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帝都に入れなかった上に盗賊に襲われた

1536年8月 信孝22歳 信秀26歳 証如22歳 蓮淳72歳


【神界 ベルトワ皇国 帝都 ベルディナス】


 俺は国境から城の見える方向にスライム二匹を連れて向かった。


 ちなみにスライムに名前がないと呼びづらいので、子供っぽいやつをスラ坊と名付けた。女性っぽいのはスラ子だ。


 正利に着いていったオタクっぽいやつは、フレンド通話で話し合った結果、スラ助になった。


 そして、俺達はついに城の近くまで着いた。城の周囲は高い塀で囲まれている。この塀の中に帝都があるんだろう。


 フレンド魔法の一つ『フレンドマップ』でも、この塀の中が帝都ベルディナスだと表示されている。


 『フレンドマップ』は基本的にはスライムや正利の位置を知る魔法だが、フレンドが行った場所の周囲は地名や建物の情報が開示されるようだ。


 俺はマップで門が表示されているところに向かった。門には門番がいて、出入りする人を見張っているようだ。


 もし身分証明みたいなものを求められたらピンチだぞ。他の宇宙から来たなんて信じてもらえるとも思えないからね。


「おい!そこのやつ!!帝都に入るのか?」


 門番に呼び止められた。俺は警戒しながら、『はい』と答えた。


「知っているだろうが、皇国はハルナ王国と戦争をしている。そのため、帝都に入るものには敏感になっているんだ」


 そういうと、門番は丸い板のような道具を出してきた。


「これは、鑑定の魔道具だ。触れれば身分や能力、犯罪経歴の有無などがわかる」


 …まずいぞ。俺の脳には暗殺者の記憶チップが埋め込まれてるんだ。それが経歴として表示されるようなら、犯罪者ってことになる。

 

 たかしの記憶にしても、しずくと妹の麗美を殺してしまっているし…。


 もちろん信孝になってからは、これでもかというくらい不殺を貫いてきている。だが、この曖昧な状態が魔道具にどう判断されるかはわからない。


「どうした?魔道具に手を置くだけだ。犯罪者でないなら問題ないだろう」


 俺はそう言われて渋々、魔道具に手を置いた。


名前:松平信孝(望月たかし)

性別:男

職業:戦国大名

年齢:22

スキル:筋肉制御開放、脳制御開放、他宇宙エネルギー召喚、フレンド魔法

犯罪歴:殺人6587人


 ゲームみたいにHPだのMPだのが出てくるわけじゃないんだな。それにしても殺人6587人か…。これはまともな方法じゃ帝都に入れそうもないぞ。


「なんだ?これは…。名前の欄が二重に出て…。いや!殺人6587人だと!?この魔道具では戦争での殺人は表示されない。この大悪党め!」


 そう言うと、門番は通信機のようなものを使って、帝都内から応援を呼んだ。


 まずいな…。ここで捕まったら十日なんてすぐ過ぎそうだ。一旦、逃げた方がいいかも知れない。


 しかし、逃げてどこに行くんだ?そもそも、『愛される』ことで『戦争を止める』って具体的には何をすればいいんだよ…。


 そう考えていると、門の中からぞろぞろと兵隊が出てき始めた。やばい逃げよう!


 俺は筋肉と脳の制御を開放し、骨と筋肉を極小エネルギー弾で支えてマッハ3のスピードを出し、無我夢中で逃げ出した。


「ふう、どうにか捕まらずに逃げ出したな。けど、無茶苦茶に走ったせいでここがどこかわからないぞ」


 一応フレンドマップに、来た道と周囲の情報は表示されてるな。この通りに行けば戻れないことはないのか。だが、今戻ったところで下手したら指名手配されているだろう。


 王都に戻るどころか、捕まって処刑されるかも知れない。そうなれば俺も死ぬが、神界も消滅する。


 とはいえ、皇帝に会わなきゃ戦争を止めるなんて無理だからな。どうにか帝都に入る方法を考えなきゃいけない。


 さて、とりあえずここはどこなんだ?


