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真実の愛と超活人技

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


1536年8月 信孝22歳 信秀26歳 証如22歳 蓮淳72歳


【陸奥国 伊達郡 桑折(こおり)空港・発着場】


 正利が燃える、正利が溶ける、正利が死ぬ!どうすればいい!どうすれば良かったんだ!俺がここに連れてきたせいで正利が死ぬ!


 正利がいればこの戦いに勝てるはずじゃなかったのか。俺の脳の高度計算機能が計算を間違えたのか?よりによって、こんな…取り返しのつかないことで?


 涙が、こぼれた側から蒸発していく。ああ…正利…正利……!


 今まさに死にかけている正利を見て、俺は気づいた。そうか…俺は……俺は…


 正利が好きなのか…


 …そうか。まあ今更、男が男を好きでおかしいと言うつもりはない。本物の俺が、刑務所で桃に好意を抱いてたのは明らかだしな。


 それより今だ。好きと気づいた瞬間に、好きな人が死んでたまるか!どうにかしないと……。もう数秒も猶予はない。俺は、脳の高度計算機能を全開にした。


 穴…?小さな穴がある……。これは幻覚じゃないはずだ。そして、さっきまでは無かった。なんだ何がきっかけで…?


――――システムメッセージ――――

システムNO.1からシステムNO.2へ

“シンジツノアイガ トビラヲヒラク”


 茂の声!?そうか、またアンドロイドNo.1のメッセージか!


 しかし『真実の愛が扉を開く』だと?真実の愛ってのは俺が正利を好きだと気づいたことか?


 扉を開くってのは、この小さな穴が開いたってことか?この穴は何なんだ?


 俺は脳の高度計算機能を使い、穴を観察する。そして驚愕した。どうして今まで気づかなかったんだ。


 “この穴から…別の宇宙からのエネルギーが入り込んでいる!!”


 じゃ、じゃあ稙宗も真実の愛に目覚めたことで、別宇宙からのエネルギーを引き出せるようになったのか?


 だとしても、伊達軍の全員が真実の愛に目覚めてるとは考えにくいな。誰か一人でも目覚めてたら使えるのか?それとも他にも”扉”を開く術があるのか…。


 いや、とりあえずそんなことはどうでもいい。今は別宇宙のエネルギーを利用して、小太陽を破壊しなければ。


 どうも、穴を認識さえしていれば、いくらでも自由にエネルギーを取り出せるみたいだ。では、何をぶつければ小太陽を破壊できるだろう?


 同じ規模の熱エネルギーをぶつけたんじゃ、大爆発を起こし俺も正利も巻き込まれてしまう。ガルーダを味方にすることもできない。


 それに…ここで俺だけの必殺技を編み出しておく必要がある。稙宗はガルーダより数段強いだろうからね。


 俺のこれまで編み出してきた必殺技は


1.筋肉の制御を開放して、”限界を超えたパワー”を出す。

2.裏筋肉の制御を開放して、”表筋肉だけでは出せないパワー”を出す。

3.脳の制御を開放して、高度計算機能によりその時その場で”最適の行動”をする。

4.脳の制御を開放して、物質の”原子の継ぎ目を見抜き”、破壊する

5.脳の制御を開放して、空気中の”物質の流れを見抜き”、吹き飛ばす。


 俺の持ち味はスピードだ。パワーと最適行動をスピードに全乗せして、”原子の継ぎ目”をついて倒すというのが今のスタイルだな。


 で、まあエネルギーを利用してさらに加速することはできるだろうが…火炎弾より、ものすごく早く動くのは難しいだろう。


 そこで俺は考える。絶対の必殺技…いや活人技を編み出すために!


 ちなみに脳の高度計算機能を開放しているおかげで、コンマ一秒も経たずにこれだけの思考ができる。


 そうだな…小太陽や火炎弾が何故、危険かといえば”ものすごく熱い”からだ。だから温度を下げることさえできれば、無効化できる。


 では、そもそも”熱”とは何だろうか?


 あらゆる原子は常に”揺れ動いている”。その振動によって生まれるエネルギーが”熱”だ。単純に言えば原子が激しく振動すれば熱くなるし、振動が減るほど冷たくなる。


 だから、原子の振動を完全に読み切り、”振動を邪魔”できれば、急速に温度を下げることができる。それこそ絶対零度まででもね。


 原子の振動を完全に読み切ること自体は、脳の高度計算機能で可能だ。


 だが、原子の振動を読み切ったとしても、”振動を邪魔”するには直接触れる必要がある…。触れれば温度を下げる前に、こっちが溶けてしまうんだよね。


 いや、待てよ。エネルギーを自在に操れるなら…。


 そうだ!他の宇宙からエネルギーを出して、一ピコメートルほどの『極小エネルギー弾』を無数に作ろう。


 そしてそれを小太陽や火炎弾を構成する、あらゆる原子に引っ付けて”振動を邪魔”させればいいんだ!


 これなら、小太陽や周囲の温度、そして正利の体温も下げることができる!


 いくぞ!俺の新技!


