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放射能光線を打ち破れ!

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


1536年8月 信孝22歳 信秀26歳 証如22歳 蓮淳72歳


【美濃国 薮田】


 俺達は爆風に乗って飛んだ結果、墨俣から4㎞ほどの位置にいる。

 墨俣を中心に半径2㎞ほどは、巨大なクレーターになった。その内部は放射性物質で汚染されている。


「毒人間プラントだと!?」


 俺は龍人野郎の言葉をそのまま返した。


 美濃を毒人間プラントにするだって? 毒人間ってのは一体、何だ?毒を持った生物と融合した人間ってことか?人間を毒持ちに進化させるよりはそっちの方が簡単そうだ。


「オイラの主は”遺伝子工学”ちゅうのに詳しくてのう。遺伝子を改造して、新種の生き物を作り出せるんじゃ。」


 やはり遺伝子をいじれるのか。けど、元の宇宙と違って、まともな研究施設なんて作れないはずだ。一体、どうやって遺伝子をいじってるんだ?


「つまり、さっきの蛇人間みたいなのを、美濃国で量産してるってことか?」


「おお、わかりがようてええな。蟲毒って知っとるじゃろ?主はこの美濃に毒人間を溢れさせ、そいつらにとことん戦をさせ、生き残った者を美濃の国主にしようと考えとられるんよ。」


 美濃を毒人間だらけにして、覇を競わせる…!?とんでもないことを考えやがるな。しかも長井軍の様子からすると、すでに美濃の人間は大半が毒人間にされていそうだ。


「じゃあ、美濃には蛇人間みたいなのが、たくさんいるってことか?」


「そうじゃな。蛇人間も蜘蛛人間もおるけど、八割は毒人間になっとるぞ。」


 思った以上にヤバい事態じゃねえか!まずいな。しかも、こいつは下っ端だって言っていた。他にも下っ端や幹部がいるとすると、こうなってる国が他にいくつかあるはずだ。


「さて、話はわかったじゃろ?なら、あんたも主のために、毒人間になってくれよ。」


「嫌だと言ったら?」


「もちろん無理やりやらせてもらうぞ。」


 やつは再び口を開き、放射能光線を発射した。まずい、あれの爆発に巻き込まれたら木っ端みじんだ。それに、爆発の近くにいたら被ばくしてしまう。


 俺は脳の高度計算機能を開放した。やはり光線の主成分はウランだ。だが、無数のウランが集まっているからこそ、放射能光線となっているんだ。


 だから、原子の継ぎ目を突き、集合体を原子単位に分解すれば放射能光線を消滅させることができる。しかしここで問題なのは、ウランを手で触ると被ばくしてしまうことだ。


 直接、手で触れずにウランの集合体を、原子単位に分解する。それができれば、放射能光線を無効化できる…脳の高度計算機能は、そう伝えてきた。


 もちろん、康孝達にウランが触れてもまずい。


「よし、やるべきことは大体決まった。要するにウランに触れずに光線を分解すればいいんだ。」


 ならば、刀で斬ることで、ウランを原子単位に分解するしかないだろう。


 そして、分解したウラン原子を俺や康孝のいない場所…”すでに壊滅した墨俣”に飛ばせばいい。墨俣の放射能濃度が、さらに高まるだろうが緊急措置だ。


 後で龍人野郎に食べさせるなりして、除染するしかないな。


 方針を決めた俺は、さっそくウランの”原子の継ぎ目”向かって刀で斬りかかった。


「こんな光線、触らなければどうとでもなる!」


 そう叫びながら、分解したウラン原子を墨俣の方へ吹っ飛ばした。墨俣がウランだらけになっていく。


「冗談やろ!?なんで、刀で放射能光線が斬れるんじゃ!」


「放射能光線は、結局ウランの塊だからな!ウランを原子に分解すれば、光線も消滅するのさ!」


 いいぞ、悪くない。脳の高度計算機能によりウラン原子を吹っ飛ばせることで、事実上、放射能光線は無効化したといえる。


 だが、龍人野郎は自らの羽根で空を飛んでいる。こっちは飛ぶ方法がないので、攻撃を加えることができない。やるとしたら竜巻か…?いや、あいつは光線で竜巻を吹っ飛ばせるんだったな。


 光線を消すのと、康孝を抱えて回転することは同時にできない。とすると、竜巻を撃っても消されてしまうわけか。


「ははっ…面白いのう。刀で光線を斬るやつなんて、俄然興味がわいたで!新しい毒人間にすれば、強力な戦力になりそうじゃ!」


 龍人野郎がそういうと、やつの体の中で巨大なエネルギーが蠢き始める。何だ?何をするつもりだ?


