思い知った異星人の脅威
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1536年 7月 信孝22歳 信秀26歳 証如22歳 蓮淳72歳
【尾張国 聖王城 評定の間】
さて、康孝の修行を始める前にやっておかないといけないことがある。そう、この交渉のもう一つの目的である。”異星人の情報”を引き出すことだ。
そう考えていると、蓮淳が妙なことを言い出した。
「やはりお主が……異星人の言っていた”たかし”なのじゃな」
何を言ってる!?何故、俺の…いやオリジナルの名前を知ってるんだ?それに異星人から聞いた!?…証如に聞いただけじゃなく、直接繋がりがあるのか!?
「ワシはお主を認めた。ここに捕まったときにはまだ、逆転の目があると思っていたが、今の話を聞く限り、今の本願寺ではお主に勝てん。発想と技術が違い過ぎる。」
蓮淳が負けを認めた?いや、それと異星人の話とどう関係があるんだ?知ってることを教えてくれるってことか?
急激な展開に俺が慌てていると、そんなことは気にせず蓮淳は遠い目で語り始めた。
「ワシはのう…十一年前、聖山の戦いで…別の星から来たという者と会った。本願寺の者達が信秀の動物達に殺され、信秀自身も気絶した後のことじゃ。そのため、この事はワシと証如しか知らん」
蓮淳の言葉は衝撃的だった!俺と康孝と信秀はあっけにとられている。異星人と接触?いや一応、予想通りではあるけどまさか十一年も前に、もう接触していたなんて…。
なんと言っていいかわからない俺達三人を尻目に、蓮淳は話を続ける。十一年も内緒にし続けたせいか、早く伝えたくてしょうがないようだ。
「その者の話によると……」
1.その異星人の文明は地球より進んでいるが、その高度な文明でも”たかし”は理解不能
2.異星人は四人の地球人を攫い、脳に”データの入ったチップ”を入れた。能力を使えるのはそのおかげ
3.異星人は四人の地球人と”たかし”をぶつけることで、”たかし”の能力を測ろうとしている
「の、脳に記憶データの入ったチップ…!?」
俺はその情報に痛いほど聞き覚えがあった。何しろ俺は本物の”たかし”の記憶チップを埋め込まれたアンドロイドだ。しかし、この宇宙の人間が記憶チップの技術を持っているなんてあり得るのか?
「そうじゃ。どうやるのかは知らぬが、やつらは証如達に生きたまま脳にチップというものを入れたと言っていた。”たかし”にぶつけ、結果を見るためにのう」
本当に異星人は記憶チップを…しかもアンドロイドではなく人間に植え付ける技術を持ってるってことか…。
しかし、だとしたら妙だ。信秀は俺みたいに二人の人間の記憶が脳内に混在してる感じじゃない。あくまで一人の人間で、”能力だけ”受け継いでいるように見える。
「信秀、ちょっと確認したいことがあるんだけど、その異星人に攫われたってときから、自分の中に自分ではない誰かの記憶が混在してるような感覚はあるか?」
一応、聞いておいた方がいいだろう。ここが俺と違う場合、異星人のチップは元の宇宙で開発された記憶チップとは別物だ。
信秀は、心当たりがないのか、妙な顔になって答えた。
「なんだそりゃ?そんなものねえぜ。ガキの頃から俺は俺だ」
俺の変な質問に、信秀だけでなく康孝と蓮淳も困惑しているようだ。
「やはりそうか……。ってことは、まさか能力だけを入れることができるチップがあるのか…?」
つまり異星人の記憶チップってのは、記憶すべてではなく、誰かの知識や経験の有用な部分だけを抜き出してチップ化できるってこと…なのか?そんなのチートじゃねえか!
「どうやら、聖王殿には何か心当たりがあるようじゃの…」
蓮淳がまた俺に期待の目を向ける。そんないいことじゃないぞ。どちらかというとよりピンチになったかも知れない。
「ああ、そうだね。あるにはあるけど…。ねえ、これから話すことは、もしかしたら絶望に繋がるかも知れないけど…心して聞いて欲しいんだ」
絶望と言う言葉に皆、過剰に反応している。
蓮淳は諦めの見える表情でやはりか…と言う顔をしている。康孝はただただ状況を悲観している感じだ。一方で信秀だけはあまり気にしてないように見える。
「異星人はチップってのに人の持つ知識や経験、技能と言ったものを記録することができるんだと思う。そして、それを脳に埋め込まれた人はチップに入れた技能を再現できるんだ」
俺の言葉に三人がまたあっけにとられる。想像もつかない情報が飛び出し過ぎて、限界を超えた感じだ。
「み、見聞きしたり訓練を積むことなく技能を習得できるのですか!?」
康孝が異常なテンションで驚く。そりゃそうだ。脳にチップを入れるという危険な手術が必要とは言え、勉強も練習もせずに技術を手に入れられるなんて本当にチートだからな。
「そうだ。しかもチップを入れれば入れるほど、技能の数は増える。考えてみて欲しい。信秀や証如みたいな能力を、一人で複数持ってるやつが現れたらどうなるか…」
三人は神妙な顔になる。もし異星人と戦う羽目になったら…と考えているんだろう。
何せここまでの話じゃ異星人は全くもって正体不明だからな。ものすごく強い奴が、何の拍子にいきなり攻めてくるかわからないんじゃ、ビビるのが当たり前だ。
「異星人は証如や信秀を”たかし”の能力を見る実験に使っておるらしいからの。もし、お主か”四神の焼き印”四人のうちどちらかが死ねば…実験終わりとみて残った方を処分しにくるかも知れぬ」
確かに実験材料をわざわざ生かしておく理由はないよな。だとすると俺達はどうしても、能力を複数持った連中と戦わないといけないのか…。
俺と康孝と蓮淳は暗い雰囲気になった。しかし信秀は違った。
「おい!信孝!康孝!じいさんも!何をしけた面をしてやがんだ!たった今まで幕府を開くだの天下をとるだの、景気のいいことを息巻いてたとこじゃねえか!」
確かにさっきまでの俺達は未来に期待を寄せていた。しかし異星人と戦うことを考えれば悲観的にもなるだろう。
「信孝!お前は活人兵器で誰も殺さず、大決戦に勝つって言ってただろう!だったら、その活人兵器で異星人も生かしたまま仲間にできるんじゃねえのか!」
「無茶言うなよ!いくら俺でも複数の能力持ち相手に対抗策を思いつくのは難しいぞ」
しかし、そうだな。誰も殺さず味方にするってのは確かに俺の理想だ。第一、仲間を死なせたくないのは間違いないんだからね。だが具体案となると難しいな。
いや、俺は”悟空”がいる宇宙に行き、エネルギー確保のための新宇宙を作ってもらわなきゃいけないんだ。そのためにはどうしても宇宙船を奪うか借りるかしなくちゃいけない。
しずくを生き返らせるためには、異星人に殺されるわけにはいかないんだ!
