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俺の正体

夢だ……俺は夢を見ていた。


聖山城の防衛戦はどうなったんだ?夢を見てるってことは、俺は死んでないのか。だとすれば信秀の”高くてでかい音”が成功したのかも知れない。


夢なんか見てる場合じゃない。早く起きないと……。


夢の中で、茂が俺に語り掛ける。


「たかし!!ついに完成したぞ!これで本当に…『時を戻せる』はずだ!!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


2050年 6月 高木茂 61歳 望月たかし 61歳


【俺が見た夢】


西暦2050年…第三世代スーパー量子コンピュータの超高速演算により、人類はブラックホールの先に”別の宇宙”があることを突き止めた。


だがブラックホールに近づけは、どんな物質も消滅してしまう。そのため、ブラックホールを越えて、別の宇宙に行くことは不可能かに思われた。


だが、絶え間ない研究の結果、ブラックホールの中心には台風の目のように、重力の影響を受けない部分があり、そこを上手く通れば消滅せず別の宇宙にいけることも突き止めた。


とはいえ、ブラックホールの”目”は人ひとりがやっと通れるような狭さだ。当然、人が宇宙遊泳してそこまで行くことなんてできないし、宇宙船が通るには狭すぎる。


だが…呼吸が必要なく、人と同じ大きさの"生体アンドロイド"なら…


生体アンドロイドを宇宙船の主砲から精密に射出して、一度”目”に打ち込めば、そこからはアンドロイドにつけたセンサーによって、”目”だけ選んで移動し続け”別の宇宙”まで抜けることができる!


そして………


別宇宙・探索開発機構、エグゼクティブ研究員:高木茂(61)

宇宙ロボット省 国立最高研究所 所長:望月たかし(61)


「物理的には可能なはずだ。」


未来の茂が俺に対して言った。確かに俺と茂の研究によればブラックホールの”目”を抜ける生体アンドロイドを作り出すことは可能だ。


それを安全に”目”に打ち込む主砲も茂の宇宙力学によって可能になった。


「だが生体アンドロイドには、自分の意思で動いてもらわなければならない。決められたプログラム通り動くんじゃダメなんだ。」


俺はこのプロジェクトの問題点を指摘する。”目”から”他の宇宙”に抜けるまではプログラムに組み込めるとしても、状況が一切わからない”他の宇宙”で活動してもらうためには人間同様の判断が下せなければならない。


「そこはたかしが開発した”記憶チップ”でどうにかなるだろう?」


記憶チップというのは、未来で俺が開発した”人の記憶すべて”を入れておけるチップだ。すべてが入っているので、これを組み込んだ生体アンドロイドは人間同様に考え、行動することができる。


「確かに記憶チップを使えば、人間同様の動きはできるだろうが……。問題もある。このチップを組み込んだ生体アンドロイドは人間同様に恐怖や苦痛を感じるんだ。ロボットに対して倫理ってのもおかしいかも知れないが…。あまりやりたくない。」


自分がそんな状況に立たされたら…と考えると、この時の俺はどうしても踏み切れなかった。


「だが、俺達は”ほかの宇宙”の可能性をどうしても探りたい。探ろう…と誓い合ったじゃないか。」


「……そうだ、あのたかしが出所して俺の家にやってきたときに!」


そうだ。出所の後、俺は茂の元を訪れて、二人の十五年間を話し合った。俺が服役していた十五年間と、茂がニートだった十五年間。


失った時間を取り戻すように、俺達は二人が体験したことのすべてを語り合った。


そして俺達は…このままではいけないと思い至った。しずくと麗美の死をいつまでも抱えていけはいけない。この人生で何かを為さなければ…!!と決意を固めたのだ。


それからの俺達は無我夢中だった。この年から大学に入るのは大変だったが、俺達は各々少しでも興味がある分野の大学を受け、受かり、猛烈に勉強して……大学院で博士号をとり……。


世界で有数と言われるまでの大科学者になった。


あのときの思い…俺達はここまで来た。この宇宙を越え、他の宇宙を人類で最初に調べる機会なんて俺達以外には与えられないだろう。


「わかった。やってみよう!」


俺は生体アンドロイドを思いやるより、”何かを為す”という俺達の夢の方が重要だと考えた。このときから俺達の中で何かが変化していた。研究にのめり込む余り、失ってはいけない感情を失い始めていたんだと思う。