「ならば、これはどうじゃ!!いくら頑張ってもお前は一人!一度に複数の光線は防げんじゃろ!」


 龍人野郎はむやみやたらに周囲に放射能光線を撃ちまくる。まずいな、俺一人で対応できる量には限界があるぞ。


「くあーっ!!」


 俺は最初の光線のウランを分解する。そして、次の光線との間にある空気を吹き飛ばし、超高速移動する。そして二本目の光線のウランも分解した。


「なんとか二つ目までは…。」


 龍人野郎が放った光線は十発近い。このままでは、またこの周囲が墨俣のように汚染されたクレーターになってしまう。


 そう思ったとき、康孝が別の光線に向かって飛び出した。


「あ、あああああーーーーっ!!」


 康孝が光線のウランを墨俣に向かって飛ばす。当然、光線は飛散するが…。


「や、康孝!ダメだ!ウランに触れたら被ばくする…不治の病になるんだぞ!!」


 俺は三本目の光線を分解しながら、そう叫んだ。


「で、ですが…このまま周囲が墨俣のようになっては……また多くの民が死ぬことになります!」


 それはそうなんだが…。いや、確かに俺だって民がむやみに殺されるのは避けたい。だがすでに発射された残り六発の光線を、あと一秒足らずでどうしろというんだ。


 けど…無理でもなんとかしないと、康孝の命がけの行動すら無意味になってしまう。


 俺は必死に四本目の光線にすがりついたが、間に合わない。


「まずいっ!」


 ウランの分解が間に合わず、俺は四本目の光線をモロに食らってしまった。


ずおぉぉぉぉぉ~ん!!!!!


 周囲に大爆発が起こった。また大量の民が死んでしまったはずだ。だが……。


「なんともない…だと!?」


 俺の体が無傷だ。俺は光線をモロに食らったはず。他の五本の光線は、俺から離れた位置でちゃんと爆発した。なのに、何故俺に当たった光線は爆発しなかったんだ?


 そのとき、あることに気づいた。


「お、俺の体にウランが付着してない!」


 …………つまりどういうことだ?俺は脳の高度計算機能をフルに活用し答えを導き出す。


 そうだ…、俺は元の宇宙から”ブラックホールの目”を通ってこっちに来たんだった。だとすれば当然、宇宙空間を通ってきたはずだ。


 それで生きてるってことは、俺は放射能を浴びても大丈夫なように作られているのかも知れない。


 ……恐らくは…俺の体内…皮膚も含めて俺の全身には”放射性物質を食べ、そのエネルギーで生きてる微生物”…が大量に生息している。


 さっき光線を食らったときは、その微生物が光線のウランを食べたため、爆発が起こらなかった。光線を食らった一瞬ですべてのウランを消費したんだから、かなり大量の微生物がいるはずだ。


 俺の体は宇宙空間で活動するため、放射能を食料とする微生物が体に生息できる作りになっているんだ……!!


 だったら、次に龍人野郎が光線を撃つ前に、あいつの体に引っ付くことができれば…!微生物にあいつの体内にあるウランを、食べさせることができるかも知れない!


 ウランはやつのエネルギー源のはず…。それが無くなれば、あいつはヘロヘロだ。


 だがやつは羽根で空を飛んでいる。空を飛んでるやつに近づく方法なんて……いやある!!


 大竜巻の応用だ!康孝に俺を抱き上げ、振り回してもらって、竜巻ができたらそれに乗せて、俺をやつに投げつけてくれればいい!


 康孝自身の体に付着したウランも俺が触れば、微生物が消化してくれる!これならいけるぞ!


