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尾張の聖王

1525年10月 信秀15歳

【尾張・清洲城】


ここは尾張国、清洲城 救世主への対応を決めるため尾張の重要人物が一同に会している。


「なあ、とっとと始めよーぜ」


尾張守護 斯波義統 12歳

父 義達が無謀な遠江遠征を繰り返し、今川に捕縛され出家と引退を余儀なくされたため、3歳で家督を継いだ。お飾りの守護。


―――――――――――――――――――


「少し、落ち着きなされ義統様…。まあ、そろそろ始めますかな」


尾張上四郡守護代 織田(伊勢守)信安 23歳

父の死に伴い15歳で家督を継ぐ。リスクとリターンを瞬時に判断できる切れ者


―――――――――――――――――――


「ああ…尾張始まって以来の事態ですからなあ…。どうしましょうか。」


尾張下四郡守護代 織田(大和守)信友 29歳

清洲三奉行・因幡守家からの養子、坂井氏・河尻氏などに実権を握られているが、

今日は代表として呼ばれた。優柔不断な性格。


―――――――――――――――――――


「がっはっは!ワシの息子がすいませんなあ!!」


信秀の父 織田信定

信友の家臣で、清洲三奉行の一人。尾張南西部の海西郡を実効支配しており、その勢いは信友を上回りつつある。尾張でも有数の救世主信奉者


信安は一旦、皆の顔色を伺ってから、会議の開始を宣言した。


「………では始めさせていただきます」


「今回の議題は尾張全体に広がっている”聖王伝説”ですね」


信安の言葉に、義統が反応する。


「救世主じゃねーの?」


「はい、元々は救世主と呼ばれていましたが、先の戦いでその救世主が

“誰も死なない世界を創るため、天下を取り戦を止める”という内容の発言をしたのです」


信安は少しため息をついてから、話を続ける。


「その言葉が戦後、生き残った門徒兵から尾張全土の農民へと伝わり救世主は

この世が始まって以来初めて”民衆の幸福”を本気で考える、”聖なる王”と呼ばれるようになったのです」


信安・信友はため息をつき、信定はニコニコ笑っている。

そこで、義統は空気を読まずに聞き返した。


「聖なる王~?」


「ええ……そこへ先の戦で起こったという”聖王の奇跡”の噂が拍車をかけ、尾張では空前の聖王信仰が広まっているのです」


聖王の奇跡

1.動物を使役して万を数える門徒兵を全滅させた。

2.聖山にお天道様を落として、門徒兵を焼き尽くした。

3.本願寺の幹部を、法力で跳ね飛ばして石山に追い返した。


なお、1は事実であるが、2は本願寺の放火のせいであり、主に死んだのは動物の方である。3は異星人の仕業だ。


「いやいやいや、どれもありねーだろ!」


騒ぎ立てる義統に対して、信安は疲れ切った表情で答えた。


「私もそう思いますが…実際に見たという者が殊の外多いのです」


ここで信秀の父・信定が話に割って入った。


「つまり、このまま信仰が広まりゃあ聖王が指揮しなくとも、尾張に大一揆が起こる可能性があるってことだな!しかも、そいつが向かう矛先は領主である、俺達だ」


すでに尾張国内には、尾張の大名を倒し尾張を聖王に捧げる。”聖戦”を唱える者が少なからずいた。


そして、それらを取り締まろうと兵を出すたびに、手ひどい被害を受けていたのだ。


信定がニヤニヤしながら話を続けた。


「そもそも、戦で戦う兵は農民だぜ?農民が皆、聖王を信仰してたんじゃ聖戦とやらを仕掛けてこられたとしたら、戦いようがねえだろ」


この当時は農民兵が一般的であり、信安・信友・信定はともに農民兵で戦っていた。

農民兵が生活を捨ててまで聖王のために戦うというなら、打つ手はない。


そこで信友がぼそっと呟く。彼の言葉が現状のすべてを物語っていた。


「こちらの兵は、ほぼ0ですからね」


銭で雇った常駐兵がわずかにいないこともないが百人足らずだ。尾張の全農民に攻めかかられて耐えきれるわけがない。


「じゃあどうすんだ?」


場はしんと静まり返る。手の付けられない状況なのは、皆が理解していた。だからと言って、このまま放置していれば農民が聖戦を仕掛けてくる。


数分をほど沈黙がつづいた後、信友が口を開いた


「降伏………するしか………」


信友は優柔不断な性格で、ここまで一言も発していなかったが、場の雰囲気に耐え切れず皆が思っていた最善の方法を口にした。


それを受けて、信安が絞り出したような声で答える。


「だが……たった一人を相手に戦わずして降伏するのは……」


「だが、仕方あるめえ。聖戦が始りゃあ、俺たちゃ皆殺しだろ。俺は聖王の親父だが、降伏しなきゃ、俺も殺されると思うぜ」


聖王信者は聖王を統治者にするためなら、手段は選ばない。聖王の父であっても邪魔をするなら聖戦で誅されるべき存在なのだ。


「や、病むを得ないでしょう…」


「甚だ不本意ではありますが、仕方ありませんね。」


「おいおい、マジかー?戦わずに降伏すんの?」


信安と信友はしぶしぶ降伏に合意したが、義統は不満そうだ。


仕方なく、信安が義統を諭す


「仕方ないでしょう。そもそも、義統様は我々と違って元々軍を率いてないのですから、真っ先に殺されますよ。」


「あー……まあな。」


父が強制的に引退させられて以来、義統には身の回りの世話をするもの以外、部下がいない。


「では全会一致ということで…」


まだ義統がグチグチ言っていたが、信安は強引に切り上げ、結論を出した。


「尾張国は聖王に臣従します」


こうして尾張国・全土が信秀に全面降伏することになった。


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