表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
180/202

かんなと輝夜の仲良し生活

【  2050年 桜井かんな8歳 輝夜56億歳以上 無人惑星サヴァイヴ マッハゴム群生地 】


「でも、輝夜さんを『家族愛』に目覚めさせる仕掛けって、どこに何があるんでしょう?」


「さあ?それはわかりませんわ。恐らく、かんなさんだけが感じられる何かがあるんだと思いますけど」


 そう言われましても、肝心の『家族魔法』が封印された状態では、私だけが感じられるものなんて、あるようには思えません。


 悩んでいる私を見て、輝夜さんがアイディアを出してくれました。


「でしたら、今かんなさんが最も必要だと思っているものは何ですか?それがヒントになるかも知れませんわ」


「私が今必要だと思っているのは、このサバイバル生活をしのぐためのお家ですけど……」


「でしたら、こちらだと思う方に移動してみてください。『最高のデートスポット』は貴方がわたくしを導けるようにできているはずですから」


 私が輝夜さんを導けるように……?


 私達をここに飛ばした『アミューズメント・ムーンキャッスル』は、輝夜さんが私を永遠の愛に目覚めさせることができるように、宇宙サバイバル技術を活かせる場所を転移位置に選びました。


 それと同じように、私が輝夜さんを『家族愛』に目覚めさせられるような場所が転移位置に選ばれているはずということですね。


 だから、この近所に私が家族愛を示すために必要な『家』があるはずだと。


 だとすれば、その『お家』は私が『家族愛』を発揮するために、理想的な立地・内装のはずですよね。


 んー、私だったら家族と仲良く暮らすためにどこにどんな風にお家が建ってたら嬉しいでしょうか?


 私は今の家と前世の家にしか住んだことがありません。


 私の家族愛の基盤は、前世の兄『望月たかし』によって作られ、今世の弟『義弘』によって完成されたと言って良いでしょう。


 だから、私が最も家族の愛を示せるのは、前世のお家だと思いますが……。前世のお家はかなり都会にありました。


 このマッハゴムの森の近くに、前世のお家に似た場所があるとは思えないのですが……。


 その時、私の耳に聞き覚えのある音楽が聞こえました。


 チャ~ララ~ チャリラ~ チャリラリラ~


 これはドヴォルザークの『新世界より』ですか?日本では『遠き山に日は落ちて』という名前で有名です。


 そういえば、前世で住んでいた街では夕方17:00になると、この曲が流れて子供達に帰宅を促していたんですよね


 小さい頃、お兄ちゃん達と遊んでいるとき、この曲が流れてくると、楽しい時間が終わる感じがして、何だか物悲しい気持ちになりました。


 私の思い出の曲が流れてくるということは、こちらの方に『家』となる場所があるんでしょうか?


 でもあからさま過ぎて罠のようにも感じます。そもそも、この音は私を誘い出すための幻聴なのかも知れません。


「ええと、輝夜さん。今『新世界より』が聞こえていますか?」


「ええ。聞こえていますわ。どうやら、これがわたくしを『家族愛』に目覚めさせる場所へのヒントみたいですわね。心当たりがあるのでしょう?」


「心当たりはありますけど、でも知らない星で私の思い出の曲が聞こえてくるのはおかしくありませんか?」


「輝夜宮の『アミューズメント・ムーンキャッスル』はお互いの愛を育むための道具ですから、二人に危険が及ぶような所には転移させないようになっていますの。ですから、音に従っても大丈夫だと思いますわ」


 危険がなくて、他にヒントがないなら従ってみるしかないですね。音のする方を辿ってみましょう。


 私達が『新世界より』が流れてくる方を辿っていくと、マッハゴムの森が途切れ、急にアスファルトで舗装された道が現れました。


「何故、舗装された道路が?この星には先住民がいるんでしょうか?」


「それにしては妙ですわね。この街にはまるで人の気配がしませんわ」


 そう言われて辺りを見渡すと、周囲にはビルが立ち並び、その間を縫うように民家が何軒か建っています。


 輝夜さんの言う通り、民家にもビルにも全く人の気配はありませんが……。


 でも、この場所は……私が前世を過ごした街並みそのものです!!