 俺はフレンドマップで現在位置を確認した。ここはファミリア山脈…の中腹か。いつの間にか山を登ってたらしい。


 周囲には鬱蒼(うっそう)とした森が広がっている。


 こんな人気のないとこじゃ、『愛される』も何もないな。すぐに帝都に入るのは無理だけど、とりあえず人が多そうなところを探すとするか。


 そうして歩き始めようとしたとき、俺はあることに気づいた。


 む…?周囲に人の気配があるな。


 ちなみにフレンドマップは地形や建物はわかるが、生き物までは映らない。


 しかし、俺は元暗殺者で現役の戦国大名だからな。隠れるのも見つけるのも得意だ。


 どうやら木に身を隠しながら、俺を着けてきてるやつがいる。それも、結構多いぞ。十人ちょっとくらいかな。


 着けてきてるのは人間だ。獣じゃない。山道で人を着けて来るんだから、盗賊か何かだろう。


 その瞬間、周囲で大きな声が上った。そして炎の矢やら氷の塊、石の塊なんかが飛んできた。これは魔法か?盗賊が魔法を使うのか?


「おっと」


 俺は筋肉の制御を開放してかわした。脳の制御を開放しなくてもこれくらいなら余裕で避けれる。あまり強い奴らじゃないな。


「くそ!なんだこいつ!!」


「仕方ねえ!おい!アレをやるぞ!!」


 俺が避けるので、相手もイラついてきたらしい。固まって、何か呪文のようなものを唱え始めた。でかい魔法が来そうだな。


 盗賊たちの頭の上にでかい火球があらわれた。でかいと言っても、半径3mくらいか?正利の魔法とは比べ物にならないな。

 

