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これが 僕達の 真実の愛のパワーだ!!

1521年1月 正利オマッ5歳 アリス ???歳


【エルフ神聖王国 石狩領 上川郡 真愛の神殿2F 封印の間】


『これがジャバウォック…。かつて愛のために宇宙を滅ぼした、エルファクス王子の成れの果てです』


 エルファクス王子はエルファイン王とエルフィーナに嫉妬して、邪黒樹の力でエルフの宇宙を滅ぼしちゃったんだっけ。


 それで王様と王妃様だけが、こっちの宇宙に逃げてきたんだよね。


「つまり……。宇宙を滅ぼすようなやつを倒さないと……超進化はできないってことね……」


 宇宙を滅ぼせるくらい強いなんて、めちゃめちゃ怖いな。ホントに僕とアリスが真実の愛ってやつに目覚めたら倒せるのかな…。


「来やがったな。お前たちが勇者と聖女か」


 ジャバウォックが喋った!まあ、見た目は怪物でも元は普通のエルフだったなら、喋れるのは当たり前なのかな?


「兄上とエルフィーナのお陰で、俺は三万年もこんなところに閉じ込められてんだ。だが…勇者と聖女の力を俺のものにできりゃあ、ここから出られる!!」


「僕たちの力を自分のものにするって!?」


『邪黒樹の力はすべてのものを分解し、エネルギーに戻します。貴方がたを分解して吸収すれば、ジャバウォックば邪黒樹と世界樹の力を併せ持つ究極体となるでしょう』


 今だって、宇宙を滅ぼせるくらいなのに、それを超えた究極体!?そんなのになったら、みんな殺されちゃうよ!


「……そうなりたくなければ……真実の愛に目覚め、こちらも超進化するしかない……!」


 アリスがそういうけど、僕達はどうすれば真実の愛に目覚められるのか、全く何もわからない。


「で、でも”恋愛感情”だって、よくわからなかったのに、真実の愛なんてどうすればいいの?」


 僕達が悩んでいると、ジャバウォックがじれったそうに怒鳴った。


「ごちゃごちゃ言ってんじゃねえ!!とっとと終わらせるぞ!俺の極大暗黒魔法はすべてをエネルギーに変える。何物も抗うことはできない!!」


「飲まれろ闇に!!極大暗黒魔法『ゼロ・ディメンション!』


 ジャバウォックがそう唱えると、僕たちの周りを黒い(もや)のようなものが覆った。


 そして僕たちは何もない真っ暗な空間に閉じ込められた。


 その中で、靄が体にまとわりつき肌が少しずつ溶け始めた。


「あ、アリス!!どうしよう…!体が…溶け始めてる!!」


「………くっ………どうすれば……私たちの愛が足りないっていうの……」


 僕達が絶望しかけていると、突然 靄の中から陽気な声が聞こえた。


「おやおや、俺が呼び出されるとは三万年ぶりだねえ」


 場違いな声に、僕とアリスはびっくりしてすぐには反応できなかった。


「な、何?この声?」


「俺は『ゼロ次元』をやってる高木茂ってもんだ。簡単にいやあ、あんたらを溶かしてる靄が俺ってことだな」


「『ゼロ次元』をやってる……?意味がわからないわ」


 僕もアリスと同じ気持ちだった。


 ええと……つまり僕達を覆ってるこの靄は、”生き物”で”人格がある”ってことなの?


「俺はここやエルフのとことは別の宇宙で、うっかり『積尸気』って邪悪なパワーに飲まれちまってよう。『ゼロ次元』になって宇宙ごと滅ぼしちまったのさ」


 靄(高木茂さんっていうらしい)の話を聞いていると、体に激痛が走り始めた。


「ね、ねえアリス!体中が痛いよ!!」


 全身の皮が溶けて、筋肉まで侵食され始めてるんだ。これ以上はホントに死んじゃうよ!!


「おお、すまん。話し込んでる場合じゃなかったな。この通り俺と接してると何でも溶けちまう。人と話せるのが久しぶり過ぎて、ちょっと浮かれちまってたぜ」


 そう言いながら、まだ茂さんは余裕のありそうな声で話す。それどころじゃない。僕もアリスも死にたくないんだ。


 どうにか真実の愛に目覚めなくちゃ…。杖さんの話じゃ、僕の命をかけてもアリスを救いたいと思うことができればいいんだっけ。


「俺が前に呼び出されたとき、エルファインとエルフィーナってのが真実の愛に目覚めて、俺を元の宇宙へ吹き飛ばしたんだ。多分、あんたらもそれができれば助かるんだろ」


 茂さんが意外なことを言い出した。この人?は三万年前にも呼び出されたことがあるらしい。そして王様と王妃様が他の宇宙に吹き飛ばした?