「どうして……?ここは、私が前世を過ごした街そのものです。でもここが地球なはずありませんし、そもそも前世で私が子供だったのは2006年頃のことです」


 少なくとも私の認識では、今は2024年のはずです。18年も経って街並みが昔のままというのは考えにくいです。


「確かに妙ですわね。この街並みは、まるでどこかにあったものを丸々切り抜いてきたように見えますわ。でも、何故そんなことが起きたのでしょう」


「切り抜いてきた……ですか?まさか、昔私が住んでいた街並みを?」


 そんなことが可能なのでしょうか?いいえ、八つの『上位恋愛傾向』のどれかを持つ人がやったんだとしたら、可能ですよね。


 つまり、誰かが私の故郷をここに転移させ、それを補足した『アミューズメント・ムーンキャッスル』が私達を転移させた。


 『アミューズメント・ムーンキャッスル』の判断で、今ここに危険はないようですけど、誰が何のためにそんなことをしたのか、突き止める必要がありますよね。


 とはいえ、今は家族愛を輝夜さんに見せることが先決ですね。全次元が滅びるのを防がなくてはいけません。


 そう考えて私は、それまでの話を断ち切って言いました。


「さあ、行きましょう輝夜さん。この街にはあるはずです。私の生家が!きっと、そこで家族愛を見せられるはずですよ」


「ええ、楽しみですわ。早く行きましょう」


【  2050年 桜井かんな8歳 輝夜56億歳以上 無人惑星サヴァイヴ 望月家 】


 街に入った私達は一直線に、私のお家があるはずの場所を目指しました。


 すると、そこには『魂融合事件』で私が転生する前と、全く変わらない私のお家がありました。


「お家も、昔と全然変わってない……!!」


「ここがかんなさんのお家ですのね。ここで、どんな『家族愛』の力を見せてくださるんですの?」


 そう言われても全く想像がつかないんですよね。とりあえず、このお家で生活していけばいいんでしょうか?


 だとすれば、まずは掃除でしょうか。


 そこまで酷くはないですが、家の中はそれなりに散らかっています。逆に言えば少し前まで人が住んでいたような感じを受けますね。


 少なくとも18年間、誰も触らなかったようには見えません。ほこりやカビもついていませんしね。


「だったら、少し片づけと掃除をしましょう。このままでも住めなくはないですが、気になりますから」


「もちろんですわ。それが家族愛の理解に繋がるなら、はりきって掃除しましょう」


 こうして私と輝夜さんは、しばらく掃除と片付けをしました。やっている内に夜になったので、衛星生物の肉を焼いて食べました。


 冷蔵庫もどういう原理か動いているので、当面の食料は問題ないでしょう。


 最も、お肉ばかりだと栄養が偏りそうなので、できれば穀物や、ゴム風味じゃないお野菜も探したいところですね。


 その日は、『私のお部屋』だった部屋に二人で寝ました。この街は安全らしいですが、絶対に何者かが襲ってこないとも限りません。


 できるだけ二人一緒にいた方がいいという判断で、同じ部屋に寝ることになりました。


 それから一ヶ月間……。このお家で私と輝夜さんのゆっくりした時間が流れていきました。


 朝起きて、食事をして、狩りをして、食事をして、掃除洗濯をして、食事をして眠りにつく。


 その中で、輝夜さんの知識を活かしてなんとか『ゴム風味』のアク抜きをしたり、槍茸をゆでると柔らかくなることもわかりました。


 穀物に関して、家の中にあったお米は全て精米だったので、そこから稲にすることはできませんでした。


 じゃがいもは、種イモとして植えることで、何とか増産できそうです。輝夜さんは、色んな植物の育て方を知っていてすごいです!


「かんなさん、一ヶ月間 貴方と同じ家で過ごすことで、貴方への家族愛をなんとなく感じられるようになりましたわ」


「同じところに住み、同じ時間を共有して、同じことをするのが家族愛を育む秘訣ということですわね」


 私はこの一ヶ月間で、輝夜さんと生活するのがどんどん楽しくなっていき、そのせいで、彼女を家族愛に目覚めさせるという話を半ば忘れかけていました。


 でも、確かに私自身も輝夜さんに対して、信頼や一体感といった、前世や今世の家族に感じていた感情と同じものを感じている気します。


 特別なことをしなくても、一緒にいて信頼し合えば家族愛は育まれるのですね。


 けれど、『ストルゲ』に目覚めたとき、今の家族や火鼠族に対して感じた感情は、こんなものではなかったはずです。


 それを輝夜さんと共有するには……やっぱり『家族信条』ですか。


 そう思いながら生活をしていると、ある日 私と輝夜さんの『家族愛』を一変させる出来事が起こりました。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


【  2050年 桜井かんな8歳 輝夜56億歳以上 無人惑星サヴァイヴ 望月家 庭 】


 私と輝夜さんが平和な暮らしを続けて、半年 ある日突然、天から光り輝く老人が降りてきました。


「貴方は……太上老君!?どうやってここを嗅ぎつけたんですの!?」


 輝く老人は太上老君と言うそうです。輝夜さんは太上老君に対して、ものすごい警戒感を抱いています。


 輝夜さんの敵……ということでしょうか?


 だとしたら、『プラグマ』の使えない今、出会ってしまったのはかなりまずいのかも知れません。


「油断したのう輝夜よ。そなたが『プラグマ』が使えん今こそ、最大のチャンスじゃ。ワシが『永遠の愛』を吸収すれば、究極のパワーが完成する」


 太上老君さんが『プラグマ』を吸収する!?輝夜さん以外にも八つの『上位恋愛傾向』を吸収して、何かを為そうとしている人がいたんですか?