 極小エネルギー弾を使えば、原子の振動を弱めて火球を消滅させられるだろうけど…。ここは一発ビビらせておきたいな。


 戦闘意欲をそがないといつまでも攻撃してくるだろう。


 だったら火球を消してしまうより、食らっても燃えないという方がインパクトがあるだろう。燃えた跡から無傷で出てきたら、不死鳥みたいでカッコいいと思う。


「いけ!ぶち殺せ!!」


 盗賊たちがそういうと、火球が俺の方に向かって飛んできた。そして俺にぶつかると、周りの木々を吹き飛ばす大爆発を起こした。


「へへっ!ただの火球と油断したんだろうが、こいつはオーガすら吹き飛ばす中級爆発魔法だ。」


「けど長老、持ち物も一緒に吹っ飛んじまったぞ。金を盗るはずだったのに」


「そ、そうか。しまった。俺はどうもカっとすると周りが見えなくなっていけねえ」


 盗賊たちはあまり頭がよくないみたいだ。俺の周りには数mにおよぶクレーターができている。いくらなんでも金を奪うにはやり過ぎだ。


 俺は爆発の瞬間、体の表面に極小エネルギー弾を付着させ、衝撃を防ぎ温度の上昇も防いだ。エネルギーの込め具合によっては、バリアにもなるな。


 爆発の煙がおさまり始めた。やつらの目に俺の姿が映っているはずだ。


 ここが重要だぞ。できるだけあいつ等をビビらせる台詞を言わなくちゃな。


 俺はいやらしい笑みを浮かべて、余裕を持って言った。


「今、何かしたのか?随分と煙が上がってびっくりしたが、痛くもかゆくもないぞ?」


「「ゲーッ!?あの爆発で生きてるだと!?」」


 盗賊たちは、さすがにびっくりしたみたいだ。しめしめ。出くわすたびに襲われたんじゃたまらないからな。肝を冷やしてもらおう。


「お前達、盗賊だろう。人の金を盗って生活するなど、許されると思うのか」


 盗賊の親分は怯えながらも言い返してきた。


「お、俺達だって好きで盗賊やってるわけじゃねえや!皇帝のやつが戦争なんてしやがるからいけねえんだ」


 その話を聞いて、俺は妙に気になった。神界にも普通に暮らしてる人がいる。そして、この戦争で生活に困っている人がいるということだ。


「そ、そうか。偉そうに言ってすまない。よければどうして盗賊をやることになったか、教えてくれないか?」


「そんなこと聞いてどうするんだよ?」


 まあ、確かに金を盗ろうと襲ったやつに、身の上話をする意味はわからないな。


 だが、こいつらは俺がこの世界で最初にまともに喋った人間だ。門番とはロクに会話できなかったからな。


 『愛される』ことで『戦争を止める』方法はわからない。だが、『愛される』というくらいだから、人と接する必要があることだけは確かだ。


 だから、こいつらと接する。もちろん困窮から救うことで『愛される』なんて言うのは、ホントの愛じゃないと思うけど…。


 でも帝都に入れない以上、現状手詰まりだからな。今はなんでもいいからヒントが欲しいんだ。


「今見たように、俺には普通の人とは違う能力がある。その能力でお前達を、食うのに困らなくできるかも知れないんだ」


 盗賊たちは顔を見合わせた。さすがに今あった人間ばかりのが、特殊能力で救ってくれると言っても信用できないのだろう。


 だが、盗賊たちはよほど困窮しているのか、頭を下げて頼んできた。


「じゃあ…頼む。俺達を救ってくれ。少なくとも、あの爆発魔法を無効化できるなんざただもんじゃねえ。俺達はあんたにかけてみることにする」


 よしよしいいぞ。この調子で助けてやれば、すごく感謝されるはずだ。これで『感謝』が『愛される』判定になるかどうかがわかるぞ。


 少なくとも『愛される』ってのが恋愛感情ってことはないだろうからな。国民みんなから恋愛感情をもたれろってのは、さすがにあり得ないはずだ。


 となれば、どのくらい信頼されれば『愛された』ことになるのかが問題になってくる。


「よし。いい判断だ。それじゃあ、君たちの事情を聞かせてくれよ」


 俺がそう聞くと、盗賊たちは盗賊になった事情を話し始めた。


 それによると、ハルナ王国との戦争で村の若い男手はみんな兵士として連れていかれてしまい、村には老人や女子供しかいなくなってしまった。


 それでも食べていくため、老人と女子供が皆で協力して、どうにか米を栽培していた。しかしそうして作った米も、戦争に必要な物資だと言って軍が持って行ってしまった。


 ついには来年分の種もみまで食べてしまい、米を作ることができなくなってしまった!


「というわけで、村の老人の中でもまだ戦えそうな者で、道行く人を襲い金や食料を奪ってたんです」


「年寄りだから体は動かんが、ワシ等は魔法のエキスパートなんだ。けど、あんたはワシらの魔法をすっかり避けちまうんだもの」


 俺は魔法はフレンド魔法しか使えないが、早く動くことにかけてはエキスパートだからね。それに普通の魔法なら衝撃を抑え、温度調整することで大体は無効化できる。


 しかし食料か。さすがにゼロから食料を作ることはできないな。種があれば…どうだろう?俺の今の能力で十日以内…いや一日未満で稲を生やせるか?


 俺は脳の高度計算機能を全開にした。こいつらが食事に困らなくなる……方法は………!!


“種もみに他宇宙のエネルギーを全力で注ぎこむ”


 そんな言葉が思いついた。他宇宙のエネルギー?極小エネルギー弾に使ってるエネルギーでいいのか?


 確かに他宇宙のエネルギーには、属性とか特殊エネルギーとか、色んな種類がありそうだ。植物を成長させるエネルギーもあるかも知れない。


 でも俺が使ってるのは、できるだけ元の宇宙に近い一般的なエネルギーのつもりだ。それを種もみに注いだら、燃えてなくなっちゃうんじゃないだろうか。


 しかし俺は脳の高度計算機能を開放したときに出てくるアイディアに何度も救われている。今回もこれにかけてみるしかないだろう。


「お前達、種もみはもう一粒も残ってないのか?一粒でもあれば、俺の能力で増やせるんだが」


「米を増やせる…?いやいくらなんでも、そんなことありえねえだろ?」


 俺もそう思うんだが、俺の脳の高度計算機能は何かを知ってるらしい。もしかして2050年のたかしの記憶から出た案なんだろうか?


「いやいける。もしダメなら…そうだな盗賊を手伝おう。俺の強さなら、お前らだけでやるより効率良さそうだ」


 まあ『愛される』のが目標だからホントは盗賊なんてやる気ないけどね。説得するためにはしょうがない。


 もしホントにダメだったら、愛され系の盗賊を目指すしかないな。


「本気で言ってるのかよ?米が増やせたら、飯の心配なんていらないじゃねえか!」


「そうだな。俺の能力があれば飯の心配をしなくて良くなるんだ」


 俺があまりに自信満々に断言するものだから、盗賊の親分(村の長老らしい)は渋々と隠していた最後の種もみを出してきた。


「こいつが本当に村で最後の米だ。盗賊が失敗したらガキ共に食わすつもりだったが…」


 俺は種もみを受け取って、長老の目を見つめた。そして腹に力をこめ、できるだけ大きな声で言った。


「心配するな!この種もみがあれば、俺の力で子供達に腹いっぱい米を食わしてやれる!!見てな!」


 俺は”穴”から他の宇宙のエネルギーを引き出し、種もみに込めていく。


 かなりのエネルギーをつぎ込んだが、少なくとも燃えてなくなることはないみたいだ。


 大丈夫そうなので、俺はさらにたくさんのエネルギーを種もみにつぎ込んでいく。


 すると、突然種もみが赤く発光し、振動し始めた。


 ドゴォォォォォォン!!!!


