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稲葉山城、陥落!

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


1536年8月 信孝22歳 信秀26歳 証如22歳 蓮淳72歳


【美濃国 薮田】


 龍神野郎を倒した俺達は、これからの作戦を練っていた。


 さっきの戦いで俺達は龍神野郎を倒し、毒人間で編成された長井軍を竜巻で吹き飛ばした。これにより、ひとまず俺達が稲葉山城を攻めるうえで障害は無くなったわけだ。


 しかし、こちらの洗脳兵も放射能光線に巻き込まれた者、俺の竜巻に巻き込まれた者が結構いる。それでも1500人くらいは健康な状態だな。


 墨俣・薮田の戦いで稲葉山城内の兵を相当削った。これなら従来の作戦通り、俺と康孝が忍び込むのが良いかも知れない。城外の指揮は正利に任せよう。


 ただ、龍神野郎の話からすると城内にいるのも毒人間なんだよな。例の溶解液には、注意が必要だ。


「兄上、これからどうしましょうか。城内はかなり手薄になっているようですが?」


「そうだな。やはり俺と康孝が忍び込み、長井規秀を捕縛するのがいいだろう。」


 元の宇宙での知識からすれば、稲葉山には搦め手に繋がるルートがあるはずだ。一度、竜巻投げで空に上がって山の様子を見渡そう。


 もちろん、空からじゃ細かい地形は見えない。でも、俺には脳の高度計算機能があるからな。


 脳の高度計算機能なら、大まかな地形の情報から、搦め手への最適ルートを計算できるはずだ。


「正利は洗脳兵と川並衆を率いて城を囲み、できるだけ攻め気があるように見せてくれ。」


「「わかりました!」」


 勢いよく返事をしたものの、正利は少し不満そうだ。スラっと長い眉がハの字に下がっている。


「しかし、私は連れて行ってもらえないのでしょうか?龍人戦でもお役にたてませんでしたし、ここで活躍したいと思うのですが」


 正利が美しい声でそう言った。だが、さすがに規秀の捕縛についてきてもらうのは問題がある。


「親殺しは筋違いの極みだろ。一応、規秀を殺す気はないけど、正利を連れてってもしものことが起こると困る。下手に評判を落とすと、今後の領土経営にも響くしね。」


 殺すか殺されるかの極道の世界でも、自分の親分を殺すのはご法度だ。正利は俺に裏切ってくれたものの、元は規秀の子分だった。もし規秀を手にかけたら、日本中の極道が正利を相手にしなくなるだろう。


