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坊さんの修行してたら、ボスが攻めてきたんだが

俺が僧になってから2ヶ月が過ぎた。


史実通りなら今頃、秀吉と勝家は上杉景勝・稲葉一徹・長曾我部元親・紀伊の雑賀衆など戦う上で必要な勢力を取り合っているはずだ。

ちなみに岐阜城は信雄領になったらしい。秀吉的には能なしに任せておいた方がなにかと管理しやすいってことだろう


この2ヶ月やったことと言えば、家事手伝いと座禅だ。

曹洞宗では日々の生活の中で雑用こなすことが座禅についで大事な修行らしい。

一人暮らしなんてしたことない俺は家事がまともにできず、なんども安福和尚や先輩の坊さんに小突かれたが、痛い思いをした分 上達は早く今では女子力がうなぎ上りだ。


座禅については2ヶ月ではまだまだだな。安福が言ってたような発狂はしないにしても、殺人衝動が生まれて警策で叩かれるのは相変わらずだ。


「クニヌシですか?」


その日、安福は仏堂に寺の雲水を全員集めて、これからの予定について話していた。

そこで出た話では、俺を含むこの寺の雲水全員が明日”クニヌシ”を退治に行くらしい。


「ああ、そうだ。どこの国にも瘴気のたまり易い場所ってのがあるんだが、

一定以上集まるとあやかしが生まれやがるんだ」

妖って…妖怪みたいなもんだろうか?瘴気が集まると妖が生まれる…。

やはり俺の来た世界は俺の知る戦国時代ではなく、ファンタジー世界らしい。

「つまりその妖の中でも、とんでもなく強いのがその国の主、”クニヌシ”

って呼ばれてるんですね」

「そんなとこだな。尾張のクニヌシは30年に一度ほど、現れる。前に出たのは

信秀公が亡くなったころだ」

信長の親父(俺の爺さんなんだろうけど)が死んだころって相当昔な感じがするな。


「瘴気の集まり方からして、恐らく明日の昼頃だな」

「どんな化け物が出てくるんです?」

俺も戦いに巻き込まれるんなら、何が出てくるか聞いとかないとヤバい。

「木曽川が巨大な蛇の妖になり、尾張中に洪水を起こす」

は?川が蛇になる…?言ってることはわかるが(できればわかりたくないが)

スケールが大きすぎてとてもじゃないが理解が追い付かない。


「マ…マジで?」

「ああ、対処を誤れば尾張全体が水に沈むことも考えられる」

「だから俺たち僧侶の存在が重要なんだ」


安福がマッチョなのも、ひたすら妖怪と戦ってきたからってことか。

つまり、この世界の僧侶は精神的な拠り所なのに加えて妖怪に対するガードマン

でもあるってことか。


「えーっと…じゃあ、そのなんていうか。どうやって戦うんスか?そんな化け物と」

「やつらは瘴気の塊だからな、こっちも瘴気をぶつけて散らしてやりゃあ良いんだ」

「瘴気をぶつける…?」

「ああ、そうだ。俺たち雲水は自分の中の瘴気を自在に操ることができるからな」

どうやら雲水は瘴気を操れるものらしい。けど、瘴気って座禅のときに入ってくる

ヤベえ精神状態になるやつだよな?

「大丈夫なんすか?瘴気を操ったりして…その精神状態とか」

「ばぁか、俺たちは鍛え方がちげぇんだよ」

「雲水ってのは何十年も座禅を繰り返すことで、瘴気によって心を乱さない修行を積んでるんだ」

「お前みたいに少しの瘴気でおかしくなったりしねえよ」


なるほど、座禅を繰り返せば、段々心が乱れなくなるのか…。

いや、逆に言えばきちんとコントロールできるようになるには、

このジジイくらいの年数がかかるってことだよな。

化け物と戦うために、1日に8時間以上もただ座るってきつすぎるだろ…。


「誰かがやらねば国が亡ぶ。俺たちがやるしかねぇんだ」

「はぁ…なるほど」

「それで俺は何をすりゃいいんですか?俺が瘴気を使おうとしたら、

きっと、また殺人衝動が起きますよ?」

「んなこたわかってるさ。お前達、若い雲水の役目は住民の避難誘導だな。

もっとも倒し損ねれば国中どこにいても洪水に呑まれるだろうが」

避難誘導か…それくらいならなんとかなりそうだな


「とりあえず明日死にたくなかったら、今日はしっかり寝て体力を回復させておくことだぜ」

「そうですね…わかりました」

できればやりたくないがしょうがない。それにしても死にたくなくて秀吉から

逃げてきたはずなのに、より命の危機に瀕してる気がする。

まあ…でも戦場に行くよりはマシ…なのか?


2-4 妖怪大決戦

次の日の朝を迎えた。睡眠は、まあとれた方だと思う。

俺たちは木曽川沿いに進んで行き、もっとも瘴気が溜まっているという場所に来た。

「ここだな」

「今から小半時(30分)ほどか…、この川が妖となり国中に洪水をもたらす」

「そうなる前に俺がこいつを退治する、お前達は戦いに巻き込まれないように住民を避難させてくれ」

萬松寺の雲水の中でも古参のものは、安福と一緒に妖と戦うらしい。

それ以外のまだ瘴気を操れないものは俺と一緒に避難誘導を行うことになる。


しばらくして、川にどすぐろいものが漂い始める。

そして川の水全体が生物のようにうごめき出し、空中へと浮かび上がった。


ぐおあああ…ああああっ!!

「おいでなすったぜ!!いいか野郎ども!俺たちの力を見せてやるんだ!」

安福が体育会系なセリフを吐く。俺たちって坊さんのはずなだが

「安信たちは避難誘導を頼むぞ!」

俺たちにも改めて指示を出す。俺としてはとりあえず一刻も早くここから離れたい。

近くにいて巻き込まれたら確実に死ぬ。


「では…いくぞ!!曹洞宗秘伝…鬼人変化!!」

安福の筋肉がさらに膨れ上がり、体色は赤く変化し、髪が腰まで伸びる。

頭には角が生え、犬歯が発達して牙のようになる。

身長は3mほどまで伸びただろうか。


「ちょ、ま なんですか!?それ!?」

「曹洞宗秘伝の技だ。お前達も瘴気を操れるようになれば使えるぞ」

そういえば瘴気が溜まると妖が生まれるんだったな…。

つまりあの技は瘴気に精神を犯されないように修行した上で、わざと異常な瘴気を取り込むことで正常な精神のまま、自ら妖になってるってことか


「行くぞ!」

安福と古参の雲水が木曽川の妖にとびかかっていく。

彼らが武器で切り裂いたところから、水が剥がれ落ちていく。

瘴気が散ることでただの水に戻ったってことか。

「ってこのままここにいたら、あの剥がれた水にのまれるぞ!」

安福達は剥がれた水が元の川に落ちるように意識しているようだが、

戦いながらでは当然、思わぬ方向に飛ぶこともある。


俺は木曽川から離れ、近くの集落に向かった。安福から指示された通り避難誘導をしなくては


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