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真実の愛と究極進化

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


1536年8月 信孝22歳 信秀26歳 証如22歳 蓮淳72歳


【陸奥国 伊達郡 桑折(こおり)空港・発着場】


 目の前に氷漬けのガルーダがいる。こいつを説得できるかどうかが、今後の作戦の分かれ目だ。


 俺は、”極小エネルギー弾(エナジー・ビット)”を操作して、ガルーダの氷を溶かした。


 “極小エネルギー弾”を引っ付けてる限り、やつを生かすも殺すも自由だ。動けるようにしても危険はないだろう。


「く…何がどうなったのだ……。突然、小太陽が消滅し、周りのすべてが凍り付くとは…」


 目覚めたガルーダは、かなり錯乱しているようだ。小太陽と火炎弾で俺に止めをさしたと思ったら、いきなり周りが凍り付き始めたんだから、そりゃあわけがわからないだろう。


「そいつは俺の能力だよ。どうやら、俺の能力の方があんたより上らしいね」


「なんだと?なるほど…確かに微細なエネルギーが、我が体内を侵食しておるようだ。ふほほっ!これほどのエネルギーを操る者がおるとは!いいぞいいぞ!!」


 ガルーダは妙に嬉しそうで、はしゃいでいる。俺に生殺与奪を握られてることは理解してるみたいなんだが…。どうなってるんだ?


「なんだか、妙なやつですね…」


 ガルーダのあまりのテンションに正利も、ちょっと引いてるみたいだ。


 まあ、何にせよとにかく要件を伝えよう。話はそれからだ。


「それで…ガルーダ。さっきも言ったが俺の仲間になってくれないか。」


「俺はあんたの言ってる”微細なエネルギー”ってやつで、物の温度を操ることができるんだ。つまりあんたを氷漬けにして殺すこともできる」


 ガルーダは、氷漬けになっている空港全体を見渡した。自分も、さっきまでこうなっていたのかと思っているのかも知れない。


「よかろう。稙宗様を裏切り、貴様の配下となればいいのだな?」


 ガルーダはにやりと笑ってそう言った。


「あ、ああ。それでいいんだが…。話が簡単に進み過ぎて、ちょっと信用できないぞ。どうして、俺に従ってくれるんだ?」


 まあ生殺与奪を握ってるんだから、当然と言えば当然なんだが…。稙宗への忠誠心から葛藤したりしないんだろうか。


「もちろん、それは貴様と稙宗様の対決が見たいからだ!」


「「…………は?」」


 俺と正利は二人そろってあっけにとられた。二人で顔を見合わせる。


 俺達二人の中でガルーダは、完全に変人扱いだ。


 俺と稙宗の対決が見たいから、俺に従う…?全く意味がわからないな。稙宗を裏切る理由にもなっていない。


「どういう意味だ?なんで俺と稙宗の対決が見たいと、俺に従うってことになるんだ?」


「決まっておろう。お主が稙宗様と同等に強いからだ。最強と最強の対決!!男ならば誰もが見たいと思うであろう!」


 俺達は呆れた顔になり困惑した。


「あ、あの信孝様、私はこの者が何を言っているのかわからないのですが、信孝様はわかりますか?」


「うーん…。なんとなくはわかるけど…。本気で言ってるのかどうかはちょっと…」


 ……多分だが…、ガルーダはとんでもない戦闘マニアで、どうしても俺と稙宗の対決が見たいから、ここで死ぬわけにはいかないってことか…?


