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ガルーダと謎のエネルギー

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


1536年8月 信孝22歳 信秀26歳 証如22歳 蓮淳72歳


[ガルーダサイド]


【陸奥国 桑折(こおり)空港】


 ビーーーーッ!ビーーーーッ!ビーーーーッ!


 緊急信号!緊急信号!!


 美濃・稲葉山城から緊急脱出船が到着します!


 場内にアナウンスが流れる。


 稲葉山だと?確か、幹部候補の龍人が担当していたところか。だが、美濃は住民の八割を毒人間化し、ほぼ統一していたはずだ。


 後は長井規秀を例のエネルギーで突然変異させれば、盤石になるところだった。


 何者の介入があったのか?やはり本願寺か、この稙宗公・一強の状態でも、本願寺だけは侮れぬ。


「通信には答えません!後一分後に到着するようです!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


1536年8月 信孝22歳 信秀26歳 証如22歳 蓮淳72歳


[信孝サイド]


【陸奥国 桑折空港付近の上空】


『一分後に目的地、桑折空港に到着します。』


 音速船の船内にアナウンスが流れる。本当にどういう仕組みになっているんだろう。元の宇宙のようにハードディスクに音声が記録されてたりするんだろうか。


「龍信、空港に着陸するらしいが、そこには近衛軍がいるのか?」


「ああ、ウジャウジャいるで。桑折空港なら確か、ガルーダが責任者じゃったかの。兵士はガーゴイルのはずや」


 ガルーダ?ガーゴイル?そんなのがいるのか。そういえば、近衛軍は幻想動物をモデルにした超人だって言ってたな。


「ガルーダとかガーゴイルってのは、神話で聞いたことがある。でも、いくら遺伝子改造だって、神や怪物を作り出せるものなのか?」


「オイラだって怪物みてぇなもんじゃろ?まあ、確かに本物の神や怪物じゃねえな。」

 

 本物の神や怪物だったら、いくらなんでも手に負えない。そうでなくとも、遺伝子改造でそれに限りなく近い生物を作り出せるんだとしたら脅威だ。


「神や怪物じゃねえが、それらが神話の中でやっとることを、物理的に可能な限りできるんじゃ。恐ろしいやつらじゃで」


 物理的に可能ってのが、どのくらいの範囲なのかわからないな…。例えば俺達のツープラトンや風斬りは物理的に考えたらあり得無さそうだけど、俺達は知識と技術によって物理的に可能にしている。


 そういう、工夫次第で物理的に不可能そうなことが可能なんだとしたら…。本当に神に近いことができる生物がいてもおかしくない。


「それで、責任者のガルーダってのは、どんなやつなんだ?」


「全身が燃え盛り、黄金色に輝いとるやつじゃ。炎を意のままに操るらしい。どねえな仕組みになっとるかはわからん」


 それは、俺の知ってる物理学だと不可能だ。


 もう完全にファンタジーの能力だな。何か秘密があるんだろうが、現状では全く不明だ。この宇宙が元の宇宙と近い物理法則を持ってるのは、アンドロイドNo.1の情報やこれまでの経験から間違いないと思うけど…。


 ずっと燃え続けるなんて、まるで異次元からエネルギーを取り出してるみたいな能力だな。


 そこまで考えて、俺は体に電流が走ったような衝撃を受けた。


 ……異次元から…?いや…まさか他の宇宙からエネルギーを抽出してるんじゃあ…?それが可能なことは元の宇宙で茂と本物の俺が立証している。だが…。


 茂と本物の俺が見つけた方法だと、一度アトランティックキーを開いてしまえば、その宇宙のエネルギーが丸ごと元の宇宙に流れ込むはずだ。ちょっとずつ…なんて方法はない。


 ただ、茂達はあくまで時間遡行を使うことを前提に他の宇宙のエネルギーを取り込む方法を探していた。ちょっとずつ吸い出すなんてことは考えもしなかったはずだ。そんな方法があっても気づかなかった可能性はある。


