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実験とモルモット

1525年 9月 信秀15歳

【尾張・山の麓 蓮淳達の陣】


「オオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


「オオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


「な、何だ?」


突然、叫びだした信秀を見て、蓮淳は驚き、警戒する。


「オオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


信秀の咆哮は、山中はもちろん周辺の山や森に響き渡った


「グォォッ!」


巨大な熊が蓮淳に突進し、弾き飛ばした。


「なっ!?」


周囲ではネズミやリスが門徒兵に噛みつき、火縄銃を落とさせている。

空中からは鷹やフクロウが門徒兵を襲い、動きを阻害する。

そうして隙ができたところに熊や猪、シカなどが突進して止めをさしていく。


「くっ…やはり他の動物も操れるのか…今の咆哮は合図か…?」


息も絶え絶えに蓮淳が呟く。


「れ、蓮淳様!これでは戦になりませぬ!一旦、退くしか…」


下間頼慶が鳥たちにたかられながら、叫ぶ。


周囲では門徒兵達が動物達に討ち取られていく。目視できる範囲でも八割ほどやられたようだ。


「きゅ、救世主を目の前にして…」


「されど…、このままでは全滅してしまいます!再起のためにもここは退きましょう!」


「む、無念…」


逃げることを決めた蓮淳だったが、大きな問題があった。周囲は動物達に囲まれている。そもそも蓮淳達が乗ってきた馬も信秀に味方をしている。熊や猪に襲われながら走って逃げるのは無理がある。


それでなくとも蓮淳はボロボロだ。隠し玉の武器もない。大型のものは遠くの遠征には持ってこれなったのだ。


「う、うわっ!!」


蓮淳が迷っていると、一頭の熊が証如に襲い掛かった。


「証如様!!まずい!!」


今の本願寺は証如の”未来武器を夢に見る”能力によって成り立っていると言っていい。ここで証如に死なれてはまずいのだ。


特に本願寺は、いずれ信秀を始めとする”宿星”達と戦っていくことになる。そのためにも、さらなる”未来武器”が必要だ。


ブモオォォォォォ!!


熊から逃げ回っていた証如めがけて、遠くから興奮した牛が、突進してきた!!


「ああっ…!!」


証如は目をつぶり、死を覚悟する。蓮淳も頼慶もとっさには動けなかった。


ボワワワァァァン


「なんだ!?これは煙!!?何が起こっている」


突然、周囲が煙に覆われ、蓮淳は混乱して叫んだ。


「ねえっ!!これ何?どうなってるの?」


証如も自体が把握できず、混乱している。

蓮淳は、どうやら証如が生きているらしいことを知り、ひとまず安心した。


「全ぁく、困りまぁすねえ。」


煙が晴れると、そこにはこの時代の日本には完全にあり得ない、スーツにシルクハットの男が立っていた。


「な、なんだ!?織田の忍びか…?」


わけのわからない事態に、混乱した蓮淳がつぶやく。


「忍び?ノーノー、私はたぁだの奇術師・手品師でござぁいますよ。こうして皆さんを驚かすのが仕事でぇす。」


「手品師…?手品師が何故、我らを助けた?いや…、本当に助けたのか…??」


「そうでぇすねえ。」


「元々、”宿星”同士がこのタイミングで会席するなんてぇ、予想外でしてぇね。」


「本来、我々は”実験”に介入すべきではなぁいのですが」


マジシャン風の男はそこまで言ってから一旦言葉を止め、少し黙った。


それから少し声を落とし表情をゆがめてからゆっくりと言った。


「イレギュラーが”来る”前に宿星同士で組まれたり、争われては困るんですよ。

“実験”はあれが来てから始まるんですから。」


「実験…?何のことだ?」


蓮淳はマジシャン男の言葉すべてが理解できなかった。理解する意味もないように感じられたが、”宿星”という言葉が出ている以上、証如に関係あることのはずだ。


それからマジシャン男は遠い目で、空を眺めながら言った


「この”星”の文明は明らかに我々より遅れている」


そして険しい表情になり、何かを睨みつけるようにどこかを見つめて言った。


「にも拘わらず数年後に”来る”という”たかし”と呼ばれる存在は我々の文明では理解できないイレギュラーだ。我々は”それ”が何なのか知りたい」


星?こいつは何を言ってるんだ?狂人…と片付けてしまうことはできるだろうが、蓮淳は証如が夢に見た武器が本当に作れることを知っている。


理解不能な技術・能力・存在があっても不思議ではない。


「では…そのたかしとやらにぶつけるために…証如や救世主を攫い、何かを施したというのか?」


「ふふふ、察しがいぃねえ。君みたいなのぉは嫌いじゃぁない」


「なぁに、ちょっと脳にチップをいれぇただけさぁ。チップにはデータが入ってる。脳がデータを引き出せるように細工をしてねぇ」


「ちっぷ…?いや脳に何かを入れた?殺さずにそんなことが可能なのか?」


「まぁ、この星でも400年もすれば可能じゃぁないかなぁ?」


そこまで言ってから、マジシャン男は言葉を止めた。これ以上何かを話すつもりはないらしい。


「さぁて、このまま宿星同士に争われてぇは、困るんでねぇ。君たちを石山まぁで

送らせてもらぅよ」


マジシャン男はスマホを取り出して、仲間に連絡をする。十分ほどして円盤型の乗り物が降りてきた。


「これに乗ぉれば、30分ほどで石山に着ぅくよ」


「30分?」


「ここでの言い方だと……ええと、小半時かな?」


「ば、馬鹿な!我らが石山から願正寺まで付くのに、急いで4日もかかったのだぞ!!」


幹部達だけ馬で移動するなら、もう1日くらい早く着いたかも知れないが、食料を持った小荷駄隊が追い付いてこなくては軍は動かせない。


「まあ…そこは文明の違いだぁからねえ。」


マジシャン男が合図すると、円盤の中から軍服を着た男たちが出てきて、蓮淳・証如・頼慶を収容する。


「それじゃあ行くよ~」


蓮淳達を乗せた円盤は空へと飛び立っていった。


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