愛のために~大激戦とフォルティアの成長~
1536年8月 信孝22歳 信秀26歳 証如22歳 蓮淳72歳
【神界 ベルトワ皇国 邪龍フォルティアの宮殿 玉座の間】
暗闇で何も見えないので、俺は周囲に敵の気配がないか探った。けど、全くわからないな。姿が見えないだけでなく気配も全く感じられない…。
だからといって、このまま神力を吸われ続けたんじゃ、こっちが不利になる一方だ。どうにかして相手の位置を特定しなくちゃいけない。
俺は力が抜けるような感覚を感じながら、考えた。不利だが、まだあまり恐怖は感じていない。ピンチを切り抜ける術などいくらでもあるからだ。
さて、まずはどうやって敵の位置を知るか…だな。
周囲に極小エネルギー弾を飛ばしてみよう。俺は極小エネルギー弾に触れたものを、手で触ったように感じ取ることができる。つまり見えないなら、触覚もどきで探ろうというわけだ。
俺は他宇宙のエネルギーを取り出し、極小エネルギー弾にして周囲に放とうとした。
だが、泥に触れてないにも関わらず、極小エネルギー弾も吸収されてしまった。まさか空気中にも何かあるのか?
少し焦ってきた。ここまで押される一方だからね。気持ちを落ち着け、分析を続けよう。
俺が次の策を練っていると、悲痛な表情でフォルティアが叫んだ。
「お、おい!ご主人様!このままじゃともう…ああっ!!」
フォルティアが酷く顔をゆがめた。その直後、人間化が解けて、元のドラゴンに戻った。変身していられるだけの神力が無くなったのか。
フォルティアは酷くうなだれて、今にも泣き出しそうだ。
「ご、ご主人様ぁ、またCランク神に落ちてしまったのじゃ…」
神力が下がったせいで、ランクまで落ちたのか。まずいぞ、米神を倒せたとしてもAランクに上げるのが、より難しくなった。
フォルティアは『なんとかしてくれ』と訴えかけるような目で、こちらを見つめてくる。
そうだな。俺が生き残るためにも、約束通りフォルティアを成長させるためにも、なんとかしなきゃいけない。
とにかく相手の正体を見極める必要がある。暗くなったということは光を吸収するのか?光と水からエネルギーを作り出すのは植物の特徴だ。
待てよ。そうか、水だ!俺達を捕らえているのは土でも砂でもなく……『水』を大量に含んだ『泥』だ。
つまり米神は、根から水を吸い上げることで俺達の神力を奪ってるはず…。
だとすると……?そうか、多分この泥に含まれる水は、触れると『身体から神力が溶けだす』んだ!
そして、その水を根から吸収することで、水に溶けた俺達の神力を自分のものにしているってことか。
ならばやつの策を逆手にとってやる。俺だって植物なんだぜ?
良い案が思いついて、気分が高揚してきた。今こそ反撃のチャンスだ。
俺は根に神力を込め、四方八方めちゃくちゃに伸ばした。神力が溶けた水を、俺の根でやつよりたくさん吸い上げてやるんだ。そうすれば神力を取り戻せる。
そのためには、とにかく泥と根の接地面を増やすことだ。根の範囲が広いほど水をたくさん吸い上げられるからな。
俺はこの宮殿の地下全体に渡るほど根を張った。これで、俺とフォルティアの神力が溶けだしたところですぐに回収できる。
それに…恐らく米神自身の神力も少し溶けているはずだ。トータルはプラスかも知れない。
少しずつ神力が戻って来たのを感じた。策が成って嬉しい。ここは一気に畳みかけてしまおう。
これで地下はこちらのものにできた。残るは地上だ!
よし、次は枝で地上を制圧する。俺が得意とする神術は、葉っぱに触れたものの神力を奪うことだ。
だから、泥の上の空間に枝を張り巡らせ、めちゃくちゃに葉をつければ、敵がどこにいようと神力を奪える。
そう考えて、俺が枝を伸ばし始めると周囲から、ものすごい勢いで稲穂が生えてきた。それらは俺と空間を奪い合うようにグングンと伸び始めた。
空間を稲穂で覆って、俺が枝を伸ばすスペースを作らせないつもりか!
いや、このくらいは想定の範囲内だ。俺は焦りに乱されそうになる気持ちをどうにか抑えた。落ち着きながら急げ!