 でも本当にそんな技術があるとしたら、チート過ぎるぞ。いつでもどこでも他の宇宙のエネルギーを取り出せるとしたら、それはもう魔法に近いじゃないか。


 そうだ。いきなり熱エネルギーを取り出せるなら、それはもう炎魔法と変わらない。俺達が戦おうとしてる”ガルーダ”とやらは、そんなことができるのか…。


「おいおい、何を緊張しとるんじゃ。もう空港につくで。戦闘準備を始めえ。」


 龍信の言葉にハッとする。突然思考の海にハマってしまうのも、俺の良くないところだな。


 ともあれ、ここまで来た以上相手が何者であろうと、戦って倒すしかない。脱出船の燃料は片道分だ。逃げるって選択肢はないからな。


『桑折空港上空へ到着しました。ただいまから着陸態勢に入ります』


 空港へ着陸するとのアナウンスが入り、音速船は空港に向かって降下していく。俺はいつでも”風斬り”で音速移動できるように構えた。


 少しずつ地面が近づいて来て…ついに音速船は桑折空港とやらの発着場に着陸した。周りをガーゴイルと思われる怪物が囲んでいる。知らない間に空港側に連絡が行っていたのか?


 敵に通信技術があるとしたら、この船が発進した時点で緊急信号みたいなものが送られていた可能性もあるな。


 ガーゴイルは牛のような角、鳥のような(くちばし)、悪魔のような羽根を持った二足歩行の怪人だ。それが目に見える範囲だけで数百人はいそうだな。


 プシューっと音がして、音速船のハッチが開いた。


「あれは…一人は龍人009のようだが…他の二人は人間だぞ!!」


 俺達を取り囲んだガーゴイル達が、何か合図を送りあっている。俺達が怪しい者かどうか確認しているのかもしれない。


「やはり奴らは侵入者だ!!この陸奥に人間軍の侵入を許せば、我らばかりかガルーダ様も処刑となる。必ず仕留めよ!龍人009も道づれで構わん!」


 ガーゴイルの部隊長らしい男がそう叫んだ。それと同時に数百人のガーゴイルが手のひらからエネルギーの弾を出し、こちらに向かって撃ってきた。


 なんだ?あの弾は?どこからエネルギーを出したんだ?いや、それ以前にエネルギーの反動で物体を飛ばすならともかく、エネルギーそのものを弾として飛ばせるわけがない。

 

 そんなことを考えているうちに、四方八方からエネルギー弾が飛んでくる。まずい、俺は避けようと思えば避けれるが、正利は避ける術がないぞ!


 俺のは脳の高度計算機能を発動する…見える!エネルギー弾には中心に核となる部分があるぞ。一ナノメートルほどの小さな核だが、これを刺激すれば爆発を起こすはずだ。


 俺は刀を取り出し、手当たり次第に飛んでくるエネルギー弾の核を突いた。


ドォーン!ドォーン!ドォーン!


 そこら中で爆発が起こる。もちろん味方や俺自身を巻き込まないよう、爆発の位置を調整している。


「数が多い!!龍信や正利まで守り切れないぞ!」


「こんなもの…私の拳で!!」


 正利が拳を硬く硬く握る。ただ拳を握っただけなのに、そこにはもの凄い力が宿っている気がする。なんだ?これが正利のパンチの秘密なのか?普通のパンチじゃあないとは思っていたけど…。


 これは…ガーゴイル達のエネルギー弾と同じ感じがするぞ。


 まさか、他の宇宙からエネルギーを取り出して、拳に込める方法を無意識に会得していた…ってことか?だ、だがそんな偶然にエネルギーを取り出せるわけがない!!


 誰かに習ったはずだ。それも一子相伝の秘術のはず…。もしかしたら、正利の過去に関係あるのかもしれない。ただのヤクザじゃないと思っていたが…。


「はあっ!!!」


 そんなことを考えていたら、正利がエネルギー弾を殴りつけた。正利が拳に込めたエネルギーがぶつかることでエネルギーが相殺され、エネルギー弾が消滅した。


「な…な…な!」


 ガーゴイル達があっけにとられている。いいぞ!チャンスだ!


