邪神を倒せ!さらなるパワーアップへ
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1536年8月 信孝22歳 信秀26歳 証如22歳 蓮淳72歳
【神界 ベルトワ皇国 帝都 ベルディナス 宿屋 アクリス】
二人が倒れた後、そのままにしておくわけに行かなかったので、俺はフォルティアとティティスを帝都の宿屋まで運んできた。
二人はまだ気を失ったままだ。
「これからどうするかな…」
俺はため息をつきながらつぶやいた。気分は憂鬱だ。
二人の会話から考えて、ティティスがフォルティアを殺す覚悟だったのは、恐らく神力球を吸収してSランク神を超える存在になる必要があったからだ。
Sランク神を超える力で邪神を倒し、神界が滅びるのを防ぐつもりだったんだろう。
だが…暗黒太陽のせいで、俺達三人の神力はCランク神レベルまで落ちてしまった。暗黒太陽の効果は神界全体に及んだようだから、他の上位神もCランク以下になっているはずだ。
それに対して、暗黒太陽で奪われた神力は、邪神に注がれた。つまり、こちらは弱体化して、向こうは超強化されたわけだ。……フォルティアのせいでな。
俺はまた一つため息をついた。頭に正利の美しい笑顔が浮かんだ。
死にたくないから、どうにかするしかない。可能性としては『ブラックホール』を防いでくれたアイドルポイントか。こいつがあれば、邪神に対しても因果を改変することで有利に戦えるかもしれない。
だが…ちょっとやそっとじゃダメだぞ。15000ポイントあっても、ほんのちょっと神界の消滅を伸ばしただけだからな。
『ブラックホール』による即座の消滅は防げたが『暗黒太陽』でも神界は遠からず消滅しそうだ。
何億ポイントか…?最低でもベルトワ皇国の全国民……いや神界の全民衆の信仰がなければ、Cランク神のままで『Sランクを超越した』邪神を倒すなんてできないだろう。
どうやったら、神界全体から信仰を得られるか…?
結局、問題は神界に来たときと同じところに行きついてしまった。
「んん…ここは…?わらわはどうなったのじゃ?」
「おお!フォルティア!無事だったのか?」
色々やらかしたフォルティアが復活した。体中の原子がボロボロにされているはずだが、思ったより元気だな。
寝ぼけているようで、目をこすりながらポケーっとしている。
「フォルティア、お前は極小エネルギー弾でティティスを倒した後、倒れてしまったんだ。勝負はお前の勝ちだろうが、俺達はこれからのことを考えなくちゃいけない」
フォルティアのお陰で、邪神は神界全体の神力を吸収して、とんでもなくパワーアップした。
その代償としてフォルティアとティティスは結ばれた。しかしここで二人が死んでは結局、悲しい話で終わってしまう。
だから、俺とこいつとティティスは…何が何でも邪神をどうにかしなきゃいけない!
今のところ可能性がある、『邪神を倒す方法』は、俺が『神界全体から信仰を受ける』しかない。
だが、具体的な方法は思いつかない。二人にもアイディアを出してもらい、なんとか邪神を倒す方法を編み出さなくちゃいけない。
「お、おお。そうじゃったな。わらわの暗黒太陽で…」
フォルティアは何があったのか思い出したようで、シュンと沈んでしまった。だが、今は落ち込んでる場合じゃない。一緒に邪神を倒す作戦をたてないといけない。
「とりあえず、今はお前を攻めてる場合じゃない。邪神の情報を教えてくれ。お前は邪神の力を借りたんだろ?邪神ってのは何なんだ?」
相手の正体がわからないと戦いようがないからな。めちゃくちゃ強いらしいことはわかるが、どんなやつでどんな戦い方をするのかを知らないとな。
フォルティアは俺が怒らないことで、逆に深く落ち込んでしまった。そして、そのまま数分ほどはうつむいたまま黙っていた。
だが、自分がやったことの責任をとる気はあるようで、しばらくするとボツボツと邪神について話し始めた。
「邪神か…。邪神はのう、今から10年ほど前になるか…。神界に伊達稙宗という人物が現れたのじゃ…」
その言葉に俺は驚愕した。そもそも俺は稙宗に対抗できる力を手に入れるために神愛の塔に挑んだんだ。
俺はたまらず、大きな声で叫んだ。
「た…稙宗だと!?」
伊達稙宗は、すでに神界で何かを手に入れていて、今は対になる何かを探しに神居古潭に行っているらしい。
神界で活動していれば、どこかで稙宗の残した何かにぶつかるんじゃないかとは、思っていたけど…。まさか邪神と関わり合いがあるとは…!!
