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長井軍が思ったより、凄まじい

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


1536年8月 信孝22歳 信秀26歳 証如22歳 蓮淳72歳


【美濃国 川並衆・集落 蜂須賀正利の家】


「う……ここは?」


 対決から一時間、ようやく正利が目を覚ました。”原子の継ぎ目”を攻撃してしまったことで危険な状態に陥っていたが、どうにか助かったみたいだ。


「正利、大丈夫か?どこか痛いところはないか?記憶ははっきりしてるか?」


 細胞が分解しかけた影響がどこにでているかは、はっきりとはわからない。少しでもおかしいところがあるようなら、慎重に経過を見る必要がある。俺の配下になる以上、健康でいてもらわないと困るからな。


「ああ、思い出しました。私は貴方と戦って、敗れたのですね。しかも”拳・一閃”を使ってからの記憶が一切ない。どんな敗れ方をしたのかすら、わかりません。」


 戦闘時の記憶が無いのは、まあ細胞が分解しかけてたんだから仕方がないだろう。しかし、どうも会話から見る限り後遺症とかはなさそうだな。良かった。


「ああ、ちょっと俺の秘伝の技でな。ホントならここまでする気はなかったんだけど、正利が強すぎてつい実力を出し過ぎちゃったんだよ。」


 “拳・一閃”はタダのパンチにも関わらず、俺を吹っ飛ばしたからな。しかも俺の脳の高度計算機能が生命の危機と判断したほどの技だ。やはり正利は逸材だな。


「秘伝の技とは!なんとも興味深いです。」


「それより…さ。どうだ?俺は、正利の主としてふさわしいか?」


 俺は、少し照れながら言った。正利のパンチで俺も面食らったとはいえ、基本的にはこちらの強さを示せたと思う。


「え、ええ!!もちろんです。私をここまで一方的に倒したのは、貴方が初めてですから!」


 よしよし、川並衆が味方についたのも大きいが、何より正利自身が桁外れに有能だからな。ここで配下にできたのは、嬉しい誤算だな。


「じゃあ…正利!俺の配下になり、ずっと共に戦ってくれるかい?」


「は、…はい!もちろんです!これで、二人の絆は結ばれました。死すら二人を別つことはできません。」


 殉死というのはヤクザにも武士にもある文化だ。死すら二人を別つことができないというのは、一緒に死ぬから死んでからも一緒ということなんだろう。ものすごく重い。


 それはともかく、俺の言葉に正利は綺麗な顔をくしゃくしゃにして喜んだ。涙をボロボロ流している。そんなに喜んでくれると、こっちも嬉しい。


「じゃあ、さっそく稲葉山攻めの作戦会議だな。そうだ。会議をここでやるなら、弟も集落に入れてもらっていいか?俺の参謀なんだよ。」


 少し川並衆がざわつくが、正利が一喝する。俺の配下になったんだから、俺の命令には従ってもらわないといけない。


 もっとも、水利権については基本的に一任して、儲けから税を取る形にしたいところだな。その方が反発も少ないだろう。任せられるところは任せなくちゃな。


◇◇◇◇◇◇◇


1536年8月 信孝22歳 信秀26歳 証如22歳 蓮淳72歳


【美濃国 川並衆・集落 蜂須賀正利の家】


 しらばくして、康孝が川並衆に連れられて正利の部屋に入ってきた。


 今、この部屋には俺と康孝、そして正利を始めとする川並衆の連中がいる。

 俺は、一度皆の顔を見回した後、皆が耳を傾けてくれていることを確認して、話し始めた。


「聖王の松平信孝だ。皆、承知だとは思うが、川並衆は聖王家に編入してもらうことになった。異存はないな?」


 俺は川並衆に向けてそう言った。彼らは特に反抗的な態度を見せることもなく頷いている。


 まあ、川並衆は全員、俺に一瞬で気絶させられてるからな。さすがに、逆らおうってやつもいないだろう。


「信孝様。皆、異存はないようです。どうか、これからよろしくお願いします」


 正利が丁寧な挨拶をする。これで正式に川並衆は俺の家臣だ。


 よしここは一つ、皆に俺の意思と考え方を伝えておこう。最初のインパクトは重要だ。


「正利は俺に生涯の忠誠を誓ってくれた。川並衆の皆!これからはお前たちも俺の家族だ!」


 俺がそういうと、正利は「家族…!」とつぶやいて涙を流して喜んでいる。川並衆も「信孝様万歳!小六のおやっさん!万歳!」と騒ぎ立てている。


 一方で、康孝が少し悲しそうな顔で「家族か…」と呟いたのを俺は聞き逃さなかった。


「康孝!悲しそうな顔をするな!いくら家族が増えようと、お前以上の家族がいるか!」


 康孝は不意をつかれたように驚き、そして笑顔になった。