「康孝!俺の体にはウラン…あの光線の成分を食らう、小さな生物が住んでいるらしい!」


 急にわけのわからないことを叫んだ俺に一瞬、康孝は面食らったが、それどころでないこと、俺の言うことが正しいことを康孝の”脳の高度計算機能”が理解する。


「あいつの体はウランによって動いている!大竜巻で俺を投げ、あいつにぶつけてくれ!」


「俺があいつにしがみ付けば微生物がウランを食い、あいつは栄養源を失って憔悴するはずだ!」


 そう叫んだ俺に対し、康孝は覚悟を決めたような表情になる。理屈は分からなくても、勝利を確信した顔だ。


「よくはわかりませぬが、兄上をやつに投げつければよいのですな!」


 康孝は俺との間の空気を吹き飛ばし、超高速で俺に向かって走ってきた。


「ウランを栄養にする微生物じゃと!?そんなものがあるとはなあ…興味深えな。」


 微生物の存在は龍人野郎にとっても衝撃的だったようだ。新しい生物に興味があるのか、なんともいえない嬉しそうな表情をしている。


 それから表情を引き締めて、こうつぶやいた。


「ここでオイラが殺られたら、この情報を主に伝えられんわけじゃ。なんとしても、お前たちの攻撃を防がんといかんのう」


「こっちだって、殺されたり毒人間にされるなんて真っ平だ!」


 俺がそう叫んだと同時に、康孝が俺の側まで到着した。いくぞ、俺達のツープラトンだ。

 康孝が俺を抱きかかえる。非常事態だ。照れてる場合じゃない。


「回る!回る!飛翔・大竜巻だ!!」


 俺は回転方向の空気を吹き飛ばす、周りの空気が回転の渦に巻き込まれて竜巻ができる。


「今だ!飛ばせーーー!!」


「了解!!」


 竜巻が、龍人野郎に向かって飛んでいく。俺はやつの元に向かうため、竜巻に乗った。


「よくも…罪のない民を皆殺しにしたな!!俺はお前を倒す!そして…そうだ!俺に従わせ、罪を償わせてみせる!」


「何をアホなことぬかしよる。殺すか殺されるかの勝負で従わせるじゃと?ふざけるのもたいがいにせえ。」


 やつが口を開き、次の光線を発射しようとしたので、俺は必死にジャンプしてやつに飛びつき手で口を塞いだ。


 そして、すみやかに裸絞めの体勢に入る。すんなりと極まった。普段、光線や武器で戦っているから、関節技や首絞めにはすぐに対応できないようだ。


「このまま、首を絞め続ければ脳に酸素がいかなくなり、気絶する。そうしたらお前を拘束し、閉じ込めてしっかりと”教育”させてもらうぜ。」


 俺は腕に力を込めながらそう言った。勝ちを確信して油断していた。


「な…なるほどのう。これはキツイわい。仕方ない…、微生物の情報やお前の脅威を伝えられんようになるが…もはや方法は一つだけじゃ。」


「な、何をするつもりだ?」


「お前はウランは無効化できても、爆風は無効化できんのやろ?そしたら、俺はここで自爆してお前を倒す。お前は主にとって最大の脅威やからな。」


 自爆して俺を倒すだって?そうか、体内にあるウランを使って核爆発を起こすんだな。しかし…そうすると爆発は放射能光線の比じゃないぞ。


 何せ、これまでの放射能光線は、体内にあるウランの一部だけを使って放っていたはずだ。それを体内にあるすべてのウランを元に自爆するとなれば、威力は数倍から数十倍になる。


 美濃…いや、美濃・飛騨に加え、近畿東部…東海西部…北陸西部に信濃か。日本の20%くらいは無くなるんじゃないか?


 まずいぞ。どうにかして食い止めないと…。


「自爆なんてやめろ!死んでもいいのか!?お前の主は、命をかけてまで従うやつなのかよ!?」


「そうやなあ…。お前、男に惚れたことがあるか?」


 一瞬、たかしの記憶から桃の姿が浮かぶが、多分そういう意味じゃない。ここで龍人野郎が言ってるのは、正利が言っていた男気というやつだろう。


 理想を持って筋を通す男に極道は惚れるものらしい。


「ない!命をかけてまでその人のために尽くすほど、カリスマに溢れた人間には、まだ会ったことがない!!」


「そうか……俺はのう。主に惚れ込んだんや。孤児やった俺を拾ってくれて、こうして戦う力も与えてくれた。」


「それが……龍人を生み出す実験の一部やったとしても……俺にとっては恩人なんや。」


「主に囚われとる、他の孤児達のためにも、俺は主の僕として生をまっとうせねばいかん。」


 脳に酸素が言っていないため、龍人野郎は虚ろな目で呟くように、そんなことを言った。


 いい話のように言ってるが、要するに孤児を拾ってきては龍人を作り出す”人体実験”に使ってるってことか…。しかも実験で生き残った孤児は、龍人野郎を従わせるための人質になっている…。


「お、お前、それじゃあ利用されてるだけじゃないか!そんなやつのために死ぬんじゃない!」


「利用されてるだけでええんや、何せあの人は神にも等しいお人やからのう。俺くらい利用して、切り捨てにゃいかん。」


 龍人野郎の中で、これまでとは比べ物にならないほど巨大なエネルギーが蠢き始めた。多分、もう今か数秒後…爆発する!


 どうする!?どうにか止める方法はないのか!?このままこいつを死なせてたまるか!!それに俺だって…しずくを蘇らせることもできず、死んでたまるか!!


 爆発する前に、龍人野郎を気絶させるしかない!そのためには……。


「原子の継ぎ目を突く…!龍人野郎が死んでしまうかも知れないが……。周り中吹き飛ぶよりマシだ!!。」


 俺は一大決心をして、龍人野郎の原子の継ぎ目を突いた!龍人野郎の抵抗が無くなる。それと同時に羽根に力が入らなくなり、落下し始めた。


 龍人野郎の肉体が分解され始める…。まずは体内のウランを消費しないと…。


 俺は細胞が分解され始めてできた隙間に手を入れて、やつの内臓・放射能袋にあるウランを微生物に消化させる。


「これでもう核爆発は起きない。」


 俺は四割ほど分解してしまった、龍人野郎の細胞を、どうにか元通りくっつけようとする。難しい…。やつの体中から細胞をかき集める。


 脳と心臓、主要な内臓があれば、どうにか生きていられるはずだ。手足は、本願寺に頼んで義足・義腕を作らせればいい!


「よし!これならどうにか…継続的な治療さえすれば生き残れるぞ!!」


 後は着地だけだ……俺は龍人野郎を抱えながらも、どうにか五点着地で無傷で地面に立った。


 勝った…と言っていいのだろうか?犠牲は大きかったが…どうにか龍人野郎を無力化できた。この美濃にこいつ以上の勢力はいないだろう。



 それから数時間後、龍人野郎が目を覚ました。油断はできないが、ひとまずは安心だ。


 だがこの後、俺達は龍人野郎の口から彼の主・伊達稙宗の情報を聞き、戦慄することになる…。


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