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オマッとアリスの愛の試練

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


1521年1月 正利オマッ5歳 アリス ???歳


【エルフ神聖王国 石狩領 上川郡 超進化研究所】


「そうと決まれば、急ぎましょう」


 アリスが「バリア」と唱えると、僕とアリスの体を膜みたいなものが覆った。


「何これ!?」


 アリスは僕の質問には答えず、川の中に入っていった。ええ!?アリスの周りだけ、水が避けているよ!?これどうなってるの?


「早く……!行くわよ」


 アリスに促され、僕もおそるおそる川の中に入った。アリスと同じように、僕の周りも水が避けていく。なんだかちょっと面白いな。


 そんなことを考えてたら アリスが突然、水に潜った。


「付いてきなさい……。急いで!!」


 アリスは、そう言うとどんどん深く潜っていった。神居古潭は石狩川の中でも特に水が深いんだって、村のみんなが言ってたっけ。


「アリス!待ってよ!」


 アリスが見えなくなりそうだったので、僕はしょうがないなあと思いながら、アリスの後を追って水に潜っていった。


 僕は「これからどこに行くの?」とか「この膜はいつまでもつの?」とか聞いてみたけど、アリスは「付いて来ればわかる」としか答えてくれなかった。


 さらに深く潜っていくと、水深が3000mほどになったくらいで、水の中に建物が見えてきた。


「……ここには空気があるわ。もちろん気圧も地上と全く同じになるように、調節してあるわよ……」


 そう言って、アリスはバリアを解除した。


「ここがアリスのお家なの?」


「家なわけないでしょ……ここは『超進化研究所』よ。」


 アリスはここに住んでるわけじゃないんだね。でも、じゃあ”ちょーしんかけんきゅうじょ”って何をするところなんだろう。


「へえ?じゃあ、”ちょうしんか”って何なの?」


「そうね……解りやすくいうなら、いろんな生き物を、桁違いに強くする技術ってとこかしら……」


 強くする技術?つまりここで何かすれば、僕もアリスくらい強くなれるってこと!?


 だったら僕も強くなりたい!


「強くなれるってホント?僕もアリスくらい強くなれる?」


「超進化すれば、私なんて目じゃないくらい強くなれるわ……。最も、私や貴方を強化する前に……、まずはお母さまを超進化させたいんだけど……」


 アリスはお母さんを強くしたいみたいだ。アリスといい、エルフの女の人は強いんだなあ。狩りや戦闘に女の人も参加するってことなのかな?


「そんなにお母さんを強くしたいの?」


「違うわ……。確かに超進化は生き物を強くする技術だけど……。私の目的は進化そのもの……。お母さまをハイエルフにして『寿命を延ばす』ことよ。」


 寿命を延ばす……?それってつまり、アリスのお母さんはもうお婆ちゃんで、いつ死んじゃうかわからないから、もっと長生きしてもらうために”超進化”させるってこと?


「そっか……わかった!アリスのお母さんが大変なんだね!」


「ええ……そうね。エルフの医療魔法でも手が付けられないくらい……。助けるにはハイエルフにするしかないのよ……」


 僕はアリスと会ってから、まだ一ヶ月だけどすごく仲良くなったつもりだ。アリスのお母さんが死にそうなんだったら、ほったらかしになんてできない!


「わかった!僕もアリスのお母さんを助けるのを手伝うよ!それで僕は何をすればいいの?」


「超進化のエネルギーを生み出すには…………。世界樹の勇者と世界樹の聖女が真実の愛に目覚める必要があるわ………」


「真実の愛?」


 よくはわからないけど、つまり好き同士になればいいってことかな?


「確か、僕が勇者って言ってたっけ?聖女っていうのは?」


「聖女は私よ……つまり私と貴方が愛し合えば、お母さまは助かるというわけね…」


 アリスと僕が愛し合えばいいのか。なんだか簡単に聞こえるけどな。でも、言われてみれば、アリスが僕のことを好きかどうかわかんないな。


「ただ……私も貴方も子供だから……、恋愛感情というものがどういうものかわからないわ……それが最大の問題ね」


 またわからない言葉が出てきた”れんあいかんじょう”って何だろう?普通の好きとは違うのかな?


「恋愛感情って何?普通の好きとは違うの?」


「そうね……お父様たちの話によれば、愛し合う二人は側にいるとドキドキして、ずっと一緒に居たくて……相手を独り占めしたくなるらしいわ……」


 うーん、そうだなあ。アリスと一緒にいると、楽しいからずっと一緒にいたいと思うけど、ドキドキはしないかも。独り占めは…そうだなあ、アリスさえよければ独り占めできたらいいな。


「そっか。僕はアリスのことが好きだし、ずっと一緒にいたいけど、アリスはどう?」


 僕がそういうと、アリスは少し照れながら答えた。


「えっ…いや……ええと……そうね。確かに一緒にいるのは楽しいわね。……ドキドキは…あまりしないけど」


 アリスと僕は大体同じことを考えたみたいだ。仲良しだけど、”恋愛感情”っていうのとは違うのかな?


