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秘策は超速球

俺達が井田野に辿りつくと、先に広忠が率いる岡崎城の兵が布陣していた。

ちなみに俺が率いてるのは俺の城、合歓木城の兵だ。洗脳兵は状況に応じて斬りかかれるように井田野の付近に潜ませている。


「えっと…僕…じゃなくて、ワシが広忠です。あ、広忠じゃ」

「叔父上、よく来てくださいました」


広忠はどうもたどたどしい。まあ父親の清康が急に死んで、いきなり党首を任されたんだから仕方ないよね…。


しかし、これじゃあ俺や信定や家老達が付け入ろうとするのも当然だね。


「広忠様におかれましてはご機嫌麗しゅう」


とりあえず適当に挨拶しておいた。


「のう、叔父上、織田は強いと聞くが、此度の戦、勝てるだろうか?」


広忠が俺に心配そうに聞いてきた。不安で少し涙ぐんでいるようだ。

少し励ましておいた方がいいかな?広忠の精神状態が戦に影響することはないとは思うけど。


「もちろんですとも!我らの力で必ず信秀の首をとってみせましょう」


俺の自信にあふれた台詞で広忠は少し元気になったみたいだ。

まあ、この戦に勝ったとしても広忠の身がどうなるかまでは保証できないんだけどね。


とりあえず岡崎軍には、このまま織田軍とぶつかってもらうしかない。

両軍が膠着し始めたら、洗脳兵に奇襲させよう。一応、秘密兵器もあるしね。


俺は広忠の側から離れ、自分の持ち場に戻った。


「ついに来たようですな」


康孝が厳しい顔でつぶやいた。物見の報告では、織田軍はもう半里(2㎞)ほどまで近づいてきてるらしい。


俺の合歓木軍でも慌ただしく迎え撃つ準備をしている。


「ああ、まあ斥候に調べさせた限り、織田軍は俺達の妨害でかなり憔悴してるみたいだ。油断はできないけど、勝つだけなら楽なもんだろうね。」


康孝はより表情を険しくする

「戦をあまり軽くみない方がよろしいですぞ。」


真剣な顔でアドバイスをしてくれる。清康を始めとしてかけがえのない仲間が死んでいくところを見てきたからこそ、言えることなんだろうな。


充分な準備はしたつもりだ。教団に洗脳された方の記憶では俺は暗殺者だったから人を殺すことにためらいもない。いけるはず…だが確かに油断は禁物だな


「もちろんだ。油断なんかしないよ。全力を尽くし、全力で勝とう!」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ブオオォォーーッ

井田野に法螺貝の音が響き渡る。どうやら岡崎軍のやつらが吹いてるみたいだ。


康孝が少し緊張した表情で

「合図ですな。織田軍が到着したようです」

と言った。その直後に


ウォォォォーーーーーー!!


と、織田軍の叫び声が周囲に木霊する。ついに決戦のときだ。


相当頭に来ていたのか、織田軍全体から松平家を罵倒する声が聞こえる。

「松平のクズども!!毎晩毎晩嫌がらせをしおって!!皆殺しにしてくれる!!」


織田軍が岡崎軍に攻めかかった!!


「織田の勢いが強いですな」


康孝は神妙な顔で戦局を分析する。織田軍は憔悴しているものの、無心でがむしゃらに襲い掛かってきている。その分、細かい分析とかはできてなさそうだ。


だが清康が亡くなったせいで岡崎軍は指揮系統がグチャグチャみたいだ。一応、大久保忠俊が責任者として命令を出しているようだが…家老達の軍は好き勝手に動いている。


「ああ、まずいな。これじゃあ戦いにならないぞ。」


向こうが憔悴しているにしろ、こちらがこんなに混乱していては押し切られてしまう。

もっとも織田軍は何日も寝てないんだから、その前に力尽きる可能性もあるが…。


岡崎軍の統制がここまで執れてないとは思わなかった。ちょっと想定外だ。


「仕方ないな。ちょっと早いけど、洗脳兵を動かすか」


今なら、織田軍の注意は岡崎軍に向けられている。後ろから攻撃すれば最大の効果が得られるだろう。


俺は、この場を康孝に任せて、近隣に伏せてある洗脳軍の元へ向かった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「殿!いよいよ、俺たちの出番やな!」


洗脳のせいで陛下とか尊師とか呼ばれていたが、無駄に政治・宗教的対立を生みそうだったので、普通に”殿”という呼び方に変えさせた。


「ああ、信秀の首がとれるかどうかは、お前たちの働きにかかってるからね。よろしく頼むよ」


俺の言葉に、洗脳兵たちが沸き上がる。涙を流している者もいるようだ。

洗脳兵の反応は一々大げさなんだよね。


「信孝様万歳!!我らの殿、万歳!!」


俺をたたえる皆を鎮めた後、さっそく作戦の実行に移る


「それで、例のアレはちゃんと皆に配ってあるか?」


洗脳兵達が腰の袋から石を出して、それを俺に見せた。


「へい!あまり量産できませんで、一人に30個ずつほどですが、用意できております!」


俺は、鉄砲がまだない現状で、効率的に離れた相手を攻撃する方法を考えていた。この時代の遠距離武器といえば弓だけど、弓は練習に時間がかかる。

だからといって、普通に石を投げたのではダメージが少ない。


加えて投石器であるスリングは振り回さないといけないため、ほかの人の邪魔になってしまい、一度にたくさん投げつけるのが難しい。そこでどうするか考えた……。


裏筋肉は”太腿””膝”にあって、オリンピック選手など比べ物にならない下半身のスピード筋と、”肘””肩”の音速でナイフを振りぬく上半身のスピード筋がある。


そして投擲、ものを投げることはこの四つの裏筋肉をすべて使う行為だ。

だから普通に石を投げても、大谷選手よりはるかに早い時速300㎞以上のスピードを出すことはできる。それだけでも十分、殺傷力は高いのだが…


俺はぶつけてダメージを与えるのではなく、弾丸のように”肉体にめり込ませる”ことはできないかと考えた。それができれば確実に殺せるからね。


そこで考えたのが、石を流線形に加工することだ。できれば鉛玉が良かったけど、重いとスピードが落ちるし、鍛冶屋に頼んだところ、細かい作業だから金型がないと難しいと言われた。すぐに作るのは無理らしい。


そのため、俺たちは石を叩いたり削ったり磨いたりして、流線形の石弾を作ることにした。

洗脳兵と俺と康孝で毎日毎日、削っては磨き削っては磨き……


これは高い身体能力を生かすとともに筋トレを兼ねている。


100人に30個ずつ、3000個の流線形・石弾を作り上げた。

それを出陣前に各自、腰袋に詰め込んでもらっている。


「岡崎本軍と戦っている織田軍にこいつを投げつければ、3000人とはいかないまでも1000人以上は殺せるはずだ」


軍隊は密集してるから、同じやつにあたったりして石の数だけ殺すというわけにはいかないんだろうけど、相手が無防備なだけにそれなりの人数はいけるはずだ。


「ではいくぞ!俺たちの力を見せてやるんだ!!」


岡崎軍と織田軍が激しく争う中、俺たちはこっそり織田軍の後ろに布陣した。



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