか?」
黒フードの男が下卑た笑みを浮かべる。
「馬鹿が。魔法省の鑑識官ならすぐバレるぞ。女なら娼館で買うんだな。それより生きて戻って来たりはしないだろうな。」
「無い無い。奴ら獲物をいたぶりながら殺すのが最高の娯楽らしいからな。今まであそこに放り込んで帰ってきた奴はいねえよ。それより報酬だ。」
「ああ、色を付けて用意してある。」
「流石旦那分かってらっしゃる。今後ともご贔屓に。」
「ああ。」
貰うもの貰ってとっとと帰れ。鼻が曲がる。
外が騒がしい。鳥の声か?
窓から外を見る。夕暮れの空一面に鳥がうじゃうじゃと気持ち悪いな。
ソファに体を預ける。
シャーロット、自業自得と言うやつだよ。君は少々やり過ぎた。
良くも悪くも明日から学園の勢力図は一変するだろう。いや、これ以上悪くなる事はないか。フフフ・・・
─── フォルメキア王国 城門 ───
side アス
王国の城門付近の林に降り人間型へ変わる。
「アス、シャロちゃん気絶しちゃったから持って。」
なぜ私が運ばなければいけないんだ。小脇に抱えようとするとアルルに睨まれる。
そうだ、一度アルルをこのように持って殴られたんだった。胸の前に抱え直す。
「う~ん、ローレンスさまぁ、うふふ。だーいすきー。」
寝ぼけた女が首に手を回して来た。顔を擦り寄せて来る。うぜえ。
ん?何だアルルの奴こっちを見て・・・なんて目をしやがる。ちっ。女を背負う。
「次の方。」
城門の前で入国の審査をしているようだ。
空から入りゃ済むのに面倒くせえ。
「お嬢さん、どこから来なすった?身分を証明出来る物は?」
「これでいいかな?はい、冒険者の許可証。」
「ん、どれ。・・・ギルドのライセンスカードか。」
「他のギルドで作ったやつなんだけど大丈夫かな?」
「いやー、こんなギルド名聞いた事無いぞ。」
「8層で作ったやつだからね。やっぱダメかー。」
「8層?お嬢ちゃん嘘ついちゃいけないよ。階層を跨げる者なんて王国にもいないからな。とにかくダメだ。帰ってくれ。」
「まあ、そうなるよね。アス、よろしくー。」
ちっ、魅了
「こ、これは、アルル様失礼致しました!どうぞお通り下さい!そうそう、忘れる所でした。これは要人にのみ配られるVIPパスです。全ての施設の出入りが可能となり無料で使用出来るカードです。お使い下さい。」
「サンキュ。じゃあ行こっか。」
周りの人間共がざわつき出した。審査をする男にアルルの事を隣国の王族と認識させたがやり過ぎたか?
「あっ、そうだ王国のMAPとかないかな。」
「観光マップならございます。どうぞ。」
「マーチ伯爵家ってどの辺かな?」
「この辺りですね。大きな門があるので分かりやすいかと。」
「オッケー、ありがと。」
教えられた場所へ転移。
大きな屋敷と門が見える。ここだな。
「アス、その子アタシにかして。」
何かアルルの奴さっきから機嫌悪いな。
ん?服の袖を掴まれた。
「宿を見つけたらまた呼ぶけど、変なお店とか行ったら許さないから。」
「は、はぁ・・・」
何だこいつ。
娘を背負って城門へと入っていった。
よーし!メスガキから開放されだぞ!
さて、女を探しに行くか!
─── マーチ公爵家正門前 ───
・・・きて・・・ロ・・・おきて・・・
んー?何?体が揺れて・・・気持ちいい・・・お母さま・・・むにゃむにゃ・・・
ん?
「へっ?ここって・・・」
あれ、何か記憶が曖昧で・・・とんでもない物を見たような。
「シャロ起きて、あっ、気が付いた?」
えっ、私おんぶされてるの?それにここって私の家!?
「あなた、私を背負ってここまで歩いて来たの!?」
「そだよー。無事に帰ってこれて良かったね。」
私たちがあの場所に行くのに3日かかったのよ!?それを・・・
天使?ねえ、あなた天使様なんでしょ!?
フワッといい香りが・・・クンクン、彼女の髪の匂いを嗅ぐ。はぁぁ、何この匂い。癖になりそう。くんかくんか、ジュルリ。はっ!?
「ご、ごめんなさい!もう、歩けるから降ろしてちょうだい。」
屋敷の者に見られるのは避けたい。
「もう大丈夫そうね。じゃあアタシはこれで。」
「待って!何逃げようとしてるの!?報酬!まだ払ってないから!」
嫌そうな顔をするアルルの手を掴む。
守衛に話を通し中へ。
庭園は魔力でライトアップされ幻想的な空間が演出されている。
「はえー、これが貴族の御屋敷かぁ。」
ふふ、見てる見てる。庶民には夢の様な空間でしょうね。
「どお、こんな広い屋敷初めてでしょ?」
ふふん。
「んー、もっと大きい家もあったし、100位内には入ってると思うけど正直デザインとかダサくてアタシは・・・あっごめん。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ダサい?王国でお城の次に優美で品位ある屋敷に向かって、聞き捨てならないわ!
