ティティス「私と付き合ってくれ」 二人の愛の勝利
――――システムメッセージ――――
世界の消滅を感知しました。
アイドルポイントを消費し、因果に干渉します。
AP12000→0
因果の改変に成功しました。
フォルティアの使用した邪神禁術『ブラックホール』→『暗黒太陽』
俺の頭の中に謎の言葉が響いた。アイドルポイントを消費して、因果を捻じ曲げた…?
というか、アイドルポイントは確か元盗賊の12ポイントだけじゃなかったっけ?何で12000ポイントもあったんだ?
待てよ…そうか。俺が気づいてなかっただけで、フォルティアの部下のドラゴン達から信仰を受けてたとしても不思議じゃないな。神になったんだし。
ともかく…フォルティアが世界が滅ぶような邪神禁術…『ブラックホール』を使おうとして、何者かが俺のAPを使ってそれを阻止した…?
……誰がどうやって?
わけがわからないな。
そう考えてるうちに、眩暈が治まり少しずつ視界がはっきりしてきた…。
そして、意識がはっきりした瞬間に奇妙なことが起きた。フォルティアがさっき言った台詞を、そのまま繰り返したんだ。
「おお!…これがわらわの…愛じゃ!くらえ!!」
『邪神禁術・暗黒太陽……』
本当に『暗黒太陽』になってる…!!もちろん、暗転する前が『ブラックホール』だったかどうかは、もう確認のとりようがない。
しかし妙だ。フォルティアはほぼ同じ台詞を繰り返した。これは…まさか…一瞬だけど時間が戻ったんじゃないか?
少なくとも、俺のAPに宇宙三つ分のエネルギーと同じ価値があるとは思えない。だとすれば創造神が介入したんだろうか?
創造神に自力で、わずかに時を戻す能力があるとしたら…。どっちにしろ問題はエネルギーだな。
戻した時間がわずかだから、あまりエネルギーがいらなかったのか、あるいは創造神自身に無茶苦茶エネルギーがあるのか…?
どちらにせよ、創造神が時を戻せる可能性がある。何とかこの神界から神愛の塔に戻って、あのアナウンスに問い詰めないといけないな。しずくを救うヒントになるはずだ。
おっと…また考察に没頭してしまった。二人の様子はどうなった?
フォルティアが『暗黒太陽』を使うと、辺りがわずかに暗くなった。
そして黒い太陽光が建物の屋根を突き破って、降り注いできた。
「な、なんだ!あれは!?」
俺は空を見上げると、太陽が真っ黒になっていた…!!暗黒太陽は太陽を…そしてそれから降り注ぐ太陽光を黒くするのか?けど…これは戦闘でどう効果があるんだ?
俺はいまいち危機を認識できないでいた。しかしティティスは、顔を青くしてフォルティアに向かって叫んだ。
「これは!?まさか…邪神禁術を使ったのか!?お前、これがどんなものかわかっているのか!!」
しかし、フォルティアは、意志のこもった瞳でティティスを見つめ、力強い声で言った。
「恋人を手に入れるには、手段は選ばず…じゃ。これを使えばティティスの神力はゼロ近くになるじゃろ?」
フォルティアの言葉に、俺は驚愕した。まずいぞ。どうやら、この黒い太陽光に触れると神力を奪われるらしい。
俺の体からも、どんどん神力が抜けていった。
俺だけじゃない!い、いやそれどころか…。
俺は抜けていく神力の流れを感じとった。これは…マジか。どう考えても暗黒太陽の影響範囲は神界全体だ!
当然だがフォルティア一人の神力でこんな大技が撃てるわけない…!何者かが力を貸しているはずだ。
その証拠に、俺やティティスから奪った神力はフォルティアの方ではなく…地中深くのどこかに運ばれていっている。
フォルティア以外の神力が奪われれば、確かにティティスとの戦闘は有利になるかも知れないが……。
もしかして、とてつもなくヤバい何かに神界中の神力を注ぎ込んでるんじゃないか?
そこまで考えて、引っかかることがあった。皇帝ティティスが出したのは邪龍フォルティアの討伐依頼…けどフォルティア自身は龍神フォルティアと名乗っていた。
邪龍フォルティアに邪神禁術…!!
まさか邪神ってのがホントにいて、フォルティアを従えてるってことか?邪神と契約したときに邪龍と呼ばれるようになったと?
俺と会ったときは、何らかの理由で元の種族名を名乗っていた…?いや、でも進化した後の種族名は龍神帝だったし…。
俺がフォルティアと邪神の関係について悩んでいる間に、俺の神力はどんどんと失われていった。これは…多分かなりまずい展開だ。このまま邪神に神力が注がれたら…、恐らくそれが神界が滅ぶ原因になる。
「フォルティアよ…。まさか邪神に力を貸すとは……。こんなことさえしなければ、二人とも生き残る道があったかも知れないのに…」
ティティスは大粒の涙を流し始めた。この事態を止めるために、フォルティアを殺すしかなくなったってことか?