「ワシはTTRAWに入ってからずっと、接する全て『八卦炉』で溶かして固め仙丹にして食らってきた。全ては究極のパワーを作り出すためじゃ」


「そうして、求める理想のためにあらゆるものを犠牲にし続けることで、ワシ自身も目覚めたのじゃ。自己愛……上位恋愛傾向『フラウティア』にのう」


 上位恋愛傾向『フィラウティア』!?それもあらゆる人を吸収することで、『自分勝手さ』が認められて上位恋愛傾向に目覚めたんですか!?


 そんな人は危険すぎます。自分のためならモラルが一切なくて、その上、全次元を破壊するほどの力を持っているなんて……。


 輝夜さんが警戒するのも当然です。この人を何とかしないと、全次元の人々が残らず仙丹にされてしまうかも知れません。


「そして、『二つ目』じゃ」


「ワシは『フラウティア』の絶対的行使力を持って、遊びの愛『ルダス』に目覚めていたラプラスを、八卦炉で溶かして固め、仙丹にして吸収した」


 『フィラウティア』以外に『ルダス』を吸収してる!?


 じゃあ、輝夜さんがずっと求めていた『二つの上位恋愛傾向』を、太上老君さんはもう持っているってことですか?


「二つの上位恋愛傾向!これだけでも究極に近いパワーじゃ。そして今のそなた達は、能力さえ使えん。仙丹にして食うのは容易いじゃろう」


「これで4つの『上位恋愛傾向』がワシのものとなる。そうなれば、残った4つの『上位恋愛傾向』共を倒し、仙丹にするのも簡単じゃろう」


 これはまずいです。太上老君は『仙丹』にすることで、相手の上位恋愛傾向を理解しなくても一瞬で、相手を吸収できる……。


 私達はモラルの問題もあって、絶対にそんなことはできません。犠牲を出すにしても同意が必要ですからね。


 でも4つの『上位恋愛傾向』が集まってしまえば、確実に全次元は滅ぼされてしまいます。私達が何とかしないといけません。


「八つが集まり、そしてお前たちのもつ『難題』を『最終難題』にできれば……。全てを吸収しワシだけが、この世に存在する唯一の生命となる。それこそが『自己』の究極系じゃ」


「自分を愛す上で、他人の存在など邪魔じゃからな。そうなれば、もう誰もワシの唯一性を批判できん」


 自分勝手な理論を話す太上老君に対して、輝夜さんは言いました。


「貴方の望みなど、どうでもいいですわ。貴方がラプラスを吸収したのもどうでもいい。けれど、貴方は『残りの4つの上位恋愛傾向を食う』と言いましたわね」


「つまり、このわたくしの目の前で、『マニア』のそらを喰らうと、そうおっしゃったわけですね」


 そらさんは『マニア』なのですね。だとすれば、太上老君は輝夜さんの大切な人を吸収しようとしているわけですか。


 全次元のこともありますが、輝夜さんの大切な人を吸収しようなんて許せません。


 輝夜さんの恋人なら、私にとっても家族みたいなものです。絶対に助けないと!


 でも……今の私達は『ストルゲ』や『プラグマ』を使えません。


 そして太上老君は『フィラウティア』と『ルダス』の力を身に着けています。


 何の能力もなしに、二つの上位恋愛傾向を持つ相手に敵うでしょうか?


 もしそれができる方法があるとしたら、ここのクリアですね。クリアすれば、『ストルゲ』や『プラグマ』が使えるようになるはずです。


 でも、そのためには輝夜さんが私を吸収するか、私が輝夜さんを吸収しなければいけません。


 ここまで半年暮らしてきて、私は輝夜さんのことが大好きになりましたが、『永遠の愛』に目覚めたような感じはありません。


 家族としてはとても仲良くなったと思うのですが、輝夜さんも『家族愛』には目覚めてない様です。


 『二つ』になるためには、なにかきっかけが必要と言うことでしょうか?


 そう考えていると、太上老君の後ろに『太極図』のようなものが現れました。


「太極図のレーザーを使ったものは、これまで使った者もおるだろうが、ワシのは一味違うぞ」


 太上老君がそういうと、世界が真っ暗になり、その直後に真っ白になりました。


「『次元・陰陽呪』全次元の聖なる力と魔の力を敵の体内に送り込み、融合させて爆発させる技じゃ」


 全次元中から、陽の力と陰の力が輝夜さんの体に送り込まれてきます。


 このままでは輝夜さんが……。半年間、寝食を共にしてきた家族が……。


 死んでしまいます!!


 私はとっさに、輝夜さんに抱き着きます。


 すると、私の体に陽と陰の力が流れ込んできました。


「かんなさん!!」


 私の体が……エネルギーが私の体の中から膨れ上がって……!!


 まずいです……こ、このままじゃ私は……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