闇の暗殺者2
久しぶりの投稿です。
長らくお待たせ致しまして申し訳ないです。
高校最後の年にして勉強が忙しく執筆が出来ませんでした。
今は無事勉学の方が一段落しましたのでどんどん続きを書いていこうと思います。
これからもよろしくお願いします。
刑執行前夜。
その日はいつもとなんら変わらないよる夜だった。
シルバは一週間前にこの牢屋に来た以降一度も訪れていない。俺はあの日から多くの感情を失い続けている。
今日も代わる代わる兵士や尋問官が来ては憂さ晴らしに俺を鞭や金棒で殴っては帰っていく。明日で俺が処刑されることで万が一にも自分たちの行為は明るみにはならないと確信してなのか、行動に躊躇いが無くなったが、今更激昂する気力も起きなかった。
早く明日になれば良いのに・・・
そうすればこの地獄から解放される。
この死への渇望が今日の俺をどうにか生かし続けていた。
だからと言ってこの理不尽な己への仕打ちを完全に割り切れた訳ではない。
俺は何も悪いことをしていない。
それどころか、例えどんなに卑しい目で周りから見られようとも、神楽代達に遠く及ばなくても、己の命を張ってこの国の人々を守ろうとした!
なのに……
俺は死刑宣告されるためにこの世界に来たわけじゃない!
守るべき者達に殺されるために来たわけじゃない!!
人間が憎い!!世界が憎い!!
そんな行き場を失った残り僅かな怒りと大きな憎悪が、今も身体中を這い回っている。
だがそれもこれも、今更感じたところでどうしようも無いことだ。
どうせ明日になれば、俺の生命は多くの人々の罵詈雑言を浴びながら見せしめにされ消える。
ならば、怒りという苦い感情は殺し、少しでも後腐れなく死にたかった。
あぁ、疲れた……
こんな事になるくらいなら委員長達と一緒に元の世界に帰っておけば良かった。
牢壁の隙間から射し込む月光が俺の腕に繋がった鎖を鈍く照らす。
鎖のきしむ音と虚しく吐息を吐く音だけが空間を満たしていた。
しかし、数分もするとそんな静寂に終わりを告るかのように遠くから誰かが近づいてくる音が聞こえてきた。
その足音は段々と大きくなったと思うと俺の牢の前で止まる。
「これはこれは、お久しぶりです、ユウマ殿。少し見ないうちに随分お変わりになられましたね。」
そう言った男の全身は白銀の甲冑で覆われ、肩部分には誇り高き帝国騎士団副団長の印である紋章が施されていた。
「っ……シルバッ!」
忘れるはずがない。俺を貶めた張本人であり、一週間前のあの日、この場所で俺を絶望の底に突き落としたこの男の名前を。
胸の中で燻っていた憎悪が一気に溢れ出す。
今日まで動くことを忘れていた足でどうにか立ち上がり、勢いよくシルバに喰いかかる。
が、手首に繋がる鎖の魔道具のせいで牢の格子どころか2メートル程前に進むのがやっとだった。
その直後、久しく使ってなかった身体を急に動かしたためか、バランスを崩し地面に倒れ込んでしまった。
その姿を見たシルバは危険は無いと判断したのか俺のすぐ側まで近寄ってきた。
「相変わらずあなたは無様ですね。」
そう笑ってシルバは倒れ込んでいる俺の頭を強く踏みつけた。
踏まれた衝撃が脳中で響く。
「ぐぁああああ……!!」
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!