 それに支配者が変わることで、八割が毒人間という領民達がどう反応するかもわからない。この先の経営に不安がある以上、余計な心配の種は増やしたくないところだ。


「そうですね…。いくらなんでも親父に刃を向けるわけにはいきません。ありがとうございます。信孝様。今は、命じられたことの実行に邁進します。」


 正利が無理やり作ったような笑顔を向けてくる。笑顔なのに、悲しみが伝わってくる。ちょっと心が痛むがしょうがない。適材適所で頑張ってもらうしかないからな。


「ごめんな。必ず、稲葉山城を落としてくるから、待っててくれ。」


「はい。よろしくお願いします。こちらはお任せください。」


 そう言って、正利は洗脳兵と川並衆の指揮をとり始めた。


 俺は康孝の方に向き直り、力強く叫んだ。


「よし!康孝、竜巻投げだ!空から山の地形を見るぞ!」


「空から地形を…!?そ、そうか。今の我々なら、空から見ただけでも最適の経路を見つけ出すことができますな…っ!」


 康孝も、何度か脳の高度計算機能を開放してるだけあって、空から見れば最適ルートがわかることを理解している。


「そうだ!じゃあ頼む、また俺を竜巻に乗せてくれ!」


「喜んで!」


 康孝は元気な声で、嬉しそうに答えた。そして、俺を抱きかかえた。もう慣れたものだ。さすがに何度もやってきたからね。


 康孝は俺を抱えて回転し、俺が回転に合わせて空気を吹き飛ばすと周囲の空気が俺達の作り出す空気の渦に取り込まれてくる。


「よし!回転が音速を越えたぞ!!」


 渦は竜巻となり、稲葉山の方向に放たれた!俺はすかさず竜巻に飛び乗った。


「よーし…あれが稲葉山城だな。」


 俺は竜巻の上から、稲葉山城の搦め手を見る。あそこに繋がるルートは…。俺の脳の高度計算機能が働き、大まかなルートを算出する。


「よし!大体はわかったぞ。後は登りながら、迷ったら脳の高度計算機能を使えば、搦め手までたどり着けるはずだ。」


 俺は竜巻から飛び降り、五点着地で衝撃を緩和する。


「康孝!搦め手への経路はわかったぞ。さっそく一緒に攻め込もう」


「は!はい!どこまでも、着いていきますぞ!」


 康孝はなんだかんだ言って嬉しそうな顔で着いてくる。正利は洗脳兵と川並衆に声をかけ、まとめ上げ始めている。


 よし!行くぞ!目指すは長井規秀だ!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


1536年8月 信孝22歳 信秀26歳 証如22歳 蓮淳72歳


【美濃国 稲葉山・山中】


 俺達は、邪魔な木々を手刀で切り開きながら、稲葉山を登って行った。特に野生動物や長井軍に会うこともなく、稲葉山城に近づいていった。


「もう、天守が間近に見えてきましたな。」


「ああ…ここまで順調だと逆に心配になってくるよ。まあ、どの道城内に入れば戦うことになるんだ。油断はしないようにね。」


 そんなことを話していると、搦め手にたどり着いた。さすがにここまでくると見張りがいる。この段階では、城内に気づかれずに倒してしまいたい。


「見張りは三人か…。”風斬り”でどうにかなりそうだな。」


 気になるのは、毒人間に直接触れると毒に侵される可能性があるってことだな。刀でみね打ちにするのがいいか。


「そうですな。やつらは毒があるようですが…。刀で打ち据えればよいでしょう。」


 できれば拘束しておきたいとこだが、縄のたぐいは持ってきてないな。まあ、落城まで気絶しててくれればいいんだから、放置しても大丈夫だろう。


「よし!行こう!」


 俺達は脳の高度計算機能を使い、見張りとの間の空気を吹き飛ばした。そして全力で駆け寄り、相手がこちらを認識する前に刀のみねで、頭を強く殴った。


 倒れた見張り達の体から毒が噴き出す。俺達は慌てて後ずさった。周囲の地面がものすごい勢いで溶け始め、ジュ~っと音を上げる。溶けた地面が白い煙になって立ち上がる。


「うおっ!ヤバいヤバい。かなり強い毒みたいだな。避けたからいいが、触れたらひとたまりもなかったよ。」


「恐ろしいことです。やつらなんという生物を作り出したのだ…。」


 康孝が難しい顔をしてうなっている。毒人間の危険性を改めて思い知ったって感じだね。こいつは従わせるにしても、かなり注意が必要だ。


「しかし、まあとりあえず、被害もなく倒せましたな。ここからどうしましょう。天守への経路はわかりますか?」


「ああ。さっき空から見たから、ある程度はわかるよ。俺の後をついてきてくれ。」


 俺は天守への最短ルートを見極める。そして三回中継点を挟めば、天守まで音速で駆け抜けることができると判断した。途中の兵士は無視だ。まずは、長井規秀を捕縛して、天守を占拠してしまおう。