 その理由で従ってくれるんだとすると、ちょっと信用し辛いんだが…。正利も心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。


「し…しかしガルーダ。本当にそんな理由で稙宗を裏切っていいのか?」


「当然だ!俺は貴様の強さに…そして稙宗様の強さに惚れたのだ!一体”二つの最強”がぶつかったらどうなるのか!?それを知るためなら稙宗様を…いや稙宗を裏切ることすらいとわぬ!」


 どうもガルーダは強さというものに、ものすごい憧れがあるらしい。最強と最強の対決は彼の中で最優先事項みたいだ。


「お前の気持ちはわかったが……裏切れば当然、他の幹部と戦ってもらうことになる。仲間だった奴らと殺し合うことになってもいいのか?」


 俺が求めるのは活人だ。でも、戦は何があるかわからない。もちろん最善は尽くすが、絶対に殺さず殺されずを貫けるかどうかは、その時次第だ。


「戦をするのだ。それは当然だろう。貴様への忠誠の証として、幹部の一人や二人、我の手で葬り去ってみせようぞ。」


 どうやら本気らしい。俺と稙宗を戦いを見るため、道理を曲げてでも俺の部下になるつもりみたいだ。


 道理を曲げるというところで引っかかったので、正利の方を見る。


「正利、主を裏切ることは”筋が通らない”と思うけど…大丈夫かな?」


 正利は極道だからな。”筋が通らない”ことが大嫌いなはずだ。稙宗を裏切ったガルーダを受け入れてくれるだろうか…。


「そうですね…。正直、この者の正義は理解できません。けれど、この者の中で”筋が通っている”ことは間違いないでしょう」


「ってことは……」


「私は、彼と仲間になることに異論はありません」


 どうやら、正利はガルーダを受け入れてくれたみたいだ。良かった。


「話はまとまったようだな。これからよろしく頼むぞ。我が主よ」


 よし、これでガルーダが味方になったぞ。さっそく孤児達を助けに行こう。


「よし、なら最初の命令だ!孤児たちが囚われている所を教えてくれ!」


「うむ…。孤児が捕らえられているところ…すなわち龍人制作の実験を行っているのは……『富岡遺伝子研究所』だ」


「「富岡遺伝子研究所!?」」


 また、俺と正利の声が重なる。さっきから、二人で同じリアクションばっかりしているな。いかん、ニヤニヤしてしまうぞ。横を見ると正利もちょっと嬉しそうだな。


 しかし、富岡遺伝子研究所か。遺伝子研究所はわかるとして、富岡ってのは地名だろうな。この近くにあるのか?


「住所は、陸奥国 楢葉郡の南東部、富岡にある。」


 楢葉郡の富岡?どっかで聞いたような地名だな……。ええと…確か…双葉郡、楢葉町…富岡…!そうだ、元の宇宙で福島原発があるところだっけ?


「それで、この桑折空港から遺伝子研究所まで、どのくらいの距離があるんだ?」


 この空港にはマッハ3~5くらいで飛べる乗り物があるっぽい。そこそこ離れていたとしても数分でつけるだろうが、やっぱり距離は気になる。


「そうだな……二十六里(約百㎞)といったところか…」


 わりと遠いが、マッハ5で行けるとすれば、一分くらいか。少なくとも、途中で敵に気づかれる恐れは無さそうだな。


「なるほど、それじゃあさっそく向かおう。音速船は貸してくれるんだろ?」


「音速船も良いが、我に乗って行け。我ならば、音速船以上の速度で飛べる」


 ガルーダに乗ったら、熱で溶けそうなんだが…。まあ、俺自身の体内にも”極小エネルギー弾”は埋め込んであるから大丈夫か。


 原子の振動を”邪魔して”俺と正利、そして龍信の体が溶けないよう調節することは可能だ。


「わかった。それじゃあ、乗せて行ってくれ」


 俺は、俺達三人の体温を操作しながら、ガルーダの背に乗った。


「ところで、稙宗は今どうしてるんだ?桑折西山城にいるのか?」


 ここは重要なところだ。ガルーダの見立てでは俺と稙宗は互角らしいが…。稙宗が介入してくるかどうかで、この作戦の難易度は大きく変わるだろう。


「稙宗様は今、蝦夷地に行っておられる。なんでも、”究極の進化”を遂げるための鍵が蝦夷地の神居古潭(カムイコタン)にあるらしい」


 究極の進化だと!?つまり稙宗は、今は俺と互角だが、なんらかの方法で超パワーアップしようとしてるってことか?


