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まともに戦う気なんて、さらさらない

「信孝様、万歳!!」「信孝様万歳!!」


洗脳兵達が俺を讃えている。持ち上げられて悪い気はしないのだが、ここでいい気になっては教団と変わらない。


戦う準備は整った。あれから3ヶ月、俺達は浮浪者・サンカ・河原者の類をかき集め、洗脳して、訓練した。


今では彼らは筋肉の制御を自在に開放し、裏筋肉の一部も鍛えた。彼らは立派な洗脳兵だ。


「信孝親衛隊の諸君!よくぞ集まってくれた!我らが宿敵、織田が動き始めたようだ!

松平の運命は君たちの筋肉にかかっている!私を信じてついてくるのだ!」


「信孝様、そう筋肉、筋肉というと何の策もないイノシシ武者のように聞こえますぞ」


「何をいう康孝!筋肉こそが策なのだ!誰も鍛えない裏筋肉を鍛えることで、誰も俺達のすばやさに追いつけなくなるのだからな!」


といいつつ、さすがに調子に乗り過ぎてる感はあるな。こういうとき忠告してくれる康孝の存在は本当にありがたい。


「そうだ!筋肉だ!信孝様万歳!」


洗脳兵達からひと際大きな声が上がる。自分で洗脳していてなんだけど、やっぱりこの熱狂ぶりにはついていけない気はする。


だが俺の目的のために、利用させてもらわなければならない。俺は死ねないし、未来に帰りたいからね。


「真面目にやってくだされ、緊急事態なのですぞ!」


康孝は神妙な顔つきで俺に注意してくる。


「そうだな。ついに織田が動き出した。尾張にもぐりこませた諜報部の報告では、数日前やつらの本拠となっている名古屋城を出発したそうだ」


諜報部とは洗脳兵の中で特に身体能力のすぐれたものによって構成された特殊部隊だ。

その名の通り、敵の情報を探ることを目的としている。


「では、これからそいつらのところに殴り込むんですね!!」


洗脳兵たちが気勢を上げる。だが待ってくれそうじゃない。やつらのところには行くが目的が違う。


諜報兵達のの活躍のお陰で、相手の位置はわかっている。もちろん奇襲もできるが、もっといい作戦がある。


「織田軍は清康が死んだことで、こちらを甘くみてるはずだ。いいように攻めさせて、岡崎城付近まで誘い込んだ方がいい。」


岡崎城近くの井田野という平野は、これまで何度も織田との戦いの舞台となった場所らしい。何故そうなったかといえばだだっ広い場所の方が軍を展開させやすいからだろう。


今回も決戦は井田野で行う。というか変に手を出さなければ、井田野で戦うことになりそうだ。


「では、俺達は何をすりゃいいんですかい?」


洗脳兵たちが聞いてくる。場所はわかってるが戦わないと言えば当然疑問に思うことだ。


「俺達は確実に信秀の首をとらないといけない。だから、決戦の場は井田野だとしても事前工作をしておく必要があるんだ。


「事前工作ってのは?」


「簡単に言えば、敵が戦争どころじゃなくなるぐらい、酷い嫌がらせをし続けるってことだね」


織田軍に嫌がらせをして士気を下げておく必要があるだろう。それも途中で帰ってしまわない程度にね。


戦争どころじゃない精神状態で井田野まで来てもらい、俺の洗脳兵で切り刻む。それで信秀の首は取れるだろう。


「本当にこの人数で、敵兵の妨害をするのですか?」


康孝が不安そうな顔で聞いてくる。それもそのはずで、俺が嫌がらせのために選んだ特殊部隊は、俺と康孝を除いて20人ほどだ。


でも、戦いに行くんじゃないんだから、人数より見つかりにくいことの方が重要だよね。


それに攻撃を受けたとしても十分、逃げて帰れる人物を選んでいる。康孝も、この3ヶ月ずっと俺の側で特訓して、それだけの実力を身に着けた。


「ああ、そうだ。嫌がらせするのに、たくさん人数がいてもしょうがないだろう?」


「それはそうですが…。本当にこんなことをするのですか?」


「ああ、確実に勝つためには、戦う前にできるだけ士気を下げておかないといけない。戦いが始まる前に敵の刃を折っておくんだ」


「外道が過ぎるという気はしますが…。殺し合う以上、そのようなことは言っていられませぬな…。清康公の弔い合戦でもあるのだし。」


康孝は、清康の弔い合戦と言いながらも、クソ卑怯な方法で弔い合戦が汚されるなんてことは言わなかった。彼にとっても勝つことが第一なんだろう。


死んだら、清康の遺志を継ぐどころじゃないもんね。


さて、嫌がらせの方法だが…糞尿を投げ込むのがベストだと思ったのだけど、三河から持っていこうとするとわりと重いことに気づいた。