俺はなんとか地上の空間が稲穂に覆われる前に、まだ空いているスペースに枝を伸ばした。
この暗闇の中で、やつらが稲穂という姿を見せたのはでかい!あの稲穂を狙って枝を伸ばし、葉っぱで覆えば、直接 神力を奪えるぞ。
地上のスペースを多少奪われても、要するに、やつの稲穂がこちらの葉に触れてる部分を増やせばいいんだ。そうすれば、いくらでも神力を奪える!
そして沼の上の空中の四割ほどをこちらが、六割ほどを米神が支配した。
無数にある稲穂のいくつかは葉っぱで覆うことができた。それ以外の稲穂もいくらか葉っぱに接している。これなら、かなりの神力を奪えるはずだ。
イケた!という気持ちが沸き上がってくる。だが、まだ油断はできない。俺が作っておいて何だが、相手はとにかく得体が知れないからな。
完全に勝つまでは嬉しい気持ちも抑えなきゃいけない。
「おお!ご主人様!これで神力を奪い放題じゃ。後はやつが干からびるまで待つだけじゃの!」
俺が冷静に成り行きを見守ろうとする中、フォルティアはもう勝ったつもりになって、はしゃいでいる。
こういうとこも何とかしなくちゃな…。
「いや…待て。どうもおかしいぞ。神力が流れてこない…いや、どちらかというと減ってる感じだ」
俺はとにかく今見えてる稲穂を注視した。すると稲穂の葉の部分に妙な変化を感じた。これは…葉っぱの裏…気孔から何かのガスが出ている!
まずいぞ、水と同じようにこのガスにも神力を奪う効果があるなら、葉っぱで多少奪い返しても盗られる方が多い!
俺は急速に神力が減っていくのを感じた。何らかの手を打たなくては!
激しく焦ってしまう。俺は樹だが、もし心臓があったらバクバクいってるだろう。汗もダラダラのはずだ。俺がなんとか打開策を探ろうとした。
すると俺が策を思いつく前に、フォルティアが米神の特徴を伝えてきた。さっきまではしゃいでたのに妙に冷静になってるな。切り替えが早いってことか。
「ご主人様よ。こやつら、統率がとれすぎておる。恐らく一本一本ではなく、どこかで繋がっておるぞ」
「どこかで繋がってる!?そうか、地下茎だ!」
稲だという先入観のせいで気が付かなかった。この稲穂たちの根が地下で繋がっているなら、頭脳となる部分が地下にいるんだろう。それがこいつらの本体だ!
「ナイスだ!フォルティア!!これで戦う目途がついたぞ!」
よし泥の中はこっちの根が張り巡っているんだ。さらに伸ばしまくれば敵の本体に行きつくはず…。
そう思っていたら、泥の中の残ったスペースに米神の根がどんどんと伸びてきて、俺の根に深く突き刺さった!
そうか、根から直接水を吸い上げることで神力を奪うつもりなんだ。
しかし…ガードしようにも根は突き刺さってしまっている…また神力が抜けていく。もしかして神格が下がるんじゃないか?
ただでさえこれだけてこずってるのに、こちらが弱くなったんじゃ戦いようがない。
焦る…焦る!怖い…。想定外の事態に俺は、全く対応できなかった。このままでは数分のうちに全身の神力が奪われてしまう。
恐怖が全身に広がる。こうなると、動くに動けなくなってしまう。
だが、俺の心の中心には愛がある。ピンチになると愛が燃え上がって恐怖や焦りを吹き飛ばしてくれるんだ。
そうだ。俺はこんなところでやられるわけにはいかない。ここを突破してまた正利と再会するんだ。正利だって戦争を止めようとハルナ王国で頑張ってくれてるはず。
今こそ、誰も思いつかないようなとびっきりのアイディアが必要だ。この局面を逆転するにはどうすればいいか…。
そう考えていると、恐怖に打ちのめされたらしいフォルティアが、アワアワと言葉にならない言葉を発していた。
そして悲鳴のような高い声で叫んだ。
「ご主人様!ど、どうにかしてくれえ!そ、そうじゃ!あいては植物じゃ!こうなったら、わらわの邪黒炎で燃やし尽くしてくれる」
「ま、まて周りは水だらけだし、お前はCランク神になってるんだ。いくら弱点とはいえ、Aランク上位のこいつらを燃やせるとは思えない!」
俺が神力を受け渡すのも、あまり意味が無さそうだ。Bランク50体分も神力を集めないとランクが上がらないことを考えると、他人の神力を受け入れるとパワーが減衰するっぽいからな。
待てよ…神力のことばっかり考えてたけど……。
俺はなんとか泥から逃れようと、じたばたもがいているフォルティアに一つの質問をした。
「フォルティア!Cランクになっても邪黒炎は100万℃の光の帯を出せるのか!?」
「ふえ!?そ、そりゃあもちろんできるぞ!そもそも邪黒炎はそんなに高度な神術ではないからの。ただただ温度を上げることだけに集中した単純な神術じゃ」
なるほど、大した技じゃない…か。だが、今回ばかりは俺とフォルティアの命を救う。一発逆転の技だぜ!