「脳の高度計算機能に目覚めたお前は、最も役に立つ配下だ。井田野・聖王城の戦いでついてきてくれたお前は最も信頼できる仲間だ!」


「そして何より、お前はずっと一緒に戦ってきた、大切な家族だ!お前が一番に決まってるだろう!」


「は、はい!ありがとうございます兄上!」


 そう言って、心底嬉しそうな康孝を尻目に、正利がポツリと呟く。


「我々はまだ新参者…信頼を得るのに時がかかるのは当然のことです。今後、努力していくしかないでしょう」


 俺は正利の言葉が少し気になったが、切り替えて今後の作戦を説明することにした。


「正利には説明したが、今から川並衆の協力を得て、墨俣に城を建てることにする。」


 やはり川並衆から”墨俣に城を?”という声があがる。まあ作戦を説明しなきゃそんなものだろう。


 俺は、さっき正利に説明した作戦を川並衆の皆にも話していく。


「た、確かにそれなら、墨俣に城が建つ!すげえぞ!新しい親分は最強だ!」


 川並衆が狂喜して騒ぎ立てる。いい反応だ。これなら、ちゃんと命令に従ってくれそうだな。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


【美濃国 木曽川上流の山中】


 さっそく俺達は木曽川沿いに上流へ向かった。俺達はこの辺の地理に詳しくないから川並衆が案内してくれるのはありがたい。


 山に入ってからはそれが顕著になった。何せ、登山道なんてないから、山中に入ってしまうと、川並衆か付近の猟師くらいしか道がわかるものがいないからね。


「この辺りの木が良いでしょう」


 正利が俺にそう言った。ちょっとした言葉でも美しい声をしてるな。


「木の良し悪しは俺にはわからないからな。ここの判断はお前に任せるよ」


 俺がそういうと、正利は「ありがとうございます」と言って作業を始めた。


 川並衆を二十人ずつ十組にわける。各組の下には作業員として、洗脳兵が二百人ずつつく。一応、この体制で行くことにする。


「洗脳兵の皆、墨俣築城作戦の間は正利の言葉を俺の言葉と思い、従うんだ」


 木材の切り出し、加工、城の建築と専門外の作戦が続くからな。基本は全権を正利に任せ、問題が起きた時だけ俺と康孝が対応する形でいいだろう。


 俺が専門兵に言い聞かせていると、後ろで正利が呟いた。


「私が信孝様の代わり……!責任を持って勤め上げねばいけませんね。」


 なんだかものすごく気合いが入っているみたいだ。まあ、元気なのは良いことだな。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


【美濃国 木曽川上流の山中】


「よし。城の部品はこれでいいな。次はこれらの部品でイカダを組み、川を下るぞ」


 川並衆の活躍により、木材の伐りだし・部品への加工は済んだ。もちろん組み合わせる部分には印がつけてある。


 後は川を下り、これらを墨俣まで持って行かなくちゃならない。皆の作業を見守っていると、康孝が話しかけてきた。


「ところで兄上、墨俣についてからの作戦ですが…。」


「ああ、基本的には川並衆に城を建ててもらい、俺達はツープラトン・地割れで敵兵の接近を防ぐ。暇を見て地割れに閉じ込められた敵兵を洗脳する必要もあるな」


 城を建て始めれば、稲葉山から長井の軍が出てくるだろう。そこからは俺達の本領発揮だ。ついにツープラトン”地割れ”を使うときが来た。


 そんなことを話していると、イカダが組みあがり俺達は墨俣へ向かって川を下り始めた。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


【美濃国 墨俣付近】


 ようやく墨俣近くまで下ってきたが…。まずいな。…敵もこちらの動きを予想していたらしい。墨俣に長井軍らしき部隊が布陣している。


「兄上、あれは長井の軍でしょうか?」


「それはそうだろうが…何か妙だぞ。」


 最初に気になったのは、墨俣付近の水の色だ。どす黒く濁っている。あれは毒を川に流してるんじゃないか?


 それより何より気になるのは、長井兵の体色や肌だ。緑の体色に加え体の表面はに蛇の革のようにザラついている。にも拘らず二足歩行だし武器を携帯している。知的生命体と考えていいだろう。


「「「なんだ…あれは…?」」」


 俺達は、その異形の兵達を見てあっけにとられていた。


 落ち着け。元の宇宙での情報によれば、この宇宙は”元の宇宙に近い物理法則を持った”宇宙のはずだ。だったら、蛇の獣人なんているわけない。


 だが、じゃあ目の前の現象はなんだ?何故、蛇人間?が軍を為してるんだ?


 俺は考えた。元の宇宙に近い物理法則で、蛇人間を作り得るかどうか?


