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俺の秘密を、正利に明かす

1536年8月 信孝22歳 信秀26歳 証如22歳 蓮淳72歳


【陸奥国 楢葉郡 富岡遺伝子研究所・地下牢】


[信孝サイド]


 正利から出ていた映像が消えた。どうやら、俺に見せたかったところまでは見せたってことかな。


 つまり、正利はオマッとして真実の愛に目覚め、真愛(マナ)の神殿でジャバウォックを倒した…。


 いや、それも重要だけど、真実の愛に目覚めたときやっぱり他の宇宙からエネルギーを取り出していたみたいだ。そこまでは俺の時と同じだけど…。


 決定的に違うのは『魔法』というこの世界の物理・科学では説明できない能力を使ったことだな。


 多分、あの世界樹の杖ってのが他宇宙のエネルギーを魔力に変換してるんだろう。だから元々この世界に魔力がなくても、魔法が使えるってことだ。


 あれがあればゼウスどころか、稙宗にだって勝てるんじゃないかな?


 だから、恐らくキーワードになるのは、『杖』と『勇者』なんだろうけど…。


 今ここに世界樹の杖はない。それに俺が勇者だとも思えないんだよな。だが今の映像にヒントがないわけない。絶対に、俺の超進化に繋がってるはずだ。


 じゃあ、あの過去の情報から俺は何のヒントを見つければいい?


 そう思った瞬間、正利が意識を取り戻した。そして、俺が喜んだり話しかけたりする前に大きな声で叫んだ。


「おお!!おお!!信孝様!私はすべてを思い出しました!」


 正利は整った顔をくしゃくしゃにして喜ぶ。


「あのとき、私とアリスだけが知った超進化の秘密も……そして!すべてを思い出した今、信孝様が最高のパートナーであることもわかりました!」


 俺は正利の剣幕にちょっと押された。それにしても最高のパートナー?確かに俺と正利は最高のパートナーだとは思うけど…。


 そういう意味じゃなさそうだな。まさか俺達の愛には、単に超進化できる以上の何かがあるってことか?


 そんなことを思っていると、突然正利が俺に抱き着いてきた。


「お、おい…正利……」


 嬉しいけど、ここには龍信もガルーダもゼウスもいる。第一、今は戦闘中だ。あんまり人前でイチャイチャするのはどうだろうか。


「メテオストライク!!」


 正利がそう唱えると、俺の体が虹色に輝き、空中に映像で見たのとは比べ物にならないくらい大きな隕石が出てきた。


 隕石の端が見えないぞ。これ半径が4~5kmぐらいあるんじゃないか?


「ま、正利!?こ、これどうなってるんだ?」


 世界樹の杖がない上に、聖女もいないはずなのに、空中に正利の魔法が浮かび上がった。何がどうなってるのか、全くわからない。


 いや、状況と正利の言葉から考えて、俺がきっかけになってるのは間違いないんだろうけど、何故そうなるのか見当がつかない。


「な、何だ。あれは?こざかしい真似をしおって。ワシの電荷渦で電気にしてくるわ!」


 ゼウスが電荷渦で磁力を生み出し、隕石を引き寄せ始めた。


「それは、私の思うつぼですね」


 正利は余裕そうな表情で、新たな魔法を唱えた。


「纏雷!」


 また、俺の体が光り輝いた。それと同時に、隕石の周りに『雷のバリア』ができた。電荷渦はエネルギーを雷に変えるんだから、雷のバリアは消せないはずだ。


「信孝様を傷つけた罪!きっちりと償ってもらいます!!」


 隕石が落下し始めた。ゼウスはそこら中のエネルギーを電撃に変えて隕石にぶつけた。けど雷のバリアが全部防いだ。


「ば、馬鹿な…!!何故ワシがこんなやつらに……!!!」


 ゼウスが隕石の下敷きになった。俺が活人のため、命だけは救ってやろうと言い出す暇もなかった。


「な、なあ…正利、俺はこれまで活人兵器という信念をもって戦ってきた。やっぱり敵を殺すより活かすべきだと思うんだが……」


 俺はぼそぼそと、そう言った。とはいえ、俺一人ではどうしようもなかったんだ。抗議できるような状況ではない。


「く…………ああ……」


 俺がそう言った瞬間、ゼウスが岩の間から這い出てきた。


「もちろん、分かっていますよ!信孝様のご意思がわからなくて、恋人が務まりますか!」


 おお!さすが正利だ。そうかそうだよな。こ、恋人……だしな。とりあえずゼウスが生きてたのは良かった。でもだとすると、抵抗してくるかも知れないな。


 瀕死っぽいのは間違いないけど、油断はできない。


「この力は……まさか…稙宗様と同じ……!だが…『規模が違い過ぎる』貴様らは弱い!!稙宗様の力はこんなものではないぞ」


 ゼウスがそう叫んだ。どうも負け惜しみとかじゃなさそうだぞ。稙宗は今の隕石以上のことができるのか。


 まあ東日本を統一したくらいだから当然か。


「それもわかっています。恐らくこの富岡には、真愛(マナ)の神殿以上の何かがあるのでしょう」


 ゼウスの話に対して、正利はすべてわかってるような話をする。ここに真愛の神殿以上の何かがある?


