ようせい
私の姉は妖精だ。
小さい姿をしていて、色々な所を飛び回っているらしい。
普段はどこにいて何をしているのかわからないが、毎年八月半ばの夜になると自宅にいたずらをしにやって来る。
誰もいない浴室の桶を落として音を立ててみたり、洋室の照明を勝手に消したり、テレビの電源を勝手に着けたりする。
私や家族は姉の姿が見えないが、飼い犬や今年で四歳になる甥には見えるそうで、犬は照明のスイッチの部分をじっと見つめていたし、甥は「羽が付いた小さい女の子がいる」と言ってテレビのリモコンの方を指差していた。
私は気味が悪くてその場を離れたが、母と父は姉が帰ってきたと喜んでいた。
生前、姉は明るい人だった。友達と旅行をするのが好きで、行った先々で見たものや経験したことをよく話してくれた。
札幌の雪まつりに行った時は「雪が止んだから外に出たのにまた降ってきた。これで三回目」と半ギレでメールを送ってきたし、鬼怒川温泉の近くにあるテーマパークに行った時は「ここから東京タワー、スカイツリー、エッフェル塔、全部見えるよ」と写真を送ってくれた。
余談だけど、ちんちくりんだった。
あんなに明るい人だったのに
どうして自殺したのだろう。
私が朝起きると姉は自室で首を吊っていた。
ロープを首にかけて宙に浮いていた。だから飛べるようになったのかも。
姉が死んでから三回目の夏、今年もいたずらをしに戻ってきた。
生きていれば二十三歳になる。
私の姉は夭逝だった。