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年上の婚約者がいます

 八歳年上の婚約者がいます。




 私が五歳の時に婚約は決まった。相手はその時十三歳。


 機嫌が悪そうな顔というのが最初の印象。私の周りの大人はみんな優しい顔をしているのに、このお兄さんは会ったこともない私を一目見てすぐに目を細めた。

 その仕草がまだ幼い私には怖くてママのドレスの後ろに隠れた。



 そのお兄さんの両親は、私のことを可愛いと言って褒めてくれた。その日は婚約者というお兄さんの顔が見られなかった。怖かったから。



「ルーはまだ子供だから婚約と言うことが何かは分かっていないと思う。さっきお会いした人とルーは大人になったら結婚するって言う約束をしたんだ」



「結婚? パパとママみたいにあのお兄さんとルーは一緒に住むの?」


 と言う質問をすると、パパは私のことを抱き上げて笑っていた。



「まだまだ先のことだよ? ルーは私たちの大事なお姫様だからまだ嫁に出すつもりなんてない。パパもママもルーといるのが幸せなんだよ」


 そう言って頬にキスをしてくれた。幼心に思ったの。あの怖いお兄さんを愛する日が来るのか、愛される日が来るのか……



 だって結婚って仲良く一緒に暮らすことを言うんでしょう?


 パパもママも仲が良いもの。だから私とお兄様がいるんでしょう?





 それから五年経ち私は十歳になった。久しぶりに婚約者のお兄さんと会った。婚約してから会うのは三回目。


 お兄さんは十八歳になった。もうお兄さんではなくなっていて大人の人だった。



「ジョゼフ様、お久しぶりです」


 そう言って挨拶をした。


「あぁ、ルーナか。相変わらずチビだな」


 あの時と変わらない機嫌の悪い顔をしていた。でも私は知っている。パパとママの前でジョゼフはいい顔をしていることを。


「ベルモンド伯爵、お久しぶりです。ルーナ嬢を久しぶりに見ましたが、また可愛らしくなっていますね」



 そう心にもない挨拶をして、私と二人になると悪態をついた。



「なんで私の婚約者がこんなガキなんだ……友人達にはロリコンなんて言われている。婚約者同伴のパーティーへも行けやしない。私は忙しいからしばらく会えない。誕生日だったな、ほらやるよ」


 ぽいっと放り投げられる星のブローチ。それを受け取ることができなくて床に落ちてしまった。


「あっ……」



「ったく、トロイ奴だな。いらないなら捨てとけ。どうせ安物だ」


 そう言って出て行ってしまった。ジョゼフの家は格上の侯爵家、うちは伯爵家でよくある政略結婚だった。


 チビとか、トロイとか……だって仕方がないもん。頑張って大人になろうと思っても私が一歳歳をとるとジョゼフも一歳歳をとる……だから年齢差は埋まらない。仮令大人のふりをしても十歳は子供だ。分かっているのに悲しくなった。こんなプレゼントなんていらない……欲しくない。





 パパとママは実業家で、ジョゼフの侯爵家とはビジネスで繋がっている。


 ママは国内で有名な服飾店を経営している。どれだけ有名かと言うと予約が取れない程の人気店と言えば分かってもらえるのかなぁ。


 パパは国外から食材を始めママの店でも使われている生地を取り扱っている。その為国外にも顔が広くて、うちには外国のお客様も多い。


 外国のお客様はいつも変わった物を私にお土産にくれるから自ずと目が肥えてしまった。


 お兄様はそんな両親を見て国内外問わず出掛けている。一度行くとしばらく会うこともない。そんな家なの。




「ねぇ、パパ! これパドルさんからお土産にいただいたのだけど、珍しいからこれを仕入れてみたら面白くない?」


 パドルさんの国にしかいない不思議な動物のブローチだった。


「これを? どうやって販売するの?」


 パパは私の話をちゃんと聞いてくれる。却下されるときももちろんあるけれど、なぜ却下かと言うことも説明してくれる。


「あのね、キャラクターにするの。愛らしい顔立ちにしてノートに印刷するの。可愛い動物に癒されて勉強もきっと捗ると思うの」


「そうだね、令嬢向けにいいのかもしれないね。それにこの動物は幸運をもたらすと言われているからそれも作用して人気が出るかもしれないよ。そうだな……令嬢向けに作るとしたらプラスして花も一緒に付けると可愛らしくなるね」


 ぱぁっーと顔を綻ばせるルーナ。


「お父様、すごい! ルーが思っていたよりもっと素敵になった」


 ルーナの頭を撫でながら愛おしそうに娘を見る。



「ルーすごいね。パドルさんも褒めていたよ。さすがパパとママの子だ」


 それからもパドルさんはベルモンド伯爵家によく来るようになって珍しい物をたくさん紹介してくれた。


 それは宝物のようにキラキラと輝いて見えた。


「ルーナお嬢様、私の息子を紹介します。歳はルーナお嬢様より二つ上です」


 パドルさんは商人をしているけれど外国の人で伯爵様なんですって。パドルさんずっと私に商人だって言ってたのに! 



「はじめまして。僕はフェルナンド・デュポンと言います。よろしくお願い申し上げます」


 緑色の瞳は新緑を思わせる爽やかな綺麗な色……ミルクティーのような薄い茶色の髪の毛が少し跳ねているところがなんだか可愛らしいと思った。


「はじめまして。パドルさんにはいつもお世話になっています。ルーナ・ベルモンドです」




 それからフェルナンドとよく会うことになった。ルーナは十二歳だった。





 


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