「どうして、そう思うんだ?」


「簡単なことです。真愛の神殿は扉を開くのに、愛し合っていることが必要でしたけれど、ここの神殿は真実の愛でなければ開かないからです」


 条件がより厳しいってことか。その分クリアすれば大きな恩恵がある?


「つまりここのは真愛の神殿の上位互換ってことか。だとすると、最低でもここを突破しないと稙宗とまともに戦えそうもないな」


 しかも稙宗は今、神居古潭に行っているらしい。恐らく真愛の神殿に挑戦しているんだろう。普通に考えたら、下位互換の神殿をクリアすることに意味があるとは思えないが…。


「そうですね。いずれ、稙宗と戦うことになるならば、ここの神殿を突破しておかねばならないでしょう」


「なあ、稙宗は真愛の神殿に行ってるんだろ?もうこっちの神殿を突破してるのに、真愛の神殿に挑戦する意味があるのか?」


 意味があるとしたら、二つの属性が違うとかかな。究極の進化とか言ってたし、どちらも突破することで、超進化以上の進化ができるってことなのか。


「そうですね。二つの神殿は兄弟のようなものです。兄か弟どちらかを突破しただけでは大して意味がない」


 片方だけ突破しても意味がない!?だが、現に正利は真愛の神殿を突破して、とんでもない魔法を使えるようになっているじゃないか。


「究極の進化のとんでもなさからすれば、超進化など誤差に過ぎないということです。」


「なるほどね。じゃあ、今からここの神殿を突破できれば、正利は神に匹敵する存在になれるってわけだ」


 身近な人が神にも匹敵するなんて、ちょっと想像がつかないな。でも、稙宗に勝つために必要なら、やってもらわなくちゃ困る。


「ははは。まあ、そうですね。だが、例え神になったとしても私の心は貴方のものですよ」


 俺の顔が真っ赤になった。正利の顔も赤い。照れ臭いな。


「それじゃあ、神殿に挑戦する前に孤児たちを保護しなくちゃ」


 そもそも、それが目的でここまで来たんだしね。とりあえずゼウスを拘束した上で、俺達が神殿に挑戦してる間は、龍信とガルーダにここの守備を任せればいいだろう。


「そうですね。ゼウスよ、孤児たちの場所を教えなさい」


「ワシにそれを教える義務はない。稙宗様を裏切るわけにはいかんからの」


 ゼウスは俺達に敗れたが、従うつもりはないみたいだ。やはり予定通り拘束しておいて、自分達で孤児を探すしかないみたいだな。


 と言っても、元々この地下牢にいるとあたりをつけた上で来たんだ。すぐに見つかると思うけどね。


「じゃあ、俺と正利はゼウスを縛る役をやろう。抵抗されたとき戦えるのは俺達だけだからね」


「…………では、我と龍信は孤児探しだな」


 ガルーダの言葉で、俺達は動き始めた。


 と言ってもゼウスの電荷渦はなんでも電気にしちゃうからな。極小エネルギー弾は役に立たない。俺にできることは、ゼウスが妙な動きをしたときに、超音速で対応するぐらいだな。


 縛る作業は正利に任せ、俺は緊急時の対応に専念することにした。


「ところで、正利はなんで魔法が使えるんだ?勇者と聖女と世界樹の杖が必要なんじゃないのか?」


 正利がゼウスを縛り終えたので、俺はさっきから気になっていたことを聞いてみた。


「ええ、それを説明しなければなりませんでしたね。これから挑む富岡の神殿にもかかわりがあることですから」


 神居古潭の神殿と、富岡の神殿は兄弟みたいなものって言ってたな。やはり真愛の神殿を突破したことで、杖なしでも魔法が使えるようになったってことか?


「真愛の神殿を突破したものは、魔神の祝福が与えられます。そうすると他の宇宙である『魔界』から魔力を引き出せるようになるのです」


 俺はあまりにも突拍子もない話にあっけにとられ、数秒間固まった。


 魔神…?神?神が実在するのか?いや他の宇宙って言ったな。他の宇宙なら、ここの物理法則が通じなくてもおかしくはない。それなら問題は、神ってのがどんな生態で何ができるかだけだ。


 つまり…魔界という名前の他の宇宙があって、そこの神が魔界のエネルギー『魔力』をこの宇宙に引き出させていいかどうかテストしている…。


 ちょ、ちょっと話についていけそうもないが…。


「つ…つまり真愛の神殿は魔界から魔力を引き出すのにふさわしいかどうかの試験をする場所なのか…」


「そうですね。ですから、私は杖がなくとも魔法が使えます。ですが……、それだけでは先ほどのような桁違いの威力は出せません」


 どういうことだ?確かにさっきの隕石はとてつもなかったけど…。いや、そうかさっき俺の体が虹色に光ったんだっけ。


「つまり『魔界』から魔力を引き出せることに加え、俺の体が何らかの作用をしているんだな?」


「そうですね。少し信じがたいことではあるのですが…」


 信じがたいこと?いや、まあ俺の体が虹色に輝いて、魔法が出てくるのは信じがたいけど…。正利はできると確信をもってやっていた。


 じゃあ何が信じがたいんだ?