「うーん……そうね。話をまとめると、”恋愛感情”ではなくても、私と貴方の間には”恋愛感情”の元になる何かがあるってことかしら……」


「そっか!!少なくとも一緒にいて楽しくて、ずっと一緒にいたいんだもんね!」


 だったら、僕達にもアリスのお母さんを救える力があるってことだ!


「だったら、話は早いわ。二人で”真愛(マナ)の神殿”に挑戦しましょう」


「マナの神殿?」


「ほら……あれよ」


 アリスが指さす方を見ると、研究所の隣に二階建ての大きな建物があった。


「今から三万年前、お父様とお母様が『真実の愛』を持つものを見極めるために建てた施設らしいけど……中に何があるかは誰も知らないわ」


 うーんと…つまり?あの神殿ってとこに行って、僕とアリスの間に『真実の愛?』があると認めてもらえれば、アリスのお母さんは超進化できるんだね。


「そんなに前からあるのに、誰も中に何があるか知らないの?」


「そうね……。勇者と聖女でなければ……入口の扉が開けないのよ……」


 ふえー。誰も入ったこと無い神殿かあ。ちょっとワクワクするけど、やっぱり怖いなあ。


「あそこに入れれば、アリスのお母さんを助ける方法がわかるの?」


「多分…ね。真実の愛を認められれば、超進化の方法がわかると……お父様は言っていたわ」


 やっぱり入ってみないと、何にもわかんないんだな。


「とりあえず、神殿に行きましょう……。私たちならきっと、もっともっと仲良くなって超進化にたどり着けるはずよ……」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


1521年1月 正利オマッ5歳 アリス ???歳


【エルフ神聖王国 石狩領 上川郡 真愛(マナ)の神殿】


「ここが真愛の神殿よ……。入口の扉に穴があるでしょう……?ここに世界樹の勇者と聖女が、世界樹の杖をさせば……扉が開かれると言われているわ」


 アリスはそう言って、杖を出してきた。炎や隕石を出したときにも使っていた杖だ。


「これを二人で持って、差し込めばいいんだね?」


「……そうね。お父様の言葉が確かなら……それで扉が開くはずよ」


 僕はアリスの持っている杖に自分の手を添えた。そして二人で杖を扉の穴に差し込んだ。


「わあ!?」


 隕石を出したときみたいに、杖がものすごく光った。僕はびっくりして大声をあげちゃった。


『世界樹の加護を受けし、勇者と聖女よ。私は世界樹の杖です。貴方がたに二つの”愛の試練”を課します。二人に真実の愛があれば、必ず突破できるでしょう』


「「杖が……喋った!!」」


 光ってる杖から、声が聞こえた。杖さんの話はよくわからないけど、何かを二つ突破しなきゃいけないってことかな?


『それでは、扉をくぐりなさい。第一の試練を始めます』


 僕とアリスはとにかくビックリしてた。でもハッと気が付いた。先に進まなきゃ!


「ねえ、アリス。扉をくぐれってさ。行こうよ!」


「え……ええ。杖が喋って面食らっていたけれど……とりあえずやることは変わらないわね……!!」


 扉の先には何があるかな?僕とアリスは、恐怖と期待を感じながら、勇気を振り絞って中に入った!



1521年1月 正利オマッ5歳 アリス ???歳


【エルフ神聖王国 石狩領 上川郡 真愛の神殿1F 愛の試練場】


「ねえ、杖さん。僕たちはここで何をすればいいの?」


『愛の試練を受けていただきます』


 僕が愛の試練って何?と聞く前に、周りに強い光が放たれて、僕は思わず目をつぶっちゃった。


 そして目を開くと、横にアリスがいなかった。


「え?アリスどこ?杖さん、アリスをどこにやったの?」


『アリスなら、ほら…そこにいるじゃないですか』


 僕が周りを見渡すと、周囲に数百人くらいのアリスにそっくりな女の子達がいた。


『この中から本物のアリスを見つけ出してください。愛があれば可能です。ただし一度でも間違った人を選べば失格です』


「この中からホントのアリスを!?」


 僕の周りにいるアリス達は、全員どっからどう見ても本物なんだけど。


 僕がとまどっていると、アリス達が僕に攻撃を仕掛けてきた。


「うわっ?何するの!?」

 

 突然の攻撃だったけど、僕はどうにか身をよじってかわした。


「待って!やめてよアリス!」


 僕が叫んでもアリス達は攻撃をやめない。

 

 それからしばらく、数百人のアリス達の攻撃を僕はどうにかかわし続けた。


 おかしい、変だ!僕がアリスの攻撃をこんなにかわせるはずない。


 僕はアリスに一ヶ月も特訓してもらったんだ!アリスが強いのはよくわかってる。


 このアリスは偽物だ!ホントのアリスは今攻撃してきてない方なんじゃないかな?

