修行と能力の進化
1536年 7月 証如22歳 蓮淳72歳
【尾張国 海東郡 勝幡城 評定の間】
[願正寺蓮淳サイド]
大将 願正寺蓮淳
総兵力 10,000人
マシンガン専門兵 10,000人
マシンガン 12,000丁
手りゅう弾 30,000個(一人3個ずつベルトに吊り下げ)
兵糧 30日分
ワシ達は願正寺を出て、尾張国内に入りまず海西郡の仏敵を駆除して回った。そして現在はさらに深く海東郡の仏敵を駆除し、海東郡の中心となる勝幡城にてこれからの対策を練っておる。
兵士も農民も町人も、マシンガンの前ではひとしく肉塊になり果てる。本願寺に逆らった者共は皆、等しく地獄へ落ちるのだ。
海東郡・海西郡の民衆は皆殺しにした。今回は行軍を急いでいるので、逃げ延びた者もいるだろうが、それはきっちり占領してから見つけ出せばいいことじゃ。
「やはり聖王軍は聖王城に籠ったか」
聖王城は天下稀にみる名城で、我らの石山本願寺にも引けをとらぬ。いたずらに攻めては被害も大きくなろう。
もっとも手榴弾があれば、鉄城門など何の意味もない。落とすのはたやすかろう。故に一晩休んだら、全軍で聖王城を攻める予定だ。
「聖王城に籠ったのは間違いありませんが、少々懸念がございます。どうも聖王軍は松平信孝ではなく、前聖王の織田信秀が指揮しているようなのです」
聖王が代替わりした以上、信孝が軍を指揮するのが当然だ。すでに尾張の一部をこちらが奪っている以上、この非常時に自ら出てこないということは考えにくい。別動隊として何か策を打ってくるつもりか?
「信孝の動きは掴めぬのか?やつは服部の忍びを従えているという。こちらの想定せぬ謀略を打ってくる可能性もあるじゃろう」
もちろん少々の策ぐらいで、弓や槍の兵がマシンガンに敵うはずはない。だが用心は必要じゃ。もし信孝が”たかし”か四神の焼き印の者であれば、得体の知れぬ能力が飛び出してくる恐れがある。
「それが…忍びに探らせたところ…。にわかには信じがたい情報があがってきたのです」
その言葉にワシは強く反応する。信じがたい情報?嫌な予感がするのう。何せワシの知っている、信秀や証如の能力は信じがたいしあり得ない。
もし信孝が信じがたい現象を起こしたとすれば、最大限の警戒が必要じゃ。
「信孝は我ら本願寺を倒すため、山籠もりの修行に向かったというのです」
………は?山籠もり…?いやいや剣術の試合じゃないんじゃぞ!山で修業してどうなると言うんじゃ!
人間がいくら山で修業を積んだところで、マシンガンの弾が避けられるはずがないじゃろう!
「陽動の類か…?信孝の正しい位置を知らせぬための…?」
だとすれば信孝の位置を知られぬことで成り立つ策を打とうとしているはずじゃ。例えば、我らが聖王城を攻めている間に、信孝本軍は、伊勢へ回り込んで、我らの拠点である願正寺を直接攻めようというのかも知れぬ。
じゃが願正寺には、ワシ達 尾張遠征軍が持ち出した以上のマシンガンや弾薬・手榴弾が確保してあるし、守備兵も2000人ほどはおる。ただでさえ少ない軍を分けて落とせるような城ではない。
「それが複数の忍びの情報で、そのような報告が上がってきているのです。信孝は山にこもったと」
「中には、忍びに体を縛らせて川へ投げ込ませ、そのまま滝から落ちたという報告もあるのですが………」
複数の忍びから報告が上がっておるなら、恐らくは山にこもったことは事実じゃろう。じゃが、修行のためと言うのはやはりあり得ぬ。
まして滝に投げ込ませたなどは、明らかに誤報じゃ。そんなことをして何になるとも思えぬ。それでどうやって、弾丸がかわせるようになるというのじゃ。
そんなことをすればただ溺れて死ぬだけよ。
「ともかく、浅知恵でこちらの有利を覆すような策を打てるとも思えぬが、警戒は必要じゃ。引き続き監視をして、山から下りてくるようなら教えてくれ」
そこまで言ってハッとする。十一年前、聖山の戦いで信秀は戦闘中、仲間の馬が殺されたときに、それまでより一段階”進化した”力を発揮していた。
それまでは馬と、一部の獣を使役していたのが、熊や猪はもちろん鷹やカラスなどの鳥、リスやモグラなどの小動物まで一度に使役するようになった。
そのため、本願寺の兵は勢いに耐え切れず全滅してしまった。
もし修行とやらで、人為的に能力を進化させられるとしたら…!
「光の速度か……それが本当に可能なら、確かに軍勢相手に一人でも勝てるだろう」
ワシはあり得ないことを夢想して、つぶやいた。
「はっ?光の速度…でございますか?」
報告役はあっけにとられたような表情になった。それはそうじゃ。信孝が光になったなどと言う話を本気で信じたと思われたのだろう。
「いや、何でもない。信孝が何のために滝から落ちる修行をしているか、探ることはできるか?」
ここまで信孝が修行していることを頑なに信じなかったワシが、修行の内容について質問したので、報告役は少しあっけにとられたものの、すぐに答えた。
「……難しいかと。やつには服部の手練れが護衛についているようで、容易には近づけませぬ。滝から落ちたというのも遠目にみた情報のようでございます。」
「もちろんご命令とあれば、探りますが」
「いや、よい。これからもできる範囲で信孝の動向を探ってくれ」
服部の忍びとやらがどれほど強いかはワシにはわからぬ。じゃが不必要な犠牲を出すこともあるまい。
信孝は井田野の戦いで人間には考えられぬ速度で攻撃を仕掛けたという。今、修行とやらによってそのとき以上の速度を身に着けているようなら、当家の忍びが数人でかかったとしても、信孝一人に敵うまい。
「よし。信孝のことはとりあえず捨て置くことにする。やつが戻ってくる前に聖王城を落とせば何の問題もあるまい」
ワシの考えでは、四神の焼き印を入れられたものの能力は二種類ある。証如の「未来の武器を夢に見る」の如く”自分自身に対する能力”と信秀の”動物を使役する”の如く他者に対する能力じゃ。
高速で動くのは明らかに自分に対する能力じゃからな。それが進化したとしても、部下を早く動かしたりはできまい。じゃから、ここは危険な信孝を一旦無視して、聖王城を奪ってしまうのが最善策じゃ。
城や軍を失いたった一人になってしまえば、どんなに高速で動けたところで、わが軍とは戦えまい。
このときワシは能力を人為的に進化できる可能性について、もっと熟考すべきじゃった。訓練によって、能力を進化できるのは信孝だけではなかった。
ワシが真に警戒するべきは信秀の方だったのじゃ。