決意さえ固めれば後は早かった。それから一年とたたないうちに俺達は、生体アンドロイドを”他の宇宙”に送り込むことに成功した。


俺達の夢に変化が起きたのは、その後だった。漠然としていた”何かを為す”が具体的なものになったんだ。


未来の俺と茂は、生体アンドロイドを使って”他の宇宙”の探索を続け…ひたすら続けてその結果……とんでもないものに行きついた。


異なる宇宙の中には”剣と魔法の宇宙”や”仙人や妖怪が普通にいる宇宙”など、この宇宙とは(ことわり)が異なる宇宙が存在することを突き止めたんだ。


そのことを知ってから、俺と茂は何かにとりつかれたように”時間を戻す”もしくは”人を生き返す”魔法が存在する宇宙を探し回った。


高校の頃、俺がヤクザに騙されたせいで死なせてしまった幼馴染の"しずく"を生き返すために!


俺達は血眼になって全宇宙のブラックホールを探し、見つけた側から生体アンドロイドを”他の宇宙”に送り込んだ。


そして果てしない研究の結果、ついに”時間を戻す魔法”を見つけたのだが………その魔法を使うには、宇宙・三つ分ほどのエネルギーが必要なことが分かった。


俺達は絶望した…だが諦めなかった。”他の宇宙”からエネルギーを自分たちの宇宙に引き入れる方法はないか……という研究を始めた。


そして宇宙と宇宙の間には、俺と茂が”エナジー・ゲート”と呼んでいる水門のようなものがあって、エネルギーが通らないようにせき止めていることを突き止めた。


そのゲートを開くには………宇宙のエネルギー・ポイントである、『アトランティック・キー』を開く必要がある……!


そのためには……!!


「俺達の記憶チップを埋め込んだ生体アンドロイドを、他の宇宙に送り込むだって!?」


これは俺の台詞だ。アトランティック・キーを開くための方法を、当時最高のスペックを誇る量子AIに計算させたところ、そういう結果が出たのだ。


「そうだ。量子AIの計算が正確なのは知ってるだろ?アトランティック・キーを三つ開ければ、三つの宇宙からエネルギーを集め、”時間遡行魔法”を使うことができる」


「それはそうだが…エネルギーを奪われた宇宙は消滅してしまうぞ?」


生物も星もエネルギーで動いている。エネルギーが無くなってしまえば、その宇宙は消滅する。三つもの宇宙を滅ぼしてまで、俺達はしずくを生き返らせたいのか…?


「俺達は……しずくを生き返す…。それが俺達の使命だ。俺達はきっとこのために生まれてきたんだ。だから、あんな事件が起きた」


茂は盲目的に、しずくを生き返すことを望んでいた。俺だって生き返せるものなら生き返したいが…。いや、そうだな。俺が、俺のせいで死んだんだ。


責任をとるなら俺が率先して生き返すべきなんだ。犠牲を……考えられないほどの犠牲を払ったとしても…俺達はやるしかない!!!


このときにはもう俺達の中で倫理観は失われていた。俺はかろうじて疑問を呈することがあったが、できるならやるしかないと思っていた。


「よし…!!やるしかない!!といっても頑張るのは生体アンドロイドだけどね」


俺は不安と動揺を隠すように、満面の笑顔を茂に向けた。


”戦国時代”に似た世界観の宇宙に、俺と茂が三十二歳のときの記憶チップを埋め込んだ生体アンドロイドを送り込めば………


少なくとも、二つのアトランティック・キーが開ける…………!!!


それが最新の量子AIが導き出した答えだ。


アンドロイドNO.1・茂を、”仙人や妖怪が普通にいる宇宙”に織田信孝として送り込む。

アンドロイドNO.2・たかしを”この宇宙に似た物理法則を持つ宇宙”に松平信孝として送り込む。


そしてもう一体”あれ”の記憶チップを乗せたNO.3をもう一つの”戦国時代”に送り込んだ。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


俺は夢から目覚める………


この記憶は、あの時………岩石と一緒に川を流されて、任意で脳の制御を開放できるようになったとき、見た記憶だ。


この記憶が本当なら…俺は………俺は………”俺の記憶を埋め込まれた生体アンドロイド”だ……。


俺は……俺は………人間じゃ………ない!!


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