「それは…単純に言えば信孝様の身体が『世界樹と全く同じ素材』でできているからです」


「は……?俺の体が世界樹と同じ素材…?どういうことだ?」


「こっちが聞きたいですよ。少なくとも貴方が人間やエルフではないのはわかります。だが『何』なのか全く分かりません」


 どういうことだ。俺は確かにアンドロイドだけど…。元の宇宙には魔法なんてない。世界樹と同じ素材なんてあるわけないぞ。


 いや…待てよ。本物の俺と茂は、色んな宇宙に俺達みたいなアンドロイドを送り込んでるって話だったな。


 だったら帰還してきたアンドロイドから、他の宇宙の情報を得ていてもおかしくはないのか……?


 もし元の宇宙に世界樹と同じ素材があったとする。でも、元の宇宙には魔法が無いから、誰も価値を認識できない。


 だから価値を知ってる茂と本物の俺が採り放題だったんじゃないか?


 いや、それはそれで疑問が残る。茂と本物の俺はなんで、そんな魔法特化のボディを作っておきながら、俺を魔法が無いこの宇宙に送り込んだんだ?


 いや…そうだな。厳密にはこの宇宙にはエルフの使う魔法があるんだ。もし茂と本物の俺が魔法探知機みたいなものを開発していて、アンドロイドを送り込む宇宙に魔法があるかどうか、それを使って判断していたとしたら…。


 この宇宙は魔法がある宇宙ってことになる。魔法特化のアンドロイドを送り込んでも不思議じゃないかも知れない。


 しかし…この話、正利にどう説明したものかな?アンドロイドなんて言っても通じるわけないよね?


 俺は必死に頭をひねって、どうにかわかりやすいように説明した。


「ん~…説明するのは難しいけど…俺は親から生まれてきたわけじゃなく、人の手でつくられた存在ってとこだね」


「人の手で作られた…?」


 今度は正利の方があっけにとられた。そりゃそうだ。俺だってこんな話を人から聞いたら正気を疑う。


 俺が『茂』と『本物の俺』の手で作られたのは間違いない。けど、それ以外はあいまいな部分が多いな。今のところわかってることは…


1.人間に近い構造になっている

2.刑期を終えるまでのたかしの記憶がチップとして入っている

3.暗殺者として訓練を受け、数限りない人間を殺した記憶がチップとして入っている。

4.2050年時点のたかしの記憶が入っているが完全には呼び出せない


 こう考えると、記憶に関してはわかってきてることも多いんだが…。生態というか、どうやって生きてるのかについては全くわかってないな。


 少なくともご飯を食べたり、眠ったり…という機能は『人間』と同じだ。はっりとした違いはレントゲンでもとらないとわからないだろう。


「ああ…俺が元いた宇宙には、人間に極めて近い人工生物を作り出す技術があったらしい。それで作り出されたのが俺らしいんだ」


「ほほう…!!」


 正利はなんだかすごく嬉しそうに、俺の話に聞き入っている。俺のことがより深く知れたからかも知れない。そうか、この話をするのは正利が初めてだっけ?康孝達にも話してなかったよな。


 そもそもこんな話をされて、誰が信じるかって話でもあるしな。きっかけがなきゃ話しようがない。


「信じるのか?こんな突拍子もない話を」


「当たり前でしょう!私が信孝様を信じなくてどうします。それに…やはり運命だったのです!魔法特化で作られた貴方と、世界樹の勇者である私……どちらかかけても成り立たない!」


 確かに、いくら相性抜群とはいえ他の宇宙に生まれた者同士が出会う確率なんて、めちゃくちゃ低いはずだ。


 そう考えると…そうだな、魔法があるとわかった今、真実の愛が二人をめぐり合わせたと言ってもいいだろう。


「よし!!」


 俺は気合いを入れ直すため、大きな声を出した。富岡の神殿に何が待ち構えているかはわからない。だが、ここでパワーアップしておかなければ、絶対にいずれ稙宗に殺される。


 ならばやろう!俺達の愛の前に乗り越えられないものなど、あるはずがない。


「正利、愛してるぞ。必ずこの試練を乗り越え、稙宗に匹敵する存在になるんだ」


「ええ!もちろんです!!私たちの愛に勝るものなどないでしょう!」


 だが俺達はまだ、究極の愛がどんなものかわかっていなかった。


 俺達の愛が、限界を超えてどこまで行けるのか、その入口すら見えていなかったんだ。。


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