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信秀の奥の手

バシュッ! バシュッ! バシュッ!


隊列を組んだ洗脳兵たちが、織田軍の後方から流線形の石弾を投げつける。


「ぐああっ!?なんだ!?」

織田軍の兵士が次々倒れていく。


「もっとだ!もっと投げつけろ!」


洗脳兵たちは表と裏の筋肉を60%開放して石弾を投げている。これ以上開放してしまえば筋肉がちぎれて30球も投げきれないからだ。


「あそこだ!あいつらが石を投げてるんだ」


織田軍の兵士が、俺たちに気づき指さしてきた。


「そ、それはそうらしいが……なんて速度だ。矢の何十倍も速い。あんなものよけきれねえぞ」

そう言っている間にも高速の石弾が兵士に突き刺さる。俺たちを指さしていた兵士も倒れた。


織田軍は次々と倒れていく仲間を見て、どんどんと軍全体に恐怖が広がっていき恐慌状態に陥った。


「いいぞいいぞ!面白いように当たっていくぜ!!」


洗脳兵達は歓喜の声をあげながら、石をぶつけていく。


「慌てるな!!敵の投石兵を優先的に討て!」


敵の武将らしき男が叫ぶ。しかしその瞬間


「あいつだ!狙え!」


俺がそう叫ぶと、洗脳兵達がその男に集中的に石弾を投げつけた。洗脳兵には武将とわかるやつがいた場合、優先的に殺せと言ってあるからね。


「殿!そろそろ石弾が切れてきました!」


30個しかないからね。投げ続ければ、すぐになくなるのも当然だ。


「よし!事前に話した通り3人組で、慎重に殺していけ!」


近接戦闘をするに当たって、洗脳兵には3人組を組むよう指示してある。

1.斬りかかり相手を殺す役

2.一人目の攻撃が防がれたとき相手を殺す役

3.盾役 敵の攻撃から残りの二人を守る


上手くいくかわからないが、彼らのスピードなら隊列を乱されない限り7,8人に一度に攻撃されてもしのげるだろう。


まあ乱戦になれば、それどころじゃないだろうが、相手は憔悴していて数も1000近く減らしたからね。乱戦にはならない。一方的な虐殺だ。


「頃合いだな。次の策を打とう」


俺はメガホンを手に取り、腹に力を入れて全力で叫ぶ


「織田信秀討ち取ったり!!」


俺の合図とともに、洗脳兵の一人がその辺の雑兵の首をかかげる

敵兵がさらに動揺するが、この作戦の目的はそこじゃない。


「ものども沈まれい!!殿は健在じゃ!!」


豪華な鎧を着た武将が、そう叫んだ。横で”あっ馬鹿”という声がした。


「あそこだ!あの武将の側に信秀がいるぞ!!」

洗脳兵達が信秀用に残させておいた、3つずつの石弾を信秀と思われる人物に投げつける。


「あれだ!あの雰囲気の違う大男だ!あれが信秀だ!!」


信秀は大物だけあって、凄味が違った。鎧は決して豪華ではないが、一目見てあれが大将だとわかる。体格も雑兵たちより二回りはでかい。


「ちぃっ…やむをえまい。奥の手を使わせてもらおう」


信秀はそうつぶやくと、手の指を妙な形にして口にくわえ、口笛を鳴らした。


ピュリィィィィィィィ

何の合図だ!?周りを見渡すが、大きな変化は見られない。

その直後に、洗脳兵の一部が騒ぎ出した。


「殿!大変でございます!!」


「どうした!!隊列を乱すな!」


明らかに様子のおかしい洗脳兵を一喝する。


「落ち着いて話すんだ。何があった?」


「そ、それが馬の大群が…陣に突っ込んできて…!!」


「馬!?信秀の騎馬隊か!?」


「い、いえ…誰も騎乗していない”馬だけ”の大群が突っ込んできたんです!!」


「なんだと!?」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


周りを見渡すと、確かに馬だけの軍団が突撃してきて、洗脳兵達を跳ね飛ばしていく。

そうだ”織田軍の兵士には攻撃していない”。俺の兵だけを跳ね飛ばしてる。


そもそも、馬は臆病な生き物のはずだ。それが興奮しているにしても人間に突っ込んでくるなんて変だ…。


いや…そもそも奴らは”隊列を組んで”突っ込んできている。


誰も騎乗していない馬が整然と並んで、一斉に突撃してくる。

馬が馬自身の意思で隊列を組んでる?そんな馬鹿な話があるか!