俺は、戦闘中なのに段々ワクワクしてきた。そうだいつも新しい必殺技を思いつくと、気持ちが昂るんだ。
今、泥の中や空気中、そして俺とフォルティアの体内にも神力と他宇宙のエネルギーを溶かす水が入り込んでいる。よって、どこに極小エネルギー弾を出しても吸収されてしまう…。
だがフォルティアの神術で発生した炎の中に、水は入りこめない!!
つまり、フォルティアに邪黒炎を撃たせてから、その中に極小エネルギー弾を入れて、原子の振動数を『上げれば』100万℃と言わず数千万℃の熱振動を起こすことができる!!
つまりただ温度を上げるだけの神術を、『もっと温度を上げる』ことで最強の術にするんだ!
一人の技が、もう一人の技を高める。そう、これは俺とフォルティアの『ツープラトン』だ!!
「いけるぞ!邪黒炎を極小エネルギー弾で、さらに過熱する!俺達の併せ技でやつを倒すんだ!!」
「そ、そんなことが…ご主人様の力を持ってすれば、Cランクの神術でAランクを倒せるのか…!!」
フォルティアが俺を尊敬のまなざしで見つめてきた。
だが…違うぞフォルティア。
だってお前の神術がなければ、俺の技は使えなかった。こいつはあくまで二人の力が…いやそれぞれ愛する人への愛が結晶化したものだ。
「俺だけの力じゃない!この技は俺の正利への愛と、お前への皇帝への愛の結晶だ!その源が愛だからこそ、ランクを超越した技になるんだ」
俺の言葉に、フォルティアが震える。フォルティアの瞳から涙がこぼれた。
「で、ではわらわの愛はついにあやつに届くのか!!」
そいつは当然だ。何せフォルティアはすでに真実の愛に目覚めてるからな。他宇宙のエネルギーを使えるようになるために一日もかからないはずだ。
つまり一日足らずで、俺の助けなくフォルティアの単独技として、これができるようになる。Cランクのままでも十分に皇帝と戦える技ができたわけだ。
俺はできる限り爽快に微笑んだ。そして、右手を握り、親指を上に立てた。サムズアップだ。
「もちろんだ!お前にはこの技を一人で使える方法を教える!そうすればお前は無敵だ!!」
俺がそういうと、フォルティアはそれまで以上に大げさに驚いた。泥に動きを封じられながらも、身をこちらに乗り出して言った。
「お、おおお!?わらわ一人でじゃとう!?さ、さすがご主人様じゃ!!」
さて、口上はここまでだ。実際に米神を倒すぞ。神力を残らず奪われてしまう前に勝負を決めなきゃな。
「よし!やつの根を狙って、邪黒炎を撃つんだ!後は俺に任せてくれればいい!!」
「わ、わかったのじゃ!いくぞぉ!」
『邪黒炎』
俺は、フォルティアの言葉に合わせて、慎重に水のある部分を避けながら極小エネルギー弾を邪黒炎の炎まで到達させた。
「いくぞ!!究極の炎ツープラトン!!『邪黒炎・オーバーヒート』だ!!」
俺が邪黒炎の『原子の振動数』を上げることで、邪黒炎の温度がさらに高まった!!