 いや、それより今は真実の愛に目覚めなくちゃ!王様たちはどうやって真実の愛に目覚めたんだろう。それがわかれば僕達は助かるかもしれない。


「いいか、今からお前たちの片方をまるごとエネルギーに変える。そしたら生き残った方は、そのエネルギーをその杖に込めりゃいい。そうすりゃあ、俺を元の宇宙に吹き飛ばせるぜ」


 ええ!?それじゃあ、どっちかは確実に死んじゃうじゃないか!!


「ダメね。……その方法じゃ片方死ぬ上に、生き残った方は真実の愛に目覚められない……。靄は消せても、結局ジャバウォックにやられるだけよ……」


 けど……このままじゃ、どっちみち二人とも死んじゃう!!


 アリス…お友達になって一ヶ月だけど…父さんや母さんよりも、村の誰よりも大切な人になった。


 恋愛感情っていうのは、まだよくわからないけどアリスのためにできることなら、なんでもしてあげたいのは確かだ。


「ぼ、僕が死ねばアリスは助かるの!?」


「ああ、そいつは保証するぜ。あんたの体はそこらのエルフの何倍ものエネルギーになるからな。俺を吹っ飛ばし、ジャバウォックとかいうのを倒すくらいは余裕だ」


「ダメよ!!オマッが死ぬなんて…ダメ!せっかく仲良くなったのに……こんなお別れは…嫌よ」


 アリスは僕のことを心配してくれる。別れるのが悲しいと言ってくれる。とっても嬉しい。


「僕だってアリスが死ぬなんてやだ!アリスは女の子だしお姫様なんだから、生き残らなきゃダメだ!」


「私も嫌よ!!貴方が死ぬくらいだった、私が死んで貴方を助けるわ!!」


 いつも寡黙なアリスが語調を強めて、叫ぶ。僕のことにこんなに必死になってくれるなんて…。


「よしいいぞ…。それでいい。ふふ、三万年前と同じだな」


 僕たちがそんな風に言い合っていると、突然 杖さんがそれまでとは比べ物にならないほど強く、虹色に光り始めた。


『世界樹の勇者よ、世界樹の聖女よ。貴方達は真実の愛に目覚めました。これから超進化が始まります』


「ええっ!?いきなりなんで!?」


「そうか……!!私たちが、自分の命を捨てても相手を護りたいと思ったから……!」


 ええ!?じゃあ、もしかして茂さんはこの展開にするために、適当な嘘で騙したの!?茂さんは靄だから表情はわからないけど、もし顔があったらニヤニヤしてるかも知れない。


 そんなことを考えてたら、僕とアリスの体が虹色に輝き始めた。超進化っていうのが起こるのかな!?


「ね、ねえアリス。僕達どうなっちゃうのかな?超進化って…これまでの僕じゃなくなっちゃうの?」


「………わからないけれど…。少なくとも悪いものではないはずよ……。それに、想像もできないような特殊能力がつくかも知れない……」


 アリスの言葉を聞いた次の瞬間、僕の体の中が劇的に作り変えられていくような感覚に襲われた。


 体中のあらゆる部分が一度壊されて、新品に置き換わっていく感じだ。痛みはないけど、すごく気持ち悪い。


 そんなことがしばらく続いた後、ついに体の中の変化がおさまった。体が発していた光も消えていき、気分も落ち着いた。


『世界樹の勇者:オマッよ。貴方は『人間』から『握力人』に超進化しました。超進化した生物は世界樹の杖を使わなくとも『他宇宙のエネルギー』を魔力に変換することができます』


【握力人の独自能力】

宇宙を握りつぶす握力(スペース・グリッパー)』:宇宙を握りつぶす強大な握力を、空間上のどこにでも発生させることができます。


握りつぶしたものはすべて、魔力に変換できます


『世界樹の聖女:アリスよ。貴方は『エルフ』から『大賢者エルフ』に超進化しました。


【大賢者エルフの独自能力】

創造魔法(クリエイト・マジック):この世に存在しない、あらゆる魔法を創り出すことができます。宇宙を消滅させる魔法や創造する魔法も含みます。


『勇者が魔力を作り出し、その魔力で聖女が魔法を作ります。そうすることによってあらゆる事象に干渉することが可能になります』


「大賢者エルフ……!?ハイエルフではないの……!?」


 アリスはお母さんをハイエルフにするために、ここまで戦ってきたんだ。エルフが超進化してもハイエルフにならないことがあるんだったら、もしかして戦う意味がなくなっちゃうのかな。


