絶望と無限の闇
「男同士でイチャイチャするのを見るのは、気持ち悪いですね」
仮想桃の告白を受け、複雑な思いを抱いていた俺の前に、ヤクザ風の男が現れた
体格はガッチリしていて、風貌は優しそうだが、とんでもない威圧感がある。
やつはニコニコ笑っているのに、怖くて膝が震える。
こいつは見覚えがあるぞ。確か、去年の事件で俺を拘束し、俺を騙して麗美としずくを殺させたヤクザだ。
「あ、あんたは確か…藤田…!!」
「……間に合わなかった!!」
仮想桃が悲痛な表情で、悲しそうな声を上げる。
反射的に頭を撫でたい衝動にかられるが、AIだから無理だし、それどころじゃない。
「やってくれましたねコピーAI。しかし私がここに来た以上、あなた達のたくらみも終わりです。」
藤田は勝ち誇った顔で、そう呟く
たくらみ?何のことだ?
「たかしくんを連れていかないで」
仮想桃が必死の表情で懇願する。
なんだ?何が起こってる?藤田は何しに来たんだ?
「ちょっと待て!話が見えないぞ!?藤田は何しにここに来たのさ?
それに企みって何?」
「002は自分の死後、教団の洗脳からたかしさんを逃がすため、コピーAIに教団の情報と逃亡手段を託していたのです。」
002…本物の桃が俺を逃がしてくれようとしてた!?そうか、教団は洗脳の技術を持ってるんだっけ。
桃は…そしてAIの仮想桃も、俺のことを…好きだから、俺が洗脳されるのが嫌で逃がしてくれようとしてた…ってことなの?
だとしたら…俺は桃の命がけのプレゼントをもたもたしてたせいで無駄にしちゃったってこと?
「ですが、私が来た以上、もう逃がしませんよ。貴方には一度逃げられていますしね」
俺は麗美としずくを殺してしまった事件の時、二人と同じように殺されて臓器を抜き取られるところだったらしい。その時は警察が踏み込んで逃げられたらしいけど…。
「ごめんね…。たかしくん。僕がもっと早く逃げる方法を教えてれば…」
仮想桃の表情がさらに曇る
どうやら仮想桃は、告白を優先してしまったことを気にしてるらしい。
「では、たかしさんには教団の施設で特別研修を受けていただきます」
研修って何だ?いや、教団が洗脳技術を持ってるんだったら、つまり洗脳するための何かをするってことかな
「ま、待てよ!研修って何をするんだ」
「何もしませんよ。6ヶ月間、薄暗い電灯で照らした何もない檻で暮らしていただいて、そのあと、教団の広告動画を見ていただくだけです。」
藤田の言葉を聞いて、俺は研修を想像する。体を冷や汗が伝う。恐ろしい。
半年も何の刺激もない状態に置かれたら人間はどうなるんだ?
共同室には桃がいたし、ヤクザ達もいた。会話も喜怒哀楽といった感情もあった。
何もなくなったら、どうなる?想像がつかない。恐ろしい。
「最もそれは通常の研修です。たかしさんは1年前の事件で教団に臓器を提供しなかったことと、今回002の手を借りて逃亡しようとしたことにより、特別研修を受けていただくことになります」
その言葉に俺は絶望して気を失いそうになる。普通の研修がそれだけ過酷なのに、それより上って何をするんだよ?
「特別研修では、睡眠禁止、食事禁止、飲み物も生きていける最低限、自殺を防ぐため全身を拘束させていただき、排泄も専用装置で動かずできるようにしてあります。」
「1週間ごとに教団の判定師がいくつか質問をして、信仰を受け入れられる状態になったと判断したら、教団の広告動画を見せます。まだ反抗的と判断されれば、もう1週間この生活を続けることになります」
「もちろん医師の立ち合いの下、死なないように細心の注意を払っておりますので、ご安心ください。」
………………まずい。桃が俺を逃がしてくれようとした理由がよく分かった。
こんな拷問に俺は耐えられない。人格も崩壊して、すぐにやつらの奴隷になるだろう。
しかし、どうしよう。逃げようにも、藤田と戦ってかなうとは思えない。
第一、俺が暴れたときのために、配下のヤクザを連れてきてる可能性もある。
「どうしよう!このままじゃ、たかしくんが」
仮想桃が慌てるが、藤田は無情にも次の言葉を言い放った
「それでは、皆さん。たかしさんを特別室にお連れしてください」
数十人のヤクザが部屋に入ってきて、俺を殴りまわした。俺は意識を失った。
◇◇◇◇◇◇◇◇
次に目覚めた瞬間、俺は目かくしをされていて何も見えなかった。
………………………
どこなんだ?ここは?特別室ってやつか?だったらもう研修とかいうのが始まってるってことか?
………………………
なんだ…?何故誰も話しかけてこない?いや、研修ってのは何も刺激のない状態で放置するんだっけ。
すると、この状態が1週間も続くのか?
体は固定されていて、指一本動かせない
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
誰か!何か!言ってくれ!!
耳栓がしてあるようだが、それにしたって全く何も聞こえない。
周りに人はいないのか?
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
おい……おい!!ダメだ……
目覚めてから何時間くらいたったんだろう。もしかしたら俺が長く感じてるだけで、
まだ数分しか経ってないのかもしれない。
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
段々不安がこみあげてくる
このまま誰にも話しかけられなかったらどうなるんだろう。
おかしくなるって…どんな風な気持ちなのか
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
余りにも刺激が無さ過ぎて眠たくなってくる
俺がウトウトし始めた瞬間
「ぎゃあああっ!?」
体に電流が流れ、俺は意識を取り戻す。
そういえば睡眠も禁止するって言ってたっけ。
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
それからどれくらい時間が経ったのかわからない。
眠たくて眠たくてたまらないが、電流が走るから寝れない
腹もペコペコでおかしくなりそうだ。
教祖を信仰すれば助かるんだっけ……。
いや、桃を捨て駒にした連中を信仰なんてできるわけない…。
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
…………………………
・:」;@「;「;;:」:¥:」@;;;\\「5
おれ………おれ……は……だれ………だ
もも…………?ももって……なんだっけ…………
しずく……しげる………れ……み………
そうだ……信仰……信仰すれば……?信仰しないと…………
信仰……信仰ってなんだっけ…………
しんこうが…………しんこうで…………
「そろそろよさそうだな」
藤田がそう呟いたのは、俺が特別室に入れられて、丁度7日目のことだった。