極小エネルギー弾(エナジー・ビット)!」


 俺は他宇宙から取り出したエネルギーを、数兆個の『極小エネルギー弾』に変える。そして、脳の高度計算機能でそれらの動きをすべて把握する。


 周囲の原子の振動を見極め、原子に”極小エネルギー弾”を引っ付けた。これで周囲の温度を自由に操ることができる。


 まずは火炎弾を食らい、燃え上がっている正利を助けよう。俺は正利の周囲の炎を構成する原子につけた”極小エネルギー弾”を操作し、原子の振動を阻害した。


 たちまち炎が消え失せ、正利の体を氷が覆う。おっとやりすぎると今度は冷えすぎてしまうな。


 俺は正利の体内にも”極小エネルギー弾”を潜り込ませ、体温が36度くらいになるように調節した。


 よし、次は周囲の温度だ。空気中の原子には”極小エネルギー弾”を引っ付けた。後は上手く操作して原子の振動を邪魔しよう。


 俺は、”極小エネルギー弾”を操り、周囲の気温が20度くらいになるように調節した。


 よしよし、問題なく気温を操作できるな。これならいけるぞ!!。


 俺はさらに多量の”極小エネルギー弾”を作り、それらをここから半径1㎞ほどの範囲に飛ばした。このくらいのエネルギーなら簡単に他宇宙から引き出せるからね。


 そして、その周囲の気温を調節して-80度ほどまで下げた。周囲のすべてが凍り付いていく…。ただし小太陽から生き残ったガーゴイルやガルーダ自身は、死なずにギリギリ動けない程度の温度にする。


 俺の技は、あくまで活人技でなくてはならないからね。


「う……あ……あ」


「正利!!気づいたのか!?」


 俺は心を落ち着かせて、正利の体を見る。幸い、正利の体は軽いやけど程度で済んでいるみたいだ。全力で対処を考え、実行した甲斐があったぜ。


「こ……ここは…?私は確か、信孝様をかばって…そ、そうだ!信孝様こそご無事だったのですか!」


「ああ!!お前のお陰で……い、いや……と、とにかくガルーダの技は完全に封じた。この戦いは俺達の勝ちだ」


 “好き”…と認識してしまうと、さすがに照れ臭いぞ。真実の愛がどうとか説明するのはやめて方がいいかも知れない。そもそも告白とかしてどうにかなるものじゃないだろう…。


 正利が俺を慕ってくれているのは確かだと思う…。だが…下手に関係を壊す危険を冒すわけににはいかない。


 第一、そんなことをして、もし気まずくなったらどうするんだ?正利と上手く会話ができなくなったらと思うと、余りにも恐ろしすぎるだろう。


 俺の記憶チップには、戦闘経験は多いものの恋愛経験なんてどこにもない。まして男同士だからな。何をどうしたらいいかわからない。


 俺と正利が気まずくなったりしたら…。この激しい戦いの中で、作戦遂行に支障が出てしまう。それだけは避けなければならない。負ければ俺も正利も死んでしまうからね。


 俺が思春期男子ようなことを考えて、思考の沼にハマっていると、どうやら正利が周囲の異様な状態に気づいたようだ。


「な、なんと!…ま、周りが一面凍り付いているではありませんか!!なのに、私の体は少しも寒くないとは!?」


「ああ、やつらの使っている力をちょっと応用してね。物を冷やす技を編み出したんだ。冷やしたくないものは一定の温度を保つこともできる」


 まあ、細かい説明は追々していけばいいだろう。俺自身も、他の宇宙からどうやってエネルギーを出しているのか完全にはわからないしな。


 ただ…やっぱり、この方法で他宇宙のエネルギーを全部こちらに出すなんてことは無理っぽいな。時間を戻し、しずくを生き返すために使えないことだけは確かだ。


「な、……なるほど!!さすがは信孝様です!やはり、我らの愛の前には、このような者共は相手になりませんでしたね!」


「えっ…」


 我らの愛という言葉に俺の顔が赤くなる。いやいや…気にしちゃだめだ。


「あ、ああ…いや…そうだな。お前がいてくれたおかげで、あいつらを倒す力を手に入れることができたよ。そのおかげで俺は助かり、お前も救えた。ありがとう」


「お礼とは…こちらこそありがとうございます。貴方についてきた甲斐がありました」


 正利は涙ぐんで喜んでいる。そんなに喜んでもらえると俺も嬉しい。それに正利は泣いていても美しいからな。


 俺は正利に微笑み返した。敵地なのに幸せを感じてしまうな。けど、いつまでもここにいるわけにもいかない。作戦を先に進めよう。


 ガルーダは倒した。これで、とりあえず第一段階突破って感じだな。後はガルーダをどうやって味方につけるかだ。やつが協力してくれるかどうかで、この先の難易度が随分かわってるからね。


 今、ガルーダの体内に”極小エネルギー弾”を入れ、体が動けない程度の体温に保ってある。もちろん、一気に体温を下げれば殺すことも可能だ。


 生殺与奪を俺に握られた今、従うつもりがあるかどうか改めて確認する必要があるだろう。従わないなら、ここでこのまま動けなくしておかなくてはいけない。


 ただし、いくら”極小エネルギー弾”が無限に作れても、俺の脳の高度計算機能で認識できるのは数兆個が限界だ。空港を冷凍したまま、他の場所に行くのは現実的じゃないぞ。


 となると、施設やガーゴイル達は溶かして、ガルーダだけ死なない程度に低体温にしておくのがいいかな。できれば協力して欲しいんだけどね。


「よし、とりあえずガルーダと交渉しよう。それ次第で、ここからの作戦を決めるぞ」


 そう言って、俺と正利は氷像となったガルーダに近づいていった。


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