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ルーナの店

「うん! 出だしは良いわね!」


 王都に焼き菓子店を出店している。王太子妃のお気に入り! と言うフレーズを使っていいわよ。と、出店するにあたり王太子妃に言われたのだ。


 王太子妃と言う名前を使う事により、手を抜く事ができなくなる。 


 味や形はもちろん、ラッピングに至るまで完璧にした。そして密かな人気は……アウトレット商品だ。



 商品を作るにあたりどうしても形が悪くなったり、焼けすぎたりするものが一割は出てしまう。それを安く提供する事にした。



 その代わり簡易包装で、アウトレットと分かる様にした。そうする事によりニセモノが出回らない様にと言う工夫だ!


 ご自宅で食べる分には充分だし、焼けすぎたものも香ばしくて美味しいのだ。


 アウトレットです! という事でこう言ったものはお茶会で使われる事はないし、手土産にも使えない。例えばメイド達が主人に言われて買いに来た時に、自分たち用になら手が出せる様な金額。それを狙った。そもそもこの街に買い物に来るのは貴族だから、格を下げない様に注意している。



 貴族はお茶会のお菓子をケチらないのだから、このアウトレットのお菓子を出す事はない! プライドがあるもの。



「良いアイデアです! これでロスも減りますし、売上アップですね。買っていくメイド達にも評判だと聞きましたよ」



 大袈裟にスージー(侍女)が褒める。


「週に一度は孤児院にも寄付という形でアウトレットの品を持って行きましょう」


「それも良い考えです! お嬢様。喜ばれる事間違いなしです!」


「ふふっ、ありがとう。今月の売り上げが楽しみだわ」



 あとは庶民向けの店のチェックにも行く事にした。貴族街とは離れているので、馬車に乗り庶民街へ。


 内装は可愛らしく水色にした。貴族の店はシックなイメージでホワイトとブラウンに。高級感がある。



「うん。こっちは水色で正解ね! 明るくていい感じ!」


「ルーナ、来ていたのか?」



 声をかけて来たのはフェルナンドだった。すごく久しぶりに見た様な気がした。



「えぇ、今来たの。貴族街の店は繁盛していてこちらも楽しみだわ」


 にこにこと内装を見て回るルーナ。


「旦那は良いのか? おまえ……新婚だろ」


 フェルナンドに言ってなかった! もう結婚したんだから言ってもいいか……



「お互いのプライベートには口出しをしないもの。それに彼女さんも昨日引っ越して来たから仲良くしているんじゃないかしら? 邪魔者は邸にいない方が良いのよ」



 結婚する前は恥ずかしくてこんな事を言えなかったけれど、結婚して昨日、一昨日とジョゼフを見ていたら、泣いていた事が馬鹿馬鹿しく思えた。

 早く一年経って離縁する事が楽しみだ。その時私はこの店のオーナーとして庶民として暮らせたらいいな。




 両親にお金を返して、貴族街の店の権利も渡すつもりだけど、この店はお願いして続けさせてもらいたい。その為には繁盛させて、生活できる様にしなくてはいけない。



「彼女? なんだ! それ!!」



「契約書があるの。ちゃんと弁護士立ち会いの元作成したから問題はないわよ。侯爵様からは白い結婚後離縁するかそのままかは私に委ねる。と言われているからもちろん離縁するわ。結婚の際に両親が渡した一億リルを返す為にお金を稼がなきゃいけないの。取り敢えずあと半分は一年で稼がないと!」


 両腕で頑張るわ! と気合を入れる姿を見てフェルナンドが辛そうな顔をした。


「その金足りなかったら僕に言って……用意するから。先に一億リル出しても良い……」


 心配させてしまったみたい。


「だめよ。お金を借りたくて言ったわけじゃないのよ? 自分の力でなんとかしたいの」



「……分かった。でも足りなかったらその分貸すから必ず相談して。絶対に! 約束だ」


「そうね。足りなかったら貸してね! 利子はオマケしてくれると助かるわ」



 その時は遠慮なくフェルナンドに借りる事にしよう。持つべきものはお金を持っている友人。でも金の切れ目が縁の切れ目と言うから、フェルナンドには借りられないわね。やっぱり頑張って稼がないと!



 あまり長居をすると作業の邪魔になる。出て行こうと思ったところにスージーが案を出してくれた。



「お嬢様、ご実家に結婚の挨拶に行きますか?」


「そうね、行きましょうか!」


 結婚後は実家に挨拶に行くのが普通とされている。忘れるところだったわ。





******



「お兄様! どうしているの? 結婚式にもいらっしゃらなかったのに!」



 私には兄がいる。王太子殿下の友人でもあり実業家。何をしているかよく分からないけど、儲けているらしい。だから私も王太子殿下と知り合う事ができて王太子妃様と懇意にさせてもらっている。



「よぉ、久しぶりだな! 侯爵殿とは仲良くしているのか?」





「……………………う、ん」


 えへん、えへん



 誤魔化すために咳をした。



「えへん虫かしら……喉の調子が」






 兄は早々に勘づいたようだ。



「うまくいってないんだろうな! 世の中の女性は初夜を迎えると人妻の色気というものが明らかに出るものだが、お前にそれは感じられない! それに結婚して三日だと言うのに一人で家から出るなんて有り得ない事だ! 普通の男は若くてぴちぴちしたお前の様な女を目の前にすると一日中抱いていたいと思うものだ。そうなると腰が砕けて元気に歩き回る事はできない!」



 ズバッと遠慮なく言い切る兄……恥ずかしすぎるでしょう。兄にこんな事を言われて……ムッとしながら答えた。



「侯爵様とはそう言う関係ではありません。放っておいてくださいな。たった一人の妹の結婚式にも参列しないデリカシーの欠片もないお兄様なんて知りませんっ」



「はははっ。拗ねているんだな! よし今日は一緒に食事をしよう。久しぶりに兄妹の語らいをしようではないか! スージー悪いが侯爵殿にはそのように伝えてくれ」



「畏まりました」




 スージーは兄に頭を下げて出て行った。住みなれた伯爵家の方が居心地が良いわね。



 あら? もしかしてお兄様。




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