 俺は”風斬り”でガーゴイル達との間にある空気を吹き飛ばした。


「俺はお前たちを倒す!そしてお前たちも生かす!!」


 俺は手当たり次第、周りのガーゴイルの”原子の継ぎ目”からわずかに外れた場所を攻撃した。こうすれば少なくとも気絶し、しばらくは起きてこられないはずだ。


「な、なんだ。こいつは…仕方ない!お前ら、先にあの優男から殺れ!!」


 俺の隙をついて、ガーゴイル達が正利に群がる。そりゃあ、正利は美形で見た目は優男に見えるが、その筋肉はとんでもない。


 それに、さっきエネルギー弾を消滅させたのを見てなかったのかよ。


「私の愛の力の前では、貴方たちなど相手にもなりませんね」


 正利が群がるガーゴイルを拳で軽く吹っ飛ばしていった。殲滅速度は俺よりかなり早い。やはりあの、謎のエネルギー・パンチが強すぎるんだ。


「く…退け!退け!!ガルーダ様に報告するのだ!!」


 ガーゴイルの部隊長が、そう叫んだ瞬間だった。


 東の空が黄金色に輝き、炎の塊が飛んできた。


「報告は必要ない」


 その炎の塊は地上に着地した後も、黄金色に輝き続け全身から炎を放っている。こいつがガルーダか。


 ガルーダは二足歩行、頭部は鷲で全身が羽毛に覆われている。人間のような手足をしているが、背中に羽根が生えてるな。手と翼は別々だ。


「お前達、何故人間の侵入を許した?未改造の人間を陸奥に入れないことは、他のどんな命令よりも優先されると知っているはずだが?」


 どうやら、稙宗にとって普通の人間が陸奥に侵入することは、最も避けたい事態のようだ。ガルーダすら処分するとか言ってたもんな。


「そ、それが美濃からの脱出船に、なぜか人間が乗っていまして……」


「そうか、ならば何故すぐに処理しなかった?」


「そ……、それが相手があまりにも強く…我々ではどうしようも…」


「そうか」


 全く感情を感じさせない表情で小さくそう呟いたガルーダは、ガーゴイルの部隊長に向けて手をかざした。


「ぎゅおああああああああっ!!」


 ガーゴイルの体は激しく燃え上がった。そして、あまりの超高熱に骨まで溶けて地面に流れ出した。さらに次の瞬間、「ジューッ」と音を立てて蒸発し、目に見えるものは何もなくなった。


「役立たずはいらぬ」


 な、なんて熱量だ。ちょっと手をかざしただけで、体を溶かし蒸発させるとは…!多分、一万℃くらいの炎だったんじゃないか?


 第二次世界大戦の原爆では三千℃~四千℃の熱で人が溶けたという。人体の沸点が何℃だか知らないが一万℃もあれば、さすがに蒸発するだろう。


「さて、龍人009よ。何故稙宗様を裏切った?育てていただいた恩を、忘れたわけではあるまい」


「確かに育てていただいた恩はあるがの。だが、おめえら実験のために、孤児どもを何人殺したと思うとるんじゃ。数千人ほどは、実験失敗のせいで死んだんじゃぞ」


「放っておけば死んでいた者達が稙宗様のお役にたてたのだ。むしろ感謝すべきことではないか」


「殺される方からしたら、そねえな理屈で納得できるか!」


 ガルーダと龍信がお互い挑発し合う。まったく…、実際にガルーダとやりあうのは俺と正利なんだがな…。


 俺は二人の間に割って入った。そしてガルーダに向かって微笑みを浮かべて言った。


「あんたがここの大将だな。率直に言おう。俺の仲間になってくれ!そして孤児のところまで案内して欲しいんだ」


 俺の目的は、孤児の救出・幹部の誘拐・乗り物の調達だ。つまり、空港を管理しているガルーダを従えることができれば、このうち二つが一気に解決する。


 どっちみち、幹部は連れて帰るんだからね。


 俺がわけのわからないことを言ったので、ガルーダがこちらをチラッと見た。そしてエネルギーを集中して、それを炎の球に変えた。


 ガルーダの頭上に、直径百メートルほどもある巨大な炎の球が現れた、その瞬間からガルーダの周囲にいたガーゴイルや空港の建物が、燃え上がり溶け始めた。


『小太陽』


 ま、まずい!やつから距離を取らないと俺達も溶けてしまう!あれの熱は数秒ほどで、半径数㎞ほどの地上を溶かすはず…。やつらの本拠地である桑折西山城も燃えてなくなりそうな勢いだ。


 俺は脳の高度計算機能を開放する!全速力、マッハ3だ!風斬りで、安全圏までの空気を飛ばして……


「逃がすか」


 小太陽から小さな炎の弾が分離して”マッハ5”ほどのスピードで飛んできた。追いつかれる…逃げられない……。


「信孝様!!」


 その瞬間、正利がマッハ5すら超えるスピードで動き、俺と火炎弾の間に入った。

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