「あなた一体何者なの!?ただの冒険者とは思えないわ。」
「ただの冒険者だよ。異世界から来たからこっちの冒険者とは少し違うかもだけど。」
異世界から!?外の階層から来たのかしら。何でもこの世界はダンジョンの一部で他にも複数の世界があるとかないとか。御伽噺ね。
私の部屋がある別邸の応接室へ。
メイドが紅茶と菓子をテーブルに置いて出ていく。
「改めてお礼を言わせてちょうだい。今日は命を救って頂きありがとうございました。」
頭を下げる。
「困った時はお互い様だよ。」
笑顔がかわいい。天使かな?
「確かギルドの報酬は金貨3枚ってなってたわね。よし、10枚払うわ。」
「いいよ、別にアタシお金には困ってないから。どうしてもって言うなら寄付でもしてよ。」
だから天使かよ!しかしこれは困ったわね。冒険者なのにお金は要らないなんて。依頼し辛くなってしまった。
「それじゃアタシ行くから。」
えっ、何でそんな急いでいるの?
「待って!泊まる所無いんでしょ?良かったらしばらくここの客間使って貰って構わないのだけれど、どうかしら?」
「えっ、ここ?うーん。」
なぜ悩む?この辺のどんな宿屋よりも豪華じゃないか。
「やっぱり、外で探すよ。じゃあね。」
嘘でしょ!?有り得ないわ!くっ!
「待って!もう正直に言うわ。わ、私、命を狙われているの!」
「そうなんだ大変だね。」
反応薄くない?
「今日だってモンスターの巣穴に置き去りにされたし生きてるのが分かったらまた命を狙われる。だから・・・アルルに護衛を頼みたいの!私の側に居て私を守って!」
お願い天使様!魔族の私が本気で神に願う。
「んー、面白そうだけどパスで。他の冒険者に頼みなよ。あっ、ここで引き篭ってれば大丈夫じゃない?ふふっ、じゃあね。」
こいつ!私は国を統べる者なのよ。
「ちょ、まって!私アルルじゃなきゃ嫌!王国の冒険者は信用出来無いわ!絶対裏で糸を操ってる奴がいるのよ!だからお願い!」
「そんな事言われてもねえ・・・」
あっ、時計を気にしてる。マズイ、何としても引き止めないと。
「私が第3王子と婚約すればこの家は安泰。莫大な富が約束される。私といれば冒険者なんて続けなくても済むのよ?」
「ふーん、そうなんだ。」
やはり金には興味ないか。
また時計見た!どうしたら・・・
「分かりました。では一週間護衛をしてくれたら・・・望みの物を用意します。何でも言ってくれて構わないわ。」
一週間で敵を探し出し叩き潰す。アルルの望む物が何であれ金の力を使って・・・
「今何でもって言ったよね?アタシが望むのはただ一つ・・・。」
ゴクリ
「魔王の首よ。」
・・・魔王?
「そ、そんなの実在しているの?神話の中の話でしょ?馬鹿馬鹿しい。」
無理難題を吹っかけて断るつもりなんだわ。
「用意出来ないようだからアタシ行くね。」
「え、そんな!?待って!」
扉を開け出ていくアルルを追う。
バタン
閉まった扉を間髪入れずに開けるが
「そんな・・・消えた。」
アルルの姿は無い。
床にへたりこんでしまう。これからどうすれば・・・。冒険者は信用ならない。家の力を使うか?いや冒険者上がりの奴が何人かいるが父や姉の護衛に付いている。
誰が味方で誰が敵かもわからない。
終わりだ。涙が頬を伝う。こんなはずじゃ無かったのに。
誰かに背後から討たれるくらいならいっその事ここで・・・
ドオオオオオオオオオオオオン!!!
ドドドドドドドドドドドドドドド
「きゃあああ!?」
何!!?じ、地震!?窓が明るく光っている。
駆け寄り外を見ると、
何よあれ!?
歓楽街の辺りから空に向かって稲妻?の様な物が走って雲が割れている。あれって魔力?いやそんなわけ、
knock knock
扉をノックする音がする。メイドが慌てて様子でも見に来たのかしら。
ガチャ
「こんばんは。」
「アルル!?どうして!?」
「いやぁ、ついヤッちゃってさ。でも悪いのはアイツだし、釘刺しておいたのに。だからリポップするまでこの国にいるから護衛の依頼受けようかなって。」
彼女が何を言っているのか全く理解出来ない。理解出来ないが・・・依頼は受けてくれるらしい。
・・・・・・。
「アルルー!もう離さないからね!どこにも行っちゃダメよ!」
駆け寄って抱きしめる。また髪の匂い嗅いじゃおうかな。くんかくんか。
!!?
えっ、血の匂い。
冷静になる。
アルルが部屋から出た直後、外で謎の爆発がおき、その後すぐにアルルが戻って来た。これって、
ダメだ!考えるな!私はこの子を利用して窮地を脱出しなければならない。それ以外は考えるな!!
「もう、くっつかないでよー。明日からよろしくね、シャーロット。」
ニコッと笑うアルル。
少し前まで天使の様だった微笑みが今はまるで・・・
悪魔の薄笑いじゃないか。