 答えは可能だ。倫理的なことを考えなければ、遺伝子を操作して蛇の特徴を持った人間を作り出すことは可能だと思う。


 人間を改造して蛇人間にしたのか、蛇を進化させたのかはわからないけどね。


 そして、そんな真似ができるのは”四神の焼き印”を押された者達か、宇宙人そのものだけだろう。遺伝子に関して、元の宇宙以上の知識を持った人間がいないと不可能だからな。


 つまり、”四神の焼き印”の三人目は”遺伝子に関する(パーフェクト)あらゆる知識(・ゲノム)”が入ったチップを脳に植え込まれてる可能性が高いってことか?


 俺がやつらの正体について考察していると、やつらは口を開き俺達に向かって、唾のようなものを吐き出してきた。


 しかし、その速度がおかしい。音速を超えるスピードで、唾がまるで弾丸のように俺達に向かって飛んできた。


 蛇人間の数は三千人ってとこか。普通の人間だったら余裕で倒せる数だが、蛇人間は得体が知れない。


「兄上!危ない!」


 康孝がとっさに、飛んできた唾を刀で斬った。


 すると刀が溶け始めた。


「なんだと!?やつらの唾は触ると溶けるのか…!」


 まずいな。敵は人数が多い上に溶解液を吐き出せるのか。体を溶かされれば死んでしまうぞ。だが不用意に避けると、肝腎の城の部品が溶かされてしまう。


 仕方ない。奥の手を使おう。ここから亀裂脈を探して”地割れ”を使うのは無理がありそうだ。敵の安全が確保できないが、大竜巻を使うしかない!


「康孝!飛龍・大竜巻を使うぞ!このままじゃ、兵士や城の部品が溶かされてしまう!やつらを排除する!非常事態なので、味方の安全を優先し、活人剣にはこだわらない!」


「承知しました!」


 できれば、敵を生かして取り込む方が効率がいいんだ。だけど、今回は俺の読みが甘かったせいで窮地に追い込まれてしまった。相手を殺してでも、自分と仲間が生き残る方法を考えなくちゃいけない。


「正利!この場は任せる!今から竜巻を起こすから、それに巻き込まれない位置に兵を非難させてくれ!」


「た、竜巻ですか…?」


 そう言ってる間にも蛇人間たちの溶解液が音速でこちらに飛んでくる。兵のうち何人かは体を溶かされ死亡したようだ。


「詳しく説明する暇はない!とにかくできるだけ俺と康孝から離れてくれ!」


 そこまで言って、俺と康孝は大きくジャンプしてイカダから飛び降りた。


「我が名は聖王・松平信孝!長井の兵達よ!俺と康孝が、友情のツープラトンを見せてやるぜ!」


 そう言うと、俺は康孝を抱きかかえて回転を始める。康孝は回転方向に空気を吹き飛ばし、周りの空気が回転の渦に巻き込まれていく。


「飛龍・大竜巻!!」


 空気の渦はどんどん大きくなり、竜巻を生み出すと川の水や木々など周囲のものを巻き込んでいく、蛇人間達もどんどん巻き込まれ始めた。


「いいぞ!康孝!これなら長井兵を一網打尽にできる!」


 吹き飛ばされた蛇人間達が地面に叩きつけられ、ぐちゃぐちゃになっていく。やはり犠牲が出てしまったか。この場はしょうがないとはいえ、できれば避けたかった。


 そんなことを考えていると、いきなり予想もつかないことが起こった。


 彼方から”光線のようなモノ”が飛んできて、竜巻にぶつかったのだ。その瞬間、周り中を巻き込む巨大な爆発が起きた。


 どっごおぉぉぉぉぉ~~~ん!!!!


 俺と康孝は爆発に巻き込まれるのは、どうにか回避したものの爆風で空高く舞い上がった。


「あ、兄上…いったい何が…」


「わからんが、今は安全に着地することが先決だ!脳の制御を開放しろ!」


 俺と康孝は五点着地の技術を使って、どうにか無傷で着地した。


「な、なんだったんだ?今の爆発…いや、あの光線は一体…?」


 俺がそういうと、一人の男が俺に向かって話しかけてきた。


「あれ受けて生き残る人間がいるたあ、驚いたなあ。」


 その男の姿も異常だった。異世界転生モノでいうなら龍人とでもいうべき外見をしている。顔は人間っぽいが角が生えてる。体は二足歩行ではあるが、全身が鱗に覆われていて尻尾もあるな。


 いや、龍なんてこの世界にいるはずない。第一、どう遺伝子を改造したら光線が吐けるんだよ!?


 ゴジラみたいに放射能を吐いてるってことか?例えばウランを食べて、そのエネルギーを利用する生き物だとしたら、それも可能か…?


 俺は混乱しつつも、とりあえずまず一番聞くべきことを男に尋ねた。


「まさか、お前が”四神の焼き印”の一人なのか?」


「いやいや、違う違う。俺は、その”四神の焼き印”のお方に世話になっとる、ただの下っ端や。長井規秀を改造し、この美濃を毒人間のプラントにするためになあ」


 どうやら、美濃統一の戦いは一筋縄ではいかないようだ。

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