とはいえ、どうしたらいいだろう。
考えがまとまらない中、俺はとりあえず思いついたことを口にしてみた。
「んん…とりあえず俺が思いつくのは”四神の焼き印”の連中と俺自身の力を合わせないと相手にならないだろうってことだな。それと…5人で使える併せ技…か。」
三人は俺の方を見つめ、驚きと歓喜が混ざったような表情で詰め寄ってきた。
「「「五人で使える併せ技!?」」」
信秀が興奮して、俺の体を掴んで振り回しながら聞いてきた。
「そんなのがあるのか!?」
聞き返されて、はっとした。俺はあんまり考えずに言ったんだが、そうかそんなのがあれば確かに異星人にも有効かも知れない。相変わらず具体案は思い浮かばないけどね。
「ないよ。まだツープラトンも実践してないんだから五人の技なんてあるわけないだろ」
けど、それくらいの技を編み出さないと勝てない可能性は高いな…。それができても勝てるかわからないけど、やらないよりはマシだろう。
「どんな技か、構想とかもないのかよ!」
信秀がしつこく聞いてくるが、本当に構想も何もない。戦隊ものみたいなバズーカとかロボットは作りようがないし、開拓者のゲームみたいにそれぞれの技を繋げた連携技ってのも無理がある。
「とりあえず、あと二人の能力がわからないと、俺の能力でも閃きようがないな。」
持っている情報からあり得ない考察を広げることはできるけど、本当に知らないことはさすがにどうしようもない。
けど…そうだな。例えば証如が夢で見た武器を一足飛びに実現化できる能力とかがあれば、かなり有利になりそうだよな。
もちろん証如が夢で見る武器は、異星人が使ってる武器のはずだから、それだけじゃ絶対的有利には立てない。けど、俺の計算能力や高速移動を組み合わせれば、間違いなく戦える可能性は上がるだろう。
そう考えた俺は、現状で思いつく五人併せ技の構想を話した。
「具体的には全然思いつかないけど…証如や信秀の能力と強化し合える能力の持ち主が出てくれば…もしかしたらいけるかも知れない」
後は実際に異星人と対峙してみないことにはわからないな。現状のままじゃ、不確定要素が多すぎる。
「そうか…。だがまあいい!とりあえずわかったことは希望は失われてねえってことだ。戦うとなっても勝てる可能性はある!第一、五人の併せ技なんて、めちゃくちゃカッコいいじゃねえか!それでダメならまた考えようぜ。もちろん俺達も手伝うぞ!」
そうか。俺達は独りじゃないもんな。今回、信秀のおかげでアイディアのとっかかりが思いついたように、もしものときに康孝・信秀、そして証如や残りの”四神の焼き印”の力で新たな対策が浮かぶかもしれない。
俺達は共に悩み、共に考えて、共に戦う。だから…しつこくてしぶといんだ。
そう考えて、俺はニヤリと笑った。そして信秀の方を見据え、とびきりの笑顔を作って立ち直れたことのお礼を言った。
「そうだな。ありがとう信秀。ビビッて危うく自分を見失うところだったぜ。俺の持ち味は活人だ。異星人と戦う日までに、必ず皆の能力を活かす併せ技を思いついて見せる!」
そうだ。やつらの知らない、俺がいたことがやつらの運の尽き。必ず異星人を…俺達全員の活人兵器で、”生かして仲間にして見せる”。
俺が勢いよく宣言し、信秀達も乗ってくる。
「おう!それでこそ信孝だぜ!お前はそうじゃなくちゃいけねえ!なんせ俺達の親玉だからな!」
「ツープラトンの訓練は怖いですが…こうなったらいけるところまで兄上についていきますぞ!」
二人がそう叫んだところで、蓮淳が大きな声を出して笑った。
「ふぉっふぉっふぉ!全く馬鹿げたやつらじゃわい。」
蓮淳は半分呆れ顔、半分俺を尊敬するような顔を見せたあと、俺に笑顔を向けてこう言った。
「じゃが、異星人に勝つにはお主らのその常識から外れた発想と行動力が必要じゃ。この蓮淳、証如とともにお主らの戦いに協力するぞい!」
俺達の目を真剣に見つめ、蓮淳は宣言した!俺達は蓮淳の中で何かが変わったのを感じた。蓮淳は俺を認めてくれた。俺も蓮淳を信用することができた。
このときから蓮淳もまた、俺達と共に戦う大切な仲間の一人となったんだ。