そしてティティスは再び構えた。今度は居合とは違うな。陸上のクラウチングスタートみたいな構えだ。
「お前が、私との愛のために世界を滅ぼすというのなら、私は世界を守るため、お前を倒すほかない」
フォルティアもティティスの攻撃に備えた。だが、やはり表情に余裕があるな。ティティスの神力は空っぽでフォルティアの方は、ほぼ満タンだからね。
「そう簡単にはいかぬぞ。ティティスの神力は、もうカラじゃろう。わらわはそなたを倒し、堂々と恋人になるのじゃ!世界の消滅はそれからなんとかする!!」
ティティスは、フォルティアの言葉には耳を貸さず、体を光に変えた。
『光変化の3!光の雨!!』
ティティスがそう叫ぶと、光がこの部屋全体を縦横無尽に飛び交い始めた。
ちなみに、俺やティティスの部下がいるところは器用に避けている。
とんでもない大技だ。フォルティアの周囲をくまなくティティスの光で覆うことで、確実にダメージを与える術らしい。
しかもみたところ、光はすべてガンマ線だ。当たれば原子が崩壊する。
加えて、ティティスの光が周辺を覆ったことで、部屋の中だけは暗黒太陽の太陽光が遮られている。
フォルティアはどうするつもりだろう。さらに別の邪神禁術があるんだろうか?
そう思ってフォルティアの顔を見ると、不敵に笑っていた。勝利を確信した目だ。やはりまだ隠し球があるらしい。
「そう来ると思っておったぞ!ティティスの光は部屋中に広まった!つまり部屋全体を消滅させれば、確実にティティスもまきこまれるわけじゃ!」
『神術・エナジーボム』
「この部屋のすべての神力を…爆発エネルギーに変える!」
フォルティアがそう叫ぶと、俺の体に残ったわずかな神力が、俺の体内で鳴動を始めた。
「わらわやティティスはもちろん、ティティスの部下、ご主人様、酸素や窒素に含まれるわずかな神力…そして地中の神力もじゃ!」
フォルティアのやつ、いくらなんでも無茶苦茶だ!そんなことしたら、俺達だけが死ぬだけじゃない。
俺達三人が死ねば、神界の消滅を止めるやつがいなくなるんだぞ!この世界が無くなったら、お前とティティスの恋もお終いじゃないか…。
そう思ってると、ティティスが光から元の姿に戻った。そしてフォルティアに駆け寄って、抱きしめた。もう戦いどころじゃないと感じたようだ。
「フォルティア…付き合おう!私と付き合ってくれ!!」
ティティスは涙を流し、ありったけの声で叫んだ。お互いの死と、神界の消滅の前には恥も外聞も無くなったようだ。
「お前は十分に力を見せた。もう誰にも私とお前の愛に文句をつけさせはしない!だから付き合おう」
「そうか……そうじゃな……ありがとう…」
フォルティアもティティスを抱き返し、涙を流して喜んだ。一瞬、やさしい雰囲気が周囲を覆った。
「少し…もう少しだけ早く…そなたがそれを言ってくれれば………」
ドグォォォォァァァァァァン!!!!
目の前が光に覆われた。周囲の神力が爆破エネルギーに変えられたってことか。
フォルティアはもう自爆する気が無かったようだが、止めるのが遅かったんだな。
猛烈な爆風に対して俺は苦し紛れの対策をとった。とにかく神聖樹に戻って枝を伸ばしたんだ。そして無数の葉をつけた。
この爆破エネルギーは元々神力なんだから、俺の葉っぱならある程度は吸収できるはずだ。もっとも、神聖樹になると燃えやすくなるかも知れないが、何もしないよりはマシだろう。
しばらくすると、爆破が治まった。どうやら俺は生き残ったらしい。周囲の煙が晴れて視界が戻ってきた。
フォルティアとティティスは……?どうなったんだ?
俺は一端、人間に化けた。細胞が再構築されることで傷が無くなるらしいからな。そして深呼吸をし、落ち着いて周囲を見渡した。
「宮殿が…ない!」
俺は驚愕した。宮殿が跡形もなくなっていた。壁が無くなったせいで、遥か遠くに帝都の街並みが見える。
いや、宮殿なんかどうでもいい二人はどうなったんだ!?
俺はきょろきょろと、もう一度周囲を見回した。そして、爆発前のまま抱き合っている二人を見つけた。
二人は無事……に見える。パッと見で生死はわからないが、原形をとどめているのは確かだ。
そんな風に考えていると、ボロボロのフォルティアがかすかに動いた。そして必死に声を押し出した。
「わらわは……勝つ……何を…してでも……」
フォルティアは虚ろな目で、両手でフォルティアの頬を掴んだ。まだ、勝負を諦めてないのか?さっきティティスに認められたのに…。どうしても勝たないと納得できないんだろうか。
そして、ゆっくりとティティスの唇に自分の唇を重ねた。
な、なんだ?いきなりキス?あいつ何のつもりだ?
俺は困惑していた。だが気をつけて観察すると、ティティスの体温が急速に低下していくのを感じた。
そうかキスで口から極小エネルギー弾をティティスの体内に入れたんだな。
この土壇場でとんでもないことを考えるやつだ。確かにこの状態なら、もしティティスに意識があっても避けられなかっただろう。
フォルティアは、涙を流しながらも笑顔で、噛みしめるように言った。
「こ、これで…ティティスの体温は、わらわの思うまま…じゃ…これでわらわの勝ち……。」
フォルティアが大きくふらついた。そりゃあそうだ。光の雨で原子を崩壊させられた上に自爆したんだからな。生きてる方がおかしい。
「やっと……わらわは……本当に……ティティスに並ん……」
最後まで言い終えることなく、フォルティアは意識を失った。