 そう考えながら俺は、第一の中継点までの空気を吹き飛ばし、走り出した。第二・第三の中継点を越えたところで、天守の前にも見張りがいることに気づいた。


「兄上、天守の前にも見張りが!」


「構わない!さっきと同じだ、みね打ちにしてしまおう!」


「了解!」


 俺達は、さっさと見張りを気絶させる。だが、さすがに天守の中にいる兵達が気づいた。


 俺は気絶した見張りから飛び散る毒液を避けながら、天守からの攻撃に警戒する。このままだと、窓から例の溶解液を雨のように降り注がれそうだ。


 仕方ないな。この場合、やはり空から攻めるのがいいだろう。竜巻投げで空に上がり屋根に飛び乗ろう。


 しかし、あまり何回も竜巻を使うと、後で寝込む期間が長くなりそうで怖いな。


 俺だけならともかく、康孝まで倒れると政務が滞ってしまうからね。


 そんなのことを考えながらも、俺は康孝に”竜巻投げ”の指示を出した。


「よし!もう一度竜巻投げだ!天守を巻き込まない方向に竜巻を出してくれ!俺はそこから屋上の屋根に飛び移る!」


「は、はい!分かりました!それでは、規秀の捕縛はお任せします!」


 さて、康孝が俺を抱きかかえる。康孝が回すバージョンも、もうお馴染みだな。康孝が回る、俺が回転方向に空気を飛ばして渦を作る。どんどん周りの空気が渦に巻き込まれ、竜巻ができる!


「「飛翔!大竜巻!」」


 そう叫ぶとともに康孝が、俺を空中に投げ飛ばす。俺は、完成した竜巻に乗り、さらにそこから天守の屋上、屋根瓦へと飛び移った。


 さて、このまま屋上にいたら攻撃が来るよね。さっさと天守内に入っちゃおう。


 俺は脳の高度計算機能で、屋根と天井の”原子を継ぎ目”を見抜く。そして屋根と天井の”原子の継ぎ目”を突いて、天井をぶち抜いた!


 俺は天井に開けた穴から飛び降りて、天守内に飛び込んだ!


 その瞬間、周り中から溶解液が音速で飛んできた。俺の脳の高度計算機能が即座に避けるべき場所を計算した。


 同時に規秀のいる場所への最適ルートも計算する。規秀の顔を直接知っているわけではないが、元の宇宙には”斎藤道三”の肖像画が残されていた。その情報を元に、それらしい人物を特定した。


 似せ絵って、顔はカッコよくかかせたりするんだけど、骨格なんかは意外とちゃんと再現されてたりするんだよね。


「ふむ、あいつだな。」


 俺は溶解液を避けながら、規秀を見定めた。というか、このまま戦ってたら溶解液で床が抜けそうだな。とっとと決着をつけた方がいい。


 俺は規秀との間にある空気を吹き飛ばした。当然、間にいた毒人間達も別の方向に吹き飛んでいき、規秀との間に一直線の道ができた。


「ようやく、ここまで来たぞ!覚悟しろ!長井規秀!!」


 俺は表筋肉と裏筋肉の制御を開放し、全力で規秀の方に走った!そして、さっきまでと同じく、刀で規秀の頭をみね打ちにした。


 殴られた規秀は倒れ伏したが、まだ意識があるようだ。四つん這いのまま、こちらを睨んできた。


「ぐあ…?ま、まさか…このワシを倒すものがあろうとは……くくく…じゃがこれで終わりじゃ…ワシと全兵士の”魔毒”がすべてを殺す…!!」


 規秀がそう言った瞬間、脳の高度計算機能が危険を告げてきた。周囲の”酸素”が”一酸化炭素”に変換されていく!!呼吸ができない!


「ワシ達の”魔毒”は空気中の酸素に作用し、畳や壁の炭素との反応を促す。それによって、すべての酸素を一酸化炭素へと変えることができるのじゃ!」


「し、しかし…そんなことしたらお前達だって…!!」


「だからこそ、この技は死に際で相手を道連れにするための技なのじゃ。ワシを倒せるような奴は、必ずあのお方の障壁となる。」


 こうやって会話している間にも、体は一酸化炭素中毒に近づいているはずだ。


 一酸化炭素を吸い過ぎると、頭痛、吐き気がしてきて、手足がしびれて動けなくなり、それでも吸い続ければ死に至ってしまう。


 だが、今の俺にはこんな技なんともない。自分もこいつ達の命も軽く救ってやる!