今日まで押し殺してきた果てなき悪情が心の底から溢れ出てくる。
だが、それ以上にこの無様な状況をどうにも出来ない自分の非力さが憎かった。
「本当はこんなみすぼらしい場所に足を運ぶのも嫌なのですが、あなたと話せるのも今日で最期ですからね。」
シルバの表情がニタッと歪む。
その表情はかつて俺が数少ない信頼を寄せていた人物とは思えないほどに別人のようだった。
「……なんでだ……シルバ。」
「……なんでクーデターなんて起こそうとしてるんだよ。」
気づけば、苦し紛れにそんな絶え絶えしい声が出ていた。
自分がこうなる原因となったあの夜の真相を知りたかった訳じゃない。むしろ、今更、件のことを知れたってどうでも良かった。ただ、魔属性という特性を持つ異端者であった俺にもシルバだけは他人と変わらない態度で接してくれた事をこの時ぼんやりと思い出した。だからこそ、目の前にいるシルバという人物の本当の顔が知りたかった。
この質問の答えを聞ければそれが知れる気がした。
そして、もしもシルバにかつて見せてくれた様な優しい心が存在するなら……と淡い願望もあったかもしれない。
だが、シルバの返答は凡そ期待していたものとは違うものだった。
「なぜですか。」
「……僕は自分より劣っている者が僕よりも上にいるのが許せないんですよ。あなたに分かりますか、ユウマ殿?ロクな学も家爵もない輩がただ人よりも優れた戦闘能力を持っているというだけで、それまで何年も努力してきた者より、高尚な地位と名誉を欲しいままにしている。」
「……は?」
「だから僕はあの男を許せないんです。……ベルトラン・アンベールという男を!!」
「この国を、この騎士団のことを誰よりも想い、憧れ、努力し、支えてきたのは僕だ!!それなのに、どいつもこいつも口にするのは何時もあの男だ!!ただ『強い』というだけで!!ボクはそれが堪らなく許せない!!あの男も!あの男ばかり褒める分からずや共も!!」
シルバの鬼気迫る発言に俺は黙って聞いていることしか出来なかった。
だが、明確にこいつが狂っているということは理解した。
「俺は……お前の下らない自己顕示欲のためだけにこんな仕打ちをされたのか……」
はらわたがグツグツと煮えくり返りそうだった。
俺の名誉も自由も存在価値も、その全てが奪われた。その理由がそんな屑みたいな理由だったとは流石に思わなかったのだ。
狂ってる。
心の奥底に閉じ込められていたドス黒いものが再び全身に回っていく。
今まで捨ててきた感情が一気に手に戻ってきたようだった。
「っ……ふざけんな、ふざけんなよっ!!」
俺は狂乱した眼でシルバを睨んだ。
「フフッ、まぁ、あなたに共感してもらえるとは最初から思っててません。これも何も、あの日あなたが勝手に我々の密談を盗み聞きしていたのが悪いんですよ。」
しかし、シルバはそれを気にすることも微笑んた。
「しかし、この屈辱もそろそろ終わりです。この剣のお陰でね。」
そう言うとシルバは腰に着けてた鞘から一本の剣を引き抜いた。
「これを手に入れることが出来たのは最高の幸運でした。これのお陰で私はあの男よりも強くなる!」
俺の目の前で掲げて見せたその剣は月光に照らされえ黒く輝いているが、なんら特別みは感じない。
状況に困惑している俺を見てシルバは訂正する。
「あぁ、すいません。このままだと分かりませんね。どうしても、他人にこの剣の正体を知られる訳にはいきませんでしたので。」
その後、何やら剣の柄や鍔などの装飾を外し始めた。
どうやら、元々の剣の造形が分からなくなるくらい沢山の部品をつけていたらしい。
剣は少しづつ本当の形を取り戻していく。
だが、その途中で俺はあることに気がついた。
「お……おい、なんでお前がその剣を持ってる?!」
その剣は部品を外されていくにつれて青緑色の輝きを発していった。
そして、その独特な色と造形の剣を俺は前に見たことがあった。
「答えろシルバッ!!なんでお前が委員長の剣を持ってるんだ!?」
俺が見間違えるはずがない。
その剣はまぎれもなく召喚の儀で見た委員長 綿貫 舞弥の神器であった。