 まずいな……。それが実行されれば、とてもじゃないが手に負えなくなるぞ。


 一瞬、神居古潭に行くか…とも思ったが、孤児を救うことが先決だ。


 それに……もし俺が超パワーアップできるとしたら…。その鍵は、おそらく『真実の愛』にある。


 このまま、正利と手を取り合って、孤児を助け出す。それが、俺の脳の高度計算機能が導き出した最善策だ。


「それでは、出発するぞ。目的地につけば、すぐ戦となろう。準備をしておけ」


「ああ、大丈夫だ」


 ガルーダが翼を開く。体が、普段以上に黄金色に輝き、炎が燃え盛る。俺は、必死に俺達の体温を調節する。


「出発だ!!」


 ドゴォォォォォォーーーーーーーーン!!!


 ソニックブームの激しい衝撃音がして、ガルーダの体が空中へ飛び出した。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


1536年8月 信孝22歳 信秀26歳 証如22歳 蓮淳72歳


【陸奥国 楢葉郡 富岡遺伝子研究所付近】


 俺達は、富岡遺伝子研究所から数百メートルほどの位置に着地した。研究所の屋根を突き破って侵入することも考えたが、リスクが高そうだ。


「ガルーダ、この研究所はどんな幹部が守っているんだ?」


 ここは恐らく、伊達家の施設の中でも最重要機密が隠されているはずだ。幹部の中でもトップクラスが守っていると考えていいだろう。


「うむ、ここを守っているのは、『ゼウス』というコードネームのやつだ。雷と磁力を自在に操る電磁力超人と呼ばれている」


 で…電磁力超人!?電気と磁力を使うだって…!?そんな恐ろしい奴がいるのか?


 電気は光だ。つまり光速に近い速度が出るんじゃないか?そんなもの、俺の脳の高度計算機能でも、察知できないぞ。


「ゼウスは、最重要施設の所長だけあって、近衛軍幹部の中でも最強だ。必殺技は電荷渦(でんかうず)という磁力と電気の併せ技を使う」


「電荷渦…?どんな技か想像できないな…」


 俺は、ここに来て怖くなってきた。相手の強さがあまりにも想像の範疇外だったからだ。俺の恐れに気づいた正利が、俺を元気づけようとする。


「信孝様!落ち込まないでください!先ほども言ったでしょう。我らの愛にかなう者などいるはずもありません。私の愛が信用できないのですか!」


 俺は正利を見つめる。そうだ、さっき俺は真実の愛に目覚めた。正利の顔を見るだけで俺の顔が赤くなる。そして、心が落ち着いてきた。


 そうだ、真実の愛だ。俺達の愛に敵う者はいない。


 正利が俺を見つめ返す。ドキドキする。そうだ、これなんだ。俺は心を落ち着け、はっきりと言った。


「そうだな。俺達の愛に勝るものなんてない!ゼウスがなんだ!!俺達の………愛のツープラトンで吹っ飛ばしてやるぜ!」


「おお!それでこそ信孝様です。そうか…他宇宙のエネルギー……いや、我らの愛を生かした、究極のツープラトンですね!」


 正利が真実の愛と言う言葉を口にするたび、俺の胸が跳ね上がる。


 しかし、そうか他世界のエネルギーを生かしたツープラトンか。それがあれば、少々の敵には対抗できそうだな。


 だが、稙宗がパワーアップするなら…、俺達もさらに愛の力を高めないといけないのかもしれない。


 今以上の関係…って…一体どうすりゃいいんだ?き…キス…とか、それ以上の……。


 全身がカッカとしてきて、体中から汗が噴き出す。頭の中が正利のことでいっぱいになって何も考えられない。


「だ、大丈夫ですか!信孝様!?」


「あ、ああ平気だ。よーし皆、準備はいいな!乗り込むぞ!!」


 俺は動揺を隠すように、出発の号令をかけた。


「「「了解!!」」」


 こうして俺達は、敵の動きを警戒しつつ研究所に侵入し始めた。


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