縦横無尽の大暴れ
1536年 7月 信孝22歳 信秀26歳 証如22歳 蓮淳72歳
【尾張国 聖山の麓 草むらの影】
[主人公サイド]
【俺は通常一生で3%しか使わないという脳の制御を開放し、隠された脳の高度演算機能により、頭で考えつかない最適な動きをできるようになるため、滝から落ちる修行を行っていた。】
ふう、どうにか修行から戻ってきたけど…。状況は相当悪そうだね。俺はあの後、脳の制御の開放を任意に行うため、また攻撃に使うための修行として、半蔵に”俺を川に流した直後、数十個の大岩を流してもらった”。
この方法だと、川を流されている間は命の危機ではないが、滝壺に落ちてしまうと、後から降ってくる岩に邪魔されて浮き上がれない。
よって滝壺に落ちる前に任意に脳の制御を開放して、自動計算による最適な行動を起こし、大岩を破壊してしまわなければ死んでしまう…というわけだ。
俺は必死に脳の制御を開放しようとしてもがく中で、これまでの俺の記憶と完全に矛盾する"未来の記憶"を見た。…あれのお陰で俺の脳は限界を突破したんだ。
見事、修行を乗り越えた俺は、脳の制御を任意に開放し自分では考えもつかない、最適な動きがとれるようになった。
とはいえ、筋肉と同じでリミッターを解除した状態だからね。当然ずっとやり続ければ脳に負担がかかりすぎ、下手をすれば損傷する。
だから、ここぞというとき限定的に使うしかない。使い過ぎれば脳出血などで死ぬ恐れがあるし、限定的に使うにしても使いどころを間違えれば、戦場の真ん中で倒れて動けなくなる恐れもある。
まさに諸刃の刃と言ったところだね。
さて、戦況を見る限り、一万人ほどの門徒兵がマシンガンと手榴弾で聖山城を攻めているって感じか。聖山城の鉄城門は、手榴弾で簡単に破られてしまったみたいだ。
このままじゃまずいよね。信秀と康孝が殺されたら、俺は本願寺と戦うすべが無くなってしまう。
つまり一万の兵の間を縫って、天守にたどり着き信秀達と合流するか、あるいはどうにかして一万の兵を自力で半壊させるしかないってことか。
俺が悩んでいると天守の方から、おどろおどろしい叫び声が聖山全体に響き渡った。
「ぐおおああああぁぁぁぁぁぁーーーーー!!」
「あれは信秀の叫び声か!?」
俺は突然の咆哮に驚きながらも、状況を分析していた。恐らくこれは俺が教えた”脅かす意思が強い波長”の声だ。
見れば敵兵は錯乱状態になり、完全に足を止めてしまった。今だ!今しかない!
思い出せ、滝の特訓を…
「茂……そうだキーワードは茂…!」
俺は幼馴染の茂としずくと三人で過ごした日々を思い返す。
「そうだ…俺は未来に戻り、しずくを死なせてしまったことを茂に謝らないといけない」
そして、あの"未来の記憶"がもたらした情報が本当なら、俺は天下を取るしかない!
俺の目の前が光に覆われる。一瞬、意識が混濁する。次の瞬間、もう体は動き始めていた。
俺の脳がどう動くのが最適か自動で計算する。そして一人の門徒兵に狙いを定めた。
「まずは一人目!」
俺は足の筋肉と裏筋肉を開放し、最大のパワーと最小限の動きで、俺のひそんでいた草むらから最も近くにいた門徒兵に斬りかかった。
「うぐあっ!?」
そいつが斬られたと気づく前に、彼の首が胴体から離れた。
周囲の門徒兵はまだ俺に気づいていない。俺は素早く斬った門徒兵の腰から手榴弾を二つ奪いとる。どこに投げれば最もたくさん殺せるかは脳が勝手に判断してくれる。
俺は自分の体が勝手に動くのに任せて、敵陣に手榴弾を投げ込んだ。
ドゴォォォォォォン!!!!ドゴォォォォォォン!!!!
よーし!道が開けた!このまま突っ込むぞ!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
1536年 7月 信孝22歳 信秀26歳 証如22歳 蓮淳72歳
【尾張国 聖山の麓 蓮淳の陣内】
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
手榴弾の爆発音が戦場に響く
俺は進む…進む!!俺は、最速で門徒兵に忍び寄り殺して、手榴弾を投げて、周囲を壊滅させるという方法で、どんどん本願寺の陣深くに入っていく。
もう数分に渡って、脳の制御を開放している。そろそろ気絶するかも知れない。
だが、脳の自動計算による最適解では、まだ制御を戻さない方がいいらしい。それに俺の向かってる先は聖山城の天守じゃない。
陣の奥深く、中央に向かってるみたいだ。とすると、敵の大将がいるってことか?大将を倒すだけなら、手榴弾の爆発に巻き込めばいいと思うのだが、どうも直接会うことに意味があるみたいだ。
「き、貴様!松平信孝だな!蓮淳様の下へはいかせぬぞ!!」
豪華な鎧の坊さんが、マシンガンを乱射してくる。さすがに避けることは無理だ。だが俺は、ここに来るまでに奪っておいたマシンガンを乱射し返す。
脳の高度計算による、精密な射撃によりすべての弾丸をこちらの弾丸で撃ち落とす。
「な、なんだとっ!?」
そして相手が弾倉を取り換えようとしたところに、接近し刀で首を斬る。
「蓮淳のとこへは行かせないとか行ってたな。敵の大将は、もう近くにいるってことか?」
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
さらに手榴弾をばらまきながら進んでいると、遠くの方で門徒兵が叫ぶ声が聞こえた。
「も、もうしあげます!こ、後方で松平信孝と思われる者が手榴弾を奪って…」
そう言い終わるか、言い終わらないうちに、俺の体が勝手に動き、叫んでいた男の首を落とした。
そして、男が報告していた坊さんを睨みつける。
「見つけた!貴方が大将だよね?」
俺はついに、敵の大将・願正寺蓮淳の下にたどり着いた。
そして俺の脳がさらなる判断を下す。
俺の視界が巨大な兵器をとらえる。あれはトレビュシェットとかいう投石器だな。しかもでかい!今の俺ならあれを使って、天守までいけるぞ!
トレビュシェットはすでに片側に錘が乗せてあり、あとはストッパーを外せば投擲される状態だ。
「ついて来てもらうよ!信秀のとこまで!」
そう叫んだ俺は、トレビュシェットのストッパーを外し、蓮淳を抱えてジャンプした!
「いっけぇぇぇぇーーーー!!!」
そしてトレビュシェットに捕まり、投擲の勢いに乗って空中へ投げ出された!!