ただ…この技にも一つ問題がある。このまま『太陽の中心』に匹敵する温度に上げていくと、最悪、今いる星そのものが溶けて蒸発してしまう。
だから、数千万℃になる範囲を宮殿の中に収めなくちゃいけない。
もっとも心が愛に溢れてる限り、そんなコントロールはどうとでもなる。正利を想えば、パワーだけでなくコントロールも完璧になるんだ。
俺は周囲の稲穂や、やつが出した水が蒸発するたびに極小エネルギー弾を増やし、宮殿の外の温度を急速に下げた。
俺達の炎は稲穂はもちろん、周囲の水や泥も蒸発させた。その度に宮殿の地面が大きくえぐれていった。
さて、俺が沼の中に根を張り巡らしたときに、本体は見つからなかった。ってことは恐らく本体はもっと下だ。地下3km付近…そんなとこだろう。
「フォルティア!地下のもっと深くに邪黒炎を追加してくれ!恐らくやつの本体はそこにいる!」
フォルティアは、もう倒したと思っていたのか、俺の言葉にハッとした。それから、周囲の気配を探るようにキョロキョロと、周りを見回した。
「そ、そうか!確かにこれだけ燃やしたのに、まだ神力の反応があるのう」
『邪黒炎』
俺は、フォルティアの邪黒炎の中に極小エネルギー弾を入れた。
「よし!『邪黒炎・オーバーヒート』!!」
俺は極小エネルギー弾で原子の振動数を上げて、邪黒炎を数千万℃まで過熱した。すると、炎に触れた地下の泥がみるみる溶けていった。
「いたぞ!!あれが本体だ!!」
どこまでも続くやつの根をたどり、周辺の泥を蒸発させながら、ついに本体までたどり着いた。
「いくぞ!!念には念を!ギリギリまで温度を上げる…!!」
俺は次元穴から可能な限り、他宇宙のエネルギーを取り出し極小エネルギー弾にしていった。そして、邪黒炎の温度を限界まで高めた。
「限界突破!一億℃だ!!」
米神の本体が、一瞬のうちに溶けて蒸発した。周囲の温度はできるだけ下げたのだが…完全には制御しきれず、フォルティア山が…溶けて無くなってしまった。やりすぎたな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
1536年8月 信孝22歳 信秀26歳 証如22歳 蓮淳72歳
【神界 ベルトワ皇国 フォルティア山脈 フォルティア山・跡地】
俺達は米神が完全に消滅したことを確認するため、米神の本体がいたところへ向かった。高度一万mほどあったフォルティア山が今は浅い盆地となってしまったな。
「よし、どうやら米神は完全に消滅したみたいだな。根の一本でも残ってたら再生するかと思っていたが、大丈夫みたいだ」
「お、おお!!ご主人様よ、あれを見るのじゃ!!」
ドラゴン体のフォルティアが前足の指で器用に指さした方向を見ると、米神・本体のいたらしい場所に白く輝く巨大な宝石が落ちていた。
本当にでかい。サッカーボールくらいありそうだ。
「なんだ、これは?すごくでかい宝石…いや、米神が残したんだとすると、普通の宝石じゃないな」
フォルティアは、俺の言葉が耳に入っていないようで、喜びと感動が入り混じった表情で、プルプルと震えながら宝石を見つめている。
「こ、これは神力球じゃ!…神が死ぬと神力球を残す。この球には死んだ神の『全ての神力』がこもっているのじゃ!!」
フォルティアの話によると、決闘でわずかな神力を取り合う場合と違って、神力球には死んだ神の『全ての神力』がこもっている。
だから、それを取り込めば『神力が極端に上がる』…という話だ。
神力球を拾い上げたフォルティアが、球を握りしめて、にやにやしながら、『うへへ』と笑っているのは、そのせいだ。
「ふふふ…何せAランク上位の神力球じゃ。これを吸収すれば、Aランク…い、いやSランクも夢ではないかも…」
フォルティアは嬉しさを全く隠せておらず、飛びまわって喜んでいる。嬉しすぎて周りも見ずに飛ぶもんだから、壁や俺の体に何度もぶつかった。
それでもロクに痛がることもなく飛び回っている。
まあ、これだけ喜ぶのも当然だ。Aランク上位になれれば、自分が弱いせいで3000年も会えなかった恋人と再会できるんだからな。
俺は思う存分、飛び回ってやっと戻ってきたフォルティアに言った。
「じゃあ、さっそく吸収するんだろ?」
「おう!もちろんじゃ。見ててくれよ、ご主人様。わらわが超一流の神になる瞬間をのう!」
ドラゴン体のフォルティアは、巨大な手で神力球をつまみ上げ、口に入れて飲み込んだ。
それと同時にフォルティアの身体が白く輝きだした。米神の神力を吸収したことで、ランクアップするんだろうな。
しばらくすると、少しずつ光が治まってきた。フォルティアはそれまでより、何周りか大きくなった。さっき溶けたフォルティア山より大きいから…。
俺は、そう考えながら遥かに大きくなったフォルティアの身体を見上げた。
…そうだな、大体体長1万mってとこか。完全に生き物のサイズじゃなくなってるが、俺のこれまでの経験からしたら、まあ珍しくもないか。
――――――龍神帝 フォルティアが誕生しました―――――――
突然、頭の中にそんな言葉が浮かんだ。今のは何だ?