『エルフィーナは間違いなくハイエルフに進化します。ご安心ください』


「……そっか……それならいいわ」


「それより、早いとこ俺を吹き飛ばしちゃわねえと、お前達ホントに溶けちゃうぞ」


 茂さんが、焦った様子で急かしてくる。超進化のおかげで体は全然溶けないんだけどな。


「このまま、ゼロ次元がこの宇宙にいたら……宇宙そのものを飲み込んでしまう恐れがあるわ……」


「そっか。じゃあ、やっぱり茂さんとはお別れなんだね」


「久しぶりに人と会話ができて、楽しかったぞ。じゃあな」


「創造魔法!宇宙送還魔法!!」


 アリスがそう叫ぶと、空間に穴のようなものが開いて、そこからエネルギーがアリスに流れ込んだ。


 そしてアリスの手が虹色に輝いた。すると、周りを覆っていた靄が、穴に吸い込まれていった。


「じゃあな。お前ら頑張れよ。俺も自分の目標を叶えるため、なんとか頑張ってみるからさ」


「うん!ありがとう!茂さん!!またね!」


「貴方のお陰で助かったわ……感謝…しておくわね」


 俺達がそう言い終わると、穴は閉じて靄は無くなった。最後に茂さんが「それにしても、No.002はどこの宇宙にいるんだろうな」と言ってたけど、意味はわからなかった。


「おいおいおい!!どういうことだよ!どうして俺の極大暗黒魔法を防げるんだ!!」


 靄が消えると、そこには元通りジャバウォックがいた。そういえば、この人と戦ってたんだっけ。茂さんのインパクトが強すぎて忘れちゃってた。


「アリス。この人を倒す魔法は創れそう?」


「……そうね、ちょっと魔力がたくさんいりそうかしら」


 そっか。ジャバウォックはアリスがいた宇宙を滅ぼしちゃったくらいだもんね。ちょっとやそっとじゃ倒せないかあ。


『勇者の能力で、やつの触手や靄を握りつぶしましょう。それだけでは倒せないでしょうが、魔力は奪えます』


 ジャバウォックを握りつぶして魔力を奪う?そっかそれなら、ジャバウォック自身の魔力でジャバウォックを倒せるね!


「触手はともかく、靄まで握りつぶせるの?」


『貴方の能力は、液体でも気体でもこの世に存在するあらゆるものを握りつぶし、魔力に変えることができます』


 思った以上に、とんでもない能力みたい。あまり考えずに使うと、それこそ宇宙を滅ぼしちゃいそうだ。気をつけないと。


「そっか!!それなら、あいつも倒せそうだね!」


 そう言って僕は、ジャバウォックの触手や靄に狙いを定め、そこに握力が出てくるように念じた。


「宇宙を握りつぶす握力!!!」


 僕は、そう叫んでジャバウォックの周り、ニ十か所くらいに握力を出した。


 空間に手が生成され、それぞれが触手や靄を握りつぶした。ジャバウォックも避けようとするけど、避けたところにまた手が出てくる。


「なんだとっ!?馬鹿な、俺の魔力が…こんなことがあるはずがない。俺は邪黒樹の力を手に入れたんだぞ!!」


 ジャバウォックがわめくけど、僕は握力を緩めない。


 ジャバウォックの体を握りつぶしたことで、魔力が溜まってきた。


「アリス!この魔力で!!」


「……ええ!決着を着けるわ。創造魔法ではなく……エルフに伝わるこの魔法で!!」


 アリスは僕から魔力を吸い出して、魔法を唱えた!!


「極大神聖魔法:ホーリー・ワールド!!」


 ジャバウォックが、光につつまれ段々と姿がおぼろげになってきた。


「く……嫌だ俺は死にたくない。エルフィーナ……何故だ、どうして俺の愛を受け入れてくれなかった…!!」


 ジャバウォックの周りを、黒い靄が覆い始めた。茂さんではないみたいだ。


「まさか!?極大神聖魔法に抵抗できるなんて……!?」


『どうやら、彼の愛もまた真実の愛のようですね。独りよがりで自分勝手ですが、彼の中では曇りなき純粋な愛なのでしょう』


 ジャバウォックの想いも真実の愛!?じゃあ、僕たちの攻撃すら通じないかも知れないの?


「ど、どうすればいいの?」


「くそ…。やはり超進化した神聖魔法には敵わんか。仕方ねえ、どうせ死ぬなら道づれにしてやる!!」


 黒い靄が一点に集中していった。何か大きな攻撃が来るのかな?


「転生魔法:リボーン!!」


 ジャバウォックがそう叫ぶと、僕の周りを黒い靄が覆った。僕は暴れて靄を振り払おうとしたけど、ぴったりとくっついて離れない。


「単純な攻撃魔法じゃ倒せそうにないからな。そいつを食らえば肉体が魔力球に吸い込まれ極小化する。そして、魔力球は誰かの子宮に宿り、受精卵と同じように分裂する」


 僕の周りを覆う靄が、僕の体ごとどんどん縮んでいく。僕の…体が……靄に圧縮されて……。


「魔力球になる過程で遺伝子をめちゃくちゃに弄ってるから、生まれ変わったところで前とは全く別人さ」


「……オマッ!!そんな……オマッ……」


 僕の意識は途絶えた。



 そして僕を包んだ魔力球は美濃国・川並衆の当主 蜂須賀正成の妻に宿った。


 それから十か月…僕は……蜂須賀正利として


 オマッだったときの記憶と能力をすべて失って


 再び生を受けた。

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