 

 僕がそう思ったのとほぼ同時に、遠くにいたアリスの一人がものすごい速さで近づいてきた。


 そして、僕はまともに反応もできず、そのアリスに殴り飛ばされた。


「うわっ!!」


 痛たた…油断しちゃった。けど、わかったぞ!あの強さ、あれが本物のアリスだ!


 僕がそう考えた瞬間、横から別のアリスに蹴り飛ばされた。


「ぎゃんっ!」


 僕は蹴られたところを押さえた。すごく痛いけど、我慢しなくちゃ…。


 アリス達の中には、本物と同じくらい強いのが何人かいるみたいだ。


 その後も、僕はアリス達からの攻撃を必死によけようとしたけど、どうしても強いアリスの攻撃は当たっちゃう!


 どうしよう、このままじゃやられちゃうよ!


 えーと、そうだ!杖は愛があれば切り抜けられるって言ってたっけ。つまりアリスへの愛があれば、どうにかなるんだ。


 でも具体的にはどうしよう?


 僕はアリスのことを考えた。アリスと出会ってからのことを、何度も何度も思い出した。


 アリスアリス

 アリスアリス

 アリスアリス

 アリスアリス

 アリスアリス

 アリスアリス

 アリスアリス


 ………………


 !!!!


「そうか!思い出した!!」


 あのときだ!


 アリスが炎でヌエを焼き尽くしたあのときだ。


 僕は確かに思ったんだ。


『なんてカッコいいんだろう』って!


 思い出したぞ!あのとき、確かに僕の胸がドキドキしてた。


 ってことは、僕はアリスに”恋愛感情”っていうのを持ってるんだ。だったらもう負けないぞ!


 きっと、本物のアリスが近づいてきたら、僕はドキドキしたり嬉しくなったりするはずだ。つまり僕が一番ドキドキするのが、どのアリスかがわかればいいんだ!


 僕はアリス達に殴られながら、どのアリスが近づいたときに、ドキドキしたり嬉しくなったりするかを見極めた。


 そして……


 君だ!!


 僕は本物だと思ったアリスを抱きしめた!!


「アリス…アリスだよね!!やった!ついに見つけたぞ!!」


『正解です。よくできました』


 杖がそういうと、僕の周りからアリス達が消えて、僕が抱きしめているアリスだけが残った。


「あ………あの……恥ずかしいわ。そろそろ離して……」


「あ、ごめん」


 僕もアリスも顔を真っ赤にしている。でも、アリスはあんまり嫌そうじゃないな。良かった。


『聖女と勇者よ。実は今貴方がたが見ていたのは幻覚です。相手も同じ状況を切り抜けてきたということをご理解ください』


「え…!幻覚って夢みたいなもの?それじゃあ、結局どのアリスも偽物だったんじゃないか!」


『まあ、そうですね』


「なるほどね。……じゃあ、私の捕まえたオマッも……ただの幻覚か……」


 アリスはちょっと残念そうだ。


『ともかく、これで貴方がたの愛は証明されました。上の階に進む許可を与えましょう』


 杖はそういうと再び強く光った。なんだかさっきまでよりも光が強いみたい。もしかして僕とアリスの愛が深まったからかな?えへへ。


 すると、地面から階段がせりあがってきて上の階へとつながった。


 僕たちは階段を上り、上の階へと向かった。


1521年1月 正利オマッ5歳 アリス ???歳


【エルフ神聖王国 石狩領 上川郡 真愛の神殿2F 封印の間】


 僕達がたどり着いた部屋は、愛を試す場所とは思えないぐらいどす黒い空間だった。窓もなく、壁をヌメヌメした黒い何かが蠢いている。


「こ、ここは何なの?」


 僕はビクビクしながら、杖に訊ねた。


『ここは封印の間、勇者と聖女が真実の愛を試される空間です』


『ここには私のいた宇宙を滅ぼした邪黒樹の枝が封印されています。勇者と聖女が真実の愛に目覚めれば滅ぼすことができるでしょう』


「…………邪黒樹!!」


 アリスがすごくびっくりしている。と思ったら青くなって冷や汗を流し始めた。どうしてそこまで怯えるのか僕にはわからない。


 でも、こんな嫌な雰囲気の部屋に封印されてるんだから、きっとすごく恐ろしいものなんだろう。


「ウオオオオオオオオオオオオオオーン」


部屋の奥の方で何かが、日本中に響き渡るような雄叫びをあげた。


『来ます。邪黒樹の化身、邪神ジャバウォックです』

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