背負子と桶を持っていって、現地で自分達のを溜める…という方法も考えたのだが、

俺達の売りはスピードだ。スピードが殺されるような作戦はとるべきじゃないと考え、糞尿作戦はやめておくことにした。


第一、あまり強い匂いを振りまくのは隠密作戦としてはふさわしくない。


ということで糞尿や動物の死体を投げ込むのは、効率が悪いと判断した。


よって大まかな方針としては

1.大きな音をだして眠らせない

2.相手が音だけと見て警戒心を解いたら雑兵を殺して死体をさらす

ということにした。



大きな音を出すと、こちらの場所がばれやすいから、鳴らしたらすぐに逃げないといけないが、それならこっちのスピードを生かせる。


といっても火薬や拡声器の類はないので、単純に敵襲だと叫んで回ることにする。ホラ貝はふける人が少なかった。銅鑼などは、重いし金属がたくさん必要なのですぐには用意できなかった。


「では、まず20人を5人ずつのチームに分けるぞ。それぞれ織田軍の東西南北に隠れるんだ」


チームを5人づつ4つに分け、敵のキャンプの東西南北にそれぞれ潜ませる。そして北チームが声を上げて、敵がそっちを調べに言ったら、今度は南で声を上げるという形だ。

そして、他のチームが動いている間に仮眠をとってもらう。


一応竹を加工して、メガホンもどきは用意しておいた。


「各自、声を上げたらすぐにその場を離れること。仮に見つかっても今のお前達なら逃げれるからね。ただし矢を射かけてくるようなら、当たらないように気をつけろよ。」


「信孝様と康孝様はどうなさるのですか?」


「俺は作戦の起点となる北側を指揮する。康孝は西軍だな。」


北→南→東→西と動くため、西チームは仲間の成功をうけて気が緩みやすい。加えて西の次は北だから、俺に状況を伝える役とも言える。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


三河に向かってくる織田軍を補足した俺達は、野営する彼らの東西南北に潜んだ。


俺が最初の合図をしてから北チームが叫びまわり、おおよそ二時間したら東チームが叫びだす…という風にして、朝まで織田軍を寝かせない作戦だ。


ちなみに作戦を実行するまで・した後のチームは夜警を立てて眠る。これで俺達はきちんと体力を回復させつつ、織田軍を消耗させることができる。


「北部隊!準備はいいな?始めるぞ」


「了解!いつでも大丈夫でさあ!」


「では状況開始!!!」


俺がそういうと、北チームが一斉に声を上げた。


「敵襲だぁぁぁ!!!」


俺達の声に織田軍が激しく反応する。


「敵襲だと!?どこからだ!!」


「慌てるな!落ち着いて周囲を確認しろ!松明を多く持って来い!」


織田軍が騒ぎ立てて、混乱するが幹部クラスらしきやつらが、きちんと指示しているようだ思った以上に冷静な対応だな。


しばらくすると、危険がないことを悟ったのか、陣の中が静かになる。体感時間で1時間くらいかな?


作戦はまあまあ成功だ。残りは他の部隊に任せて、俺は一旦寝ることにした。


それから1週間、織田軍が井田野に到着するまで、俺達は工作を続けた。


やつらが大声に反応しなくなり、深く眠るようになったときは陣深くに侵入し、手ごろな雑兵を何人か殺して、四肢と首をバラバラにして糞尿をかけ、陣の中央にさらした。


何せ、ランダムに選んだ雑兵を殺したんだ。他の雑兵からしたら、次は自分達がああなると思えば気が気じゃないだろう。どんなに眠くても命がけで警備をするようになるはずだ。


幹部クラスは自分達は強いし警護がいるから大丈夫と考えるかも知れないが、少なくとも負ければ死体を糞尿にされされると思えば警戒心は高まるだろう。


なお、遺体の臓器は摘出した上で陣内にばらまいておいた。病気の原因になりそうだし、

不安を助長させることができると思う。


4日目から、敵襲と騒ぎ立てるのではなく、一晩中低い声で般若心経を読み上げる作戦に変えた。ある程度精神が参ってる状態なら、騒ぎ立てるより不気味な方が効果があるはずだ。


疲れと寝不足で参ってるときに、一晩中どこからか般若心経が聞こえてきたら、夢と現実の区別も危うくなってくるだろう。実際に幻覚の見えている兵士もいるようだった。


あとは放っておいても、勝手に寝不足とストレスで憔悴していくはずだ。こうなると判断力も鈍り、”逃げ帰った方がいい”という選択肢も見えなくなってくる。


それから数日、織田軍はなんとか岡崎城近くの平野、井田野までたどり着いた。


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