「もらったぁっ!!」


混乱する洗脳兵達の間を縫って、2m以上あろうかという大男が俺に斬りかかってきた。

いや、やつの武器は金棒(地獄の鬼が持ってる、トゲの生えたやつだ)だから、殴り掛かってきたという方が正しいか。


俺は表裏の筋肉を80%開放して、避ける。


「ぐあっ…!!」

だが避けきれず俺の左腕を奴の金棒が強く叩きつけた!トゲが刺さったところから、血が流れだす。骨は折れてないみたいだが、腕をうまく動かせない。


「なんてぇ、パワーとスピードだ。俺が全力で避けたのに」


これ以上のパーセンテージで避ければ、筋肉が断絶してそこから動けなくなる。

だからほぼ全力の回避だったのに左腕を無力化されてしまった。


「あんたが大将だろう?首は俺が頂くぜ」


大男はにやにやしながらそうつぶやいた。


「あんたこそ、その威厳、凄味、体格…信秀だな?織田の大将が、わざわざ俺の首を取りに来たのか?」


俺は痛みを堪えながら、なんとか言い返す。信秀なのは間違いないと思う。なんというか格が違うって感じだ。


「お前さえ、殺っちまえば、あとは烏合の衆らしいからな。俺が出てくるだけの価値はあるってもんよ」


逆に言えば、広忠自体には価値がないと見抜いてるってことか。まあこれまでの戦闘を見てれば岡崎軍が役立たずで、洗脳兵が活躍してるのはわかるよね。


「それにしても、あれだけの馬をどこに隠してたんだ?」


これは純粋な疑問だ。教えてくれるとも思えないが、気になる。俺たちは織田軍が来る数日前から念入りに、この辺りの地形を調べていた。馬の大群を隠せる場所なんて無かったはずだ。


唯一、兵を隠せそうなところには洗脳兵が隠れてたんだしね。


「馬を隠すなんて、そんなことできるかよ。地の利はお前らにあるんだぜ?どこかに馬を隠したところで、お前らが調べたらばれちまうだろう」


は!?馬を隠してたんじゃない?だが現に馬は突撃してきてるんだ


「だったら、あの馬たちはどこから出てきたんだよ!?」


この世界には魔法とかはないみたいだ。だったら何もないところから馬が出てくるわけがない


「決まってんだろう。松平側の馬に”頼んで裏切ってもらった”のさ」


信秀はわけのわからないことを言い始めた。馬に頼んだ?どういうことだ?


「馬に頼んで裏切ってもらっただと!?そんなことできるわけないだろう!」


「できるさ!俺は戦が始まってからずっと、身振り手振り、あるいは馬にしかわからない合図を使って、松平側の馬と”交渉”していた。織田側に裏切ってくれるようにな!」


馬鹿な!こいつは何を言ってるんだ!?身振りや手振り?馬にしかわからない合図?

そんなのどうやって覚えたんだ。いや、仮にそれができるにしても、どうやって馬が裏切ってくれたとわかる?


「俺は、幼いころ親に捨てられ、そのまま死にゆくところを馬に拾われ、馬の群れの中で馬と共に育ったのだ。」


「だから馬の気持ちはよくわかるし、奴らに俺の意思を伝えることもできる。

例え言葉が通じなくてもな。」


「馬に……育てられた?」


俺が愕然とする中、再び信秀が金棒で殴り掛かってきた。


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