「残念だったな!その技は俺には通用しないみたいだ。」


 俺はそう言って、床板の”原子の継ぎ目”を突いて床をぶち抜いた!床が抜けたため、俺と規秀、さらに長井兵達も下の階に落ちた。


 一酸化炭素中毒は締め切った部屋に一酸化炭素が充満してこそ、起こる症状だ。ただでさえ天井に穴が開いている上、下の階と空気が混ざったため一酸化炭素濃度は大きく下がった。


 そしてやつらの体にある”魔毒”とやらは有限だ。どこまでも一酸化炭素を増やし続けることはできない。部屋が一定の広さを越えれば効果がないはずだ。


「よしっ!今こそ決めるときだ!」


 俺は脳の高度計算機能を使い、この場にいる全員を気絶させる最短ルートを見出す。下の階に落ちたせいで、屋上と三階の兵士が混ざっちゃったな。兵士は全部で五百人ほどだ。


 油断してると溶解液をかけられてお陀仏ってところだが、脳の高度計算機能の前ではそんなものは役に立たない。


「何度、同じ技を見せたと思ってるんだ!さすがに見抜いたぞ!」


 やつらがほとんど隙間なく溶解液を音速で放ってくる。俺は落ち着いて、溶解液の”原子の継ぎ目”を見抜く。


「お前たちの溶解液には、ごくわずかだけ”溶かされずに原子の継ぎ目を突ける”空間が存在する!そこを斬ればいいんだ!」


 俺は溶解液の”溶かされない隙間”を見抜き、”原子の継ぎ目”を斬った!そこら中から飛んでくるので、斬りまくった。


 当然、溶解液だって有限だ。しばらくすると吐かなくなってきた。ただ、その間に床が抜けて一階まで落ちてきてしまった。


 ふう…周りの兵は千人ほどか、面倒くさいが倒さないわけにもいかないだろう。俺は千人を最短時間で倒すため、最適な順番・位置取りを計算し始めた。


 しかしその瞬間、想定外のことが起こった。


「まいった!降参だ!どうかワシをお前の家臣にしてくれ!」


 規秀が土下座をして降参してきた。他の千人の兵も土下座をしている。


 いきなり降参と言われても信用できるはずない。


 第一、こいつは後の斎藤道三だ。いくらこちらが有利だからと言って、言葉を鵜呑みにするわけにいかない。


「そんなこと言って、俺が隙を見せたら毒を飛ばして殺そうとするんじゃないか?」


「め、滅相もないことで……もう毒は品切れです。それに貴方に毒は効かぬのでしょう!」


 そりゃあ、毒を斬って無効化することはできるようになったが、寝ているときなんかに襲われたら抵抗しようがないからな。不意を突かれただけなら脳の高度計算機能が反応してくれるけどね。


「そうか…では聖王家が、この美濃全体を統一することを認めるのだな?」


「は、ははーっ!!喜んで認めさせていただきます!!新領主万歳!!」


 周りからも「新領主万歳!聖王万歳!」という声が上がる。統制が取れすぎてて、逆に不気味だ。


 俺は警戒しつつも、上座に座り命令を出す。


「ならば、一切の抵抗を止め聖王軍を天守に通せ。これは最初の命令だ。」


「ははーっ!!今すぐに!」


 とはいえ、稲葉山城の城兵はほとんどここに集まってるみたいだ。外で正利の指揮する軍と戦ってるやつはほとんどいない。


 そして城からの伝令で、正利と戦っていた城外軍も降伏した。こうして俺達は稲葉山城とその兵士を完全に手に入れることができた。


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