そう考えてると、いきなりフォルティアが涙を流し始めた。涙は滝みたいに地面に叩きつけられ、巨大な池を作った。
「おお!!おお!!わ、わらわが…わらわが龍神帝に!?」
「今のお前も聞こえたのか?龍神帝ってのは何だ?」
俺の言葉にフォルティアは憤慨する。龍神帝になっても感情の起伏が激しいやつだな。
それにしても龍神帝か…。帝というくらいだから、龍神の中でも特別な存在ってことかな?そもそも、こいつは邪龍じゃなかったのかよ。
「知らぬのか!ご主人様!龍神帝はSランク神、すべての龍神を支配する上位神じゃぞ!!」
フォルティアがまくしたてるように言った。エベレスト級のでかさなので、声が皇国中に響くほどでかい。
「それに……」
フォルティアは妙に真剣な表情になり、一度唾を飲み込んでからゆっくりと言った。
「ベルトワ皇国の法律には、『龍神帝が現れたら禅譲せよ』というものがある。つまりわらわはやつに代わり皇帝になる権利を手に入れたわけじゃ」
「皇帝になりたいのか?」
少なくともここまで話してきた感じでは、フォルティアは皇帝に向いたタイプじゃない気がするな。
肝腎なところで頼りになるのは確かだが。ちょっと落ち着きがないというか…。3324年も生きてるにしては子供っぽい。
「皇帝はまあ、どうでもいいわい。じゃが、わらわはついに、胸を張ってあやつの横に並ぶ権利を得たのじゃ!」
フォルティアは得意満面で胸を突き出した。それにより、周囲に大地震が起こった。一度人間になってもらった方がいいかも知れない。
だが、今度ばかりは俺も嬉しい。フォルティアが愛する人に並びたてるほど強くなった!
悩むフォルティアを見て、どうしても見捨てられなかったが、やはり協力して良かった。自分のときと同じように、嬉しさで心が震えている。
「おう!おう!!そうか、そうだったな!良くやった!それでこそ、俺も協力した甲斐がある」
「おう!そうじゃ!!本当にありがとうのう。ご主人様。それじゃあ…。ああ、ついにあやつと会えるのじゃな」
フォルティアはドラゴンボディのまま、今にも飛び立ちそうだ。まずい、この大きさのまま帝都に着陸したら帝都が潰れてしまうぞ。
「待て待て。一旦人間に化けよう。その体のまま行ったら王都を踏みつぶしちゃうぞ」
「あ、ああ。そうじゃな。あやつに会えると思うと、夢中でのう。自分の大きさを忘れておったわ」
フォルティアは人化の神術を使って、人に化ける。
「あと、とりあえず極小エネルギー弾は使えるようになってもらうぞ。誰と戦うにしても切り札は必要だからな」
「おお、そうじゃったの!わらわ一人であれが使えるなら百人力じゃ!!」
帝都に行けば、皇帝と…戦うことになるかも知れないしな。結局、討伐令が出された理由も完全にはわからなかったしね。
王宮で『付き合いたければ私を倒せ』と言われれば戦うしかないだろう。邪黒炎・オーバーヒートを使うと、殺しちゃう恐れもあるな……いや、相手もSランク神なら平気なのか?
「そういえば、皇帝はAランク上位なのか?」
以前、フォルティアが皇帝に告白したときの話では、Aランク上位だと言っていたはずだ。
フォルティアは『違うのじゃ』と言って手を振った。そして自分のことみたいに誇らしげに話した。
「あやつは、今はSランク神『魔神帝』じゃな。『神帝』の名のつく神が現れたら禅譲する法律があるのじゃ。じゃから先帝はあやつに皇帝の座を譲ったわけじゃな」
先帝は今の皇帝が『魔神帝』になったから、皇帝を辞めたのか。ルールに従えば、後から神帝になったフォルティアに権利がありそうだけど…。
フォルティアは一度ためいきをついた。やっぱり皇帝とは戦いたくないのかな。
「恐らくは、わらわとあやつで戦い、勝った方を皇帝に…ということになるじゃろうな。そもそも龍や魔族は『強い者に従う』という掟があるからの」
「なるほど…結局はシンプルなんだな」
さて…俺の目的はベルトワ皇国とハルナ王国の戦争を止めることだ。加えて、フォルティアには幸せになって欲しい。
フォルティアが皇帝になれば…戦争を止めるよう頼めるだろう。戦争をしなけりゃいけない理由があるにしても、介入できるしな。
でも、こいつはやりたく無さそうだよな。二人の交際を認めさせた上で、皇帝は今の皇帝のまま、ただし戦争は止めてもらう…というのが落としどころだろう。
フォルティアの修行は、一日もかからないはずだ。明後日にはいよいよ、皇帝と会うぞ。