フォルティアは俺の慌てた様子に少し驚いた後、『少し長くなる』と前置きをしてから、稙宗と邪神の関係を話し始めた。
稙宗は十年前に神界に現れた。そして、その知識と技術により、『生物を進化させる』実験を繰り返した。
この実験は大まかに4つの段階に分けられる。
第一段階:遺伝子改造
第二段階:他宇宙のエネルギーによる進化
第三段階:Sランク神への進化
第四段階:神力球吸収による進化
第三段階でSランク神を作れるようになった稙宗は、数百体ほどのSランク神を生み出し、一体を残して皆殺しにした。
そして、その一体に数百体分の神力球を吸収させることで、Sランクをはるかに超えた『超越神』を生み出した。
「そうして産まれたのが、我々が邪神と呼んでいる神じゃ」
……思った以上に、どうしようもない事態だな。
Sランク神を数百柱も吸収した神なんて、どれだけ強いか想像もつかないぞ。いくらなんでも桁違い過ぎる。
その上、暗黒太陽で神界中の神力をたっぷり吸ってさらに段違いにパワーアップしてしまった。普通のSランク神を1としたら7000くらいの力だろうか。
俺の気持ちは深く沈み込み、うなだれた。何か方法はないのか?
俺たちはしばらくウンウンと唸りながら、邪神への対抗策を考えていた。
十分ほど悩んだところで、ふいに脇から声がした。
「話は聞かせてもらったぞ」
俺たちが打つ手を思いつかず悩んでいると、目覚めたティティスが会話に加わってきた。
いつの間に目覚めていたんだろう。気づかなかった。
「ああ、あんたも無事だったのか。良かったな」
俺はティティスが目覚めたことを素直に喜んだ。
どちらかが、ずっと目覚めなかったりしたら、せっかく結ばれた意味が無くなるからな。二人とも目覚めて本当に良かった。
「さっそくだが、今邪神をどうやって倒すか話してたんだ。俺たち三人には邪神を止める義務があるからな」
ティティスは軽くうなづくと、真剣な目で俺の目を見つめ、話した。
「ああ、それは私も思っていた。恋人同士になった以上、フォルティアの罪は私の罪だ。償わなければいけない」
その言葉に俺は心を打たれた。そうだ!フォルティアばかりが悪いんじゃない。責任はフォルティアを訓練し、ティティスのところに連れてきた俺にもある。
だったら…俺は考えるぞ!必ず見つけてみせる!!邪神討伐の方法を!
俺は決意を固めた。
そして脳の高度計算機能を開放し、新たなアイディアを探し始めた。二人の覚悟を受けて俺は考える。とにかく何か案を出さなくちゃな。
「…………太陽に行く…だと?」
俺が無意識に呟いた言葉に、二人は驚愕した。
「「太陽に行く!?」」
自分で言っておいて何だが、あまりにも荒唐無稽だ。太陽に行く?そんなことが可能なのか?そして、それにどんな意味がある?