 激しい爆発と共に、種もみが大きく膨れ上がりそこから、巨大な稲穂が突き出した、それは天を突く勢いで伸びていき10mほどの高さになった。


 そこまでは良かったのだが、その稲穂から手足が生えて目鼻口がついた。手足や目鼻口も本体の稲穂から稲穂が生えている。それぞれの穂にはちゃんと米が生ってるな。


 俺はその稲の化け物を見て、喜び叫んだ。


「なるほど、そういうことか!!」


 こいつは化け物だが、間違いなく稲でもある。つまり、倒すことさえできれば、こいつから米を収穫できるわけだ。このでかさだと、一年分くらいになるんじゃないか?


 そう考えながら、俺は極小エネルギー弾を操作して、稲の化け物の体内に侵入させる。まあ、こんなやつぐらいなら大したことはない。


 原子の振動を邪魔して、化け物の体温を極端に下げていく。どんな生き物でも体温が極端に下がると生きてはいられない。


 ついに意識を失った化け物が、倒れてくる。


 ズズーーーーン


 10mもある稲の化け物が、地面に倒れこんだ。こうなるともう、タダの稲だ。収穫し放題だな。


「よーし、見ての通りだ。一粒の米が一年分の米に増えたぞ!俺の言った通りだろう」


 俺はそう言って、あくまで想定通りであったかのように振舞った。いや、まあ概ね予想通りだよ。ちゃんと米が増えたからね。


 盗賊たちはしばらくあっけにとられていたが、どうにか目の前の事実を受け入れたようで、手を取り合って喜び始めた。


「おお!!おおおお!!!確かにこれだけあれば、一年は安泰だ!」


「すべては、あんたのお陰だ。あんた創造神ゴニャータの使いなんじゃないか?」


 この世界を創ったやつはゴニャータというのか。そいつは世界が滅びることをどう思ってるんだろう…。


「神の使いか。もしかしたら、そうかもな。」


「おお……ゴニャータは我らを見捨てなかったのだ…」


『アイドルポイントが12上昇しました。アイドルレベルがLv2になりました。』


 お?何だ?アイドルポイントが上がった?もしかして、こいつらに『愛された』ってことか?


 恩の押し付けで『愛された』のは心苦しいが、話が先に進んだのはありがたいな。


 『アイドルポイントは因果に干渉します。アイドルレベルが上がるほど、貴方にとって都合のいい何かが起きるようになります』


 因果に干渉して、都合のいいことが起こるようになる!?何だそれ、完全に無敵じゃないか?『運』が味方につくってことだろ?


 レベルの低いうちはどれくらいの効果かわからないが…。レベルが上がってくると、黙ってても世界を動かすくらいの効果になりそうだ。


 ……待てよ?稙宗は神愛の塔をクリアしてるんだよな。じゃあ、実力に加えて超幸運があったからこそ、東日本を制覇できたのか。


 しかも多分、今は東日本全体の住民から『愛されてる』んだよな、きっと。アイドルポイントは今の俺とは比べ物にならないはずだ。


 アイドルポイントを上げないと勝負にもならないってことか。能力で”俺が負ける”運命を引き寄せられたんじゃあ、敵うわけがない。


 しかし、どのくらい『都合よく』なるんだろう?さすがに帝都に入るのは難しいだろうか?


 検証してみる必要があるな…。さすがに真正面から帝都に入ろうとするのは無謀だろうけど…。


 帝都の塀はかなり高かったけど、50mも無かったはずだ。今の俺が全力でジャンプすれば届きそうだな。


 もっとも入ってからが問題だ。それが怖くて、逃げてきてしまったが…。


 リスクはある程度、背負わないと十日で戦争を止めるなんてできないだろう。それに、アイドルレベルを上げるには、できるだけたくさんの人と接する必要もある。


 王都で人助けをして、アイドルポイントを稼ぐか。そうすれば、因果を捻じ曲げて元暗殺者だと『ばれにくくなる』力が働くはずだ。


 なかなかリスキーだが…今はこれしか無さそうだな。


 こうして俺は危険を承知で王都に戻ることにした。

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