俺は、自分の考えをまとめるべく目をつぶって深く考え始めた。
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【熟考中】
少なくとも言えるのは、太陽光には神力が含まれているらしいということだ。
二人の決闘の直後、フォルティアの暗黒太陽が消えたとき、神力からっぽの状態で普通の太陽光に当たると、少しだけ神力が回復したからね。
だったら太陽光に当たりまくればいいかというとそうでもない。太陽光に含まれる神力は微量すぎるんだ。
恐らく太陽光がオゾン層に吸収、あるいは反射されたときに、神力も宇宙に飛散してしまうんだろう。
そう考えると、宇宙に出た方がたくさん神力を吸収できるのは確かだな。
もちろん太陽に行くことができれば、もっと濃厚な神力を大量に吸収できるだろう。太陽自体が神力球のように、巨大な神力の塊なのかも知れない。
無限に近い太陽の神力を吸収することができれば、邪神と同じSランク神の7000倍の神力を得ることだって、可能だろう。
【熟考終わり】
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俺が考えに没頭していると、ティティスが何か閃いたような顔になり、手を叩いて『そうだ!』と叫んだ。何かアイディアがあるのか?
「もしかして、私の光速砲を使えば、太陽まで行けるのではないか!?」
「光速砲?なんだそれは?」
名前からすると、人間を光にして撃ちだす神術と言ったところか?ティティスは光になれるんだから、他人を光にして飛ばす神術が使えても不思議はないけど…。
「光速砲は相手を光に変え、光速で宇宙へと撃ちだす神術だ。普通、生き物は宇宙空間では生きられないからな。本来は、確実に殺すための必殺技だ」
俺はその話を聞いてピンときた。イケるかも知れない!
宇宙には空気抵抗がないから、地球の重力圏を抜けたときに光速なら、ずっと光速のまま飛び続けることができる。
確か光速はおよそ秒速30万キロのはずだ。太陽までの距離は…ええと、確か約1億5000万キロだっけ?
つまり、上手くいけば8分~9分くらいで太陽に着けるってことか。
俺の体は宇宙空間での活動を前提に作られている。加えて太陽での活動も極小エネルギー弾を使って体温を下げれば問題ない。
スピードの問題をティティスが解決してくれるならイケるはずだ!!
そう考えて、俺は大げさに喜び、両手を上げて大きな声で宣言した。
「よし!それだ!!俺は宇宙空間でも活動できるし、体や周囲の温度を自由に操れる。太陽に行っても死ぬことはない!」
俺がそういうと、ティティスは『なんだと!?』声を上げて驚いた。逆に俺の異常さを知ってるフォルティアは呆れたような顔になっている。
「本当か!?まさか、そんな神がいるとは、さすがに私でも驚いたぞ」
ティティスの言葉を聞いて、俺は感慨深い気持ちになった。
そうか…世界樹の身体に極小エネルギー弾。そしてこの方法を思いついた脳の高度計算機能…。フォルティアやティティスと仲間になったことも……!
俺の努力は無駄じゃなかった。松平信孝になってから、目の前の敵を倒すため、夢中で戦ってきたことは、無駄じゃなかったんだ。
すべてが、この太陽行きに繋がっていた…!!
「ああ、本当だ。これで作戦が決まったな。太陽へ行き、太陽から神力を吸収する。最低でもSランク神の一万倍まで!!」
一万倍と聞いて二人はびっくりしているが、それくらいは必要だ。
邪神はSランク神の七千倍なら、こっちは最低でも一万倍は必要だ。何せ相手にどんな隠し球があるかわからないんだしね。
邪神を倒せば、神界の消滅は防げる。……!待てよ…そうだ!
俺の頭に電流が走った!本気でそう思ったくらい、この思い付きは衝撃的だ。
「ティ、ティティス!!俺と邪神の戦いを神界中の人々に見せる神術はないか!?」
元の宇宙で言うところのテレビ放送だ。そんなのがあれば、俺が邪神と戦う姿を神界全体に見せることができる。
有利に戦うほど、俺を信仰する人が増え、アイドルポイントが集まって、より有利に戦えるというわけだ。
俺があまりに激しく聞きたてたので、ティティスは気おされてすぐに答えを返せなかった。
だが、数秒のうちに立ち直り、俺の質問に答えた。
「今の私はフォルティアでは無理だな。しかし、帝都にはそのようなことを仕事にしている神がいるぞ」
「ほ、本当か!!よし、それなら万事OKだ!さっそく太陽に行くぞ!!準備してくれ!!」
こうして、俺は新たなパワーアップに向けて、気持ちを新たにするのだった。




